VAMPIREEYE101 「冬華と茉白2」
「選手交代ね。ありがとう茉白、後は任せなさい」
「フン……人形はオーバーヒートか。だが俺の能力が解った所でお前には何もできまい!」
「できますとも。能力を理解した今、一撃でお前を粉砕するか頭部を破壊すればいいだけの事。両手両足翼を捥いで最後に首を取って上げましょうか」
「舐めるなぁ!!」
翼から矢のような羽を大量射出する青鈍。
冬華は左手を前に突き出し黒い渦を作り出した。そこに矢羽は全て吸い込まれる。
「その能力、自分自身には効くのかしら?」
青鈍の頭上に黒い渦が発生、そこから吸い込まれた矢羽が飛び出し青鈍に降り注いだ。
「ゲエエエエエエエ……」
のたうち回る青鈍、青い光を放った後、胴鎧は崩壊した。
「能力の消滅を確認しました」茉白がつぶやく。
「なるほど、奴自身の武器でも解除出来ると」
「見事です冬華……田村蒼炎、日除静哉、吹田麻莉の鳥頭は元に戻ったことを屋上のカメラを確認」
「成功ね」
「やってくれたなぁ……だが解除できたとしても壊れた精神まではどうかな?鳥頭化した連中は廃人だろうな」
ゆっくりと立ち上がる青鈍。
「能力を失い解析されお前に勝ち目は無い、そうやって無駄口を叩くだけ」
「舐めるなよ……鎧を外した俺のスピードを!!」
翼を広げジグザグ飛行でフェイントを入れながら猛然と接近する青鈍。冬華はバーニアで距離を取りながら指先のエネルギー弾を発射。二刀でガードする青鈍。急上昇から急降下で冬華の頭を狙う。冬華は瞬間的に反応して真上にエネルギー弾を放った。
「グゲエエエ……」
青鈍の腹を貫通するエネルギー弾。
「スピード自慢?残念だけど普通に捉えられるけど?」
「舐め腐りやがって舐め腐りやがってええええ!!」
青鈍の全身が青灰色に薄く光り始める。
「リミッター解除!!三獣最速のスカイグレイパワーの力!!思い知れ!!」
加速でソニックブームを発生させながら急旋回、冬華に突進斬りを仕掛ける。冬華は右手に出現させた青白い剣で弾く。青鈍はそのまますれ違い、急旋回再び斬撃を仕掛ける。
高速突進斬撃を 6 合交える、しかし 7 合目は剣が交わる事はなく青鈍の手から二刀は離れで飛んで行った。
「俺の……指が……!!」
7 合目の際、冬華は青白い剣を左手にも出現させ右手で弾きながら左手で反撃、青鈍の指を切り落とした。
「速さだけの単調な攻撃は私には通じない」
冬華はエネルギー弾で青鈍の翼を狙い撃つ。高速飛行する青鈍はバランスを崩し錐もみ回転で校舎の壁に激突した。
「グゲッ」
「終わりよ」
黒い渦を複数、自分の周囲に出現させる。そこから青白い剣が刃先を覗かせている。片手を前に突き出し一斉発射の構えを取る冬華。
「これで終わったと思うなよおおおおおー!!」
力を振り絞り青鈍は流星めいてその場から飛び去る。その際結界が消えたのを確認した。
「深追いは止めておきましょうか」
黒い渦を解除した冬華は正座で待機する茉白の前に着地した。
「茉白、動けますか?」「クールダウン完了、動けます」
青鈍が去った方向を見つめる冬華と茉白。
「三獣と言ってましたね。あの敵のような者があと二人いると考えられます」
「お父様お母様に報告ですね。茉白、予定通り全員で都メタルに行きましょう」
「はい、先生たちと合流しましょう」
―夜
白峰邸
白峰家で寝かされているのは橡(つるばみ)の呪を受けた吹雪と恭一。そして横で治療を受けて座っているのは皀(くり)と源藤高雅との戦闘で消耗した霄と吉良、蓮也であった。
二郎は須原と二人で部屋の外で警戒している。
「吹雪ちゃんと恭一君はまだ起き上がれないけど……他の皆は私の秘薬飲んで休めばすぐに回復しますよ」
水元来海はとろみの付いた透明な薬湯を配る。
「それよりも驚いたのが……」
水元達の後ろには棺桶型生命維持装置に入れられている源藤高雅。
「あの源藤高雅を倒してアスカロンまで手に入れるなんて!」
「運が味方しました、敵が最初から全力を出していたのなら殺されていたかもしれません」
吉良は苦笑いで答える。
「それで、蓮也君、佐久間さんて人は源藤高雅をどこに連れていくと?」
「黒谷ジークベルトという人の所へ運ぶと」
「あの胡散臭い男の所~?あの男どこで何してるんだか、先代が居なくなってから顔も見せやしないし……そういえば霞ちゃんの姿、夕ご飯の後から見ないけどどこ行ったか誰か知ってる?」
「さっき慌てて走っていったな」と霄。
「友達の様子を見に行くとか。吹雪様と恭一君の姿を見て何か思う所があったようです」
吉良は携帯のメッセージを皆に見せて言った。
「う~ん……霞ちゃんだし大丈夫だと思うけど念のため誰か行ってあげて」
「俺が行コウ」
須原が言った。
「須原君ヨロシクね!アスカロンも一緒に。重いから多分この中じゃ君くらいしか扱えないし」
「ワカッタ」
布に撒かれた大剣アスカロンを持ち上げる須原。そのまま廊下を歩いて車を出しに行く。
「あの……水元さん」
二郎が声をかける。
「なんだい?二郎君」
「このお屋敷ではなくて……他に吹雪さんたちを移せる場所は無いのですか?」
「ん?ここじゃ不安かい?一応特級クラスの妖も通さない結界張ってあるけど」
「妖ではないものなら……結界を突破されるかもしれません」
二郎は妙な感覚のあった橡や青鈍ら灰色の軍勢の事を思い出していた。
「ふ~む……まぁそうか、戦闘ロボとか戦車とか物理で押し切られる可能性もなきにしもあらず。吹雪ちゃんと恭一君に呪をかけた灰色の敵は妖とも限らないし、連中はどうにもよく分からない存在だしね。他に安全な所となると……あそこかな」
「どこです?」
「都メタルのビル」
***
二郎たちは全員で都メタルの地下シェルターに移ることになった。華月派の中に都メタルの社長・ 木戸剛照 と研究員の勝田波留夫が居たことが幸いした。
都メタルの地下にある一室がシェルターの入り口になっている。勝田の案内で電子ロックを開け廊下を進むと現れたのは頑強な1メートル以上もある厚さの金属扉。扉の前に立つとスキャンが行われる。その後ゆっくりと金属音を響かせながら開かれた。
「みなさんお待ちしておりました」
黒のタキシードに身を包み金髪の前髪を垂らした吸血鬼、黒谷ジークベルトがシェルターの中から現れた。
「黒谷!アンタ今までどこに!!」
水元が叫ぶ。
「積もる話は後にしましょう、まずは落ち着きましょう源藤高雅の生命維持棺を奥の部屋に、吹雪様と友人は右の治療部屋に、他の皆さんは好きな部屋に入って下さい」
笑顔で案内する黒谷。
―1時間後中央のラウンジに集められた11名。
二郎、蓮也、霄、吉良、水元、勝田、木戸、佐久間、河上、谷川、茉白。
「エクレシア(教会)や妖怪連合との決戦が激化した時に備えてここをいつでも使えるように木戸さんと勝田さんには話を通しておいたのです。まさかきっかけが正体不明の灰色の軍勢が相手とは」
手を広げ笑顔で言う黒谷。
「で、今までどうしてたのよ黒谷。雪名様が大変な時にも顔も見せないで今更……」
水元が睨みつける。
「こちらも色々とありましてね。その甲斐あって私の悲願は達成いたしました!」
「は?」
横の部屋から黒い和風ドレスの華月が現れた。
「ん?えっと……その子は??」
「おやおやおや、水元さんこのお方の姿を見て瞬時に理解できないとは……残念過ぎます」
「ん~?霄ちゃんによく似てるけど先代っぽくもあるし……」
「華月様です」
「え、嘘……………………そ、そうなんだ……なんで?」
「流石賢い貴女、現実逃避しない否定しない話が早い。華月様は完全に亡くなられてはいなかったのです。私が復活させて差し上げたのです!!」
「え~~~~~~~~~~~~~~~~~…………」
水元は華月に近づいてじっと見つめる。
「う~ん確かにこの魔力は先代。こんな小さな先代見るの初めてですよ、カワイイ」
「久しぶりだな水元」
「あ、はいお久しぶりです。うわぁ……可愛いけど先代っぽい怖さ当時のまんまだ……てか驚いてるの私だけ?皆知ってたの??」
「話には聞いてました」と吉良。
「吹雪さんと恭一はまだ知らないよ」と二郎。
「霄ちゃん!知ってたの!?」
「すまない、時期を見て話そうかと。エクレシアの事もあるのでな」
「ええええ~~~~~~~~~~~ああでもそっか、なるほど。黒谷が仲間集めて先代と色々やってた訳か~~~~~ああ~それで今ここに皆いるんだね~納得……」
「水元、お前は頭が良くて助かる。我よりも雪名に懐いておったがな」
「……それはだってあの頃の先代はバリバリの武闘派で怖かったし、雪名様は超エロボディ儚げ美少女だったし、しょうがないでしょう~」
「ふふ……水元、お前は今でも雪名に付くか?」
「えっと…………華月様次第ですかね?復活されたって事は当主の力を雪名様から奪い返すって事でしょう?それは穏便には済まない事ですしねぇー?」
「奴は当主にふさわしくない、だから返させる。ゆくゆくは霄たちに譲るつもりでいる」
「やっぱりそうなりますか~~~~私は雪名様大好きなんですよねぇー……先代も可愛いんですけど怖いし……勝田がそっち側ってのは大体察せますよ先代とかドンピシャの好みでしょうし霄ちゃんもストライク。私は雪名様とか吹雪ちゃん派なんですよねぇ……吹雪ちゃんを当主にしませんか?いっそのこと霞ちゃんにするとか?そういえば先々代って霞ちゃんに似てるかも?」
「雪名に当主の座を降りてもらう事は決定している。だが次の候補に霄を推しているのは今現在の話だ。吹雪にするか霞にするか……また別の子にするかは解らん。それでどうする水元?」
「う~~~~~~ん……それでも私は雪名様派ですかね。先代に敵対するって意味じゃあないですよ、心からお仕えして満足感を得られるのは雪名様なんですよ。雪名様が当主から外され白峰家から出ていくことになっても私はついて行きますよ」
「解った水元、それならそれでいい。我の邪魔さえしなければな」
じっと水元の目を見つめる華月。
「はい、ありがとうございます。白峰家の為に頑張りますよ私は!(そういうところなんですよね先代は……怖)」
華月は笑顔で水元を数秒眺め黒谷に連れられ部屋に戻っていった。
「……水元、よく華月様を前にしてそこまで自分の意見を言えたな」
吉良がつぶやいた。
「あ~……なんか子供みたいにちっちゃかったしね。ちょっと前の霄ちゃんくらいの見た目だしかな?後はほんのちょっと生きてるはずがない……とか考えてたし」
「お前は華月様に直接仕えた事ないんだったな」
「まーねー……お母さんに付いてって何回か会った程度だったし。吉良だって華月様に直接仕えてた訳じゃないでしょ?」
「私は白峰家に仕えているのだ。華月様、雪名様、どちらが当主でも私の忠誠心は変わらない」
「そうなの?私は吹雪ちゃん、須原は霞ちゃん、吉良は霄ちゃんだと思ってるんだけど?」
「思うのは勝手だ。それはお前の感想に過ぎない」
「結局はなるようにしかならないんだよね~誰が次の当主かなんて仕える者が選ぶ訳じゃあないし」
「当主になれなかったお嬢様らの事も考えておかねばな」
「あ~そっか……当主外れたら分家に入ることになるんだよね。そのうち普通の人間になって……寿命を迎えるんだね」
「白峰家の歴史上当主問題は無かったわけではない。双子や三つ子の時代もあったと聞く」
「ねー、そういや黒谷の家って分家の一つだよね?」
水元は戻ってきた黒谷に言う。
「左様です。黒谷家は白峰家の影の存在であり分家として本家から外された白峰の女性を受け入れてきました。かつて存在した黒谷衆と呼ばれる隠密の精鋭とお守りしていました」
「黒谷衆……かつてって今は無くなったの?」
「私の祖父の代に居た隠密衆の長が離反。全国に散らばりその後ブラックヴァリーなどと名前を変え数を増やし裏社会で活動しているようです。私はヨーロッパで育ったのでブラックヴァリーとはなんの関わりあいもありませんがね」
黒谷はつまらなそうに肩をすくめて言った。
「ふ~ん……それよりも黒谷、あんた華月様復活のアレコレとか白峰家に仕える家の人達を勧誘して吸血鬼化とかやってる事ヤバすぎなんだけど。昔からあんたはちょっとぶっ飛んでるとこあったけど華月様が亡くなって……亡くなってなかったんだけどとにかくああなって益々ヤバくなったんじゃない?」
「考えに考え抜いた結果の行動ですよ。華月様復活後の事も考えて私は動いてるのです。もう一人紹介しましょう、私と華月様の子、冬華です」
「は?」「え??」
水元と吉良が目を見開いて言った。
「どうも、ご紹介に預かりました白峰冬華です」
白いドレスに身を包んだ両手足が金属の華月に似た少女が扉を開けて登場した。
「……その子、何者??」「理解が追い付きませんね」
「ですから、私と、華月様の子。白峰冬華ですよ」
「いやいやいやいや、無理っしょ!だってあんた今吸血鬼でしょう?それに華月様ずっと死んでたんだからそんなこと不可能だって!!」
「どんな魔法つかったの……というか勝田驚いて無いしあんたも関わってんでしょう!」
ノートパソコンを触っている勝田を睨みつける水元。
「ウェヒヒ……まぁそういうことですな水元くん」
続く
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