VAMPIREEYE135 「起死回生」
『聞こえますかセツナ・シラミネ。私はリティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲです』
「聞こえますリティーシャさん。木城二郎くんを使って私に接触してきた理由は?」
『この膠着状態から貴女とこの街を救うべく来たのです』
「そうなの?いざとなったら思いっきりお空にぶん投げてやろうかと思ってたのよ」
『……私の想像していた人物像とは違いましたねセツナ。やはりその異次元の扉は移動が可能なんですね?』
「ええ、葛野忍の最初の計画ではこれを中央塔の緊急脱出口から射出して晴明神社の上空に設置するつもりでしたからね」
『この膠着状態をいつまで続けるつもりでしたか?』
「膠着するつもりじゃなかったのですよ。もっと小さくしておきたかったのだけど、この珠結構重くて…… 10 トンとかあるかも?だから気合入れなきゃって、お空高くに投げきれなかったらどうしようって考えてた最中だったのよ」
『それは……なんというか絶体絶命の状況なのに貴女はあまり危機感が無いように見えますね』
「くよくよするの嫌いなの、だからしない。子供の時にそれ悟ったから。おしゃべりは後にしましょうか、リティーシャさんこの珠なんとかするの手伝ってくれるのでしょう?」
『はい、早速始めましょう。まずはセツナ、ジロウの右腕に触れていただけますか?少しの間、異次元の扉を片手で押さえる事になりますが』
「大丈夫、気合を入れればちょっとぐらい片手でいけます。じゃあ二郎くん、私の左側に立ってくれるかしら」
「はい」
ゆっくりと歩いて雪名の左側に立つ二郎。
「こうすればいいのよね?」
義手に触れる雪名。次の瞬間青白い光を放つ義手。
「あら?」
「う……く……雪名さん……ちょっと左手の魔力を………抑えて下さい」
「あ!そうね!」
『……ジョーカーは今のでむしろ良い状態になりました。ジロウ、セツナのように異次元の扉に右腕をかざしてください』
「はい!」
『いいですよそのままじっとしててください……ジョーカーでその異次元の扉を包み込みますから……その後はセツナに地上まで運んで貰いましょう』
「その後はどうするのかしら?」
『シノブ・カドノに返してやればやればいいのです。異次元の門を閉じなければならない状況に追い込んで……つまり痛めつけてやるのです』
「ああ~それいいわね!私ものすごーく我慢してきたからあの男ボッコボコにしたくてうずうずしてるのよ!白峰の女を怒らせると怖いんだから」
『……本当に貴女は見た目のイメージと合わないですね。カヅキもそうなのですが』
「カヅキ……って華月?母上を知ってるの?」
『ええ、まぁ。領域のその外で貴女を支援しているオキタはカヅキ・シラミネの配下の者ですよ?カヅキとは今日出会ったばかりなんですが』
「え?まさか母上復活してる!?うっすらとそんな予感はあったけど」
『ええ、元気でしたよ』
「は~~~~~~……そうですか!あの時、母上を斃した時から僅かに残った気配から消滅しないでどこかに居るとこの十数年ぼんやりと考えてきたんです。顔も出さなければ誰かが騒いでる様子も無いし無理に探す必要もないなと。ついに復活ですか~~~」
『……どういう心境なんですそれ。嫌そうなそうでないような嬉しそうな……』
「えっと……ちょっと後悔してたんですよ。で、母上は完全に亡くなったわけじゃないの私は知ってたから……あの人色々五月蠅かったし離れたかったのもあるんですよね。母上復活するかなーどうかなーそのまま亡くなったらごめんなさい復活したらああ良かったーて感じ?」
『セツナ……いい性格してますね………私と気が合いそうです』
「会えば母上と喧嘩になるでしょうねー………でも私はもう当主ですから負けませんよ。当主の力返せと言われて嫌だってハッキリいいます」
『あはははは……私はセツナ側につきましょうかね?』
「あの……雪名さんリティーシャさん……」
二郎はどんな顔をしていいか分からなかった。
『さて……ジョーカーは異次元の扉を完全に包み込みました、作業を終えたようですね。セツナ、そのジョーカーの球体を持ってもらえますか?それとこの領域の解除を』
「わかりました……よいしょっと」
超重量のジョーカー球体を左肩に乗せる雪名。同時に超極寒領域を解除する。
「お母さん!!」
吹雪が走りこんでくる。
「あらあら、ちょっと見ないうちに成長したわね」
右手で吹雪の頭をなでる雪名。
「よっしゃ!成功なんだな?リティーシャ」
刀耶は拳を握って言った。
「ええ、ほぼ。あのジョーカーで包んだ異次元の門を安全に地上に持って行かなくてなりませんよトーヤ」
【緊急事態発生!緊急事態発生!侵入者あり!緊急事態発生!緊急事態発生!直ちに排除します!!】
警告音が鳴り響く。
「あ、わたしが凍結させてたセキュリティが動き出したのね」
雪名は頬を突いて言った。
「急ぎましょう!隔壁結界の開放時間の余裕はまだありますが!」
「よし、脱出だ!!俺が先頭を行く!!」
刀耶が走り出す。
「私は雪名様の負担を減らす手伝いをします」
沖田は雪名の肩に向かって手をかざす。
「ありがとう沖田さん、この珠物凄く重いから助かるわ」
「お母さんわたしも手伝う!」
「じゃあ吹雪は邪魔なセキュリティを迎撃してくれる?そしたらお母さん助かるわ」
「まかせて」
刀耶の後に続く吹雪、その後ろを雪名と沖田。最後尾には二郎とリティーシャ。
「リティーシャさん何をしているのです?急がなきゃ」
「ここにナイトケースの一つを置いて行きます中央塔の制御の為に。またあの結界隔壁大攻略したくないでしょう?」
「なるほど」
中央塔を飛び出す一行。ガードボット&ドローンが集まって来るのが見えた。
雪名はジョーカー珠を担ぎながら大きく息を吸い込む。
「みんなああああああああああああああああ!!私は平気よおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!だからああああああああああああ!!自由に動いてえええええええええええええええええええええ!!」
爆発音めいた大声で叫ぶ雪名。数秒後碁盤の目町のいたるところで歓声が上がる。
「さ、行きましょ!多分もう大丈夫、ここの人や妖は自由になったわ」
「……雪名さんて華月さんとはタイプが違うけど凄い人なんだね」
「ええ、お母さんは凄いんだから」
碁盤の目町の中通りを走っていく一行。セキュリティボットたちが行く手を遮る。
「うおおおおおお!ストライクスマッシュ!!」
飛行ユニットを変形させた巨大ブーメランを投げつける刀耶。セキュリティボットらを弾き飛ばす。
「エクレシアのエージェントたちは住民の騒ぎを鎮圧するのに手が一杯のはずです」
「こんなロボ何かに俺たちは止められないぜ!」
「はっ!はァっ!!」
セキュリティドローンを氷弾で落としていく吹雪。
二郎は走りながら異常なほど力が湧いてくるを感じていた。義手はまだ薄く輝いている。
「ここは通さんぞ!」
ゲートの前に立ちふさがったのは八馬立人。セキュリティの攻略時に VR 空間で撃破した陰陽師であった。
「止めておきなさい八馬立人。あなたでは止められませんよ?」
雪名が通る声で言い放った。
「だだだだっだだ黙れい!!俺は葛野忍様に次ぐナンバー2の陰陽師!!!」
「始める前からそれでは話になりませんよ」
八馬立人の足元は凍り付き膝まで凍結。
「なにぃ!?」
「安心なさい、動かなければ 3 分ほどで解凍されます。動けば……分かりますよね?」
「貴様を行かせれば……私は……私はああああ!!」
「はいはい、あなたは頑張りました。葛野忍もあなたが私を止められるなど考えてないでしょう」
「く……くそおおおお……」
八馬立人の横を通り抜けていく一行。
「圧倒的ですねセツナ」
「え?そうですか?あの人は一人で出てくるより隊を指揮して力を発揮するタイプだからあの状況では何もできなかったのですよ。冷静に隊を率いてきたのならちょっと面倒だったかも」
地下道に到達する一行、全力で駆けあがる。
―地上にたどり着く一行。
目の前に広がっていた光景はボロボロになりながら量産型 GB と戦う者たち。
「お母さんだ!!」
始めに気が付いたのは霞。
「雪名様!!」「雪名サマダ!!」
吉良と須原も気が付く。
「久しぶりに地上に出て来ましたよ」
雪名は襲い掛かってきた量産型 GB を蹴り飛ばして凍結させながら言った。
「この状況……大体分かったわ」
集まった者たちの活躍で 27 体いた量産型 GB は数を減らし減らし残り 16 体までになっていた。
「ケダモノ退治ね!!ところで霞、葛野忍はどこにいるか分かる?」
「あっち!南の通りで先代たちとやりあってるはず!!」
「じゃあお母さんちょっと行ってくるわね。霞たちもうちょっと頑張れる?」
「うん!」「いけます!」「大丈夫デス!」
「私も頑張って来るわね!今、物凄くやる気なんだから!!」
ジョーカー珠を担いだ雪名は一番に走り出す。
「あ!セツナ待って下さい私もついていきます!!」「私も華月様のところに行かねば」
リティーシャと沖田が続く。
「トーヤ!あなたは私の護衛ですから量産型の相手よりこっちに来てください!!」
「分かってる!でもよ量産型 GB クッソ強いぞ?みんなに任せといていいのかよ?」
「分かってますよ、量産型 GB はシノブ・カドノを斃せば消えるんですからカヅキに加勢するのです!!」
晴明神社の境内を南に走っていく一行。量産型 GB と戦う者達全員がその姿を見ていた。
「お母さんが出てきている!!」「雪名さんだ………」
霄と蓮也は背中合わせで言った。
「雪名様!?」「あれが白峰雪名様………綺麗ですね」
谷川と茉白。
「え!あれが白峰雪名!?すご……」「めちゃセクシー!」「ほぇ~あれが霄ちゃんのお母さんね」「白峰雪名が解放された!?」
ヴァルキリーの 4 人。
晴明神社前の通りに出る雪名ら。
異形となった葛野忍、少し離れた所に血まみれの黒谷。片手片足を失い煙を上げる冬華。そして幼児の姿にまで縮んだ華月の姿があった。
「随分と好き放題やってくれましたね葛野忍」
静かに雪名が言った。その声を聞き振り返る葛野忍。
「なななななな!?莫迦な!!何故お前がここにぃいいいいいいいいいっ!!」
「今すぐこの物騒なもの消してくれるかしら?」
担いでる異次元の扉を包んだジョーカー珠を見せつける。
「な、ななななな……それは異次元の扉!?莫迦な莫迦な莫迦な!!どうしてそんな事が不可能だ……あり得ない!!」
「どうなの!?……ふぅ、でもとりあえず折檻かな、すっごいストレス溜め込んでますからね、あなたのおかげで」
「白峰雪名……ぬうううううううううううう……!!」
雪名に意識を向けている隙に二郎と吹雪と沖田は華月、黒谷、冬華を回収する。
「華月様、黒谷さん、冬華様……もう大丈夫です」
沖田は華月を抱きかかえて走る。
「沖田無事であったか……我は葛野忍を斃しきれんかった……尾は 5 本まで破壊したのだがな……」
「貴女様が無事あることが何よりも大事です。さ、ここは雪名様らに任せて少し離れましょう」
華月たちをリティーシャの設置したナイトケーステントに運ぶ二郎たち。
「セツナ、ジョーカーを足元に置いて結構ですよ。しばらくは異次元の扉が膨張しないように持たせます」
「分かったわ」
「それは小生のものだ!!返せええええええええっ!!」
飛び掛かる葛野忍。しかしテントの周囲に張られたキューブの赤い結界に弾かれる。
「ぬ!?これは陰陽術!!」
「ここはそう簡単に通れませんよ葛野忍」
テントから顔を覗かせる沖田。
「沖田あああああああ!!脱落者の貴様が邪魔をおおおおおおおおおお!!」
「そう、脱略者ですよ私は陰陽師としてはね。しかし、華月様に仕える者としては成功しています!ただ一つの呪だけを磨き華月様に頂いたこの力、同系統の吸・引の呪など跳ね返してやります!!」
「ならば爆放呪で粉砕するまで!!」
テントに向かって構える葛野忍の背後に雪名が接近する。
「な!?」
「私を無視するなんてね!!」
葛野忍を掴みそのまま背後に叩きつける。綺麗なアーチを描いたバックドロップ。
「ぐふっ……」
「さぁ始めましょうか、白峰家当主の力思い知りなさい」
雪名は打撃のラッシュを仕掛ける。葛野忍は下がりながら呪の準備。
その様子を華月はテントの隙間から眺めていた。
「雪名……」
「華月様、今は回復に専念を。お姿を戻すのは今は無理ですがせめて魔力回復だけでも」
黒谷は血で濡らした指を華月の口に運ぶ。
「トーカ、ナイトケースのパーツで応急処置をします」
「ありがとう……リティーシャ」
続く
VAMPIREEYE137「救世主と少年」 Jan 15, 2022
VAMPIREEYE136「異次元の扉」 Jan 14, 2022
VAMPIREEYE134「超極寒領域」 Jan 10, 2022
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search