
ReviveTheGunSword 灰蘇の剣銃
20
「蒐魅と功太朗」
ボクを囲んでいるサイバネは 4 人。
超速撃ち催眠弾で一気に仕留める?それとも一発誘導弾で 4 人同時に撃ち抜く?
4 人のサイバネが持ってる武器は恐らくショックガン。電気ショックで敵を痺れさせるもの。普通の銃と違って比較的手に入りやすい。
「……」
和音君が見てる。
ここはカッコよく一発で全員仕留めよう。催眠弾を誘導でそれを超速撃ちだ!
0.1 秒でそれをするには……弾丸精製を 0.05 で行わなきゃ。
出来るかな?
出来るはず!
生身の速撃ち世界記録が 0.02 秒。しかも 2 連射!
フルサイバネの蒐魅ならきっと出来た。だったらボクはそれを出来なきゃダメだ!
「シャオラー!」
サイバネが動く。ボクはそれを合図にグレイブラスターを放った。催眠誘導弾をグレイブラスター出現 0.1 秒の速撃ちで!
「ゴ………」
4 人のサイバネが崩れ落ちた。
出来た!出来たよ!!
「さてと」
倒れたサイバネを尋問する。
「お前たちに命令して襲わせたのは誰?」
「……あ、あがががが」
ブルブルと震えている。
「エ……蒐魅が帰ってきた……」
後ろのサイバネが呟いた。
催眠状態なのに恐怖で勝手に喋ってる?それともかかりが甘い?
「ボクは柄留だよ。さぁ答えて?」
「お、おれたちは元グリーンキャップのメンバーだ。黒いフェイスマスクのビジネススーツの男に雇われた。 100 万で」
グリーンキャップ?
……えっと第六地区の半グレグループだっけ?
「雇い主の黒フェイスマスク男は誰?」
「知らない……だがあれは大企業の役員のはずだ……高そうな服に全身に装備されたサイバーガジェットにパワースーツのボディガード、普通の人間があそこまで揃えられない」
うーん……院瀬見の派閥関係かな?
和音君が近づいてくる。サイバネの顔を覗き込む。
「アヒヒイイ……た、大河?」
「違う」
サイバネは恐怖で完全にボク達を兜金大河&蒐魅兄妹と思ってるらしい。
「……いかんな完全に怯えている。亜瑠ならもっとスマートにやるか」
「むむむ……」
亜瑠ちゃん&ミレーヌのコンビはどうだったんだろう?
「あの怪人はその男が連れてきた?」
気を取り直してボクは質問を続ける。
「そうだ……怪人と一緒に襲撃しろと言われた……それだけだ」
これ以上コイツらからは情報聞けそうにないので気絶させて膝関節を破壊しておいた。
怪人の始末は警察に任せるって和音君が言った。
「いやいやいやはやお見事ですね!」
車から降りてくる罅助。
「それでこそこの街を守るチームにふさわしい!さぁ後始末は警察に任せて我々は先を急ぎましょう」
またサイバーゴーグルをつけてる罅助。ボク達を撮ってた?
車は第五地区を進む。
第五地区は中央から放射状に主要道路があって用水路は四角渦巻きで張りめぐらされている。地図で見ると蜘蛛の巣に見える。
「中央の院瀬見タワーは発電所でもある……かぁ」
「そのうちあそこに行くこともあるでしょうね」
それにしても第五地区は生活感が全然ない。工場と建屋ばっかりで走っている車は作業、運搬用のがほとんどで歩いている人はほぼいない。
「第五地区の工場は 24 時間休みなく動いてます。労働者は 3 交代でシフト制、寮と職場往復の他はモノレールで他の地区に移動しますから歩いている人はほぼいないんですよ」
「ある意味安全な地区か」
和音君が言った。
「そうですねぇ一般作業者でも生活は保障され福利厚生もしっかり。シフトの都合で連休は無いですが有休がありますし普通に家族を養っていけて安全に過ごせるでしょう」
「……それなのに第六地区の人たちは移住に反対なんだよね?」
「まぁ……第六地区の殆どの人たちは自由であることを最優先に考えますからね。ですが院瀬見のやり方も強引です。生きるか死ぬかの過酷な環境で自由を叫ぶか、安全に管理されて縛りのある生活をするかの二択を迫られても……とは自分は思いますがね」
「うう~ん……」
「今の状態になる前は第六地区の住民はどうしていたんだ?」
「只の貧困層が住む地域だったと聞いています。この街のどこでも仕事場を見つけ通勤していたんでしょう。第六地区再開発の計画が立ち上がった時、運よく蓄えを残していた世代はそのまま各地区に住み次の世代へ移ってその地区に定着しました。そうではなかった第六地区の人々は半強制的に第五地区に仕事場も住み家も移せと言われ困惑したのです」
「再開発計画が上がって引っ越し出来た者はそのまま各地区に住めたがそれが出来なかった者は当然反発した」
「ええ、何度も何度も説明会を院瀬見は開きましたが第六地区の住民の怒りは収まらず、ついに事件が起きたのです。院瀬見の重役が第六地区の住民に襲われ亡くなったのです。これをきっかけに院瀬見と第六地区は完全対立する形となり今の見捨てられた地区になっていったのです」
「なるほど」「ふ~む」
「陶子さんは当時の資料を調べ兜金大河とも会いその事について話し合ったと聞いています。その中で一連の対立騒動は仕組まれたものではないかという説が浮上してきましてね。……この辺は和音君達には関係ないので今は置いておきましょうか」
「ちょっとまって、比留山刑事と兜金大河は知り合いなの?」
「知り合いも何も陶子さんは学生時代に大河と付き合っていたのですよ」
「ええええーっ!?」
「ははは、自分も知った時は驚きましたし大河に嫉妬しましたね」
「……罅助、 DMC が出現したのはいつ頃からだ?」
和音君は比留山刑事には興味ないっぽい、ちょっと安心した。
「それがハッキリしないんですよね和音君。元々は各地区に置かれていた【六人の見張り役】の一人、第二地区【繁華街の王】が立ち上げたと噂されています」
「院瀬見の息がかかっていた者か」
「ええそうです。院瀬見はオータムホースシティを開発した時に六人の重役にそれぞれの地区を担当させました。その者達が用意したのが見張り役です。 DMC は知る人ぞ知る集団だったのですが再開発の話と役員死亡事件の後から急に表に出て来ました」
「 DMC の内部で何かあったのだな」
「おそらく。ま、院瀬見の事は鈴村氏に詳しく聞きましょう」
車は住宅街に入って行く。無機質な箱型の集合住宅が並んでいる、罅助曰く殆どが社宅。
「この集合住宅地に2万世帯約5万人が住んでいます」
不気味なくらい静か。公園も無いし子供の姿も無い。
「もうすぐ着きますよ」
集合住宅地の中にある仮設住宅の前に車は停止した。
「追手はもう来ないようですね」
近づいてくる車もバイクもドローン無い。
インターホンを鳴らすと電子ロックが開く。ボク、和音君、罅助は家の中には居る。土足式の家でそのままリビングに入っていく。そこには背の高いオールバックの中年男が居た。がっしりしている。
「やぁどうも、私が鈴村功太朗です」
車のスピーカーで聞くよりも生声は響いた。大企業の重役らしく声に力がある。
「やあ鈴村さん、こちらが諸田和音君と柄留さん」
「諸田和音です」「柄留だよ」
「諸田和音君、いい目をしている。そちらの柄留さんは……ふむ。思ってた以上に蒐魅に似ている。顔は全く似ていないがね」
「蒐魅の事聞きたい!!」
「いいとも、さぁそこに座って。知っていることは全て話そう」
質素なダイニングテーブル椅子に全員が着席。鈴村功太朗はペットボトルの水を出してきて皆に配った。
「保釈中の身なんでね、大したものは出せなくて済まない」
「まずは……柄留さんが聞きたがっている蒐魅の事を話そうか。構わないかね守山さん、諸田君?」
「ええ」「お願いします」
「ボクはまずこれを聞かないと他の事頭に入んないよ!」
鈴村功太朗は話し始めた。
「蒐魅と出会ったきっかけは第二地区の路地裏でした。私は仕事の打ち合わせで個室のあるバーで取引相手との商談の後、呼び出した迎えの車を待っていたんです。そろそろ到着するとのメッセージを見て店の外に出ると路地からボロボロの若い女性が飛び出して助けを求めていました。周囲の人々は関わりたくない為速足で去っていき残ったのは私だけでした。すぐに携帯を取り出し警察へ連絡しようとすると女性はしがみついてきました」
『私じゃない!妹たちを助けて!!このままじゃ……』
「傷だらけの女性が指をさすのは路地裏の突き当りにある扉。そこから 2m を超えるサイバネ男がこん棒をもって近づいてくるのが見えました」
『警察来るまで間に合わない!!助けて、助けて……他の友人はもう……』
「警察にコールしながら私は大男に向かっていった。警察を呼んだ、これまでだと。しかし大男はそれをあざ笑いこん棒で私を殴りつけてきた。武道の経験があって護身用のビジネスジャケットを身に着けていた私はその辺のサイバネチンピラに負ける気などしなかった。その考えは甘く、こん棒の一撃で私は吹き飛ばされ壁に叩きつけられました。護身用ジャケットのセーフティが発動し無事でしたが車に激突されたような衝撃でショック状態になり動けなくなりました。これまでかと思った時に上から小柄な女性が降ってきて大男の頭を踏みつけたのです。それが蒐魅でした」
『あんたのおかげで間に合った感謝するよ』
「そう言うと蒐魅は両腕のブレードで大男のサイバネアームを切断しエビぞり状態でワイヤーで拘束した」
『警察への連絡は?』
「『しま……した』と何とか声を絞り出して答えました」
『じゃあ後は中にいるクズ共の始末ね』
「ブレードで扉を切り裂いて中に突撃する蒐魅。怒号、悲鳴、銃声が聞こえてきましたがものの十数秒で静かになり、中から傷だらけの少女を二人の手を引いて蒐魅が出て来ました。少女たちは姉と抱き合ってました。この時蒐魅に聞いたのですが中では腹をすかせた猛獣と人間を同じ檻に入れその様子を楽しむという異常な行為が行われていたと」
『この街はこういった下衆が多いんだよ。あんたみたいなエリートサラリーマンには関係ないだろうがね』
「そう言った蒐魅の声は怒りで震えていました。小柄で高めの声、ざっとみると全身はほぼサイバネに見えアンバランスさに驚きました」
『チッ……また左足首が』
「私はサイバネ技術の技術開発部門であったので蒐魅の左足首の関節の違和感が何かすぐに予想がつきました。私は助けてもらったお礼に体の調整を申し出ました。蒐魅は最初断りましたが私が電子名刺を見せると少し考えた後付いてきてくれることになりました」
『院瀬見の重役がこんな事していいの?』
「『いいんです。貴女にお礼をしなければきっと後悔しますから』私は自宅とは別にある作業場兼寝床の家に連れて行きました。院瀬見の誰も知らない秘密基地です」
『隠れ家?あんたここで何しようとしてたの?』
「『実は……』私は蒐魅に話しました。警察の目の届かない所で行われている凶悪犯罪。それらをどうにかしたい。妻が亡くなる原因も娘が家出した理由もそこにあったので。秘密基地には院瀬見の技術の粋を集めたサイバネパーツやスーツを揃えていました。いつかこれを装備してオータムホースシティの平和を影から守るシャドウナイトになるのだと」
『アタシの他にもそんな事を考えてる奴がいるなんてね。しかも大企業院瀬見の重役』
「わたしと手を組んでくれないか?そうすれば私は貴女を全力で支援できる。残念ながらさきほどのサイバネ相手に立ち向かった時に思い知らされた、私にはあんなサイバネ達相手に勝てない」
『お金持ちの趣味に付き合うのも悪くないかもね。ああ、皮肉じゃないよ?余裕のある人間じゃなければアタシなんかと関われば不幸になるからね』
「これが蒐魅と出会った時の話です。私は蒐魅が兜金の人間だと後になって気が付きましたがこれは縁だと感じましたね。院瀬見は世界をより良くする為に大きくなったはずでした。 KAMINA に追い抜かれいつの間にか内部抗争に明け暮れ院瀬見は腐り始めました。蒐魅の祖母が院瀬見の人間だった頃が一番輝いていた時代でした。この街の平和と院瀬見立て直しの為に私は人生を捧げる決意をしました」
鈴村功太朗は熱く語る。正直者で正義感も強く情熱もある、なるほど蒐魅が組むことを認めた訳だ。
「そうして蒐魅とあんたは活動し始めたんだね。じゃあグレイブラスターを蒐魅は手に入れた後は?」
ボクはグレイブラスターを左手に持って見せる。
「……それは蒐魅が偶然第六地区で見つけたのです。流れ星が落ちた地点にそれはあって一目見ただけで惹かれたと言ってました」
「蒐魅の様子は変わっていった?」
「ええ……活動を始めた頃は二人で計画を練って慎重に動いてたのですがそれを手に入れて使いこなしだした蒐魅は単独行動が多くなり大胆に仕掛ける事が多くなりました。あっという間に裏社会では知れ渡り【グレイブラスターの蒐魅】と呼ばれるようになりました。そしてあっという間に第六地区にある半グレグループを兄の大河と共に全滅させたのです。その頃に DMC の活動も活発になりだしました」
「ふ~ん……当然蒐魅は DMC を何とかしようとしたでしょ?」
「ええ、ですが DMC の会員は何知らないただの一般人が多いので巻き込む事は出来なかった。それに有名になってしまった蒐魅は警戒され DMC は中々尻尾を掴ませてくれませんでした」
「 DMC はこそこそしてたわけね。それで第六地区はどうなったの?」
「第六地区は大河のチーム G/T によってまとめられ抗争は無くなりましたが代わりにハンターと呼ばれる者達が他の地区から人攫いに来るようになりました。しばらくすると怪人と呼ばれる異形の者も現れ出し、私と蒐魅は対策を練る事にしました」
「……もしかして」
「キャリバー計画です。グレイブラスターは出現させている間は変身することが可能なので全身と銃を覆って突如出現した謎の存在として活動を開始したのです。流石に私と蒐魅だけでは第六地区と他全てに対応できる訳がなく G/T にも協力を頼みました」
「それで順風満帆とはいかなかったんでしょ? M ってのが現れたから」
「そうです。Mは怪人に遭遇すれば退治してくれましたが、目的はキャリバーでした。グレイブラスターの破壊もしくはキャリバーの討伐。彼女も神出鬼没で更にキャリバーの弾丸が通じませんでした。Mの操る剣で弾丸は防がれ無効化されるのです」
「Mの正体は掴めたの?」
「いえ…… G/T の中に探偵業をしている者がいるとの事でその人物が調査していましたが判明しないまま蒐魅は行方不明となりました」
「……ボクたちは M の正体を知ってるけどね」
「おお!そうなんですね!是非お聞かせください!!」
ボクは説明が下手のなので代わりに和音君が答えた。比留山刑事や新しい組織の事は上手い事伏せて分かりやすく鈴村功太朗に聞かせた。流石!
「そうでしたか…… M 、いや亜瑠さんと蒐魅は親友。お互い正体を知られたくないと隠してたんですね。それ悲劇に繋がった、亜瑠さんは意識不明、蒐魅は行方不明……」
「悲劇とは言い切れないぞ」
和音君が言った。ボクを見て言った。
「まだ確証を得てないがここにいる柄留が亜瑠の導き出した最適解だと思っている。グレイの支配から蒐魅を解放し M の使命も果たせる方法、それがこの形になったのだと」
「??私にはさっぱり解りませんが……柄留さんが悲劇を回避した結果だと?」
「ああ、コイツの使う力は白魔女とグレイマン両方だ。相反する二つの力を有する存在がここにある。オレは亜瑠と双子だからある程度考えてる事はわかる。柄留の存在は蒐魅を救うために導き出した答えだと」
「では……柄留さんは蒐魅なのですか?」
「違うだろう。だが無関係ではない」
続く
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