VAMPIREEYE98 「アスカロン」
渾身の一撃を放った吉良、源藤高雅は後方によろめき胸を抑えて膝をついた。
「クソが……退魔無敵じゃなかったのかこのシルバーグレイパワーはよぉっ!!」
拳を地面に叩きつけて吉良を睨みつける。
「今ので仕留めきれなかったか……」
吉良の息が上がり全身から汗が噴き出した。
「惜しかったな狼男……ここが結界の中じゃなかったら、完全に敗北していた」
「まだまだ……」
「おっと……俺はハンターだ。獲物と勝負はしない次の仕留める機会を伺うまで」
「待て!」
立ち去る源藤高雅の背後から声をかけたのは霄。
「ああ?拘束されて何もできない小娘が何を……」
振り返ると両手足を失い背中に炎の羽根を生やした霄が浮いていた。
「コイツ、熱線で自分の手足を切断して脱出したのか!」
「お嬢様なんてことを!!」
「源藤高雅お前に次の機会など無い、そしてもう誰も傷つけさせない!」
「その様で何が出来る小娘!!退魔においては無敵のこのシルバーグレイパワーはお前の炎など通じん!!」
「……吉良、少し貰うぞ」
吉良の全身を濡らしていた血が霄の口に吸い込まれていく。霄の目は真紅に髪は輝く銀髪へと変わり、両手足は傷口から瞬時に再生する。
「ハッ!それが真の姿って奴か、なるほど白峰華月の面影がある。だが奴に比べてお前など取るに足らん存在。奴は常に銃口もしくは剣の切っ先を向けられているようなプレッシャーがあったがな!」
「先代は先代、私は私だ」
目から熱線を放つ霄、源藤高雅は腕をクロスして受け止める。
「こんなもの対したことは……」
「そうか、ならそのまま耐えているがいい」
出力を上げる霄。太い巨大な熱線となり源藤高雅を押していく。
「アアアアアアッ!!」
更に出力を上げる霄、源藤高雅の足は浮き後方に吹き飛ぶ。
「ぐおおおおお……」
アスファルトの道を転がっていく源藤高雅。立ち上がると目の前に真紅のオーラを纏った霄が立っていた。
「フン!どうだ、無傷だ!!」
「そうか、だが私の目的は熱線でお前を破壊する事じゃない」
「なんだと……はっ!」
周囲の様子が変わっている事に気が付いた。
「結界の外にお前を出す為に放った一撃だ」
「結界から出た所でこのシルバーグレイパワーに魔力は通じんのだが?あの狼男のような技術はお前にはあるまい」
「物理は通じるんだったな」
背中の炎の噴射で一気に間合いを詰める霄、ナイフ状に伸ばした爪で突きにかかる。
「チッ!」
斧で受け止める源藤高雅、反撃のローキックを放つ。霄は月面宙返りで回避しながら後頭部を蹴った。
「グッ……ヌン!」
つんのめった源藤高雅は振り返り鎖分銅を放つ、バレルロール回避を行う霄。爪の斬撃が源藤高雅の上腕に命中。シルバーグレイパワーの体毛と共に鮮血が飛び散る。
「……デエイ!」
魔導書を開き紙片を放つ。対する霄は大きく後ろに下がり両手から車一台分の大きさの火球を飛ばし爆炎で紙片を蹴散らした。
「さぁ次は何だ?聖水か?ロザリオか?」
「調子に乗るなよ小娘……!!」
ロザリオを目の前に突き出す源藤高雅。ナイフ、鎖、斧、聖水、魔導書、懐中時計の破片が集まり融合していく。白い光を放ち出現したのは大剣。
「アスカロン!!」
「……」
「オリジナルのアスカロンとまではいかないがエクレシア(教会)が所有する最強の七武具の一つ!選ばれし七名のみが所有を許される」
「来い」
「フン!」
飛び上がる源藤高雅、アスカロンを霄目掛けて振り抜く。剣のエネルギーは軌跡を描いて射出され霄の軍服ワンピースを掠める。
「コイツを使うと一々面倒な書類を書かされるわ次の日に疲労は残っちまうわで邪魔くせぇんださっさと終わりにしてやる」
全身から白いオーラを発する源藤高雅、ロケットめいて霄に向かって飛ぶ。
「ドオオリャアア!!」
アスカロンで切り裂いたのは炎の残像、霄は空中旋回して源藤高雅の脇腹に蹴りを叩き込む。インパクトの瞬間爆炎を発生させ吹き飛ばす。源藤高雅は住宅のブロック塀を砕いて停止した。
吉良はその様子を眺めている。
「(あれこそが霄お嬢様の本来の力。覚悟が決まりさえすれば白峰家にふさわしい実力を持ったお方なのだ)」
「アスカロンと言ったな、大層な武器も当たらなければ意味がないな」
ゆっくりと下降する霄。爪を倒れている源藤高雅に向けている。
「がはっ……当たりさえすれば終わるんだ……!」
剣を振りエネルギー刃を飛ばす。霄は空中スライド移動で回避、左手のナイフ爪を飛ばし源藤高雅の鎧の隙間、左肩に突き刺さった。
「結界の中でなければお前の攻撃など当たることはない」
「黙れガキがっ!!」
アスカロンを地面に叩きつけて衝撃波を全方位に放つ。霄は急上昇で回避。
「そうするよなぁ!?」
衝撃波と同時に飛び上がってた源藤高雅、霄をアスカロンの間合いに詰める。爪で迎撃する霄、アスカロンは爪を砕き霄の腕を掠めた。
「チッ、浅い……」
左肩に突き刺さっていた霄の爪が源藤高雅の動きをわずかに鈍らせ回避をギリギリで間に合わせた。
着地する両者。アスカロンで斬られた霄の傷は瞬間再生されずに残っている。
「お嬢様……傷が」
結界から出てくる吉良。ゆっくりと近寄って腕を前に出した。
「また血を吸わせる気か!させん!!」
横薙ぎにアスカロンの剣波を放つ。霄と吉良は空中に回避、吉良の血を吸収する霄。
「私はいつまでも吉良や須原に守られてばかりではいられない、下がってくれ」
霄の目は更に赤く、髪は銀色に輝く。
「お嬢様、守らせて頂くなどとんでもない。共に戦わせてください、それが白峰家に仕える者の役目です」
「そうか」「そうです」
左右に分かれて走る二人。源藤高雅は左の霄目掛けてアスカロンを振る。一軒家を両断、霄はバレルロール回避しながら炎の爪矢を連続発射。
「この程度の炎!」
ガードする源藤高雅の背後に吉良が回り込む。
「ハァッ!」
【武狼牙刀拳・貫通牙】
両手熊手掌底を背中に打ち込む。斬撃は螺旋の動きで背中から腹部に貫通した。
「グエァ……」
源藤高雅の兜から血が滲む。振り向きざまにアスカロンで吉良を狙うも腕を掴まれ捻りながら地面に叩きつけられる。
「グフッ」
【武狼牙刀拳・倒壊牙】
武狼牙刀拳の投げの斬撃。地面に叩きつける事により衝撃を相手の体の外側と仕込んだ内側の斬撃で両方から破壊する技。
衝撃で跳ね返る源藤高雅、浮いた体に爆破蹴りを叩き込む霄。弾丸の如く叩きつけられ、電柱が折れ曲がった。
「が……は……」
アスカロンを杖代わりに立つ源藤高雅、退却の隙を作るべく刀身にエネルギーを込める。
「くそ……力が入らん……」
源藤高雅本人は気付いていない。突き刺さったままの霄の爪がエネジードレインを行い続けていたことを。
「終わりだ」
アスカロンを持つ手を蹴り上げる吉良、背後に回った霄が源藤高雅の足を掴んで上昇。
「観念しろ源藤高雅、そのシルバーグレイパワーとやらを解除しろ」
「観念だと?」
「しなければそれでいい、解除するまでダメージを与え続けるまでだ」
「舐めやがって……」
「舐めてるのはお前の方だ」
足を掴んでいる霄にアスカロンを振る源藤高雅、空中での不安定な姿勢で繰り出される剣を見切ることは霄には容易く爆破蹴りで地面に叩き落した。
「どうだ?」
「がはっ……クソが」
源藤高雅は起き上がりながら刺突を放つ。
「……」
霄は半身で躱し両腕の鎧の隙間を爪で刻む。
「グ……ガ……」
「解除しろ」
「クソガクソガクソガー!!」
アスカロンを振り回す源藤高雅、剣波で周囲の家が倒壊していく。霄は完全に動きを見切り連続で爪を飛ばし両手両足の鎧の隙間に次々と突き立てた。
「……」
突き刺さった爪の先から爆炎が発生、焼きながら広げられる傷。
「グギャアアアアアアアア……」
「まだやるか?」
「まだだ!まだまだ!!ここまでされて今更引けるかよぉー!!」
アスカロンが輝きを増す。
「もう明日の事など考えるものか……全身全霊全力を尽くす!!」
アスカロンで連続攻撃を仕掛ける源藤高雅、回避する霄と吉良、周りの建物は次々と倒壊していく。
「どうだ一撃必殺の!連続攻撃は!!」
「言ったはずだ当たらなければ意味がない」
「当たれよクソがぁああああああああっ!!」
回避を続けながら霄と吉良は考える。源藤高雅の相手が蓮也と佐久間であったのなら、結界の中で最初から敵が全力を出していたなら絶望的な状況に陥ってたであろうと。
「この辺一帯を吹き飛ばしてやる!!」
アスカロンを上に掲げる源藤高雅、巨大なエネルギーの刀身が出現、周囲を照らす。
「ズエリャアアアアアアアアアッ!!」
アスカロンを振り下ろす。アスファルトの地面はめくれ上がり車、ブロック塀を吹き飛ばすエネルギー波。閃光の後には源藤高雅の前方扇状に破壊の痕が広がっていた。
「フハハハハ……ハハハハハ……!俺が……本気を出せばこんなものだ!!」
「惜しかったな」
「なにっ!?」
背後から声をかける霄。
「バカな……あのタイミングで避けれるはずがない!!」
「ああ、だから自らの爆炎で吹き飛んで回避した」
「……狼男の方はくたばったか」
「ここにいる。片腕は折れたが」
瓦礫の中から姿を現す吉良。
「クソ……体が……」
源藤高雅のシルバーグレイパワーの体が崩壊を始める。アスカロンは光を失う。
「あのような大技、本来ならばダメージを受けた状態で連続で繰り出せる訳がない。更に駄目押しで先ほどの渾身の一撃、いくらシルバーグレイパワーとやらでも限界を迎えたのだろう」
「お嬢様の言う通り。お前はもう限界だここまでにしろ」
「あくまで俺を生かすつもりか……後悔する事になるぞ……?」
「もういい、黙れ」
吉良は生身となった源藤高雅に当て身を入れて気絶させた。
「蓮也君と佐久間さんに連絡しましょう、源藤高雅を確保と」
「ああ」
霄は髪で作ったワイヤーロープで源藤高雅を拘束する。吉良の携帯を借りて二人にメッセージを送った。
続く
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