VAMPIREEYE123 「決戦準備」
「ヌガアアアアアアアアアッ!!」
沼化した床の上で寝そべって転がる魔獣太郎。
「ほう、底なし沼の脱出方法を知ってる」
「シネエエエエエエエエエ!!!」
祢々切丸を投げつける魔獣太郎。自らの細胞を纏わせ念動力で自在に操り、木戸を切り裂く回転刃となり飛翔する。
しかし木戸の前に突如現れた黒い渦に祢々切丸は吸い込まれ、次の瞬間、魔獣太郎は背から胸にかけて串刺しとなった。
「ハ??」
理解が追い付かない魔獣太郎。
「木戸さん沖田さん、わたくし達も参戦します」「戦闘モード起動」
そこに白いゴシックドレスのサイボーグの冬華。白いモダンドレスの自動人形の茉白が現れた。黒い渦は冬華の発生させたものだった。
「何だオマエ等……祢々切丸が何故俺の背中に……」
魔獣太郎はゆっくりと祢々切丸を引き抜く。
「それはこの私、白峰冬華の仕業。よろしく、そしてさようなら」
「茉白です。魔獣の貴方、谷川先生と私の愛の邪魔です消えてください」
冬華と茉白は魔獣太郎を睨みつける。
「この魔獣太郎相手によくも舐めた口を!!」
魔獣太郎は調子に乗っていた。以前、白峰霄と木城蓮也を相手にして優位だった、そのことが慢心させ油断を招いた。
この場にいる木戸、沖田、冬華、茉白は魔獣太郎には相性の良くない者。
木戸の能力は魔獣太郎を翻弄、沖田の術は力を吸収、冬華と茉白の攻撃は中距離遠距離で行える。
魔獣太郎は誤った。都メタルが敵のアジトだと気付いたのなら屍人を集め咲夜に知らせ、更には陰陽師団を加えて総攻撃を仕掛けるべきだった。
個としての強さは木戸や沖田らを上回っていても魔獣太郎に都メタルは落とせない。
「ンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
獣の咆哮を上げる魔獣太郎。
沖田らは総攻撃を仕掛ける。沖田の術で力を吸われながら動きを阻害され、木戸の重い打撃が炸裂し冬華の斬撃、茉白の銃弾。統率の取れた連携に魔獣太郎は動けない。
「この魔獣太郎が――!三獣合体の魔獣太郎が……!!」
魔獣太郎は成す術もなく命を削られる―
「オノレオノレオノレェェェェェ!まずは、まずはお前から始末してやる魔獣流斬鋼剣!」
迎え撃つのは冬華。
「月光剣オーバードライブ!!」
右手に宿した光の剣。大上段から振り下ろされる魔獣太郎の魔獣流斬鋼剣に対し下からの斬り上げを合わせる。
「ガアッ!?」
魔獣太郎の想像の上を行く速度で斬りつける冬華。魔獣太郎の両手首は宙を舞った。
「莫迦な!この魔獣太郎の肉体は最強のはずだ!!お前などに……!!」
「次期白峰家当主の力甘く見ないことです」
すれ違いざまに首を斬りつける冬華、魔獣太郎の首は半分ほど切り裂かれる。
「グオオオオオ……」
「 TMDM (谷川茉白ドリルミサイル)発射!」
茉白の両腕が展開し 2 基のミサイルが放たれる。魔獣太郎の体に突き刺さり激しく錐もみ回転。
「スパーク!」
深々と突き刺さったドリルミサイルが爆裂。魔獣太郎の肩と脇腹を抉り散らせた。
「グギャアアアアアッ!!」
「硬いのなら内部から破壊するまでです」
「オノレオノレ……」
「止めは僕がやらせてもらうよいいね?」
木戸が前に出る。
「エキスパンドナパームパンチ」
激突の瞬間だけ拳を巨大化して収縮猛連打パンチを打ち込む。壁に貼り付けになった魔獣太郎は背部のコンクリート壁が崩壊していくも木戸は手を休めずに打ち込み続ける。
「ガ……ハ……」
肉片を飛び散らせる魔獣太郎、さらに追い打ちで沖田が手をかざし光の帯でエネジードレインを仕掛ける。
「……」
ボロクズ同然の肉体は灰となって消えていく。その生命力は沖田の術で華月に送られた。
「迎撃完了です。皆さん戻りましょう」
「愛の巣は守られました」
「いやはや皆さんが無事で私は嬉しい」
「ふぅ~慣れない事をすると疲れるねぇ~」
ゆっくりと戻っていく 4 人。
冬華らが去っていくのを確認する屍人の首があった。魔獣太郎よりも先に偵察に出して始末された屍人の首。転がって都メタルの敷地を出ていく。
「この魔獣太郎ただでは死なん……」
屍人の目玉の一つが飛び出して手足を生やす。最後の力を振り絞り屍人の首に細胞を飛ばして意識を移していた。
「大将に知らせなくては……」
手始めに近くの人間に憑りついて――そう考え通りすがりの白いパーカーの少年に飛び掛かる。少年まであと1mの所で目玉は爆発炎上。黒焦げとなって地面に落ちる。
「気持ち悪……目玉のモンスター……か」
イグネイシャス・ファイマンは念入りに炎で焼きながら踏みつぶして灰にした。
***
夜中、二郎の携帯電話が鳴った。リティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲが京都に到着したという。
「それじゃ行ってきます」
二郎は水元来海と一緒に車に乗り込む。リティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲと助手は京都駅近くの小さな公園で待っているとの事。
数時間前、魔獣太郎の襲撃があった都メタルの敷地内はすっかり片付いていた。
正面ゲートを通り抜け車は京都駅に向かって走る。
「さっきの襲撃、敵に都メタルの事知られましたね……」
二郎はいつか知られると考えながらも碁盤の目町侵入作戦の前には何も起きないで欲しかった。
「想定の範囲内ですよいつまでも隠しきれるものでは無いですし、しかし単騎突入とは敵も余裕が無くなってきたんでしょうね。あと数日で勝ち確定と高をくくっていたのですから。どうせ何もできないとナメていたんでしょう。葛野忍は長門顕彰が斃されるなんて考えてなかったし、グレイビーストの方も圧倒的に蹂躙できるとか思ってたんじゃないですかね」
水元はあまり良い顔をしていない。眉間に皺を寄せたままである。
「水元さん?」
「この作戦が上手くいけば京都の混乱は解消されると思います」
「そう……ですね。あの、水元さん何か不安な事でも?」
「……私は雪名様派だと前に言いましたよね?だから今の状況はそんなに良いと思ってないんです。華月様が悪いとかそういう事じゃなくて……作戦が成功した後、白峰家は二つに分かれるんじゃないかと心配なんです」
「あ……」
二郎は何も言えなかった。
「碁盤の目町に居る白峰家に仕える家の妖たちも雪名様派でしょう。今の状況だと華月様の復活は知る由も無いですし、当主が雪名様に決まった時に分家も仕える家も雪名様の体制で動いてましたし、グレイビーストさえ来なければいずれ雪名様は反撃の狼煙を上げたはずです。ええ、雪名様はじっと霄様達三姉妹が成人されるのを待ってらした」
「そうなんですね……」
「これはここだけの話でお願いしますね二郎君」
「ええ、勿論です」
「華月様は優秀な方です。歴代白峰家最強と言われているのも分かります。ですが……あの方はホトトギスを鳴かないのなら殺す選択をするでしょう。雪名様は鳴くまで待つ方です……例えに出てきた戦国武将、どちらが歴史上成功したかは言うまでも無いですよね」
「でも……そのホトトギスの話は違っていたとの説もありますし……」
「例え話ですよ二郎君。華月様は平和になった後は治めるのにあまり向いてないと思います。当主を華月様に戻す話は賛成できません。碁盤の目町の同志もそうでしょう」
「……俺はどうにか話し合いで解決して欲しいと願っています。どちらが当主にふさわしいかなんて俺には判断できません」
「雪名様はただじっとしている方では無いです。碁盤の目町が閉鎖された事について疑問を持ってらっしゃるはずです。葛野忍の言いなりになるなどあり得ないです」
水元は唇をかみしめる。
「優しいお方ですが、優しいだけではありません。二郎君、白峰家の姉妹を見れば解るのでは?」
「それは……はい」
華月曰く――霄は華月に似ており、吹雪は雪名に似ていて霞は華月の母に似ているとの事。
「君が吹雪ちゃんの事を好いているのは態度を見れば分かりますよ。でも別に霄ちゃんの事は嫌いでは無いですよね?私もそうなんです、雪名様 LOVE ですが華月様を嫌いなわけでは無いのです」
「はい……」
「余計な事を言いましたね……今現在の問題を解決していないのに未来の事で悩んで君を困らせるなんて……この話はここまでにしましょう」
水元は話を止めた。二郎も黙って助手席で風景を眺めていた。
吹雪を守れれば……白峰家を外敵から守れればそれで解決すると考えていた。
白峰家の事に部外者の自分は口をはさめない。でも吹雪は何としても守りたいそう考えている。
彼女が吸血鬼である必要はないと思うし白峰家から離れたって良いとさえ考えている。
―彼女自身が何を望むのか。彼女に寄り添えるのか。それだけが不安であった。
まだはっきりと想いを告げていない。タイミングを量っている。もし上手くいかなかったら……そんな事を考えるとこの状況で言えるはずもなかった。
しばらくして車は待ち合わせの公園の横に到着する。
そこに居たのは――ガスマスクフードの小柄な女性と全身青銀の鎧騎士。
「……二郎君、いつでも戦える準備を。あの二人……警戒体勢ですので」
「え……分かりました」
車から降りる水元と二郎。水元は特殊魔力銃を手にして後ろ手に。二郎はバックル剣をベルトからは外して構える。
「そこの少年、その右手から良くないものを感じますよ」
「この女の言う通りだぜ。動くなよ?動いたらこっちも動くしかないからな?」
小柄な女と鎧騎士が言った。
「リティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲさんとお連れの方ですか?私は水元来海、勝田波留夫の使いで来た者です。こちらは木城二郎君」
「木城二郎です……」
「ええ、私が超天才エンジニアにして魔女の弟子にして美少女ヴァンパイアのリティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲですが何か?」
「……自画自賛がすごいなオイ」
「事実!事実を述べたまでですよトーヤ!!……こほん、クルミとジロウの本人はデータ照合で確認できました。しかしジロウの右腕、それはすぐにでも外すべきかと」
リティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲを名乗る少女はガスマスクに搭載されたデバイスを操作してそう言った。
「この右腕はもう俺と一体化してて……外せないんだ」
「一体化して外せないと……ジーニアスレイジのサーバーにアップされたデータにはそのような記述はありませんでしたが……やはりオーグルと似た性質があるのですね」
「オーグル?何言ってんだリティーシャ、確認とれたならもういいだろ。こんなところで立ち話してないで連れてって貰おうぜ」
鎧騎士は装甲を解除する。一瞬にして装甲はチップ状に変化。魚群のように蠢いてアタッシュケースの形に。現れたのは派手な柄のシャツを着た茶髪の少年。
「オレは宗像刀耶。このちっこいのの相棒って奴さ」
「宗像刀耶さん……もしかして HKF の TOYA では!?」
「ん?ああ、確かに HKF やってるけど……何?」
「俺、アカウント名 JIRO でやってる者です」
「は!?マジかよ!!そっかキミが JIRO だったんだな!!そっかそっか、近々京都に行くってメッセ送ってたもんな。そうかこんな繋がりだったとはなー」
「驚いてます」
「はは、 JIRO はもっとオタクっぽい子供だと思ってたぜ。がっちりしてるなーなんかスポーツとかしてんのか?」
「特にスポーツとかは……ちょっと自主トレしてるくらいです」
「へぇ~……あ、敬語とかいいから。オレ大学生で年上だけどタメ口で良いから。刀耶って呼んでくれていいぜ」
「あ、はい……じゃあ刀耶君で」
「おう!よろしくな二郎!!」
がっちり握手する二人。
「いいですねー男は単純で。とりあえず移動しましょうか。ジロウの右腕の事は着いてから調べさせてくださいね」
リティーシャは座っていた椅子から飛び降りる。椅子はピンクのトランクに変わり車に飛び込んだ。「ソレは私の荷物なので気にしないでいいですよ」とさっさと車に乗り込んだ。
「……大変個性的なお方ですね」
「すみません……ちょっと……いや、かなり常識がない変人ちびっ子ヴァンパイアなんす」
刀耶は申し訳なさそうに水元に言うと自分のアタッシュケースをもって車に乗り込む。
「では都メタルに戻りましょう」
「はい」
―都メタル
センジョーからメッセージが入った。
『こちらで陰陽師団を抑える』
黒谷はすぐに返信をする。
『承知致しました。グレイビースト討伐の助力の件は?』
数秒後センジョーから、
『こちらは精鋭5人を用意できる。そちらからも5人選出してもらいたい』
黒谷は少し考え返信する。
『こちらからも5人選びます。メンバー決定次第そちらに向かわせたい』
センジョーから。
『では零時、円山公園でメンバーの顔合わせとしたい』
黒谷。
『了解。その時間に 5 人を送ります』
やり取りを後ろから眺めている華月。
「我がグレイビーストを始末してやってもいいのだが?」
「いえ、華月様は碁盤の目町に突入して雪名様との交渉がありますので。ここは我々にお任せを。それに碁盤の目町にはあの葛野忍も控えております、抵抗するエクレシアの者も多数いるはず」
「そうか。それで、グレイビースト討伐五人の成員はどうする?」
華月は机に手をついてモニターを眺める。
「そうですね……ここの防衛もありますからね」
黒谷は華月の横顔を眺めながら言った。
「斎藤は入れてやれ。近藤の事もあるからな」
「分かりました、一人目は斎藤さん。佐久間さんに……蓮也君と霄様。あと一人……」
「私が出ます、お父様、お母様」
冬華が現れた。手には魔獣太郎から奪い浄化された大太刀祢々切丸。
「では冬華を」
「ここで力を示し白峰家次期当主としての存在感を見せつけますとも!」
「よくぞ言った冬華。ならば餞別をくれてやろう」
祢々切丸を手に取る華月。魔力を込めた自らの血を垂らす。それを見た黒谷は同じように祢々切丸に血を垂らす。
「これは……祢々切丸が……私の一部に……!?」
「我と黒谷の血の契約により、その大太刀は冬華の一部となった。失われることのないお前だけの宝刀だ」
「嬉しいです!この太刀でグレイビーストの首、取ってきます!」
血液状に変化する祢々切丸。冬華の掌に吸い込まれていく。
続く
VAMPIREEYE137「救世主と少年」 Jan 15, 2022
VAMPIREEYE136「異次元の扉」 Jan 14, 2022
VAMPIREEYE135「起死回生」 Jan 12, 2022
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search