VAMPIREEYE102 「白峰邸炎上」
水元は笑顔の勝田と黒谷の顔を見て眉間に皺を寄せて言う。
「え?どういうことクローン?でもクローン育てられる機材とか専門知識もってる者ここにはいないでしょ?いくら黒谷が魔術得意だとしてもホムンクルスとはまた違うし……まぁいいわ詳しい話は勝田に聞きましょう!そんなことが出来るなら雪名様と私の子も作れるか気になるじゃあないですか!!同性でも可能なんでしょう??」
「冬華はサイボーグです……私は人間であったころの細胞などを保存して培養していたので成功した。同性はともかく貴女は元々マーマンでしょう、白峰家は人間との間しか産めない事は存じているはず」
「あああ~やっぱりそうか~……ああちくしょう人間がこんなに羨ましいなんて」
水元は冬華の周りを歩きながら観察して言った。
「触っていいかしら?冬華ちゃん」
「……どうぞ」
抱きしめる水元。
「あ~……この感じ白峰家の子だわ……間違いない冬華ちゃんマジ白峰家」
「それはどうも」
「吉良伝左衛門です。冬華さま」
吉良は冬華の前で一礼し膝をついて手を取る。
「吉良は私が機械の体との混ざり物というのは気にならないのですか?」
「気になりません貴女は間違いなく白峰家のお方。魔力の匂いで分かります。雪名様の妹君としてお仕えさせていただきます」
「そうですか」
少し戸惑いの表情を見せる冬華。離れた場所に座っている霄を見つけそちらに向かう。
「ごきげんよう、霄」
「ごきげんよう……冬華……さん」
ぎこちない笑顔で答える霄。冬華は霄の隣に腰を下ろす。
「突如現れた 0 歳の叔母に戸惑うのも無理はないわね」
「そう……ですね。でも貴女が白峰家の者というのは感じます」
「私が当主に選ばれても貴女は不服は無い?」
冬華は顔を近づけて言う。
「お母さんをエクレシアから解放して自由に出来るのなら冬華さんが当主でも構わない。ですが、その次の当主は私がならせていただきます」
「……いいですね、霄。とてもいいです、お母さまが気に入る訳です。私が当主になり、その次の候補を選ぶ時が来たら霄を選ぶでしょう」
「冬華さん、もし先代がお母さんを始末しようとしたら止めてくれますか?お母さんが先代を裏切って滅っしようとしたことは事実です。先代はきっとお母さんを許さない」
霄は涙を浮かべて言う。
「お母さまを止める事などできませんが、恩情をかけるように訴えかけます。雪名もやりたくてやったわけではないのですから。全ては娘の霄、吹雪、霞、そして夫の蔵人の為。お母さまも雪名を始末すれば白峰家にどのような影響を及ぼすかご存じのはず」
冬華は取り出したハンカチでそっと霄の目元を拭った。
「お母さんが先代を滅したことで事で関係する者達は大きな影響を受けたと聞きました」
「ええ、ですからお母さまもそのような事されないと思うわ。私たちが倒すべき敵はエクレシアの陰陽師・葛野忍に大天狗・長門顕彰。そして灰色の軍勢。身内で争っていてはいけないのです」
「そうですね……バラバラではいけない。一丸となって敵を討たねば」
「霄、その為に仲間たちと交流して絆を深めましょう。あそこ、谷川克政の隣に座っているのは私の最初の親友であり異姉妹の茉白」
冬華が手を振ると茉白も手を振った。
「彼女は特殊な出生なのですよ、ボディは私と同じパーツを半分程度使っている姉妹的存在です。戦闘型アンドロイドの彼女はシンギュラリティに達し谷川克政の愛する自動人形として自我を持ったのです。見た目通りの綺麗で純粋な存在です」
「始めまして霄、私は茉白、谷川先生の愛のドール(人形)です」
茉白は霄と冬華の前に席を移動する。
「始めまして」
「霄、貴女に愛する人はいますか?」
「……いきなり何を」
「失礼、気になったものですから」
「家族を大切に思っています……」
「家族愛、それもまた素晴らしい愛です」
「それはどうも……」
「霄、貴女の日常のお話を聞かせて?生まれたばかりのワタシと冬華は知りたいのです」
「いいですね、是非ともお願いしたいわ霄」
二郎は蓮也、吉良、佐久間、河上、勝田、木戸と話をしていた。
「……大体の事は解りました」
二郎は机の前に広げた新聞社社主・河上の資料に付箋を張り付けて言った。
「灰色の軍勢と源藤高雅は繋がりがあり、エクレシア(教会)と灰色の軍勢は組んでいる」
「妖怪連合は……灰色の軍勢との繋がりは無いかな。彼らも灰色の軍勢に襲われている」
河上は煙の出ない電子タバコを口にして言った。
「灰色の大将と呼ばれる者、そして三獣と名乗る三名。こいつらが灰色の軍勢の中心メンバー。サイバネを雇ったりその辺の闇の住人を使ったりしてるが」
タクシー会社社長(元軍人)の佐久間は四人の名前を書いたカードを資料の上に置く。
「橡全吉、皀八太、青鈍砂羽、そして敵大将」
「皆の証言を元にこいつらの能力と対策を考えよう。まずは橡全吉」
河上は橡のカードを中心に移動させる。
「呪いを相手にかける能力を持つ。方法は恐らく両手の爪だ。力が強くタフだ。接近戦を挑めば勝ち目はない。対処法は中遠距離で徹底して戦う事」
「吹雪さんと恭一はコイツにやられました……」
二郎は左手で義手を握りしめながら言った。
「次は皀八太」
河上は皀のカードを指す。
「魔力攻撃を吸収し見えない攻撃を仕掛けてくる。奴の攻撃範囲は広くない、射程入らなければ受けないがこちらも攻撃もできない。物理攻撃が得意で素早い者がヒットアンドアウェイすれば良い」
佐久間が言った。
「魔力吸収の為に京都中の妖を襲っている可能性もある、放っておけば一番厄介な存在になるかもしれない」
蓮也が言った。
「次は青鈍砂羽。こいつは精神攻撃を仕掛けてくる面倒な奴だ。だが胴体の鎧に攻撃を当てなければ問題ない。むしろ高速斬撃と空中戦に対処できるかが重要だね」
「なるほど……」
二郎が頷いた。
「では暫定的にチームメンバーを決めようか」
勝田はタブレットを取り出す。
「まずは……碁盤の目町侵入チーム。これは僕と水元、二郎君。吹雪ちゃんと恭一君は今作戦に参加できる状態じゃないから後二名必要」
二郎が頷く。
「次に橡討伐チーム。霄ちゃん、茉白ちゃん、谷川さんかな」
勝田はマグネットを置く。
「待ってください、霄お嬢様はアスカロンでつけられた傷の治りが遅いので待機で」
吉良が言った。
「では霄ちゃんは外して……霞ちゃんで」
勝田はマグネットを移動させる。
「皀八太討伐チームは……木戸さん、須原さん、蓮也君かな?」
マグネットを置く。異論を唱える者は居ない。
「青鈍討伐チームは冬華ちゃん佐久間さん、斎藤さんで」
マグネットを置く。
「大体こんなものかな、問題は碁盤の目町侵入チームだよ」
「あの勝田さんそれなら心当たりが……二人ほど」
二郎が言った。
「二ノ丸明珠香って知り合いの子どうかなって。 HKF 凄く上手だったしそれに化け猫相手にも互角以上に戦ってたんです」
「ほう……興味深いね。明日にでも紹介してよ、もう一人は?」
「直接の知り合いじゃあないんですけど HKF で何回か対戦してアバターカード交換したネットの知り合いなんですが…… HKF はめちゃくちゃ上手いんですよ。名前は TOYA 」
「う~~~~~~~~~ん……ゲームがうまいだけの一般人かぁ、まぁ何のしがらみも無いという点ではアリっちゃあアリだね」
「 HKF なら僕もそこそこやるよ?」
河上がアバターカードを見せて言った。
「そうだったねぇ……じゃあ河上さんはメンバーが集まらなかったら参加と言う形にしようか。自由に動けて情報を集められる新聞社社主の河上さんと警察署長の近藤さんはできるだけ固定メンバーに入れたくないんだけどね」
勝田は【フリー】と書かれた紙の上に河上、近藤のマグネットを置く。
「黒谷さんと沖田さんはかづたん……華月さまの傍に置いておきたいし、吹雪ちゃんと恭一君の経過と源藤高雅を見張るために吉良さんと霄ちゃんは残って欲しい」
シェルターと書かれた紙の上に黒谷と沖田と吉良と霄のマグネットを置く。
「僕と水元は都メタルのスタッフチームを支える。やることが多すぎてあたふたしてるけどね。せめてあと一人魔術か電子系に詳しい者が居ればなぁ……」
勝田はジーニアスレイジのメンバーを頭に思い浮かべた。
そこにニコニコと笑顔を浮かべた黒谷が近づいてきた。
「作戦会議進んでますねぇ……なるほどなるほど、この配置流石です皆さん。私も動きますよ、ええ動かさせて頂きますとも。エクレシアの動きには目を光らせて置きましょう。葛野忍や長門顕彰が動きを見せればすぐに皆さんに知らせましょう。そして連合との話し合いの場も設けて見せましょう」
「黒谷さんは暗躍得意ですしな」
勝田が言った。
「ええ、隠密の家柄の性ですかね。ともかくお任せあれ」
「黒谷さんは灰色の軍勢とエクレシアはすぐに動くと思いますか?」
「……すぐには大きな動きはないかと。敵の三獣とやらにもダメージを与えましたし、こちらは源藤高雅を捕らえる事に成功しました。向こうも体勢を建て直している最中でしょう。それに次に動くのは恐らく連合。センジョーでの騒ぎがあったので、灰色にやられて黙ってないはずです」
「我々は少し様子見しつつ休息と準備をすると」
「そのほうがいいですね。こちらのメンバーも疲れてきて怪我人も少なくないですから。霄様、吉良さんの話によると敵側は一週間後に第一の目標、二週間後に第二の目標を立てているようですから対抗策をしっかりと練らなければ」
「そうだねぇ……一週間余裕あればだいぶ違うねぇ……念のためいつでも動けるようにはしといた方がいいけど」勝田は立ち上がる。
「悪いけどみんな仕事、学校はできるだけ休んでここのシェルターで過ごしてもらいたい。必要なものがあったり外出する時は必ず三人以上で行動する事を徹底して欲しい」
二郎、蓮也、霄、吉良、水元、佐久間、河上、木戸、冬華、茉白、谷川の 11 名はそれぞれ了承の返事をした。
「斎藤さんと近藤さん遅いねぇ……まぁ警察官は忙しいし。あと、霞ちゃんと須原さんの帰りも遅いなぁ」
勝田は携帯端末を触って言った。
「近藤さんは後 5 分ほどで到着すると思います、斎藤さんは霞さんと須原さんと合流したようですね車で北に進んでいます」
「え?黒谷さんなんでそんなすぐにわかるの?」
「佐久間さんの操る小動物の中に蝙蝠が居ましてねそれをお借りしているのです。昼間自由に行動できない私ですから起きている時はこうやって京都市内を偵察しているのです」
「そうでしたか……まぁいいです、斎藤さんらはどこに行くんでしょうかね?ちょっと電話を掛けますね」
勝田は斎藤の携帯にかける。
「どーも勝田です」
『斎藤です』
「こっちに来るのはどれくらいになりますかね?」
『申し訳ありません勝田さん、まだ何時頃行けるかはわかりません。今こちらから連絡しようとしていたところです。現在白峰霞さんと須原さん両名と、その友人のマンションに向かっています、ただ事ではないようなので私も同行させて頂いているのですよ』
「ただ事ではない?」
『例の呪(しゅ)ですよ』
「呪……ちょっとそれは引き返した方がいいのではないですか斎藤さん」
『一般人も巻き込まれているので警察官として放ってはおけません。ですが白峰霞さんと須原さんは状況を把握次第そちらに戻ってもらいます。それでは後程また連絡します』
斎藤は通話を切った。
「呪かぁ……なんだか悪い予感がするねぇ……華月派近接最強と言われる斎藤さんが一緒なら大丈夫だとは思うけど」
「私も行きましょう。昼間活動できない分、獅子奮迅の活躍をしてご覧に入れますとも」
黒谷は肘を 90 度に腹に当て、仰々しく礼をしながら言った。
「敵が正体不明の灰色であろうとエクレシア陰陽師団、天狗衆であろうともね!汚名返上名誉挽回して見せますとも!!」
「いや、黒谷さん斎藤さんらと無事に帰ってきてくれるだけで OK です。戦うのは今はちょっと止めておきませんか?」
「なんとなんと!勝田さんは慎重ですね、華月様の意見もお聞きしましょう」
聞こえていたのか奥の部屋から華月が出てくる。
「もう少し力が戻れば我が行くところだ。流石に今の我では葛野忍、長門顕彰が同時に相手となれば厳しい」
「いや、かづたんも敵の最強二人相手するの前提とかダメですよ。総大将なんですからホイホイと出陣しないでいただきたい」
華月と黒谷の発言を聞きざわめくメンバー達。その時、勝田の携帯が鳴った。
「はい、勝田です」
『大変だよ勝田君!華月様はそこにおられるかね?』
華月派警察署長・近藤は焦った様子で話す。
「はい、他の皆もいます」
『ではスピーカーモードにして聞かせて欲しい』
「はい」
勝田は警察署長である近藤の緊張する声を聞き嫌な予感がした。
『……白峰邸が炎上しています。現在消火活動中です。周辺住民の証言によりますといつも恐ろしいくらいに静かな白峰のお屋敷から巨大な火柱が上がったと。これは結界を破り中に入り、破壊活動を行った者が居るという事ではないでしょうか?』
近藤の話を聞いた二郎は動悸が激しく、汗が滝のように流れ頭痛が起きた。
「(白峰邸炎上……なんだ?頭に嫌な映像が浮かぶ!)」
二郎の頭に灰色の獣、成す術もなく蹂躙され血まみれとなる吹雪、灰色の獣に手も足も出ずに敗北する自分の映像が脳内に流れる。
その様子を二郎の義手の中の黒い人影たちは眺めている。
『白峰の家炎上!!切り抜けたのか!?前回の惨劇を!!』
『ついに前に進んだか……』
『だが未来を掴むためにはまだまだ障害は多い』
『ここまで来れたのは初めてだ。次もここまで来れるとは限らん、今回で決めてしまって欲しい』
『ああ、だがこれ以上我々に何が出来る?』
『この先は初めてだ我々には助言できない』
『出来る事ならあるはずだ。並行世界、全ての二郎と繋がるこの義手を生かすのだ』
続く
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