VAMPIREEYE124 「決戦開始」
―センジョービルの屋上にヘリコプターが着陸した。
降りてきたのはボサボサ髪の安いスーツを着た男。陰陽師・土御門道鳴であった。
「ヘリコプターってのはどうも好きになれないね。速いのはいいんだけど」
「土御門道鳴様、こちらです」
出迎えたのは茨木童子・真柴樹里。
「どーも土御門道鳴です。いやぁこの前異能者組織のデカい仕事片付けたからしばらくは何もしない気でいたのになぁ」
「貴方が土御門道鳴である以上、今の世の中には必要とする者は絶えないですよ」
「はぁ……大昔のご先祖様みたいにお国の為に身を粉にして働くなんて向いてないんですよ……適当にやって適当に生きられれば結構。忍とか咲夜みたいに野心剥き出しで何かしようって気になんてとてもならない」
「私どものような妖の依頼を引き受けてくださってありがとうございます」
真柴樹里は土御門道鳴が全身に呪をかけ張り巡らせいつでも何が起きても備えられる状態であることを感じ取っていた。
「着いたとたん罠にかけられて爆発とか無くて良かったです。たまーにそういうのあるんですよ、 3 年前廃墟でそれやられて瓦礫の下敷きになりまして……」
「そんなことがあっても貴方は生き延びてここにいるとは。頼もしい限りです」
「はは……」
土御門は連れられ社長室に。既に仙丈隼磨は待機していた。筋肉隆々の星熊童子、全身刺青ピアスで細身の虎熊童子、袈裟を着た熊童子が横に控えている。
「みなさんお揃いで……土御門道鳴です」
「ほう、これ程の妖圧の中平然と挨拶できるとは。噂以上の男のようだ。備えも大したものだ……これが日本三本指陰陽師の実力か」
仙丈隼磨は土御門が全身呪と武器防具で覆っている事を瞬時に見抜く。
「皆さん……伝説の鬼ですからね。ガチの備えで来てますそこはご了承願いたいです」
「ハハハ、逆に無防備で来られた方が信用できないってもの。ビジネスってのは緊張感がなくちゃあな。まぁかけてくれ早速仕事の話をしようじゃないか」
「では……」
仙丈隼磨は陰陽師団の対抗策を土御門に提案する。それに対し土御門は思いもよらない対抗策をもちかけた。
「……そいつは面白い。常にこちらが先手を打てる」
「料金は……一人こんなもので――」
「構わん、 10 人分頼めるか」
「確認します……本当に 10 人で宜しいですか」
土御門の質問に「ああ」と返事をする仙丈隼磨。控えている鬼衆も頷いている。
「一つ注意が。この呪、高位の陰陽師である咲夜や忍には見破られる可能性が高いです。一度見破られるとかけ直しはできませんが大丈夫ですか?」
「グレイビーストと葛野には通じないか……まぁいい、葛野は『あっち(黒谷)』の奴らに期待だな」
「では契約完了という訳ですね。こちらにサインを」
***
刀耶とリティーシャを乗せた車が都メタルに到着する。
二郎は水元と一緒にリティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲと宗像刀耶を地下シェルターに案内する。
「ようこそ!リティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲ!!僕がハルこと勝田波留夫だよ!」
わざとらしく白衣を着た勝田が出迎える。後ろのロビーには黒谷、華月、吹雪がソファに座っている。
「握手はしませんよ。男に触れるなんて絶対にしませんから」
リティーシャは勝田の目の前で首を振った。すぐに華月の存在に気が付きガスマスクでサーチする。
「あの方がここのリーダーですかね?ということはこの国のトップの吸血鬼と言うのはあの方で間違いないですか?」
リティーシャは水元に質問する。
「ええと……華月様はこのグループのリーダーなのは間違いないですが、この国のトップ吸血鬼は白峰家『現』当主の白峰雪名様です。例の碁盤の目町の中で待っておられます」
水元は黒谷と勝田の視線を気にせず言い切った。華月の反応はない。
「ほうほう……」
ゆっくりと華月に近づいていくリティーシャ。ガスマスクをとり素顔をさらけ出した。
「ジーニアスレイジの一員にして七大魔女レヴィの弟子、天才エンジニアのリティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲです。お見知りおきを」
「白峰華月だ。よろしく頼む」
華月は立ち上がってリティーシャを見つめる。黒谷も立ち上がる。
「フワフワの金髪に整った人形のような顔立ち。幼い印象を受けますが気品がある。ヴァンの一族にふさわしいお方ですね」
黒谷はいつでも動ける準備をしながら言った。
「ヴァンの名は両親がつけたものです。私は一族と関りありませんしヴァンの一族はもう存在しません。私は血を断ちヴァンの宿命に引っ張られないように生きてきました。ヴァンパイアではなく、エンジニアとして魔女の弟子としてこれからも生きていくつもりです」
リティーシャの金色の目が輝く。有無を言わせない圧を受ける黒谷。
「……血を断ってこの圧ですか。いやはやヴァンの一族とは恐ろしい」
「そういう貴方も真祖の気配がします。ヨーロッパの系譜ですね」
「そんなところです」
「トーヤ、どうやらここはとんでもない城のようですよ。吸血魔城ミヤコメタルといったところです」
後ろにいる宗像刀耶に声かける。
「だな、すっげぇぞわぞわするわ。敵じゃなくて良かったぜ」
「なんて暢気な、もっと警戒してください!」
「つってもよ~二郎の居場所なんだろ?二郎と話してすぐわかった、悪い奴となんかとつるまないだろう。ここの人たちは大丈夫だって、リティーシャがとんでもねー事しない限りな」
「解ってるのですかトーヤ!オーグル化したあの時のホフよりも強大な存在が目の前にいるのに!!」
リティーシャはむっとした表情で刀耶を睨みつける。
「あのなぁ……この人たちは味方だろうが。ヤバい敵は他にいるって聞いたぞ?味方なら頼もしいじゃんか。俺たちが何しに来たきたか思い出せよ、地下都市の侵入作戦を手伝いに来たんだろ?細かい事は気にするなよ」
「な……」
呆れた顔をするリティーシャ。
「すんませんウチのリティーシャが……コイツ優秀なんですけどクセが強くて。仕事はキッチリこなしますので」
リティーシャの前に立って黒谷と華月に頭を下げる刀耶。
「フッ……いいコンビだねぇ君たちは」
横の勝田が言った。
「私は最初から乗り気じゃなかったんですよ師匠の頼みで仕方なく……まぁハルの発明品にもつられましたが」
「リティーシャ、ミルクでも飲んで落ち着けよ」
「ダメですミルクはさっき飲んだばかりなのでペースを守らないと在庫が……」
「買ってきてやるから飲んどけって。ロビーの自販機にいつものミルク置いてあったぞ」
「ホントですか!素晴らしいですねここの会社は!!分かってますねー他のミルクではなくモーモーミルクを置くとは。賞味期限が短く生産数もそれほど多くないのに!」
「お、おう後で買えるだけ買っとこうぜ(ちょろいなー)」
「では早速手持ちのミルクを……ぷはー!」
カバンから取り出したミルクを一気にストローで吸い上げるリティーシャ。
「このように私は血への欲求は完全に抑え込んでいます。モーモーミルクのおかげですね」
「……」
その様子を見て黒谷は微笑む。
「気に入って頂けましたか。華月様も大変お気に入りのミルクです。モーモーミルク牧場のソフトクリームもありますのでよければどうぞ」
「なんですと!!あの北海道ご当地限定生産販売のモーモーミルクソフトですって!!」
「はい。都メタルは牧場と契約しておりますので。実はソフトクリームのマシーンは都メタル製なのですよ」
「そうでしたかなるほど……これは私としては都メタルと太いパイプを持っておきたいですね」
「(リティーシャちょろすぎんぜ~……)」
呆れながら刀耶は少し微笑んでやり取りを聞いていた。
リティーシャと刀耶は水元に案内されて部屋に。二郎と吹雪もついていく。
「あの男の子が刀耶くん、 HKF が上手い TOYA なのね」
「そうだよ。体調が治りきってない恭一の代わりに作戦に参加してくれるんだ」
「……あのアタッシュケースとリティーシャさんのカバン不思議な感じ」
「そう?確かに変わってたけど……俺にはわかんないや」
「吸血鬼の気配をほんのりと感じた。二郎くんの腕とはまた違うけど似たような感じ方。上手く説明できないけど」
「へぇ……不思議なパワーのアイテムなんだなきっと」
「二郎くんは怖くないの?つい先月まで普通の高校生だったのに」
「それが驚くほど受け入れられてるんだ。こんな風に闇の住人の人たちと関わったりするの当然のように思えるんだ。知らなかっただけで家族みんな関わってたし知らない間に慣れたのかも?」
「凄いわ。わたしの家みたいに小さい時から色々知らされていないのにこんな状況に飛び込んでいけるなんて。なにがきっかけだったの?」
「それは……」
二郎はとっさに口にはできなかった。『君に一目ぼれしたからだよ』と心の中だけで言った。目線が吹雪と数秒あって恥ずかしくて逸らせた。
「……??」
「守りたいものが……出来たんだ。夢で何度も何度も守れなくて諦めたくなくてそれで……かな。ゴメン上手く言えなくて」
「ううん、いいわ。わたしも人に言葉で伝えるの苦手だもの。そのせいで姉さんと喧嘩になったりしたし」
「そっか……」
リティーシャと刀耶に部屋を案内し終えた水元は廊下で話す二郎と吹雪を見てニヤニヤする。
「(青春だなぁ~)」
***
―京都地下都市碁盤の目町
就業時間が終わりそれぞれの宿舎に戻っていくエクレシアの職員、妖の従業員たち。中央にそびえ立つ塔からまばゆい光が放たれているのを見た。
光源は純白の左腕。全身に赤い紋様を浮かばせた葛野忍が自身の腕に装着して上に掲げていた。
「解る……解るぞ……これがアレイスター・クロウリーの見た景色……」
上に掲げた腕を下ろす葛野忍。光は収まりうっすらと光を放つ状態に。
「この全能感……小生が絶対的な存在となると確信できる!!」
葛野忍はコンピューターを操作してモニターを映し出す。そこには巨大な岩。
「門の準備は出来た。後は九尾の骸との同化……」
***
山科区にある廃ビルに神名 L 咲夜は居る。そこには返り討ちに会い捕らえられた陰陽師たち十名。
「勘違いも甚だしいですよ皆さん。どうして二流の皆さんが超一流の私に勝てる気でいたのか。数で押せばどうにかなるとでも?」
「馬鹿な……退魔に特化した一番隊がこんな……」
「だから勘違いなんですよ。単純に陰陽師としての力が違うんです。私と対等に戦いたければ一個大隊の戦力か異能者カテゴリー 4 もしくはカテゴリー 5 を数人。 A ランク以上の妖を複数混ぜてぶつける事ですよ。いつまでも私を甘く見ているからそんな様なんです」
「バケモノめ……そんなもの……用意できるものか」
「既にセンジョーの特殊部隊が失敗してるのに何を考えてるんでしょうか葛野忍は」
「違う……違うぞグレイビースト。我々は葛野忍の命令で動いてはいない。エクレシアのエージェントして正しく動いただけだ。お前を闇の住人として殲滅執行したまで」
苦悶の表情を浮かべる陰陽師。茨のような肉の鎖が体に食い込む。
「まぁエクレシアも一枚岩ではないですしね、それはそれはご苦労様。その献身的な働きに免じて殺しません。その仕事熱心さは利用させて貰いますよ」
「な、なにを」
「獣になるんですよ。解放されますよ?さぁさぁさぁ灰色の軍勢にようこそ」
咲夜から灰色の煙が噴出され陰陽師たちを包み込む。
「ぐわああああああああああああっ!!」
「あははははははは!」
【スペースグレイパワー】
煙に包まれた陰陽師たちは次々と犬型の獣人に変化。
「さぁーて、京都の街を地獄に変えましょうかー!私と一緒に!!」
「 WAOOOOOOOOOOOOOOOON !!」
獣化する咲夜、廃ビルから跳躍。それに続く獣人達。
***
―円山公園
顔合わせをするセンジョー側と都メタル側の総勢 10 名。
「このチームに参加するという意味は解ってるんだろうな?」
星熊童子の手にはいつもは持ち歩いていない超合金の金棒を思わせるバットが。
「サーチ&デストロイで OK ですよね?」
冬華は右腕を砲身に変形させて空の月に向かって撃つ真似をする。
「その通り。そして叩く相手には人間も含まれてるって事だ。覚悟が出来て無い奴は帰ってくれないか?足手まといだ」
星熊童子は霄の姿を一瞬見る。一番人間に対し躊躇すると考えたからだ。
「こっちは荒事をやってきた連中ばかりで問題無し、そちらは?」
超合金金棒バットを一振りして聞く星熊童子。
センジョー側は
星熊童子、虎熊童子、夜叉童子、八瀬童子(サイバネ)、黄蜂業助(魔蟲族)。
都メタル側は
冬華、霄、蓮也、斎藤、佐久間。
「問題ないです。霄の事でしたら大丈夫、この子は上手くやれるわ」
冬華は真っすぐ星熊を見据えて言い放った。
「……いいだろう。我々のやることは単純。各々に手渡した札が反応する奴に攻撃を仕掛ける。死んでも構わない、こちらも大勢やられてるんだ容赦はしない」
「この札に込められた『呪』が敵の察知から誤魔化し『呪』もある程度無効化するという認識でよろしいのですね?」
「大体そんな感じだ」
「それで敵の出現場所に心当たりは?」
「晴明神社……と社長は言っていた。あの人は未来が予測できるっぽいのでな」
「……では晴明神社に向かいましょう。私と霄、佐久間は飛べますので蓮也と斎藤は運べますがそちらは?」
「建物の屋根をパルクールで追いかける。鬼の身体能力なら車で行くより速い」
「先に行ってます」
飛び上がる冬華。霄は蓮也の手を引き、佐久間は両腕を翼に変え斎藤は足を掴む。
続く
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