VAMPIREEYE111 「 梅小路公園会合2 」
「おやおや、自慢の装甲でしたか。それは残念。そうそう、その外套早くとった方がいいですよ?ドンドン捕食していきますから」
「貴様……!!」
「呪の装備も魔女の粘液生物(ウィッチ・ウーズ)には効果なしですかねぇ?」
「貴様ぁーっ!!」
剣を手に黒谷へ突進する青鈍。黒谷は地面から突起物を出現させ青鈍を突き上げる。黒谷は蝙蝠型の羽を展開して空中へ追いかける。
「貴方には同士が随分と世話になったようで……」
青鈍の周囲 360 度に無数の剣を出現させて一斉に突き刺す。
「ヌギャアアアアッ!!」
「フム……ウィザードとして私もまだまだ未熟か。魔法剣でこの程度の威力しか出せないとは。一流のウィザード、ウィッチなら今頃ミンチにしている事でしょう」
その様子を眺めている長門顕彰。
「あの男、黒谷の者にして魔法使いとは。忍の術は捨てたというのか」
「勝負ありましたかね?おやっさん」
「いや、まだだ」
墜落する青鈍。全身から血が噴き出している。
「ス、スカイグレイパワー全開だぁ!!」
青灰色の煙を上げ一回り大きな鳥人へと変身する青鈍。左腕から離れる黒谷のウィッチ・ウーズの外套。青鈍の左腕はミイラのように干からび呪の盾は消失していた。
「この俺がこんな……うらなりの魔術師程度に!!」
「ははぁ今まで三流の術師としか戦ってこなかったんですね?あなたの大将は何も指導してくれなかったようだ」
「黙れぇ!!」
「月光剣」
青鈍が振るよりも速く黒谷は手刀から迸る青白い魔法剣で迎撃。青鈍の剣を弾き、右腕切断の深手を負わせる。
「ギイイヤアアアアアアアッ!!」
「とどめです」
月光剣を上段に構える。
「勝負ありっ!!」
黒谷が振り下ろす前に長門顕彰の突風と咆哮めいた声が終了の合図となった。
「クソがクソがクソがあああああ……」
大流血しながら叫ぶ青鈍。黒谷は一瞥してふわりとバックジャンプ、自陣へと戻る。
「勝てました(三人の中では青鈍は私と相性抜群でしたからね)」
「お見事です黒谷さん、指一本触れさせないとは」
斎藤は一礼して黒谷の健闘をたたえた。
「よくやった。呪の装備を無効化、回収。完全勝利だったな」
「恐縮です。相性が良かったのもあります」
―その様子を見ていた連合勢。
「強いな……あの黒谷という男」
「あんな術師連合には中々いねえな」
「黒谷ジークベルトか。戦う事になったら厄介な奴だ」
―エクレシア勢。
「青鈍の奴瀕死だぞ……再起不能もありえるぞ」
「俺か皀が相手すればあんな事にはならなかったはずだ」
「ち、奴は剣と速度と装甲で圧倒し呪の装備で嵌めるスタイルだったからな。あっちのサイバネ野郎の八瀬と言ったか?ああいうのが得意な相手だった」
長門顕彰が手を上げるとどこからともなく現れた烏天狗が青鈍を担架に乗せ飛び去る。
「安心せい!生きてるのならどうにかしてやる。エクレシアの治療技術は世界最高峰。言っておくが今回の闘争に限り連合も白峰家側も最善はつくしてやる平等にな」
長門顕彰は取り出したひょうたんから酒を口に運ぶ。
「次鋒、連合から出せい!」
「それじゃ、俺だろう?この八瀬童子仕事をしてくるぜ」
ジャージの上着を脱ぐ八瀬童子。サイバネの両腕が剥き出しとなる。
「俺が行こう……」
エクレシア勢からは橡が立ち上がる。既に魔猿姿でブーメラン型の刃物を 2 本背負っている。
「武器はアリって事でいいんだよな?こっちは大層なもんじゃないけどよ」
八瀬童子がポケットから取り出したのは地下闘技場の通貨でありセンジョーの施設で使えるメダルであった。
「オイオイオイオイ!まさかそれをおはじきするんじゃねぇだろうな?」
橡は嘲笑しながら言った。
「ああ、おはじきだぜ」
「勘違いサイバネ野郎が!!原型を留め位ほどぶっ壊してやるぜ!!」
構える橡、メダルを手に持つ八瀬童子。
「始めい!!」
長門顕彰の声と同時に橡はブーメランを構えて間合いを詰める。金属を打ち付ける音が鳴り橡の額にメダルが突き刺さる。
「グッ!?」
橡はバックステップで八瀬童子から離れる。
「痛ぇだろ俺のおはじきはよ?コンクリートブロック程度なら粉々にするぜ」
「フン、皮膚を貫いただけだどうという事はない」
抜いたメダルを投げ捨てる。
「だろうな。師匠の指弾なら内部破壊の衝撃が入ってた。妹弟子のは俺の数倍はある」
「何だ?劣等感の自分語りか??」
「ああそうだ。師匠に認められずに腐って辞め、下らないプライドが邪魔して妹弟子を手伝う事も出来ず挙句の果てに流行りの新型腫瘍に侵され両手足を失う始末。武道しかやってこなかった俺はロクに仕事も出来ねぇ根気もねぇ。だけどな、俺は受けた恩は返す主義なんだ。師匠は返す前に死んじまったが、拾ってくれたセンジョーの社長に恩は返す。その為にテメェはぶちのめす」
一瞬で 32 連射のメダル指弾を打つ八瀬童子。
「クッ……」
両腕をクロスして受ける橡。メダルが突き刺さっていく。
「こんなのが何だってんだ!来いよ!!(近くに来い!爪で呪をかけてやる!!)」
「ネタはバレてんだよ糞猿。連合の情報収集力舐めんじゃねぇぞ」
「ホギャアアアアアッ!!」
ブーメランを投げつける橡。超低空のダッキングで回避する八瀬童子。一瞬で打撃の間合いに入る。
「このっ!」「フン!!」
橡が殴りつけるよりも速く股間を蹴り上げる。
「ガハッ……」
舌を出しながら苦悶の表情を浮かべる橡。八瀬童子は飛び上がり肘と膝で脳天と顎を挟み込むように打撃を打つ。橡の舌は自らの牙で切断される事になった。
「オゲゲゲェ……」
顔面を抑えてたたらを踏む橡。八瀬童子はメダル指弾を橡の指全てに命中させる。黒い瘴気を発しながら橡の爪は粉砕された。
「テ、テメェ……」
「へっ思ったより脆い爪だな!これでもう呪の爪とやらは使えんな。ここまで来る途中に社長から送られてきた資料に目を通してたんでね。お前たち灰色三人の対策は考えてきた訳だ」
「爪が無くてもなぁ!……その辺の妖やサイバネを蹂躙するだけの力はあるんだぜ!」
ブーメランを手に八瀬童子に襲い掛かる橡。八瀬童子は円を描くバックステップで回避。
「パワーとタフさと子分の猿でゴリ押して呪の爪で弱らせるのがお前の戦闘スタイルだろう?今のお前は子分もいなければ爪も使えない。その程度の速さとタフさを超える者などこの街にはゴロゴロいる、通じないぜ!」
「黙れサイバネ!!この俺は土蜘蛛、牛鬼を圧倒した!!」
「クックック……寝ぼけたことを。あの二人が今の生活を捨てる気で本性あらわにしていたのならお前はここに居ないとっくに肉片だ。それと……奇襲でヴァルキリーの連中に呪をばら撒いた烏天狗ども、もう逃げられねえぞ」
橡の攻撃を回避しながら飯田を睨みつける八瀬童子。
「ケジメはとらせる、エクレシアだろうが大天狗長門組だろうが関係ねぇ。社長の大事なヴァルキリーだからな」
「フ……空手が出来るだけのサイバネが大天狗長門組を相手にデカい口を叩きよる。今日生きて帰れるかもわからんと言うのに」
飯田は鏡のように磨かれた剣を手にしながら言った。
「死ぬことなんざ怖くねぇ。外道の相手は外道がふさわしい、輝く生き方を選んだ連中や甘ちゃん善人の妹弟子のような奴はお前らの相手なんかしては駄目なんだ」
「八瀬!」
星熊童子が叫ぶ。
「……おしゃべりが過ぎるぞ。さっさと決めろ」
ブーメランを振り回す橡の指を狙って貫手、爪先蹴りを入れる八瀬童子。指は折れ曲がりブーメランを握っていられなくなる。
「ホギャアアッ!」
反撃のハイキックを放つ橡、八瀬童子しゃがんで躱しながら股間に突き上げ拳を叩き込んだ。
「ああ、金的が通じないタイプの妖か」
「グゥゥゥゥ……」
橡の手数は減り徐々に八瀬童子の一方的なラッシュになっていく。
「圧倒的ですね八瀬童子」
「だといいんだが……」
茨木童子とは裏腹に不安げに呟く星熊童子。
「八瀬は全力 3 分しか戦えない。サイバネの両手足がアイツの動きについていけない、オーバーヒートを起こす」
「なんですって……」
両手指を潰された橡は蹴りで対抗するも全て八瀬童子には回避されカウンターの打撃を浴び続けている。命中箇所の体毛、皮膚は破れ血液が飛び散っていく。
「予想以上のタフさだな」
「まだまだ……俺は牛鬼の打撃も耐えきった、スタミナ切れで動けなくなった時がお前の最後だ!!」
「それならこれでどうだ」
今までで一番速い打撃を放つ八瀬童子。何の変哲もない中段正拳突きは橡の体をくの字に曲げその場に倒れさせた。
「オゲェェェェェ……」
「フゥ~……あと何発サイバネが持つかな」
「舐め……てんじゃあねええええ!!」
立ち上がった橡の顔面に正拳突きを撃つ八瀬童子。鼻血と牙が飛び散り仰向けに倒れる。八瀬童子の両手足のサイバネから煙が上がり始める。
「こんな突きじゃあ師匠にも認められない、妹弟子の突きにも及ばない……」
倒れている橡の頭の前に立ち拳を構える。
「セイ!」
「ゲボァ……」
下段突きを打ち込む八瀬童子。橡の顔面は陥没、そのまま八瀬童子のサイバネはショートを起こして機能を停止。
「ここまでか……もう動けねぇ……」
倒れる八瀬童子。
「そこまでっ!」
長門顕彰が突風を起こす。
「この勝負引き分けとするっ!!」
「なんだとッ!?」
星熊童子が叫ぶ。終始押していた八瀬童子を目の前にして引き分けの判定に納得がいかない。
「両者同時に戦闘不能となった。この勝負に判定など無い、途中経過の有利不利など関係ないのだ」
「貴様……」
「納得できなければ相手になってやろうか?最初にそう言ったはずだが?」
長門顕彰の言葉で場に緊張が走る一瞬即発の空気。
「この場は仕方が無いだろう。この場ではな」
黒谷月(華月)が通る声で緊張を破った。
「フン、いいよるわ小娘が」
「……ち、あの娘の言う通りか。この場は貴様にしたがってやろう」
あっさりと引き下がる星熊童子に違和感を感じる茨木童子。
「星熊、あなたらしくも無いあんな娘の一言で落ち着いて」
「ああ?……そうか、そうだよな。でもな、あの小娘は軽く扱っていい存在じゃねえぞ。茨木、しっかりと観察してみろ」
「……なるほど。薄々感じてはいましたよ、あれは並の妖じゃないと」
「しっかり警戒しとけよ。長門顕彰と同じくらいによー」
「ええ、気を引き締めます」
―エクレシア陣営。
「フン……あの小娘、あの空気の中覇気のこもった声を発しおったわ」
「おやっさん、あの娘……素性がまるで知れません。烏天狗達に先ほどから調べさせてるのですが何も掴めません」
「エクレシアのデータベースにも存在しないぽっと出の妖か……面白い」
「面白い?面白いだとオッサン!あの小娘俺が食いちぎってやるぜ!!」
皀が吠える。
「口を慎め駄犬!おやっさんに舐めた口きいてんじゃねえぞ!!」
直剣を構える飯田迦楼羅。
「飯田、こいつがデカイ口叩くのなら見てやろうじゃないか。おい皀、下手打ちすりゃあどうなるか解ってんだろうな?ええ?」
圧をかける長門顕彰。
「凄んでも無駄だぞ、俺は大将にのみ従う」
「そうだろうよ。だがその大将はこんな大事な時に姿も見せやしない、ちったぁ口の聞き方に気を付けた方がいいんじゃねえか?ええオイ!」
「正直アンタが俺たちの大将より上とは思ってねぇ」
「ふ……」
「アンタだとコラ!誰に言ってんだ駄犬がぁ!!」
飯田が剣を皀に付きつける。
「飯田、今の皀の発言は聞かなかったことにする。結果が全てだ、あの黒谷月に勝てれば許してやれ。いいな?」
「はい!おやっさんがそう言うなら」
動けなくなった八瀬童子を星熊童子が回収、瀕死の橡は烏天狗が回収した。
「さて、次は白峰側の……黒谷月。出てきてもらおうか、皀がやりたいそうだ」
飯田は黒谷月に言い放つ。それを聞いて黒谷月の目は燃えるように赤く輝き始める。
「いいだろう。我も見ているだけではつまらんと思っていたところだ」
赤黒い魔力が全身から迸る。
続く
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