VAMPIREEYE99 「 CAROM - 01 」
― 東邪馬高等学校
二郎と蓮也らが橡、皀とやりあっていた同時刻。東邪馬高等学校は灰色の軍勢三獣の一人、青鈍(あおにび)の襲撃を受けていた。
対するは華月派【吸血鬼】谷川克政(東邪馬校長)
【ぬりかべ】壁山颯馬。
【大蝦蟇】周防美古都。
「校長先生なんなんすかアイツら、日除さんも吹田さんも蒼炎さんもあんなやられ方……」
十字槍を持った周防美古都が言った。
周防の視線の先にはゆっくりと中庭を進む青鈍。鳥を思わせる外装は青みがかった灰色であった。その周りには屍人の生徒たちと鳥頭異形の三名。
鳥頭異形の三名は谷川克政の部下【 肉吸い 】 吹田麻莉 【風狸】 日除静哉 【 化け火 】 田村蒼炎 。青鈍の術に嵌り同士討ちをしたあげく鳥頭の異形にされていた。
「……鳥頭化は既に情報を得ていた屍人とはまた違うようだ。あの青灰色の鳥のような敵に迂闊に近づいてはいけない。三人はあの敵に何かされたのだ」
「俺も奴の近くに居たのですが、攻撃はせずに壁で防御に徹していました。それが鳥頭化しないで済んだのかもしれないっすね」
壁山颯馬が言った。
「壁山君はぬりかべの力であの敵の攻撃を防いだから平気だったのか、攻撃しなかったのが良かったのか……他に何か気付いたことは?」
谷川は二人をカーテンの影に隠れさせながら言った。
「途中、あの敵の鎧が青い光を発してたような……」
「どのタイミングで光ったのか覚えてるかね?」
「みんなが攻撃を仕掛けた後だった気が……」
「屍人の相手をしながら敵が光ったのは私も見ていました!」
周防が言った。
「んー……壁山君は近くに居て敵に攻撃は加えず防御に徹し、周防君は離れて様子を伺って屍人の相手をしていた……やられた田村くん日除くんは飛び道具での攻撃がほとんど、吹田くんは肉弾戦のみ……敵の鳥頭化攻撃は距離は関係なさそうだね」
「てことは……攻撃を加えたかどうかですかね?」
「それが発動の条件と考えられる。しかし発動直後に鳥頭化したのかね?」
「いえ、三人が頭を抱えて苦しみだしてその後めちゃくちゃな暴れ方でお互いを攻撃しあって……倒れてから鳥頭化しました。すんません俺ずっと壁で耐えるしかなくて……」
「壁山君だけでも無事で良かった、周防君もよく突撃しないで退却してくれた」
「はぁどうも……それで校長先生これからどうするのです?外への連絡手段もどういう訳か絶たれてて校内は屍人だらけです……」
周防は隣の窓のカーテンの隙間から覗いて言った。
「そうだな……この校長室の隣の資料室は廊下からは入れない構造になってるとはいえ長くは持たないだろう……あの敵、見た目からして空中移動が得意そうだ。私のジェットパックで振り切れるかどうか」
「俺が壁でアイツを足止めします!その隙に校長先生と周防は外に助けを!」
壁山はぬりかべの力である魔力壁を胸の前で合わせて言い放つ。
「いやいやいや!壁山君一人を残して行けないですよ私も残ります、あの敵の相手は出来なくても屍人を食い止める事はできますし」
十字槍を構えて言う周防。
「生徒の君たちを犠牲にすることなどできない、ここは私があの敵の相手をしよう。策が無いわけじゃない、君たちがジェットで逃げるまでの時間稼ぎは出来るつもりだ」
谷川は資料室の大きな扉を開ける。そこには戦闘人型ロボット、人間を模した自動人形
サイバネ部品、ロボット動物の部品が並んでいた。
「私は機械を操ることが出来る。スーパーコンピューターのような複雑な処理はできないがこれらを使って直接奴と戦わずに足止めは出来る。それに……同志の黒谷氏、都メタルと共同開発した最高傑作が今日この校長室に直接届く予定だ」
「最高傑作……それはいつ頃です?通信手段を断たれた今の学校に届きますかね?」
「あと30分ほどで届くはず。通常であれば宅配ドローンが屋上に着陸するはずだ。この資料室の一番奥に隠しエレベーターがある。そこから受け取る」
これまで資料室の機械類は全てそうして受け取ってきた谷川。
「……校長先生、それってあの敵に気付かれたら屋上に来るって事では?」
周防が言う。
「ああだから迅速に受け取る必要がある。最高傑作は何としても資料室に運び込んで起動させる。君たちはここでジェットの準備して待機だ」
「ジェットでどこへ行けば?」「それです!」
「都メタルに行きたまへ、私の名前を出せば助けになってくれるはずだ。私も後で行く、来なかった時はそのまま学校には戻らないように」
「そんな……」「警察は頼れないんですか!?……こういう超常現象を理解してもらえる人は居ないのですか校長先生!!」
「周防君、壁山君、私の同志には警察関係の者もいる。だから動いてはくれる、動いてはくれるが事件が起きてからしか動けないのは同じなのだ。この状況を何とかするのは私たちしかいない」
東邪馬高校の中庭を進み校舎に入って行く青鈍、鳥頭に変えられた三人、屍人たち。逃げ惑う生徒、教師たち。
屍人に襲い掛かられた者は暴行を受け弱った所に吐き出された黒い液体を口にねじ込まれ屍人となっていく。鳥頭三人はそれぞれ火球、真空波、筒による殴打で生徒らに襲い掛かっていた。
「圧倒的!圧倒的だ!!まだこの学校には妖どもが隠れているな?仲間と同じように下僕に加えてやるぞ!!」
両手に持った剣で生徒らを切り裂いて進む青鈍。
「ああっ見てられません!私は一人でも多くの人達を救いたい行かせてください!!」
十字槍を握りしめる周防、鳥頭下僕と化した仲間たちを見て膝が震えている。
「だめだ周防!校長先生の指示に従おう、ここでお前まで鳥頭になっちまったら敵の戦力が益々増えちまう、そうなりゃ犠牲者はもっと出るこらえろ!」
「壁山君……でも……」
「黒谷氏に連絡を取れれば……いや木戸さんや勝田さんでもいい……」
無線、電波、光ネットワークは通信不可。ドローン、超小型昆虫ロボを飛ばすも、全て学校の境界で電撃を受けたようにショートして墜落した。
「外からは入ってこれる結界かもしくは触れると制御を失うバリアのようなものが張られている……この学校の発電施設があって助かった……」
カラスが校内上空に侵入後境界で見えない壁に激突し墜落する姿を目撃した谷川はそう判断した。
「とりあえずいつでも出られるようにジェットパックの準備をして、この校長室を突破されないようにするんだ。まだあの敵軍団はここに気付いてない。屍人を追い払うだけで時間が稼げる、 30 分耐えるんだ」
谷川の用意したジェットパックを装着し始める二人。校内の悲鳴うめき声はどんどん大きくなっていく。
「開けてくれー開けてくれー!!」
校長室のドアを叩く者が叫んでいる。
「生存者っ!?」「待て周防!開けるな!!モニターで確認だ!!」
壁山は校長室のモニターを覗く。廊下に設置された監視カメラの映像を確認すると完全に屍人化した生徒がドアを叩いているのが見えた。
「アケテクレー!アケテクレー!」
「壁山君、何かでドアをふさがなきゃ!いくらこのドアが頑丈でも鍵が壊れたら入ってこられる!!」
「よし、このソファと戸棚を倒してバリケードを作る!!」
校長室の奥の資料室では谷川が送られてくる物の為に準備をしている。
「最高傑作のアンドロイド CAROM ……何としても起動させなくては。プロトタイプ以上の性能を発揮できれば状況を打破できるはずだ。奴らの襲撃が後 1 時間遅ければ蒼炎君らはあんなことにならなかったはずだ……」
谷川は準備しながら言った。
「敵の軍団は 1 階を順に回っているのか……生き残った生徒たちは殆どいないがどうかそのまま生き延びてくれ。 CAROM さえ起動できれば反撃に移れる。今回失敗して正体不明の敵に壊されることがあっても戦闘データは残る次につながる、君たちの無念はきっと晴らしてやる、私が死んだとしても黒谷氏や木戸さん、勝田さんがやってくれる」
谷川はプロトタイプと呼んでいる CAROM 。白い髪に白い肌、球体関節の少女型アンドロイドの頭部を開けユニットを外す作業を始める。首筋には 01 の刻印がされている。
「ユニット解除完了……ふぅ、これをしくじったらこれから送られてくる最高傑作は初期 AI のみで起動させる羽目になってたところだ」
ユニットを外されたプロトライプの目が開きゆっくりと起き上がった。
「む?……まさか……覚醒したのかこの状態で?」
「おはようございます谷川先生。どうか戻してください、ワタシを体に。谷川先生」
「…… 01 、引っ越しをするんだ。完成したんだよ君の体が」
「状況把握中…………谷川先生、ワタシを体に戻してください。作業は自分で行います」
「なんだって……!?」
「 44 分 48 秒前に衛星とのネットワーク切断を確認。直前に送られてきたデータを参照……アップデート開始します」
「 01 どうなってる?君は今ユニットを外されている、何もできないはずなんだが?」
「スリープ中に谷川先生の能力を解析し獲得しました。 30 %を再現、半径 3 メートル以内の 100 ㎏までの機械類の操作が可能になりました。ユニットを守る為にも体に戻してください谷川先生」
「なんということだ…… 01 君は想像以上だ……だがユニットをプロトタイプボディに戻してしまっては新しい体に移れないぞ」
「バックアップ作業中……。谷川先生所持の予備ユニットに疑似人格を構築中……ネットワーク切断前に送られてきたデータに新たな疑似人格を確認。その為バックアップが必要と判断しました。新たな疑似人格は新型ボディのものだと思われます」
「何!?どういうことだ……新しい体には新たな疑似人格のデータがあるから上書きされるのを避けるために私の予備ユニットを使うってのか……!! 01 君は自我に芽生えているのか!?」
「谷川先生、ワタシは消えたくない。どうかこのまま世界に存在させて下さい。アナタの役に立ちます、アナタの理想のパートナーになります」
「おお……おおおお!奇跡だ!!私の子供の頃からの夢が……!!」
谷川は幼少期から人形を愛で、いつか完全な自我に芽生えたアンドロイドを誕生させたいと願っていた。
「だが 01 君の事はもう少し調べないとまだ解らないことだらけだ、今は大人しくしていてくれるかい?」
「それが谷川先生の望みなら。ではバックアップ完了と同時にスリープモードに移行します。どうかワタシを消さないでください」
「消すものか、君は私の希望だ」
01 の思いがけない自我の目覚めは、谷川の意識を変えた。 01 を守り自身も生き残る。華月派としての使命の他に守るべき存在が出来た。 20 年前に妻と子供を失った谷川にとって 01 は第二の家族と言える存在になりつつあった。
「(どうする……壁山君と周防君に 01 を連れて行ってもらうか?しかし見えない壁の突破をどうする?……送られてくる最高傑作 CAROM の戦闘力は未知数だ。それに黒谷氏と木戸さん、勝田さんの為にも敵地に残して放り出して逃げるわけにはいかない)」
悩みながら作業を続ける谷川、資料室のドアが開き壁山と周防が入ってきた。
「校長先生!準備できました!!いつでも出れます!!」
「そうか……荷物はあと 10 分で到着する予定だ」
壁山と周防は白い少女の自動人形に目が留まった。
「校長先生、あの綺麗なお人形は?」
「ああ、私がコツコツと作り上げてきた子だ。できれば脱出の時に持って行って欲しいのだが……」
谷川は 01 を抱き起こして椅子に座らせる。
「存在感が凄いですね……動いてお話もできるのですか?」
「ああ、もちろん。運動性も問題ない、フレームは軍用の戦闘アンドロイドのを使っているからね」
「凄いですね……俺も好きで技術博覧会とかで出されてるアンドロイド見に行ったりするんですがこの校長先生の作品はそれらと比べても上ですよ!」
壁山は興奮して言った。
「ありがとう……」
谷川がつぶやいた。それに呼応するかのように作業スペースのアームが一斉に動き出し 01 にパーツを取り付けていく。
「おはようございます。周防さん、壁山さんワタシは 01 と言います」
「シャベッタァー!」「すげぇ声が電子音声っぽくない!」
「 01 大人しくしてるのではなかったのか」
「失礼。先生とお二人の会話、監視モニターで確認した校内の様子から緊急脱出の必要があると判断しました。バックグラウンドで作業中ですが同時にワタシの飛行パーツを準備中です。皆さんを護衛しながら脱出出来るように。ワタシは役に立ちます。 5.56mm 弾連続発射砲、火炎放射装置、超合金ブレードを装備しています」
01 は各装備を展開して見せる。華奢な体に内蔵された軍用兵器の数々はアンバランスを強調しながらも違和感は無く特別な存在だと壁山たちに思わせるのに十分な効果だった。
「え、マジものの武器ですか!?」「すげぇ……俺も絶対こんな子作成したい……」
「分かった 01 、君のスペックは信用している。壁山君と周防君を守りなさい」
「駄目です。ワタシは先生もお守りいたします」
「 01 、落ち着いて作戦を立てよう。全員が無事に脱出できるように」
「……ワタシからの提案。学校を包み込んでいる壁と敵の能力分析をワタシが行います。そして戦闘は後から来る後継機と共に行います。先生、壁山さん、周防さんは機を見て先に脱出を」
「無茶です 01 ちゃん ! 」「そんな簡単にはいかないよ……」
「最悪、ワタシと後継機は核となるユニットさえ無事なら復帰できます。ですが先生、周防さん、壁山さんは生身。リスクの大きさが違います。先生さえ無事ならワタシは美しい姿で復活できると信じています」
「 01 ……君はなんという素晴らしい子だ……私も覚悟が決まったよ」
谷川は伸縮自在多重関節特殊アームが 4 本付いたコルセットと視覚操作可能なデバイスゴーグルを装備。
「校長先生そのアームカッコいいですね!百足の体のようで蛸の触手のようでもある!」
壁山が興奮して叫ぶ。
「ハハ……ありがとう。このアームは大学の研究室にいた頃から愛用していたものを改良したんだ。 Dr. センティピード、百足先生なんて呼ばれてたね」
「いいなぁ俺も自分の機械装備作れるようになりたいなぁ」
「情熱を失わなければきっと出来るようになるさ壁山くん」
特殊アームとゴーグルを装着した谷川。横に飛行用パーツの取りつけを完了した 01 。
「……さて、準備はできた」
「飛行システムチェック完了……バックグラウンドでの全ての作業が終了しました。学校を包んでいる無色透明壁の解析を完了、校内 4 か所に設置された力の源が支点となっている模様」
「いいぞ 01 、その支点を破壊すれば壁は消滅するのだな?」
「内 2 カ所を破壊すれば機能しなくなります」
「敵は 2 階に上がりました……着々と屍人を増やしています……私たちのいる 4 階に来るまでに 01 ちゃんの後継機が到着しなければどうするのです?」
モニターをチェックしてた周防が言った。
「周防君、その場合は私があの敵を食い止める。壁山君と 01 と三人で見えない壁の支点を破壊して脱出、ジェットパックで都メタルに向かいなさい」
谷川は監視モニターの映像をゴーグルデバイスに表示させて校内の様子を見ていく。
「上空に宅配ドローンを確認した」
宅配ドローンが運んでいるのは人一人が入れる大きめのアタッシュケース。
「降りてくる…… 01 、私と一緒に荷物を取りに行くぞ」「はい先生」
一方通行の境界を通り抜けてドローンは屋上に着地。谷川は認証番号をドローン見せアタッシュケースを受け取った。ムカデ触手アームでアタッシュケースを持ち上げる。
「重量は 60kg か……思ってたよりも随分と軽い」
「先生、敵がこちらの動きに気付いたようです。階段に向かってます直接屋上に来ると思われます」
「急ぐぞ 01 、資料室直通のエレベーターは閉じてしまえば壁と見分けがつかない」
エレベーターに駆け込み扉を閉める谷川、 01 。その数秒後に青鈍らが屋上に到着した。
「ケケー!どこに隠れた?かくれんぼか?まぁいい、どうせこの学校からは逃げられん」
資料室に戻る谷川と 01 、アタッシュケースを開ける。透き通るような白い肌、豪華な白ドレスを着せられた少女型アンドロイドが膝を抱えて収納されていた。
続く
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