
ReviveTheGunSword 灰蘇の剣銃
18
「特殊犯罪対策課」
屋上には他に手掛かりは無かった。柄留が服を手に入れた下のファッションフロアーの店員に話を聞くのは営業時間の方がいい。閉店時間に侵入してもリスクが大きい。
オレと柄留は諦めて瞬栄伯父さんの家に戻る。
「明日は鈴村功太朗に会いに行くぞ。それから DMC の集会への潜入だ。一応比留山刑事には話しておいた方がいいな」
「やっと亜瑠ちゃんに追いついてきた感じだねー蒐魅の手がかりは全然ないけど……」
「気になるのは招待状が一枚って事だな。一人一枚ならどちらかしか入れない」
「じゃあボクが潜入するよ多少マズい事になってもグレイブラスターで誤魔化せるでしょ?それにほらボクは ID 無いから後々面倒な事にもならないし」
「……別の意味で心配だな。オマエがやりすぎないかと」
「大丈夫だよ……多分!どうせイカれた連中ばっかだし痛い目にあわせなきゃ」
「……本当に大丈夫か?柄留、なにかオマエ変わってきてるぞ?」
「うん?そうなの??わかんないけどボクがボクを取り戻しつつなるのかな?」
柄留はグレイブラスターをいつの間にか取り出してリボルバー回しをしている。
「左手……右手……うーんやっぱり銃は左手で撃つ方がボクには向いてるかも」
ベランダに出る柄留。ペットボトルを二つ離れた位置に置く。
「何をするんだ?」
「速撃ちってやつ。出かける前に動画で見てたんだけど生身での最速は 0.02 秒。サイバネでもこの速さに到達できるっぽいけど射撃の正確さは未だに生身の速撃ちの人なんだって、凄いよね」
「で、その速撃ちの達人に挑戦しようってのか?」
「うん!多分だけど……蒐魅はその達人並だったんじゃないかなーって。それならボクもやらなきゃって。まぁ見ててよ和音君、弾は空気弾にするからさ」
柄留はグレイブラスターを一度消した。両手をさげてブラブラさせそして夜空を見上げた。次の瞬間、グレイブラスターを出現させて腰撃ちで二つのペットボトルを撃ち抜いた。
「全然だめだぁー多分 0.1 秒くらい……相手が速撃ちのサイバネマンだったらボク負けちゃうよー……」
「負けないんじゃないか?オマエ弾はくらわないとか言ってなかったか?」
「そうだけど速さ勝負に負けるじゃん!先に撃って先に弾丸ぶち込みたいの!」
再び速撃ちを行う柄留。今度は先ほどよりも速かったが一発外した。
「速さだけなら 1 発だけならあの動画の達人オジサンに迫れるんだよねー……それなら弾を誘導にして 1 発で沢山撃ち抜けばいいかな」
「ほどほどにしておけよ」
オレは部屋に戻って亜瑠のデータを見ながら考える。
蒐魅は DMC と関わっていたに違いない。そして亜瑠も気が付いたはずだ。
DMC の目的は不明だが怪人騒ぎの原因と考えられる。そこに現れたのはキャリバーだった。キャリバーは怪人を斃して回った。
亜瑠は M として蒐魅を追っている最中にキャリバーを知ったのではないか?
キャリバーの正体として考えられるのは蒐魅、それと鈴村功太朗。もしかすると二人はチームを組んで活動をしていたのではないか?
亜瑠( M )とキャリバーは何度かぶつかりあった?
お互いの正体を知らないまま親友同士の亜瑠と蒐魅は M とキャリバーとして……
『デモンズエッジ・スキャバード!』
柄留がベランダで叫んでいるのが聞こえてきた。
「……ん?」
また亜瑠の携帯にメッセージが入った。例の読めないメールだ。
……
これを解読すればミレーヌが何者か手がかりが掴める気がするが。
一旦机を離れ茶を淹れて来る。
一息ついたところで比留山刑事の事を思い出した。 10 回目のコールで漸く出た。
『……諸田和音、何の用だ?』
「キャリバーと DMC について聞きたいことがあります」
『そうか、なるほど……そこまで調べたか。とはいえ私がお前と会える時間と場所は限られている1時間後迎えに行く』
「わかりました」
―1時間後
比留山陶子刑事の運転する車が家の前に到着した。素早く乗り込むオレと柄留。車はオータムホース環状線道路に入る。
「この車は守山探偵事務所の所有するものだ。安心しろ警察には追跡されてない」
「やはり比留山刑事は守山探偵事務所とやり取りしているんですね」
「まぁ……そうだな、今後もやり取りすることになるだろう。これから色々と話す……諸田亜瑠がここに居れば話は早かったんだが」
比留山刑事が柄留をバックミラー越しに見る。
「さてまずは……そいつの存在だ。どうにも気になってな、こちらでも色々調べたのだが何も出てこない、そいつはある日突然この街に出現した事になる。そしてお前はあって間もないというのにそいつに世話を焼いている」
「むむ」
柄留は眉をひそめて比留山刑事を見ている。
「比留山刑事はオレと柄留を調べていたんですね。だからオレ達警戒させないために距離を取っていたと」
「悪く思うなよ。お前が亜瑠の双子の兄だとしてもいきなりすべて話すわけにはいかない。疑ってかかるのが刑事の性分だからな」
比留山刑事はダッシュボードから紙のファイルを取り出してオレに渡してきた。
「とりあえずそれに目を通してくれ、その方が話が早い」
ファイルの表紙には特殊犯罪対策課と書かれていた。目次に M (ミレーヌ)についての項目を見つけた。
「特殊犯罪対策課……ミレーヌ……」
「ああ、私は近いうちにそこの課長になるだろう。ミレーヌは隊員の予定だった」
ミレーヌ・ジンデル
黄金の暁会第三団・白魔女。
通称『剣の魔女』
現実離れした単語が並んでいる。創作の世界でしか目にすることのないような。
「フィクションのように思えるだろう?私も始めはそうだった。まぁ現実離れした存在はこの街に珍しくはないからすぐに受け入れたがな。亜瑠からも色々と聞いている龍の事も」
「ミレーヌが隊員の予定【だった】とはどういう事なんですか?」
「ミレーヌは自らの使命で一時的に現界してるの過ぎないのだと知った。つまり白魔女とは使命を終えればこの世界から消え彼女らのいるべき場所に帰るのだ」
「ミレーヌの使命とは?」
「外宇宙からの侵略者の脅威を排除する事。ミレーヌはこの街に現れた外宇宙の脅威を始末しに現れた」
「外宇宙?侵略者?この街にエイリアンが?」
「そうだ。ミレーヌはエイリアンらの事を【グレイ】と呼んでいたな。そして世界中に既にグレイは現れ人類滅亡を狙っていると」
ファイルを見ていくと世界中で起きているテロや事件、戦争などの事が書かれていた。
「 2 か月程前に京都で起きたあの集団テロ事件の事も書かれてますね」
「京都の事はグレイだけが原因ではないが……深く関わっていた。この街も京都のような事態に……いや、それ以上に悲惨な事が起こっていたかもしれん。諸田亜瑠とミレーヌのおかげで防げた」
ファイルを見ていくとキャリバーの事について書かれていた。
【グレイキャリバー】
「キャリバー!?」
「キャリバーはグレイに魅入られた【グレイマン】の一人【グレイキャリバー】だ。怪人退治のヒーローなどではない。人類滅亡を企むグレイの手先となったグレイキャリバーだ」
「じゃあ蒐魅は……」
「グレイに魅入られてしまった。白魔女はグレイの存在を感じていてもグレイマンとして覚醒するまでは様子を見るのだ。こちらの世界で活動するために人間と契約して同化する場合もある。白魔女は本体はなく霊体のような状態なのだ」
「亜瑠はミレーヌと契約したという事ですか」
「ああ。白魔女は魂の波長が合う、生命力が強い、肉体を維持できる媒介を持っている者、若しくは作り出すことが出来る者などを選ぶ」
「蒐魅の話に戻りますが……グレイマンとして覚醒した場合白魔女はどうするのです?」
「その場合グレイの魂を破壊するか宿主本体を破壊するかだな。どちらにせよ無事では済まない」
「それでは蒐魅は……」
「消えた……と言いたいところだがそいつの存在のせいでよく分からんことになっててな……」
再び柄留に視線を送る比留山刑事。柄留は珍しく大人しくして話を聞いている。
「ミレーヌと亜瑠はグレイキャリバーに変わった蒐魅を討った。相打ちになったとも言えるが……その後そいつが現れたのだ。白魔女とグレイの両方の性質を持つそいつだ。おまけに見た目は亜瑠にそっくりだ」
「すぐにこいつ、柄留を捕らえなかった理由は何ですか?」
「マークをして様子を見る事にしたのだ。亜瑠の意識が戻るまでは下手に動くべきではないとな。そこに和音お前が来たのだ、幸いにもその謎の女をお前が管理しているのを見てな。お前の事は亜瑠から聞いている、任せても大丈夫だと判断した。下手に生身の人間がそいつを捕獲しようとするよりずっと安全だからな」
「柄留を見つけたのは偶然……いや亜瑠の力が影響してるのかもしれませんね。話は変わりますが警察はDMCや他の犯罪者に対しては後手に回っているように見えます。怪人騒ぎに対しても警察は何かしているのですか?」
比留山刑事は小さくため息をついて煙の出ないタイプの電子タバコを咥えた。
「……警察はデカい組織ゆえに色々としがらみも多いのだ。DMCに関しては大物政治家や警察上層部や経済界の重鎮などが関わっている。怪人とDMCを結びつける証拠は表に上がってこないし動けるのは事後処理のみだ。ヒーロー魂で現場に突撃して怪人と戦おうとするバカ刑事も居るには居るが家族の安全とは天秤にかけられない。皮肉なことにこれまではグレイキャリバーに助けられていた事になる」
自分自身を鼻で笑う比留山刑事。
「ある意味ではグレイキャリバーはダークヒーローだったんだろうよ。でもな、グレイマンは放っておけない。怪人が消えDMCが消えた後グレイキャリバーは何を始めると思う?戦うべき相手を求めて敵対象の拡大だ。奴の脅威は単体だけのものじゃない。グレイキャリバーは奴の力の一部を使える武器を産み出すことが出来る。それで容易く武装集団を作り出せるのだ。思考を操る弾丸を使えば集団扇動も奴にはお手の物、あっという間にこの国はグレイキャリバーに支配されてしまうだろう」
「……」
「私は兜金蒐魅がグレイキャリバーに選ばれて良かったと思っている。素直で純粋ゆえに危なっかしい奴だったがな。蒐魅が私刑を行ったような連中、どす黒い感情をかかえるこの街の悪人共がグレイキャリバーにならなくて本当に良かった」
「……比留山刑事、鈴村功太朗の事はどう考えてますか?」
「蒐魅と接触があったまでは掴んでいるが、そこまでだ。あの男が蒐魅に共感して協力していたと考えている。グレイキャリバーを消滅しきれていないのなら次はあの男が成るとマークはしている」
「亜瑠の事は」
「……今は医師に任せるしかない。一応科学以外に詳しい者にも依頼はしている、多忙でこの街に来るのはまだしばらくかかるそうだが」
「あの……」
大人しくしていた柄留が小さく手を上げた。
「グレイブラスターの弾丸で亜瑠ちゃんを覚醒できるんじゃないかなーって……」
「やめておく、専門家が来るまでは下手な事はしない。得体のしれないお前という存在の手は特に借りれない」
「はい……」
申し訳なさそうにうつむく柄留。
「ここまで知ってしまったお前たちはもう自由に行動は出来んぞ?下手にこの街を出ようとするならすぐに指名手配となる。秘密を守り協力するというのなら別だが」
柄留がすぐそばにいるというのに強気な発言が出来る比留山刑事。並の度胸ではない。
「脅すつもりではないのだが職業柄こういう言い方になってしまったな。要は特殊警察の仮隊員としてこの街に居る間は行動してくれという事だ。私からの指示は守山探偵事務所を通じて行う」
「……もしボク達が勝手に動いて DMC を壊滅させたとしたらどうなるの?」
柄留が泣きそうな顔で言った。
「それはそれで構わんと個人的には思うが……後始末がとんでもない事になる。その混乱に乗じて訳分からん連中が出てきたら対応できん、この街の機能は停止するだろう。理想的なのは……世間的にも物理的にも完全に潰す事だ。初めから DMC など無かったことにするのが一番なのだ」
「そんな事ができるの?」
「私が就任する特殊犯罪対策課の上の存在はそのくらいのことが出来るのだ。準備に時間は掛かるが可能とだけ言っておく」
オレ達を乗せた車は環状線道路を降りて街中を走る。
「大体の事は話した。何かあれば守山探偵事務所に行くと良い。最後に何か聞きたいことはあるか?」
「では二つ。まずは井之頭刑事についてなんですが」
「……あの男か。刑事としては優秀なのだが上の存在に振り回されている。 DMC に関わっている警察関係者に良いように使われるだろうな。お前たちはあの刑事になるべく関わるな、もし何かあれば守山探偵事務所に報告しろ」
「はい。ではもう一つ、明日オレたちは鈴村功太朗に会いに行くつもりです」
「なんだそうなのか。それなら守山探偵事務所に寄っていくといい、私から言っておく。鈴村功太朗に会いたければ罅助に頼むのが早いだろう」
「……わかりました」
「ではまたいつか会おう。それまでソイツ(柄留)の管理は任せたぞ諸田和音」
「ええ、任せてください」
車を降りるオレと柄留。柄留の表情が暗い。
「らしくないぞ柄留どうしたんだ?」
「だって……グレイの事とか蒐魅の事とか亜瑠ちゃんの事とか……ボクのせいで蒐魅は消えて亜瑠ちゃんは意識不明になったんじゃないかって思うと……」
「どうしてそうなる?」
「だって……刑事さんの話だと白魔女の武器とグレイの武器両方使えるのおかしいじゃん。相反する二つの力だよ、きっとボクが蒐魅と亜瑠ちゃんを吸い取ったんだよ……ボクの本体はきっとミレーヌだ。使命を果たす為にやらかしたんだよ……」
「結論を急ぐな、お前が何者だろうとオレは途中で見捨てるなんてことはしない」
「かずねくぅ~ん~~~~!!」
腕にしがみついてきた柄留。頭に手を置いてそのまま家の中に誘導する。
「絶対いい子にしてるから、役に立つから……」
「出来る事をしていこう。比留山刑事のあの様子だとお前を悪いようにはしなさそうだぞ」
「そうかなぁ……牢屋にぶち込まれて人体実験されるんじゃないの?」
「そんなは事させない。もう今日は遅い寝ろ」
「うん……」
―翌朝
病院から帰った瞬栄さんにコーヒーを淹れ寝室に向かうのを見届けた。
朝食の準備をしているとバスタオルで髪を拭きながら T シャツ姿の柄留が現れた。
「おっはよー!和音君!!」
昨日の落ち込み具合はどうしたのか。
「元気になったな」
「朝シャワーでスッキリしてきた!今日の朝ご飯は何~?」
「オムレツとキャベツの味噌汁だ」
「おいしそー」
頭にバスタオルを巻いて席につく柄留。オレが席につくのをテレビを見て待っていた柄留「いただきまーす!」と言い終わると同時に食べ始めた。
『今日未明、第五地区の化学工場で大規模な火災が発生し今も消火活動が続いています』
アナウンサーの声が聞こえてきた。
続く
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