VAMPIREEYE116 「魔女探し」
二ノ丸明珠香の足元には呻きながら転げるサイバネ達数人。
「明珠香テメェ……このままで済むと思うなよ…… SSS 抜けるには死ぬしかないぞ!」
「猫田にビビッて何もできなかったアンタらが今度は集団で武器もってこんなアタシに襲い掛かって来るんだ。ダサイにもほどがあるっしょ」
「黙れ!!」
「止めときな、その子はお前たちが敵う相手じゃないよ」
明珠香と足のオーグルであるレグスも気が付かなかった。木の影からヌっと現れたのは金髪に顔中ピアスだらけ、体は無駄の一切ない細くてしなやかな体つきのパンクファッションの女性だった。
「とととと虎居さんっ!!」
虎居華音留(とらいかおる)酒呑童子配下の虎熊童子である。
「テメーら勝手にルール作ってんじゃないよ。 SSS は自由なんだよ抜けるも入るも自由、行き場のない若者のチームって作ったのに今の SSS は半グレに成り下がったなぁ~」
虎居がサイバネ達に疾風を思わせる動きで接近、爪でサイバネ接合部分を破壊して回る。サイバネ達は反応すらできない。
「うあああ!」「ひいいいい!」
「猫田に任せたのが間違いだったわ。お前ら次 SSS 名乗ったら始末するからな?」
「すすすんませんっ!」
サイバネ部分を火花散らせながら去っていく男達。
「あんた、ウチの所に来ない? SSS って意味じゃなくてウチの店さ」
虎居は名刺を明珠香に見せる。
「バーのオーナーなんですね…… SSS とはどんな関係で?チラッと聞こえてましたけど」
「昔、サイバネの友達とつくったサークルなんだ。最初はボロいガレージに集まって住んでただけのチーム。センジョーに所属する事になってしてウチは SSS 離れて他の奴に任せたんだけどそれがダメだったね」
「は、はぁ……」
「良かったらいつでもウチの店に来てよ。一応昼間は普通のライブ喫茶として営業してるから未成年でも大丈夫」
「なんでアタシにそこまで?」
「さっき言った SSS 創設時の友人にあんたが似てるから何となくね。それだけさ」
「そうですか。あの、アタシ用事があるんでそろそろ……」
「引き留めて悪かったね、じゃあまた会えることを期待してるよ」
虎居と別れた明珠香は走ってセンジョーを目指す。
「(明珠香、あのピアスの女つえーぞ)」
レグスがテレパシーを送る。
「うん、解る。猫田はヤバイって感じだったけどあの虎居って人は怖いって感じ」
「(ひっかかるのは SSS ってクソ集団を散々放置してたくせに今更粛清とか。何を考えてるんだか……)」
「何でかな?事情があってもう邪魔になったとか??」
「(それはそれで酷い話だぜ……)」
***
「社長、やはりそうでした。 SSS には既に陰陽師団と灰色の軍勢が仕込んだ『呪』の薬物が蔓延してます。兵隊として使い物になりません」
虎居華音留は耳に装着した携帯デバイスで会話する。
『回収はできたか?』
「はい、少量ですが」
『よし、こちらで預かろう。お前はそのまま薬物関係の調査を続けろ』
「わかりました」
酒呑童子・仙丈隼磨は虎居華音留との通信を斬り椅子に腰を掛ける。
「陰陽師団を扇動してた烏天狗・飯田迦楼羅は拘束したんだな茨木?」
「はい」
タブレットを片手にメガネを上げる茨木童子・真柴樹里。
「ほぼ廃人状態ですが会話は何とか。社長の『酒』を使うまでも無いかと」
「知っていることは全て口を割らせろ。それと映像で見た長門顕彰と戦闘してた女だが」
「黒谷月ですね」
「ああ……そいつの映像を見たがどうみても白峰華月にしか見えんのよな。何らかの方法で復活したかあるいは双子が存在したか」
「白峰華月……」
「敵に回せば厄介この上ない存在だが味方に付ければこれ程心強い奴もいない。奴らが何の目的で動いてるのか知る必要がある。星熊にこの前接触した二人の子供と大男と話すように伝えろ」
「承知致しました」
「熊の調査によると……陰陽師団、白峰関係者が京都に結界の準備をしている。 MAP を表示するぞ」
千丈隼磨はペンライト型のプロジェクターから壁に映像を映し出す。そこには京都市を覆うように赤い五芒星と反対の青い逆五芒星が描かれている。
「赤が陰陽師団、青が白峰関係者のものだ」
「お互いまだ発動させてないようですが」
「そしてお互い結界を崩そうとはしていない。陰陽師団側は飯田から聞き出す、白峰側は……黒谷ジークベルトに聞くのが手っ取り早いが」
「黒谷ジークベルトとの接触を試みましょう」
「後はグレイビーストの行方だが……」
「京都サクラホテルに今は居るようです」
「ヴァルキリーが世話になった事だしな、今度はこちらから仕掛けてやろうじゃないか」
「誰を向かわせますか?」
「ぬうりひょんを送れ。神名の最新装備と俺の酒を与えてな」
「ではそのように」
***
二郎と吹雪は明珠香と合流した。
「ふ~ん……なるほど、この子が二郎の彼女か」
「そ、そういう関係じゃないよ」
「え、ええ……」
「へぇーそうなんだ~……まぁ野暮なことはこれ以上聞かないよ、 HKF やろ!」
「うん」「はい」
HKF プレイを開始して明珠香は驚いた。二郎が驚くほど上達していた。
「うっそ!何でそんなに上手くなってんの??」
「上手い人の動きとか自分の出来る動きを考えて実際に動いてイメトレしてたんだ」
「イメトレでそんなに~?」
実戦を重ね更に強烈にイメージしたトレーニングは義手の力と合わさり、これまでの別世界過去の戦闘経験、そして無意識の内に夢の中でもトレーニングをプラスし、二郎は父親の紫蓮にも匹敵するほどの経験を得ていた。 HKF の操作は苦手だったが既に上級プレイヤーの域に達していた。
「今なら TOYA ともいい勝負できるかも。次は吹雪ちゃんね」
「よろしくお願いします」
続く吹雪。明珠香の攻撃に合わせ全て弾きとカウンターを入れる。
「どんな反応~!? HKF の動きはぎこちないけど反応速度凄すぎ……」
「明珠香さんこそ、はじめて数日なのに上級者に引けを取らない動き驚かされます」
「あはは~(レグスの協力があるからちょっとインチキなんだけどねー……)」
「恭一も昨日やっと動けるようになったから明日から参加するかも」
二郎は嬉しそうに言った。
「おお、スポーツマンの恭一君ね!彼はセンスいいからすぐ上手くなるよ」
二郎たちが HKF の練習をしている頃、蓮也と霄は地下闘技場の VIP 観客席に居た。
「こんな場所が京都にあったなんて……」
「ここの闘技場のバトルは見る稽古になる。しっかりと目に焼き付けてイメージトレーニングをするんだ」
「そう……」
霄と蓮也は闘技場の戦士たちのバトルを見ながら自分はどう動くかイメージをする。
「気に入ったようだな!まさか会員登録してくれるなんて思わなかったぜ」
星熊童子が声をかけた。
「そっちのお嬢ちゃんも特別招待客として入れてやったのは聞きたいことがあるからなんだが……」
「ああ、そのくらいの事想定してた。話せるギリギリまで話そう」
「蓮也さん!」
霄は思わず立ち上がる。
「いいんだ霄、彼は俺を信用してくれている。こちらも誠意を見せなければならない」
「話が早くて助かるぜ。単刀直入に聞く、白峰家側は一体何をしようとしているんだ?社長も内容によっちゃあ協力もありえると言ってた」
「……この国のエクレシア本拠地に乗り込もうとしている」
「ほう……あれか、地下都市・碁盤の目町か」
「ああ、それだ。そして侵入作戦の邪魔になっているのが灰色とエクレシアの連中だ」
「そういうことか……えげつない結界と防壁に覆われた碁盤の目町に……カチコミか。それは近いうちにできそうなのか?」
「侵入の為の準備は進んでいる、後は時間との勝負なんだ。灰色の奴らが言うには後五日で世界に影響する何かが起きる、それまでに碁盤の目町を制圧し備えたい。今言えるのはここまでだ」
「いや、十分だ。これだけ知れれば社長なら何か考えてくれる。連合側としても白峰側と協力したい所なんだ。京都を守りたいという気持ちは連合も同じだからな」
「星熊童子、この事は俺も同志たちに話さなくてはならないが大丈夫か?」
「ああ、問題ない。黒谷ジークベルト、斎藤勇雷、黒谷月によろしくな!」
***
―翌日。グレイマン予言の日まで後四日。
都メタルの研究室で勝田と水元は眉間に皺をよせていた。
「隔壁は何とかなりそうだけど結界の解除に間に合わない……計算だと 1 日足りない」
「コイツは参ったね。僕と君の知り合いの魔術師や呪術師 20 人を以てしても間に合わないとはねぇ……」
「これ以上人数を増やしても速度を上げなければ意味がないから……貴方の知り合いのスゴイ魔女は手を貸してくれないの?」
「困ったことに連絡がとれないんだ。メッセージは送っておいたから見てるはずさ!」
「じゃあなんで来てくれないの?お節介好きで最高の魔法使いなんでしょ?」
「その通りなんだけど、あの魔女はむやみやたらに世間と関わらないんだ。彼女にしか解決できないと判断したら、あるいは彼女の心を動かせばやってくれる」
「そもそもメッセージ見てないのでは?」
「見てるはずさ、京都にも来てるはず。気になった事は調べたくなる性格だから」
「じれったい……こちらから探してすぐにかかってもらいたいんですけど」
「そう簡単に見つからない、世界中の魔術に関わる者が彼女を探してる。敵意を持つ者、すり寄ろうとする者、利用しようとする者、その他大勢がね」
「京都にいるというのならこちらの魔術師や呪術師 20 人でローラー作戦で探し出せばどうかしら?」
「君はあの魔女をナメ過ぎだよ。そんな事をしてもたまたま見つけた者の記憶を消されて終わりさ。彼女に会うには……運命力が必要かな。あの魔女は関わりあう運命にあるものにしか会えないものなのさ」
「運命力って……そんなあいまいな」
「言い方はアレなんだけど、魔女にとって良い結果を出せそうな者しか会えない。魔女も水晶玉とやらで常に未来を探っているんだからね」
「そんなのどうやって……この都メタルのメンバーに会えそうな者いるかな?」
水元はタブレットを操作してメンバーのデータを眺める。
「あの魔女を警戒させない尚且つ信用してくれそうなのは……」
「う~ん?」
「木城二郎君しかいない気がする(彼が動いたことで様々な事が動いた。運命力を持つ少年だよ)」
勝田は二郎と義手の事を思い出しながら呟いた。
「二郎君はセキュリティ突破の訓練中じゃない。出来るの?」
「僕たち華月派が別の案件で準備している術式の中に魔女がいるはずがない。かと言って街から離れすぎてもいないだろうからかなり範囲を絞れるよ。二郎君は訓練の後でも三日あれば全部回れるはずさ」
「もし三日もかけて見つからなかったら?最後の結界突破できないですよ!?」
「最終手段は思考並列接続法かな……ニューロンが焼ききれる可能性がかなり高いけど……そうなった場合は水元、君に全て託す。僕はまだまだやり残したことがあるからね」
思考並列接続法はジーニアスレイジのサーバーにアップされていたもの。
「勝田……わかった、約束します。だから何としても三日で魔女を見つけましょう、後は少しでも最終結界解除を間に合わせる努力をします」
勝田は信じていた。魔女・立花冥珂が最後には必ず来てくれると。未曽有の危機が訪れようとする時に彼女が動かないわけないと。
勝田は二郎を呼び出し立花冥珂の捜索を依頼した。
「タチバナメイカさんって人をさがせばいいのですね?それが碁盤の目町の隔壁攻略に繋がると?雪名さんを吹雪さん達のところに連れ出せるという訳ですね」
「まぁ、そうだね。白峰雪名ちゃんを解放して葛野忍を排除、碁盤の目町を制圧する、とう流れだね」
「雪名様待っててくださいこの水元が何としても解放します!勝田、二郎君!碁盤の目町に入ってからは私にお任せを!メンバーの中で一番あそこに詳しいですから!」
水元は体を反らせデバイスメガネを指で上げながら言った。
「雪名ちゃん今は大人しくしてるけど怒ったらかづたんでも手を焼くからねぇ。葛野忍は上手い事雪名ちゃんのご機嫌取ってるんだなぁ……その辺どうだったの水元?」
勝田は片眼鏡ゴーグルを上げてタブレットを操作しながら言った。
「口が上手いんですよあの男は。一度雪名様が外に出るといって隔壁をドンドン壁ドンパンチして大騒ぎになった事があるんですけど上手い事説得して収めましたね。私としては雪名様に隔壁の一枚でもぶち抜いて欲しかったですけど」
嬉しそうに語る水元。
「何で雪名さんはそんな大暴れを?」
「夫の蔵人さまをイギリスに飛ばしてその後、源藤高雅が霄ちゃんを襲ったとか聞いたからですよ。葛野忍が碁盤の目町をシャットダウンしたのは雪名様に外の状況を知らせたく無いのもあるんでしょうね」
「そうでしたか」
「正直、葛野忍は詰んでるよ。長門顕彰は斃され、外からはかづたん、内からは雪名ちゃんだからね」
勝田は半笑いで言った。
「普通に考えればそうなんだけど……葛野忍の雪名様に対する余裕が何か引っかかるのよねー『貴女が本気で暴れても何とかできますが?』的な態度が……」
水元は忌々し気に呟いた。
「それが四日後に起きる何かに関係してるんだろうね。全てひっくり返せると考えてる、後四日碁盤の目町を攻略されなければ勝てると考えてるんだ」
「俺は……近藤さんを襲った神名 L 咲夜ことグレイビーストの動きが気になります。あの人を何とかしない限り灰色の軍勢は止まらない気がするんです」
二郎は神名 L
咲夜と話した時の事を思い出していた、あの濁った目は忘れられない。
「二郎君が神名 L 咲夜と会って以降向こうの動きが見られないよね。神名 L 咲夜の事調べてみたんだけど……どうやら彼女は葛野忍の弟子だったみたいだね。今は離れて道摩法師を名乗ってるとか」
「神名 L 咲夜は結界の事も連合の事も我々の事も全て把握して待ちに徹しているのでは?最強の陰陽師の弟子でグレイビーストであるなら考えられるわ」
「静観しているのかなぁ。立花冥珂のように手を打ちながらじっくりと見極めるタイプか?これまでの事からそんな風じゃないと思うけど」
「うーん……」
「まぁー僕たちは出来る事をやるしかないね」
「そうね」
続く
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