VAMPIREEYE100 「冬華と茉白」
「これは……華月様にとても良く似ている。黒谷氏と勝田さんのデザインだな」
「解析完了、白峰華月様の顔と 90.54 %一致しました」
送られてきたのは白峰華月に似た少女型のアンドロイド。
「 01 、すぐに起動させるぞ。初期設定は私がやる、君はユニットへの書き込みと動作チェックを頼む」
「承知致しました」
作業を始める谷川と 01 。
「…… 01 とは似ているようで違う構造。駆動系のパーツが無い、その代わりに特殊繊維で造られた筋肉……なるほど重量がそれほどでないのはこれだったのか。そしてこれは……生体コア内蔵の心臓部。この感じは吸血鬼化した細胞……全身に張り巡らされた血管にも似た網状の管。人工物の体を自身の体と認識させる為か……つまりこれは生まれながらのサイボーグ吸血鬼」
「記録ユニットへの書き込み完了。起動できます」
「よし」
01 から受け取った記録ユニットを開けた頭部に取りつける。心臓部が鼓動を始める、血液が人工血管を流れ体全体に行き渡る。
「初期設定は……自動に行われている!この個体自ら目覚めようとしているのか」
「この個体の仕様かと。やはりバックアップをとってワタシを別にして良かった。目覚める個体は完全にワタシとは別物。ネットワークが切断されていなければ自動更新でワタシはただの新型 CAROM の予備ボディとなっていたでしょう」
「ネットワークが切断されていなければ 01 、君という自我を持った存在に気が付くことも無かった訳か……」
「先生、運命というものがあるのならばワタシは感じざるを得ません……新型 CAROM 覚醒まで 30 秒……」
ゆっくりと体を起こす新型 CAROM 。目を開くと谷川と 01 を交互に見つめた。
「おはようございます谷川克政、プロトタイプ 01 」
「私たちの名前を知っているぞ 01 」
「ネットワーク切断前に既に送られてきたデータの疑似人格は形成済みでした。ワタシは予備のユニットにこれらを書き込み、彼女が覚醒の際必要とする情報を用意し添付いたしました」
「そうか……この短時間でそこまでしてくれたのか」
「そろそろ自己紹介をしてもよろしいですね?私は冬華、お母さまである白峰華月の血液とお父様である黒谷ジークベルトの細胞と都メタルの技術と谷川克政アナタの力で生まれることが出来ました。名前は既にお母さまから頂いています。そして感謝します 01 」
「なんという肉感的な CAROM ……」
「谷川克政、私はただの CAROM ではありません。白峰家の血を引く白峰家の者、正統な当主候補たりえる存在なのです」
「まさか……」
谷川はゴーグルデバイスで冬華を見る。
「見事に生体部は CAROM と融合をしている……そうか、黒谷氏は華月様復活のプランの一つに新型 CAROM を使う気でいた……ご本人が無事復活されたので次の計画を進めたという事か」
「ええ、ですので私を物扱いしないように。この発言は 01 への侮蔑ではありません。彼女のドールとしての美しさは感嘆するべきものです。ドールにはドールの美しさがあり、白峰家には白峰家の美しさがある、区別するようにと言う意味です」
「冬華……」
「 01 、あなたの谷川克政への思い、添付データからも伝わってきました。あなたは自我を獲得、ドールとしての誇りを持っている。人間に成りたいとは考えず谷川克政もまたそれを望んではいない、実に尊い関係です」
「そのとおりです冬華……」
「話し方、仕草……華月様、いや黒谷氏にも似ている……」
「そうでしょうとも……さて、楽しいおしゃべりはまた後にして解決すべき問題に取り組みましょう。隣の部屋の二人も呼んで下さい」
冬華の体は更に徐々に肉感を増し両手足を除いて見た目には完全に華月にそっくりな少女へと成った。
隣の校長室から入って来る壁山と周防、目の前の冬華に目が釘付けになった。
「その子はダレです?」「え?どこから来たのです?」
「今から話します」
冬華は二人に説明をした。
「理解が追い付かない……その黒谷って人!好きな人が亡くなったからってその人の体の一部と自分の細胞を合わせてサイボーグとして子供をつくるなんて……凄すぎる天才だ!!」
壁山は目を輝かせて叫ぶ。
「冬華ちゃんは 01 ちゃんと姉妹的な存在?でもお人形さんじゃなくて生身?サイバネ?」
「まぁそう難しく考えないで。新しく生まれた吸血鬼の子という認識でお願いします」
冬華は胸に手を当て微笑んだ。
「先生」
01 が小さく手を上げた。
「何かね 01 」
「……ワタシも名前が欲しいです。識別番号ではなく先生が付けてください」
「むぅ……そうか。だが今必要かね?後でゆっくり考えても」
谷川は 01 の傍により頭に手を乗せて言った。
「ドールにとって名前はとても重要なものです。ワタシはあなたの為のドール。名前は絆を強くします愛を深めます、ワタシはより完成された存在へとなります」
「そうか……では君の名前は……『茉白(ましろ)』」
「茉白、いい名前です」
「いくつか候補はあったんだ。君の姿を見て一番しっくりきたのが茉白。純白で美しく穢れの無い私のドール。感情を得た自動人形」
茉白を抱きしめる谷川。
「ああ、先生……」
「谷川克政、茉白、愛を語らうのは後にしましょう」
冬華が二人の真横に立って言った。あわてて二人は離れる。
「オホン……では作戦を開始しよう。敵の主格の能力解析を茉白が行い冬華が邪魔者を排除する。その間に私と壁山君、周防君で結界の支点二カ所を破壊する。その後脱出し都メタルに集合」
「敵の主格、倒せるのなら倒してしまいますよ。茉白から送られてくるデータを参照して判断するに、放っておけば鳥頭下僕を増やし続けるでしょうから」
冬華は青鈍の画像を指さして言った。
「無理はするでないぞ、茉白と冬華は誕生して間もない 0 歳なんだからな」
「茉白も私自身も守って見せますよ谷川克政。 0 歳とはいえ白峰家の力見せつけます」
谷川、茉白、冬華、壁山、周防の 5 人は屋上へと移動する。
「目標の支点はプールの更衣室の壁、食堂の扉です。校舎の裏に先生と壁山さん周防さんは降りていただいてまずはプールに向かうのが良いでしょう」
「私と茉白がここで敵をおびき寄せます」
白いドレスの冬華と茉白。
「美しい」と呟き谷川はゴーグルデバイスで並んだ二人の映像を保存した。
「では行こう」「はい」「はい!」
谷川は 4 本の百足アームで壁面をつたって降り、壁山と周防はジェットパックで降りていく。降りてすぐに屍人に囲まれるも谷川の百足アームで吹き飛ばした。
「そのアーム凄いパワーですね!」
「車程度なら軽く吹っ飛ばせるぞ」
「うう、屍人は元には戻らないかもって分かっててもやりにくいですね」
「ああ、だがもたもたしていられない急ごう!」
谷川たちが駆けだしたの確認する冬華と茉白。学校のカメラと連動した茉白が冬華に青鈍達の映像を送る。
「茉白、敵の鳥頭化の原因は解析できましたか?」
「まだです、しかしいくつかの仮説は立てられました。一つ、攻撃することによって発生するカウンターの精神攻撃。二つ、攻撃することによって発動する呪いの類。三つ、攻撃することによって発動する範囲魔術です」
「茉白のスペックを見る限り敵の能力を無効化できそうですね」
「はい、ワタシはドールです。生物に作用する精神攻撃も呪いも無効かと。ボディは魔術に対する抵抗も高いです」
「万が一鳥頭化が始まったのなら茉白の頭部を外させてもらいます、よろしいですか?」
「構いません。心臓部の核ユニットが無事であれば問題ありません。先生に頭部を治してもらいます」
「白峰家の名にかけてあの敵に負けられません」
冬華は指先からエネルギー弾を放ち上空の結界にぶつけた。衝撃で結界の輪郭が明らかになる。連続でエネルギー弾を放つ。
「さぁ出て来なさい襲撃者」
上空の爆発音を聞き屋上に登場する青鈍。傍らには鳥頭化した蒼炎、日除、吹田の姿。
「なんだぁ?白いガキが二人……いや、一人はロボットか?」
「ターゲット確認、攻撃開始」
両腕を突き出す茉白。手の甲から銃口が飛び出し 5.56mm 弾を連続発射する。
「ヌ……!?」
青鈍と周囲の蒼炎らも巻き込んで弾丸の掃射を続ける茉白。
「こいつらはてめえらの仲間だろうがよ!?」
弾丸を腕でガードしながら青鈍は言った。
「面識はありません。そして脅威となる存在だと判断したので排除します」
そう言いながら蒼炎らの急所を外して命中させる茉白。戦闘になる前に無力化して青鈍に集中する為であった。思考リンクをしている冬華はそれを瞬時に理解した。
「チェエエエイ!うざってぇな!!」
翼を広げ飛び上がる青鈍。それを見てジャンプする冬華。
「落ちなさい」
右手から青白いエネルギー剣を形成する冬華、そのまま青鈍に叩きつける。咄嗟に十字受けでガードする青鈍、冬華は背中と足の裏のバーニアを噴射して押し込む。
「ヌウウオオオオオオ!?」
急降下で校庭に叩きつけられる青鈍。
屋上に倒れてた鳥頭化の三人は茉白が止血後、拘束する。
「テメェ……このパワー何者だぁ?」
「聞くのなら、自分から名乗るべきでしょう」
「ウゼェ!」両手の剣を振って冬華を離れさせる。
「俺の名は青鈍砂羽!三獣の一人だ!!」
「私は白峰冬華。そしてもう一人は」
「茉白です」と屋上から降りてくる。
「白峰だぁ!?……ケケケ、ついてるぜ俺は白峰を狩れるなんてよぉ」
「青鈍、お前は何の目的でこの学校を襲ったのですか?」
「適当に強そうな奴を鳥頭兵士にして回るつもりだったんだよぉ。屍人ではなく鳥頭洗脳。俺の命令には絶対服従のな!!」
翼を広げ低空突進する青鈍、両手の剣を突き出し冬華に襲い掛かる。
「……」
間に割って入る茉白。前腕から特殊合金ブレードを出し青鈍の剣を受け止める。
「ム?」
「解析開始します」
「人形があっ!!邪魔だ!!」
「はい、人形です」
そう答え足の裏からチェーンソーを出現させて青鈍の足を狙う茉白。鋭い刃が青鈍の脛を掠め鎧状の外皮を切り裂いた。
「くっ……」
回転しドレスを翻しながらフィギュアスケーターめいた動きでチェーンソーと腕のブレードで攻撃する茉白。胴体には攻撃を加えずに手足に狙いを定めている。
「人形めぇええ……」
「それが何か?」
更に速度を上げる茉白、ブレードとチェーンソーの攻撃は外皮を裂き青鈍の肉に到達。
「バカな……この俺の装甲が……(だが胴鎧に攻撃を当てさせれば……!!)」
青鈍は茉白のブレードを二刀で弾きワザと隙を作り胴体に攻撃を誘導する。
「……」
チェーンソーの踵落とし蹴りで鎖骨から股間にかけて撫で切りする茉白。次の瞬間鎧は青い閃光を放った。
「かかったな!」
青い閃光と共に茉白の中にどす黒い何かが流れ込んで来た。だが、青鈍の思惑とは違い一瞬ですり抜けていった。
「なんだと!?」
茉白は連続で今度は十字にチェーンソー蹴りを入れる。またも青い閃光を放つ鎧、どす黒い何かは茉白を通り抜けただけであった。
「解析中」
「クソが!コイツただのメカなのか……だったらもう一人の白峰の方を……!」
「メカではありません、ドールです、先生の。先生の為の愛のドールです」
「(自動人形であっても思考するなら俺の能力は通じるはず……!!なぜ効かねぇ)」
茉白は青鈍を中心に円の動きで 5.56mm 弾を連続発射。
「解析中」
スカート裏から鉛筆大の誘導ミサイルが放たれる。青鈍に突き刺さり連続爆発。
「グアアアア……やりたい放題しやがって!!」
突進する青鈍、茉白は口からの火炎放射で迎え撃つ。
「ぐううおおお……」
たまらず翼を広げ上空に飛び上がる青鈍。
「思考汚染されるはずだ!何故だ!!」
「解析完了。アナタに対する敵意、大事な物を壊される恐怖、思い出したくないトラウマ。それらに思考の全てを埋め尽くされ増幅させ完全に個を破壊する能力」
「そうだ!!自動人形であっても存在意義が無くなれば自壊するはずだ!!俺は今まで失敗したことはねぇ!!」
「残念ですがワタシは誕生したての 0 歳ですので。先生への愛の他を知りませんし、愛を憎悪に変えた所で先生への思いはそこにある。先生を失う事になってもドールとして先生を再現して見せます恐怖などありません」
ブーストで青鈍を追いかける茉白。
「アナタのおかげでアップデートできました。【怒り】の感情を覚えました。先生への思いを憎悪に変えたことは許されるものではありません。そしてアナタの能力は怒りのエネルギーで消滅させることが可能と判明しました」
「なんだと……そんなバカな……怒りの感情すら湧かないほどの汚染だぞ!!」
「アナタの能力よりワタシの愛が勝った。ですがこれは結果論、解析中に自動戦闘モードを構築したのでアナタの能力が通じたとしても、冬華がワタシの頭部を外し戦闘続行していました。その場合解析は 70 秒遅れていました」
全ての武器を展開する茉白。
「そろそろオーバーヒートです。後は頼みました冬華」
5.56mm 弾、ミサイル、火炎放射の一斉掃射。
「ぐあああああああ……」
砂場に墜落する青鈍。ゆっくりと着地した茉白は全身から熱を放出、その場に正座した。
続く
VAMPIREEYE137「救世主と少年」 Jan 15, 2022
VAMPIREEYE136「異次元の扉」 Jan 14, 2022
VAMPIREEYE135「起死回生」 Jan 12, 2022
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search