VAMPIREEYE110 「梅小路公園会合」
二郎は明珠香と夕方まで過ごした後別れてセンジョーを出る。
「兄貴はまだしばらくセンジョーの地下に残る……か」
二郎は兄・蓮也のことを話し自分は交通機関で都メタルのシェルターに戻る事にした。
「そういや……奥寺達入院してるんだっけか。様子見に行ってくるかな」
バスで病院に向かう二郎。降りたバス停の目の前に病院はあった。
「しまった……何号室か聞いて無かった。教えてくれるかな病院の人……」
「あれ?木城君じゃない」
声をかけたのは奥寺舞子、その横には山根妃羅莉、周防美古都、壁山颯真。
「あ、奥寺……さん」
「具合でも悪いの?」
舞子はパックのベリージュースを吸いながら言った。
「いや、別に大丈夫なんだけど。奥寺さん達が入院してるって聞いたから様子を見に……」
「ふーん……まぁ万全とはいえないけどそれなりに元気かな。妃羅莉も美古都も壁山くんもここに入院してるけど明後日には退院だし。燿子と萌絵はもうちょっとかかるかも」
「そうなんだ……」
「そっちはどうなの?大分ややこしい事になってるみたいだけど?」
「俺も全部は理解しきれてないよ……出来る事をやるだけで精一杯な感じでさ」
「ふーん……で、何やってんの?」
「白峰吹雪さんの家を助けようと思って……頑張ってるんだ」
「白峰家に関わるんだ~その口ぶりだとどっぷり足を踏み入れてる感じかな?」
「そう……かもしれない」
「そっか、どういう家か知ってそれで助けようとするなんて変人通り越してるわ」
「それでも……助けたいんだ」
「あーらら。ま、そういう木城君みたいな人達を引き付けるのも白峰家の宿命なのかも。私はわかんないけど昔っから白峰家はそういう人や妖をそばに置いてたって聞くし。エクレシアの飼い犬になるよりかはまだマシかもね」
「……」
「エクレシアは本当に邪魔。白峰家時代のほうが断然マシって妖は殆どが言ってる人間的にはエクレシアの方が都合が良いんでしょうけどね」
「連合は……白峰家と敵対してないんだよね?」
「部分的には……じゃない?旧白峰家派の妖は連合にとって扱いにくいし現白峰派の妖はエクレシア所属らしいしね」
「もし……エクレシアが撤退してまた白峰家が復活したら連合どうするのかな?」
「さぁ?私の考える事じゃないし……でも社長は考えてるはず。どう転んでもいいように……そろそろ病室に戻らなきゃ。見に来る?差し入れのアイス位なら分けてあげるけど」
「うん……」
二郎と舞子のやり取りを睨みつけるように見ていた美古都。妃羅莉と壁山は携帯でスポーツニュースをチェックしていた。
病院の大部屋に燿子、萌絵、舞子、妃羅莉、美古都。となりの部屋に壁山のベッドがあった。
「燿子と萌絵は今日の朝から一般病棟。傷はもう塞がってるから呪の毒素を出来るだけ抜く治療中かな。私と妃羅莉は昨日敵に受けたダメージがちょっと残ってる。壁山君も」
「思ったより皆元気そうでなにより……」
燿子は浴衣姿で体を起こして携帯でロックミュージックを聞き、萌絵はタンクトップ姿で胡坐をかいて電子雑誌を眺めている。
「おやおや、木城二郎君やないですの」
「あ、やぁだ~こんな恰好……舞子ちゃん男の子来るなら言ってよね~」
「あ、ども……近くに来たのでお見舞いに……」
燿子は二郎の右手に視線を移す。
「右手、なんかしはったん?」
「え?……いや別に何も。何かおかしいですかね?」
「気付いてはらへんの?この病院に漂ってる色んなもん吸い込んでように見えるんです」
「ええ~……!?」
華月にエネルギーを渡す為の癖かと二郎は考える。
「(今は集める気とか無いのに勝手に吸い取ってるのか?どうして?)」
「何やってんのよ木城君」
舞子は二郎の右腕を掴んだ。その瞬間舞子は眩暈がして膝をつく。
「だ、大丈夫!?ごめん……」
「……ちょっと!自分の右手くらい制御しなさいって……!軽く眩暈しただけなんだけど気をつけてよね」
「吸い込み……止まってますねぇ」
燿子が言った。
「え?……なんでですかね……」
二郎はセンジョーの地下で乗った特殊 HKF の疲労がすっかり消えている事に気が付いた。
「(あれ?なんか急にめちゃくちゃ耳が聞こえるし視力も良くなったし……匂いも……空気の流れも何となく感じれる)
指を広げたり伸ばしたりしていると指の先から糸が飛び出て来た。
「うわっ……糸?」
「え?」舞子が二郎の右手を見つめる。
「これ蜘蛛糸じゃない!なんで木城君が?しかもこの射出パターン私の糸と似てるし」
その二人の間に割って入ってきたのは飲み物を買って戻ってきた美古都。
「舞子さんに何かしたんですね!!眩暈起こしてるように見えましたけど!!」
右腕を掴む美古都。体の力が抜けるような感覚に襲われる。
「……っ!なんですかその右手は!危険です!!」
腰に手を回し折り畳み式の十字槍を瞬時に組み上げて構える美古都。
「ごめん、わざとじゃないんだ」
「美古都、それしまって」舞子は美古都を下がらせる。「はい……」
「本当にその右手、手袋か何かした方がいいと思う。前からそんなだったの?」
「そんな事なかったんだけど……手袋考えてみるよ」
***
―深夜・梅小路公園
大天狗・長門顕彰に烏天狗・飯田迦楼羅。
茨木童子・真柴樹里に星熊童子・星崎佳亮。
吸血鬼・黒谷ジークベルトに吸血鬼・斎藤勇雷。
三組が対峙していた。
「今のこの状況下で直に会いたいとは、驚きましたよ」
真柴樹里が言った。
「直に会わなければ信用できんと言う奴だ。社長の酒呑は来なかったようだな茨木」
長門顕彰はキセルを口にくわえて言った。
「社長はお忙しい方なので」
「ふん、用心深い男だ酒吞童子め……で、そっちの金髪が旧白峰派の代表……黒谷ジークベルトか。黒谷……黒谷は薄汚い忍の一族だな。それと警察官の吸血の鬼」
「お目にかかれて光栄です長門顕彰殿、して会うだけが目的ですか?」
張り付けたような笑顔で答える黒谷。
「とぼけおって……茨木は星熊を。お前も腕が立ちそうな警察官を連れてきてる。何かあると察してるんだろ?まあいい、あんまりじらすのも好きじゃない」
右手を上げる長門顕彰。公園の後ろの林から橡、皀、青鈍の三人が出てくる。
「何っ ! 」「あいつ等は!!」
「!!」「奴らは……!!」
「今、京都で話題の灰色の軍勢の連中だ。三人はエクレシアのエージェントとなった。その挨拶だ」
「……長門顕彰、何を言ってるか解っているのですか?」
真柴樹里は睨みつける
「あまりにも大胆……そのような事、ここの皆が納得するとでも?」
黒谷は呆れた口調で問う。
「お前たちの反応はもっとも、そうなることは想定済み。だからこの場で一度闘争で決めようじゃないか。エクレシア VS 連合&吸血鬼の団体戦、どうだ?ルールは簡単。 4 対 4 で先に3人戦闘不能になるか、この公園を覆った結界の外に出れば終了」
「勢いあまって殺してしまっても文句はでないんだろうねぇ?長門のダンナ?」
星熊童子・星崎が拳を握って指を鳴らしながら言った。
「一向にかまわん。審判は私がする。納得できなければ私が相手になるがそれで文句はないかな?」
「いいぜそれで、灰色野郎どもはぶちのめしてやりたかったんだ」
「星熊!なにを勝手に!!」
「こんなもん引けねえだろうが!」
「ああ、付け加えておくと……ここで拒否するのもありだ。残った方と同じ人数で対決する。その場合エクレシアはどうするか想像できるだろうがね?」
長門顕彰は笑みを浮かべながら一同を眺める。
「一ついいですかな?」
黒谷が手を上げる。
「そこの三人がエクレシアに入った事が全く理解できません。三人にはまとめ役のボスが居ると情報を掴んでいます。なぜ長門顕彰貴方が引き連れているのです?」
「簡単な事。こいつらのボスがエクレシアに所属している者だからだ。三人はエクレシアに入れば支援を受けられる、私が自由に動かせる。こいつらのボスよりも私の方が立場が上だからな。私は面倒が嫌いなんだ、シンプルにいきたい」
「では、この者達の上司を引き渡してもらう事は?京都混乱の元凶ですので」
「黒谷よ、そういった交渉は勝負で勝ってから言うのだな。茨木側も何か要求したいことがあれば考えておけ、酒呑がいなくてもそのくらいの判断はできるだろう?」
「……(長門顕彰食えない男。この場に来た時点で奴のペースだった)」
茨木童子・真柴樹里は唇を噛みしめる。
「黒谷、お前が担ぎ上げようとしているのは白峰家三人の小娘か?それとも碁盤の目町に軟禁されている雪名の奪還か?なぜ今になって急に動き出した、エクレシアに捻り潰されると思わなかったのか?」
「それこそ、話は勝負に勝ってからでしょう?長門顕彰殿」
「フン、それもそうだな。どうだ茨木、何か言いたいことはあるか?」
「 4 対 4 とのことですが引き分けになった場合は?」
「残った者同士の一対一の勝負となる」
「リザーバーを呼ぶことは可能ですか?」
「いいとも、私の目の前で不審な動きが無いかチェックさせてもらうがな」
茨木童子は星熊童子の携帯を手に取る。
「八瀬を呼べ星熊」
「なるほど……それでアンタがリザーバー枠ってか茨木」
頷く茨木。それを見た黒谷は斎藤に話しかける。
「こちらも一人呼びましょう斎藤さん」
「……誰がよろしいか?」
「黒谷月(華月)さまで」
「馬鹿な!正気か貴方は!!」
斎藤は思わず声を張った。
「正気ですとも。こんな集会、呼ばなかったと知ればどうなることか。それに灰色の首領を引きずり出すチャンスですよ」
「そうか……うむ……近藤さんの敵をとるチャンスと思えば」
「話はまとまったか?では誰を呼ぶ?」
キセルから吸った煙を吐く長門顕彰。
「八瀬童子」「黒谷月」
「ん~?二人とも知らんなあ。隠し玉って奴かな?良いだろう呼べ」
―数十分後
ジャージ姿の八瀬童子。黒いドレスに黒髪眼帯の黒谷月(華月)が到着する。
「外で戦うのは久しぶりだな……で、どいつとヤレばいい?星熊さんよ」
「まぁ待て、ふさわしい相手とぶつけてやる」
反対側に黒谷月(華月)
「面白い事になってるではないか。で、我が四人抜きすればいいのか?」
「いえ、月ちゃん。貴女はもしもの時の為のお方。それまでは観戦を」
「そうです月様。貴女の手を煩わす事などできませんここで見ていてください」
「なんだつまらん。あの偉そうにしている男は出てこんのか?」
長門顕彰を指をさす月。
「それは……場合にもよりましょう。その時こそ……」
「成程な、ここはしばらく大人しく観戦しててやろう」
月は長門顕彰に目を合わせる。
「あの小娘……私の圧で引かんとはな。何者か知らんが黒谷の特別な存在らしい」
長門顕彰は足を組んで座る月を見て言った。
「おやっさん、あの小娘もしや白峰分家の……」
飯田迦楼羅が耳打ちをする。
「ありえるな。分家に引き取られた白峰家の小娘を育て外法を使い妖へと戻したか。黒谷自身も元は人間。あの小娘を次代の白峰家当主に据えるつもりかもしれんな」
「どうします……あの小娘が白峰家当主に匹敵する力を持っていたのなら……」
「心配するな、その為に私がいるんだろうが。お前は白峰家を恐れすぎなんだよ飯田」
「はい……」
飯田の脳裏には先日戦った霞の姿がよぎる。まだまだ伸びしろのある霞に脅威を感じていた。
「そのくらいの方がいいのかもしれん飯田、お前は一か八かの博打を打たない男。あの黒谷月なる小娘は軽く見て良い雑魚ではないようだ」
長門顕彰側の先鋒は青鈍砂羽。既に変身している。
「先鋒は私が行きましょう。奴のデータは谷川さんと茉白、冬華から得ていますので」
黒谷が手を上げ手前に出る。
「連合の皆さん、私が先鋒でよろしいかな?」
「構いません」「おう!」「どうぞ」
「では、青鈍砂羽対黒谷ジークベルト……始め!!」
長門顕彰は羽団扇を振って合図。
青鈍は翼を広げ突進。青く輝く小盾を前に黒谷に迫る。対する黒谷は外套を広げ闘牛のような動きで青鈍の突進を回避。盾に外套を纏わせてすれ違いざまに光の剣を肩に突き刺した。
「ちいっ!」
絡みついた外套に手を掛けると触手が伸び青鈍の喉鼻口に纏わりつく。
「ングググググググ……!!」
「ハッハッハッハ……!」
光の剣を連続で投げつける黒谷。転がって回避するも青鈍の腕と大腿には避けきれなかった数本の剣が突き刺さっている。青鈍はどうにか喉鼻口から触手を引きちぎる事に成功。
「クソ……この俺の装甲を易々と貫く剣だと……!?」
続く
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