
ReviveTheGunSword 灰蘇の剣銃
19
「龍の息吹(ドラゴンブレス)」
和音君の美味しい朝食を頂きながらテレビに視線をやるとモクモクと黒煙を上げる工場、ヘリコプターからの映像が映っていた。
「第五地区……比留山刑事の話だと鈴村功太朗は第五地区に居るのだが」
今日これから会いに行く鈴村功太朗。キャリバーと蒐魅の事を知っている需要な人物だ。
「めちゃくちゃ煙出てるね和音君」
「ああ……だがおかしいな。少し調べたが第五地区はある意味この街の心臓部、火災が長々と続かないように高性能を謳った消火システム、消火ロボやドローンなどがサイトで紹介されている。それらが消化活動をしている数が少なすぎる気がする」
「むむ……消防車の数も少ないよね?あれってわざと燃やしている?それとも何か意味があるのかな?」
「考えられるのは誰かに対するメッセージか。一見派手に燃えてるように見えるが実際はそうでもないのかもしれない。或いは第五地区に今は注目させておきたいとかな」
あの屋上で襲ってきた工作員といい DMC が何かやってる?
「柄留、食べ終わったら急いで準備をしろ。守山探偵事務所に行くぞ」
「はーい」
ご飯を食べるのは急かさないのが流石和音君!ボクは空気を読める女だから慌てないようになるべく急いで丁寧に朝ごはんを口に運ぶ。
ニュースは CM に切り替わり最新のサイバーゴーグルを芸能人が紹介してる。 12 万とか高っか……携帯端末でちょこっと調べた所、サイバーゴーグルは元々軍用で開発されたものらしい。一般用にしたのが CM のサイバーゴーグル。インプラント無しでも 8 割程度の機能が使えると言っている。
「サイバーゴーグルか……瞬栄さんも持ってるな。病院の職員の多くが使っているぞ」
「そうなの?ボク ID が無いから勝手に病院入れないし知らなかった」
「サイバーゴーグルを着ければ装着者だけが見えるホログラム画面を手元に出せるからな、荷物にもならず両手も自由になる。傍から見たら宙を手で動かしてるようにしか見えない」
「そうなんだ!和音君使ったことあるの?」
「ああ、一世代前のを亜瑠が持っていた。 CM で映ってたような眼鏡型じゃなくて明らかに大層なヘルメット型だったがな」
「ふーん……」
蒐魅は使っていたのかな?ほぼフルサイバネだし……若しくはキャリバーに変身すればサイバーゴーグルみたいなことできたのかもしれない。
支度をして家を出るボクと和音君。
あ、そういえば G/T のサイドカーバイクは発信機がついてるんだっけ?じゃあ壊せばいいかな。
「発信機あるから壊したいよね」
「何処についてるか分かるのか?」
「知らない、でも大丈夫!」
グレイブラスターを掲げて上に撃つ。光の弾丸は散らばってボクの体にくっついていく。
「弾着!」
ゴーグル、胸、腰、肘、膝に灰色のアーマーを纏う。あんまりゴリゴリに弾着する必要も無いから今回はおとなしめで。肝心のゴーグルは……やっぱりサイバーゴーグルっぽいやつだ!成功!!
「スキャン!」
バイクをスキャンしてシートの裏に発信機を見つけた。
「どうだい和音君!弾着も使いこなせてきたっしょ?」
「そうだな」
和音君は発信機を取り外して握りつぶした。
「さぁ行くぞ」
和音君の運転するサイドカーで守山探偵事務所に向かう。
***
厳重なセキュリティが施されたビルを進み事務所に到着した。異常なまでに厳重な理由は比留山刑事の話で少し解った。秘密組織のアジトってこうでなくちゃ。
「お待ちしておりましたよ」
サイバーゴーグルを装着したビジネススーツ姿の守山罅助が出迎えた。
「比留山刑事から既に話は聞いている」
「ええ、自分も先ほど陶子さんから聞きました。歓迎しますよお二方。そしてこれまで詳しい話をせずに試すような真似をしたことを謝罪します」
「オレはようやく亜瑠に追いついたって事か」
「早過ぎるほどですよ。流石は亜瑠さんの双子のお兄さんです、あの人はこうなることが分かって引き寄せたのかもしれませんね」
「……かもな」
「そのサイバーゴールは何?」
ボクは罅助が今日に限ってつけてるのが気になった。
「すみませんね、実は他の仕事中でして……ドローンの映像をこうして確認させてもらってます。このままお話をさせてもらっても大丈夫ですかね?」
「ああ」
「いいけど……」
「比留山刑事のチームに入った後も探偵業は続けるのか?」
「続けますよ。引き受ける依頼は減らしますが」
罅助はサイバーゴーグルを取り外して机に置いた。
「これから鈴村功太朗に会いに行きます。お二人とも一緒に?」
「そうだ」
「ではすぐに行きましょう。街に不穏な動きがあります急いだほうがいいですね」
「そうなのか」
「その辺りは移動しながら話しましょう」
事務所の奥に進むと電子ロックの扉があり通り抜けると地下の駐車場に繋がっていた。そこには 3 台の車があった。
「真ん中の車で行きます、さぁ乗って下さい」
真ん中の黒い車は車高が低く全面に装甲が施されている。スポーツカーの装甲車といった印象を受けた。
後部座席にボクと和音君が乗り込む。 3 重シャッターを潜り抜けて車道に。車は第五地区に向かって走り出す。罅助はハンドルに取り付けられたタッチパネルを操作して電話をかけだした。
「鈴村さんおはようございます」
『おはようございます守山さん』
「今そちらに向かっています、例の二人も一緒です」
『なるほど……それなら少しは希望が持てる』
「到着するまでどうかこのまま通話状態でお願いします」
『分かった』
交差点の信号で停止する。罅助はバックミラーを見て「来たか」と言った。
「どうした?」
和音君が後ろを見る。ボクも同じ方向を見る。
「予想通りの男が付けてきたので」
男?どれどれ……特徴的なサイバネフェイスをしたバイク乗りが見えた。アイツか!
「七曲キョウヤか」
和音君も見つけた。
「昨日から少しつついてやったのですよ。わざと隙を見せて釣りました」
「何故奴を?」
「院瀬見の犬だからです。つまり鈴村功太朗氏にとっては非常に邪魔な存在。周囲をウロチョロされるよりはこうして釣って捕らえようってわけです」
「あの男、院瀬見に雇われているのか」
「まぁ院瀬見といっても複数の派閥がありますからね。その一つに雇われたのです、鈴村功太朗氏に敵対する派閥ですね」
「七曲キョウヤは G/T のメンバーでもあるのだが……」
「兜金大河は言っていないでしょうが兜金家も院瀬見の派閥に関係してますからね。大河の祖母が院瀬見の一派閥のトップでした。七曲家と兜金家はその頃からの付き合いなんです」
『院瀬見は私、鈴村功太朗の派閥を含め主に 5 つ存在しています』
「院瀬見と兜金家……蒐魅と鈴村功太朗の繋がりか……」
和音君が静かに言った横顔カッコいい!
『私の派閥は穏健派で弟の影彦の派閥は強硬派。他には保守派、リベラル派、中立派』
「……企業の派閥の事なんか興味ないよ」
ボクは小さくため息をついて言った。
「ボクが知りたいのはどこが敵かってだけ。企業の事情なんてボク達に何か関係ある?」
『驚いた……蒐魅がそこにいるのかと思いましたよ』
「蒐魅の事はこれからじっくり聞かせてもらうから」
『もちろんです。それで話は戻りますが弟の影彦の強硬派は近年勢いを増してきたのです。そして第六地区の再開発の話を持ちだしました』
「諸田和音君ならすぐに察するでしょう?ここ数日この街を見て回り話を聞いて、体験してきたのなら」
何でか分からないけど罅助が得意そうに言った。試そうとしないでさっさと言え!
「院瀬見の強硬派と DMC 、六区住民を狙うハンターに怪人、収容所……」
メモを眺めてる和音君。ボクにはさっぱりだから黙っておく。
「 DMC を潰せばそれで終わりという簡単な話ではないな……」
「そうですね、だから我々は鈴村功太朗氏をバックアップします。私たちは院瀬見外部の人間ですが出来る事は沢山ありますからね。守山探偵事務所はこの街を守る為にあるのです。院瀬見の実権を握る人間によってこの街の治安は変わるのです」
とにかく今は鈴村功太朗を死なせちゃダメって事ね。悪い奴に好き放題させない為にも。
車は第五地区に入る。トンネルを抜けると合流車線から大型トレーラーが並走してきた。
いつの間にか七曲キョウヤの姿は消えていた。
「やはり現れましたか。七曲キョウヤが呼んだのでしょう」
罅助が言った。
「……」
「え?」
そうなのかな?ん?あれ?でも……それだと七曲キョウヤの行動おかしいような?
さっき話しに出てた他の派閥の奴かも?でもとりあえず幅寄せして事故らせようとしてくるトレーラーの奴は敵だ!
トレーラーの影からから出てきたワゴン車はボク達の乗る車の前に位置取りし減速し始める。
「どうすんの?やるならやってやるけど?」
ボクはグレイブラスターを取り出して言う。
「ここらで力を見せつけてやるのも悪くないですね。柄留さんは勿論、和音君も宜しくお願いしますよ」
罅助が言った。ゆっくりと車を路肩に停止させる。
「柄留、オレの手助けは無用だ。お前は車と自分の身を守れ」
「はぁい」
トレーラーの荷台から黒マントフードの大男が現れた。ワゴン車からは黒ずくめの男達、機械音からサイバネと分かる。
「ヌガハハハハハハハ!!殴ってやるぞ!壊してやるぞ!そして俺を見ろ!!」
マントを広げる大男。前に会った変態マント怪人だ!!
「ヌガハッ!イケメンぶっ潰しだぁ!!」
ハンマーパンチを振り下ろす大男、和音君はそれを左手でキャッチボールするかのように受け止めた。
「ヌナアアッ!?」
「それがどうした変態男」
「俺のワンパンで逝かなかったのは驚いたが今のは 2 割程度のパンチ。それを受け止めただけで調子に乗るなよ!!」
「いいぞ、来い。遠慮なく全力で」
「死んで後悔しろヌガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
変態怪人は大きく両手を振り上げてハンマーパンチを振り下ろす。再び左手で受け止めた和音君。足元のアスファルトに亀裂が入った。
「バ、バカナァアアアアアアア!!」
「次はオレの番だな」
軽くフッと息を吐いた和音君。瞬間変態男は光に包まれ後方に飛び、トレーラーの荷台に激突した。
見た!見たよ!!あれが龍の息吹(ドラゴンブレス)!!
凄い!!全力で放ったらどうなっちゃうんだろう!!
「ヌガ……」
「どうした?ほんのあいさつ程度だったが?」
「テメェ……何者ダァ……」
「高校生だが?」
「フザケテルンジャネー!!怪人化し人類を超越した俺に向かって舐めた口聞きやがってぇぇえええええええええ!!」
咆哮する変態怪人。空気が振動する、その場にいた全員の動きが止まった。
「全力の粉砕パンチで跡形もなく木っ端微塵にしてやるぜえええええええ」
全身から蒸気を発っし赤くなっていく変態怪人。右腕は熱した鉄のようになっている。
「ヌガアアアアアアアアアアアッ!!」
全力パンチを仕掛ける変態怪人。和音君は怪人の横を通り抜けた。
「チィッ!避けやがったか!!次はぶっこんでやるぞ」
「できるのか?」
そう言った和音君の手には変態怪人の右腕が!!肘から先を無くした変態怪人は切断面からモクモクと蒸気をだして硬直している。
「ありえねぇ……ありえねぇえええええ!!」
ボクがこの前コイツと戦った時は使いこなせてなかったとはいえデモンズエッジ・スキャバードでダメージ与えられなかった。その変態怪人を圧倒してる!和音君凄すぎー!!
「怪人はこの程度の力なのか?」
「クソがあああ!!そんな訳ねーだろ!!」
「お前のボスは誰だ?答えてもらうぞ」
「バカが!答えるわけねーだろ!!」
大きく息を吸い込んで例の臭い煙を吐き出す変態怪人!煙が充満するまえに和音君は一瞬で背後に回って首根っこを掴んだ。
ボクとサイバネ達は和音君が凄すぎて目を離せないまま膠着状態だ。
「ヒィイイイイイ!!何なんだよお前はあああああ!!」
「質問に答えろッ!!」
和音君の目が一瞬人間じゃない輝きを発した。間近でそれを見た変態怪人は脱力、抵抗する力を失っていた。
「俺たち怪人のボスは……かかか……怪人王……です」
「そいつは何処にいる?」
「第五地区に居ます……地下のアジトで毎回場所が変わるので今はどこにいるか……」
「 DMC と怪人王の繋がりは?」
「知りませぇん……俺はヤクがバレてクビになった只のサラリーマンでぇ……」
「何故怪人化した?」
「収容所で治療を受けてたら気が付いたら怪人にぃ……選ばれしものと言われましたぁ」
意識を失って倒れる怪人。体の変形は元に戻り右腕は肘から先がないまま傷が塞がっていた。
「えー!凄い和音君!!なんで今まで力使わなかったのー?」
「目立たない為だ。だがもうそんな必要もなくなったからな。柄留、さっさと残りを斃せ」
「りょうかーい!」
思い出したかのように動き始めるボクとサイバネの連中。
続く
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