
ReviveTheGunSword 灰蘇の剣銃
17
「サクリファスシップ」
黒いフードの男の身長は 2m を超えている。顔は暗くて見えない。
「誰だ?」
「俺が何者かなんてどうでもいい。質問に答えろどこに行く?」
「知らない人間に答える必要はないと思うが?」
「チッ……面倒なガキめ。俺は警察官だ、このバイクお前のじゃあないな?詳しい話をきこうか?」
大柄な男は刑事ドラマのように警察手帳を見せたりはしなかった。
「比留山陶子刑事を知っているか?」
「ああん?あのクソアマがなんだって?」
知ってはいるようだ、この男本物の警官か?だとするとこの場面では面倒だ。どうする?柄留は ID もない素性不明な奴だ詮索されるのは避けたい。
「タレコミがあってよぉ、指名手配犯のバイクがここに止まってるってな。なんでこの家の前にあるのか聞かしてくれよ」
「……」
後ろで柄留が何か動いている。妙な事をしてややこしい事態にならなければいいが。
「黙ってろクソポリス!グレイブラスター!!」
いきなりグレイブラスターを放った柄留。銃弾を胸に受け自称警官はその場で棒立ちになった。
「何をやっている柄留!」
「大丈夫だよ和音君!催眠弾だよ、まぁ効くかどうかわかんなかったけど」
「お前……そんなものまで撃ちだせるのか」
「なんか出来そうって、蒐魅の資料とか見てたら思い出すように頭に浮かんできたの」
「ますますお前が解らないな。お前はミレーヌではないのか」
「それよりも和音君、そこのデカいおっさんに質問してみてよ」
柄留は普段はふざけてるくせに不意にスイッチが入ったように狂暴になる。大河の時もそうだった、あのまま柄留が暴れていればどうなった事か。
「……アンタは誰だ?」
「井之頭誠……組織犯罪対策課・巡査部長」
虚ろな目で答える。完全に催眠状態のようだ。
「誰の通報でここに来た?」
「俺が首輪をつけてるクソ共の一人からだ」
「そいつの名前は?」
「七曲シンヤ」
「……あのホストか」「ウゲ、またアイツ~?」
柄留は嫌そうな顔をして舌を出している。
七曲キョウヤは弟のシンヤを使って俺たちを足止めしたのか?
「こんな所より第六地区を探ったらどうなんだ?いくらでも逮捕できるのがいるだろう」
「あの場所は上からも行くなってお達しがあった。少し前に無視して入ってたアバズレの比留山陶子は謹慎処分をくらった」
「……兜金蒐魅を追って第六地区には行かないのか?」
「第六に奴が居れば仲間のクズ共がワザワザ探しにこっちに出てこねぇよ。この街と他の東京都の地区と繋がる唯一のゲートブリッジは厳しい検問が張ってあるし交通機関には監視カメラが山ほどある。兜金蒐魅はこの街から出ていない」
「井之頭刑事、このウェビングについて知ってる事は?」
蒐魅のコンテナのウェビング写真を見せる。
「そいつは兜金蒐魅が殺人未遂を起こした連中だ。どいつもこいつも半グレに関わるクズどもだ。いっそのことぶっ殺してくれた方が良かったんだがな。連中は皆警察病院兼収容所に移送された」
「なぜ蒐魅はそいつらを狙ったんだ?」
「胸糞悪いクズ共だからな。暴行に詐欺に違法薬物の取引に人身売買にマネーロンダリング、これと言った決め手がなくて逮捕できなかった連中だ。兜金蒐魅はアイツらの悪行を知ってダークヒーローを気取ってシメたんだと周囲は騒いでる。正直警察としてもこのクズ共が街から消えて清々してる。代わりに訳の分からん怪人だかなんだかが出てきたが」
蒐魅が連中を狩り始めたきっかけはまだ解らないがこれでウェビングの謎は解けた。その後の行方不明と怪人騒ぎは繋がりそうな気がするが。
「怪人騒ぎといえばキャリバーが関わってると噂で聞いたが?」
「あれは狂人の類だな。怪人狩りをしに現れるが自作自演だと警察は考えた。多大な犠牲を払ってついにキャリバーを突き止め逮捕した。鈴村功太朗って会社員だった」
「また怪人が出てきているが?」
「複数犯の可能性が出てきたと警察は考えている。鈴村功太朗はキャリバーであることを否定してる。裁判はまだだが保釈されたと聞いた」
「蒐魅がキャリバーと関わってるという話は?」
「奴もキャリバーの一味だという線も疑い捜査している。鈴村功太朗が逮捕され兜金蒐魅が行方不明になってからキャリバーは現れていないからな」
保釈された鈴村功太朗は第五地区の仮設住宅に居るのがわかった。
聞きたいことはもうないか?井之頭刑事との会話を覚えておいてあとは比留山刑事と会って話した方がいいかもしれない。催眠弾がいつ切れるかも解らない。
「ではここであったことはすべて忘れ自宅に戻ってくれ。蒐魅のバイクは七曲シンヤのいたずらだったと寝て起きれば全て催眠は解除される」
「わかった」
虚ろな目のままフードを被った巨漢の刑事井之頭は去って行った。
「しかし……」
驚いたのはグレイブラスターだ。催眠状態にできる弾丸だと?その気になれば何でもありなのかあの銃は。
「どうしたの和音君?ボク上手くやったんじゃないの?」
「上手くいきすぎて驚いている。グレイブラスターは何でもありなんだな」
「う~ん出来ないこともいっぱいあるっぽいけどね……このグレイブラスター。ギャングとかチンピラ勢が恐れてるのって蒐魅が怖かっただけじゃないんだね。超狂暴なほぼ全身サイボーグの蒐魅がこんな万能銃持ってるんだから。しかも蒐魅しか使えなかった」
そう聞くとコイツが蒐魅ではないと思う。グレイブラスターを使える理由は解らないが。
「亜瑠はこの街での蒐魅の事も調べたんだろう。普段街の外で会う蒐魅とこの街での蒐魅の違いに気が付いた」
「なるほど、亜瑠ちゃんは街でウロチョロしてる所を蒐魅に見られたくないからミレーヌの格好して M なんて名乗って捜査してたんだ。守山探偵事務所にも行った」
「ああ、そして亜瑠は蒐魅のウェビングを見つけ何をしていたか知った。止めようとしたに違いない。一方蒐魅は監視カメラに映ったミレーヌを怪しんでマークしてた」
「七曲キョウヤがここから関わって来るのかもな。蒐魅は恐らく兄の大河に M の事を話しただろう。大河は七曲キョウヤを使って M (亜瑠)を探し始める。亜瑠は警戒して自分の姿とミレーヌの姿を使い分けただろうな。亜瑠が比留山刑事と連絡を取ったのは G/T がらみからだろう」
「ふむふむ……守山探偵事務所の所長の徳三さんは元刑事で比留山刑事と知り合いだからね。徳三さんから紹介されたんだよきっと」
「行動を制限された亜瑠は蒐魅を止める事は出来ずにウェビングの連中は警察病院送りとなったと考えられる。その後データに残ってたやり取りがあって蒐魅は消え、亜瑠は何らかの原因で意識を失った」
「蒐魅がクズ共をシメたのはどのくらい前なのかな?」
「守山探偵事務所の話と照らし合わせると……一ヶ月ほど前になるか」
「怪人とキャリバーがでてきたのは?」
「……丁度その頃になるな」
それは一度考えたことがある。蒐魅が活動方針を変えキャリバーとして動き出したのだと。だが怪人はどこから現れた?そしてこれまでの話で一度も DMC の名前が出てこない。この街で一番怪しい集団だというのに。
「…………」
「和音君?」
DMC の怪しい何か決定的な出来事は無かったか?
……
…………
あった。ビルの屋上で連中が妙な儀式で人間の姿を変えていた。その映像を見た。
「怪人は DMC から現れているのか……」「えっ!?」
柄留に説明してやる。
「おおー!!そうだそうだそんな事があった!!キャバ嬢が動画撮ってたんだ!!」
「あの従業員、当然動画は警察に見せたはずだ」
「でも動いてる感じないよね?警察内部に DMC のメンバーがいる?」
「かもな……」
あと一つ何か決め手があればキャリバーと蒐魅、亜瑠とミレーヌが繋がりそうな気がする。ミレーヌの言ってた使命とは何だ?
「あ!そういえば和音君、ボクこんなの持ってたんだ」
柄留は使い古された IC カードを見せてきた。
「どこのカードだ?見た感じカードキーのように見えるな」
「全然わかんない」
亜瑠が残したものなのか?それとも蒐魅?
誰に聞けば解る?亜瑠の関係者、若しくは蒐魅の関係者。
「……会って話を聞かなくてはならない人物が比留山刑事の他に居たぞ」
「え、誰?」
「鈴村功太朗だ……」
「ん?」
柄留は鈴村功太朗についてピンときていない。
「ねぇ和音君、ソギカワに催眠弾撃って話聞くのもありなんじゃないかな?」
「……催眠弾の影響が解らない以上無闇矢鱈に使えないぞ」
「むー……」
「とりあえず鈴村功太朗は明日だな。今日はオマエが目が覚めたビルに行くか」
「うん」
柄留が目を覚ましたビルと亜瑠が気を失って発見された場所はすぐ近くだった。
ビルは商業施設、閉店時間を過ぎ普通には中に入れない。
「和音君、裏に非常階段があるんだよ」
柄留の案内で非常階段に向かう。 1 階の階段口には鉄扉、厳重に電子ロックががかかっている。
「さっきの IC カードは使えないのか?」
「ちょっと待って」
柄留がカードをかざすが解除されなかった。
「ここの鍵じゃなかったね」
「まあいい、それなら登っていくだけだ」
飛び上がって 2 階の鉄柵に手を掛けて登る。次はそこから 3 階に飛び移る。
「柄留、無理してついてこなくていいぞ。携帯のカメラで屋上を見せてやるからな」
「大丈夫だよ和音君、ボクだってそのくらいできるよー」
柄留はオレと同じ要領で軽々と 3 階まで上がってきた。
「あ、思いついちゃった!グレイブラスター!!」
グレイブラスターを屋上に向ける柄留。発射されたのはフックロープだった。
「これで一気にグイーンと屋上まで行っちゃおっと!和音君、手だして」
「いや、いい。オマエはそれで上まで行け。オレはさっさと上がってしまう」
「もー!なんで!」
頬を膨らませる柄留を置いて上の階上の階へと一気に飛び上がって屋上に到着した。
柄留もほぼ同時に屋上へたどり着いた。
「……」
「むむ」
柄留も気が付いたようだ。数名の気配がする。
「警備員ならすぐに声をかけてくるはずだな」「そだね……」
威嚇の気を放つと物陰から現れたのは 4 人の黒フードだった。手には儀式で使うような装飾の多い剣。
「 DMC か」
「ククク……今夜の儀式にはこんなおまけがついてくるとは。死のダンスを踊って逝け」
黒フード 4 人は儀式剣を構えた。
「 DMC なら丁度いい」
「和音君、ボク一人で十分だよこんな奴ら」
グレイブラスターを構える柄留。 DMC は剣先を柄留に向ける。
「バカが!」
4 人の剣先から猛毒の針が発射された。しかし柄留の体には命中せずに弾道が逸れ後方へと消えていった。
「当たらないんだなーこれが。グレイブラスターを持ってるボクに飛翔物は当たらない。お前ら蒐魅とやりあってたんなら知ってるはずじゃないの?それともバカ??」
柄留が唐突にグレイブラスターの事を語り出した。記憶?が戻ってきているのか?
「ならば直接刻んで刺すのみ!!」
黒フードたちは柄留を囲んで同時に襲い掛かって来た。訓練されたかのような洗礼された動きは素人とは思えない。
飛び上がった柄留は糸でつられたように空中で停止したまま旋回、ビーム状のものをグレイブラスターから放った。
「ぐっ……」膝をつく者、うつ伏せに倒れ吐く者、 4 人全員の動きが止まった。
「内蔵にズシンとダメージきたでしょ?鍛えてるか若しくはサイバネだろうけど皮膚筋肉関係なしに直接内蔵にダメージ通したら関係ないよね?」
柄留の目が僅かに橙色に光っている。
「なんのこれしき……」
一人の男が立ちあがり儀式剣をもう一本取り出し二刀流で構える。
矢のように飛び出す男。柄留は斜め後ろに飛びながらグレイブラスターを放つ。膝に 2 発、光弾を正確に撃ち抜いた。
「ぐぅあっ……」
派手に転倒して転げる男。柄留は冷静にグレイブラスターを構えて立っている。
「関節をブチ砕いた、もう動けない。DMCのアジトの場所吐いてもらうよ?」
「バカが……俺たちは所詮雇われの身。上級会員しかアジトの場所など知らん」
膝関節があらぬ方向に向いた男は脂汗を垂らしながら言った。
「ホントかな~?自白弾で確認しよっと」
4 発の弾丸を倒れている男達に撃ち込む柄留。普段の軽薄な態度は消えマシーンのように淡々とそれを行った。
「お、俺たちは……」
男らは白目を剥きながら柄留に語りかける。
4 人の男達は上級会員の一人、【 I (アイ)】に雇われた元工作員(ブラックヴァリーというらしい)だった。
普段 DMC は街のクラブやバー等を貸し切りイベント名目で集会を行いそこで信者を勧誘したり取引をしたり情報を収集してるという。上級メンバーは集会を取り仕切りを任されている。上級メンバーは秘密のアジトで幹部や教祖と面会するらしい。
「只の興味本位でイベントに参加したのがきっかけだった……」
「で、 DMC のイベント次はいつ行われるの?」
「明日の夜……第二区のサクリファスシップてバーだ」
「いきなり行って入れる?」
「招待状がいる。ここに 1 枚ある、これを見せれば中に入れる……」
「おっけ~……じゃあお前らはこのまま麻酔弾で気絶してて」
4 人を眠らせる柄留。グレイブラスターをしまうといつもの表情に戻っていた。
続く
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