
ReviveTheGunSword 灰蘇の剣銃
21
「蒐魅とイレギュラー」
和音君は比留山刑事の話と鈴村功太朗の話を聞いて大体解ったと。
なので簡単に説明してもらうと……
亜瑠&ミレーヌ( M )【白魔女】+守山罅助&比留山刑事
VS
蒐魅【グレイ】&大河+ G/T +鈴村功太朗
VS
DMC +ハンター&怪人+院瀬見他派閥
という事らしい。
そしてボクがデモンズエッジ・スキャバードとグレイブラスターを同時に使える訳も大体解ったっぽい。
……なんで?
「ねぇ和音君ボクが何者か解ったってこと?」
「確信ではない、あくまで亜瑠が何を考え行動したかをオレなりに考えて導き出した仮説だがな」
和音君は書き続けていたメモを見ながら話し出す。
「亜瑠は蒐魅を救う為に今のこの状況を引き寄せた。その代償が昏睡状態なんだ」
罅助と功太朗も和音君の話を聞いている。
「グレイブラスターについてはまだ解らない事も多いが……おそらくアレは一度手にした者に憑りついて完全に支配するのではないか」
「……ありえますね。グレイブラスターを使いこなしていく彼女は徐々に機械的に残酷冷酷になっていきましたから」
功太朗が言った。
「亜瑠はそれを白魔女ミレーヌから聞いていた。救うためにはグレイブラスターを破壊しなければならないと。だがそれでは蒐魅は帰ってこないグレイブラスターの支配から解放されても彼女は消滅する……蒐魅をグレイブラスターと引き離す方法を考えたはずだ」
「一体どんな方法を亜瑠さんは?」
罅助が言った。
「亜瑠は白魔女ミレーヌと契約して M として行動してた。協力者(比留山刑事)の話では亜瑠とミレーヌは一つの体で活動している状態だったと。ミレーヌは使命を終えると元居た場所に帰ると聞いた」
「亜瑠さんの中にいる白魔女ミレーヌはグレイを倒せば退去する……つまり解決した時ミレーヌも蒐魅も消えるということですね」
「ああ」
「詰んでませんか?蒐魅を救う方法はそのままグレイブラスターを持たせ続けるしかないと思いますが」
功太朗が言った。ボクもそう思った。
「蒐魅にそのままグレイブラスターを持たせるために白魔女が敗北した場合どうなるか?亜瑠は命を落とすかもしれない。その後グレイブラスターは覚醒し蒐魅をグレイキャリバーへと完全に変えてしまう。蒐魅のまま残さなければ意味がない」
「蒐魅、グレイ、亜瑠さんにミレーヌ……ここからグレイだけを消滅させる方法は……」
「この 4 人の中で死なない存在はミレーヌだけだ。協力者(比留山刑事)の話では白魔女たちの本体は別領域に存在し使命を果たす時に分身を遣わすのだそうだ。亜瑠は考えただろう……使命を終えたミレーヌの分身を無理やり留め消滅するはずの蒐魅と合わせれば救えるのではないかと」
「おおー!なるほどー!!解った気がする!亜瑠ちゃんは M としてグレイキャリバーとなった蒐魅と全力でぶつかって相打ちに持ち込んだんだ!!そうやって同時に瀕死になって死の瞬間に蒐魅の魂と退去するミレーヌの分身を引き寄せた!」
「無茶で危険な方法だがだが亜瑠にしかできない」
「……成功したのか失敗したのか誕生したのが……ボクなのかな?」
「亜瑠の引き寄せは奇跡に近いほど代償が大きい、現に亜瑠は今も意識が戻らない。そして必ず望んだ結果になるとも限らないイレギュラーは起こりえる」
「イレギュラー……」
ボクはイレギュラー……?
「結果は……どうなったのでしょうか。蒐魅は……亜瑠さん意識不明ですし話を聞くことはできませんね」
功太朗が言った。
「亜瑠が意識不明となって発見されたすぐ近くで柄留は寝ていた。記憶が無い状態でな」
「うん……色々知識はあるけど自分が何者でどこから来て今まで何をしてたのかさっぱり……時々フラッシュバックする記憶もぐちゃぐちゃでそれが蒐魅のものなのかミレーヌのものなのかわかんないし」
「……蒐魅は小柄でしたしフルサイバネになっても元の体のサイズを大きく変える事は動作に支障をきたしますから一回り背を大きくした程度でした。柄留さんの顔は亜瑠さんとそっくりということですが自分が初めて見た時は蒐魅に見えましたね……どうしてそう思ったのか考えていましたが和音君の話を聞いて納得できました」
功太朗が言った。
「柄留の姿は亜瑠に似ている」
「その意味は?」
罅助が言った。
「……蒐魅のなりたかった姿と考える。完全に生まれ変わりたかったのかもしれない。蒐魅は全てやり直したかった、記憶も消し、なりたい姿で全く新しい人生を望んだではないか?……すべて憶測だがな。亜瑠と蒐魅が何を考えていたかまではオレには解らない。亜瑠は蒐魅を救いたかったのは確かだが元通りに戻ることを蒐魅本人が望んでいたとは限らない」
和音君がボクを見てる。
「柄留はミレーヌも合わさっているはずだ、だからコイツは蒐魅ではない、ミレーヌでもない。関係者には悪いがオレはコイツを一人の人間柄留として見ている」
「それがイレギュラー?」
「イレギュラーは白魔女とグレイキャリバー両方の力が残っている事だ。白魔女にとってもグレイにとってもあり得ないことだろうからな」
「うわーん!和音くーん!!」
蒐魅の周りの人たちはボクを代わりとして見るかもしれないけど和音君は違うんだ!
和音君はちゃんとボクを見てくれるんだ!好き!!
「真実の全ては亜瑠の口から語ってもらうしかない。オレがたどり着いた考えはこんな所だ」
「ボクは一生和音君に付いていく!」
「なにはともあれまずはこの街の厄介ごとを片付けなくてはな」
「うん!」
そう、ボクの未来はそこから始まるんだ。
「白魔女とグレイマンの両方の力を持つ柄留さん……なるほど……自分としては蒐魅の記憶を取り戻して欲しいですが」
罅助が言った。そりゃそうよ!ボクは特別なんだい!
「私は蒐魅と共にこの街の平和の為に戦っていた、どう受け止めて良いか……蒐魅……」
功太朗が呟いた。今はそっとしておこう。
***
「白魔女 vs グレイマン vsDMC の形は亜瑠さんの活躍によって白魔女とグレイマンの対立は終結。第六地区 vs 院瀬見+ DMC へと変わりました。ここからどうしていくかですね 」
罅助が言った。
「守山さんの言う通りですね……蒐魅が居ない今、私は和音君と柄留さんと守山さんに協力します。保釈中の身ではありますが」
「裁判で鈴村さんは無罪となるでしょう。証拠は何も無い、警察とすればキャリバーの真犯人を捕らえれば良いだけで鈴村さんである必要はない。つまり我々を狙っている院瀬見の派閥の連中をキャリバー事件の真犯人に仕立て上げれば済みます」
罅助が過激な事を言っている。けど蒐魅がいないのだからその形が一番なのかな?
「叩けば埃がいくらでも出る連中ですのでキャリバーと関連付けて逮捕できるでしょう」
「院瀬見の裏工作部隊にも対抗しなければなりませんね……残念ながら蒐魅を失い逮捕され派閥から追い出された自分にはガレージをお貸しするくらいしかできません」
功太朗はタブレットを操作してガレージの画像を見せる。
「ここで蒐魅のサイバネメンテナンスや武器の調整、街の情報収集など行っていました。この場所は他の誰にも知られていません。君たちなら教えても構わない」
「あ!ひょっとして……」
ボクは IC カードを取り出した。それを功太朗に見せる。
「それは蒐魅に渡していたガレージのキーカードですね……」
「おおー!!ん?でもこのキーカードは M だった亜瑠ちゃんが隠してたんじゃないかな?どういう事??蒐魅は亜瑠ちゃんが M て知らないから………何かあった時の為に渡したのかな?」
「絶対に信用できる人物が亜瑠さんだったのでしょうね。敵対してる M だとは知らずに……亜瑠さんは蒐魅の為にもそこで正体を明かせなかった。明かしてしまえば蒐魅の心は崩壊してたかもしれないですし」
「このガレージの場所は?」
「第五地区です。場所は……地下鉄の階段の踊り場にある消火設備の所から行けます開け方にコツがあって一般人は気付きません。そこから地下水路に降り C ブロックのメンテナンス扉にカードキーを刺してください」
「地下鉄?そんなものが第五地区に?」
罅助は驚いている。
「第五地区の新開発計画で中止になった地下鉄です。シェルターや宇宙開発施設など様々な施設が開発途中で中止されました。地下鉄は第五地区 1 周分掘り終えた所で中止です。私は密かに作業ボットを使い他の誰にも気付かれないように地下鉄のトンネルを整備しましたよ」
「これはいい事を聞きましたね。そんな話何処にも載ってませんから院瀬見の極一部しか知らない情報なのでしょうアジトに最適ですね」
「その通りです。カードキーは私のものともう一枚予備を渡しておきます。トンネル内のセキュリティシステムに反応しないようにカードキーを持って行ってください」
これでカードキーは三枚、三人が入れるって事ね。
「早速ガレージを見に行きたいが……ここに来るまでに襲ってきた連中も気になる。三人とも鈴村さんから離れるのは危険だと思うが」
和音君が言った。うん、七曲キョウヤの動きも気になるし全員で行くのは危ないかも。
「夜には DMC の集会に誰か一人潜入しなければならない。招待状は一枚だからな」
「ではここに残る者、 DMC の集会に潜入する者、ガレージを見に行く者に別れますか?」
罅助が言った。
「はいはーい!潜入はボクが行く!!グレイブラスターは出現自由だし取られないし出してる時は姿も変えられるしボクが潜入に適任かと!!」
「そうだな……柄留に任せるか」
「では自分はガレージに向かいましょうか。この三人の中で一番機械に詳しいですしね。あと和音君は最強戦力ですのでここに残ってもらった方が安心です」
「解った」
うんうん、和音君にここを任せれば絶対安心!
「ん?……外に誰かいるな気配を感じる」
和音君がつぶやいた。それを聞いて功太朗と罅助は監視カメラの映像を見る。
『俺っちを入れてくれませんかねぇ~』
七曲キョウヤだ!アイツは駄目だ怪しすぎる!!
「どうする?」
「無視するわけにはいきませんね。かと言って中に入れる訳にはいかない」
「ブチのめそうよ敵でしょアイツ。ボクアイツ嫌いだからそうしよ?」
「二人はここで鈴村さんを見ててくれオレが出る」
和音君はそう言って立ち上がった。念のためボクは玄関の扉を出たところに立って見張る。和音君はスタスタと歩いて七曲キョウヤに近づいていった。
「やぁやぁ諸田クンと柄留チャン!早速だが俺っちのいう事聞いてくれるよね?」
「さあな」
「そりゃねーぜ、蒐魅のバイクは貸してやったし大河にも会わせてやったデショ?」
「全てはオマエの為だろう?家に井之頭刑事が来たのはオマエの差し金だと解っている」
「オヤオヤオヤ~証拠も無いのに俺っちを疑う?そういう事なら大事な情報教えてやんねーヨぉ?なぁ、協力し合おうぜ?さっきの襲撃者も街の権力者が何をしでかそうとしてるかも知りたいっショ?」
「オマエは信用できない。お前自身が誰も信用せず全ての人間を利用して生きている。サイバーウェアで顔を隠しているが判るぞ」
「アア?俺っちが他人を信用してねぇ?そんなもんこの街じゃあ当たり前ヨォ。弱肉強食は自然の摂理、大河のとの関係もそうだ俺っちはアイツの力を頼って利用してるし大河は俺っちの情報収集力を利用してる。ビジネスライクな親友ってやつよ」
「だからオマエは蒐魅にも柄留にも嫌われてる」
「だから何って話サ。蒐魅は俺っちの服飾小物作品は評価してたしそれを渡す代わりに頼みも聞いてもらってた。好き嫌いはどうでもいい、お互い利用価値があるかないかが重要ってネ。蒐魅は感情的だから扱いに困ったよ、顔も睾丸も片方潰されちまったしナ。まぁ俺っちがアイツの知り合いをズタボロになるまで利用したのを知られたのがマズったな。ミスってバレちまった結果だ。それに比べ諸田クンはクールでしょ?話合おうじゃないか」
「……そう思うのか?オレがクールに話し合いをするタイプだと?」
「んー?違う?怒ったかナ?」
「いいや、ただ不愉快なだけだ。言っておく怒らないのはどうでもいい吹けば飛ぶような存在を一々相手にしていられないからだ。だが逆鱗に触れられれば別だ」
「ハハ~ン逆鱗ねェ……例えば伯父さんとか入院中の妹ちゃんを人質に取ったりとかすれば怒るってことかな?」
七曲キョウヤがその言葉を発した瞬間和音君から空気を震わせる殺気が放たれた!
「冗談でも言って良い事と悪い事があるってのは幼い子供でも知ってるはずだが?」
「ヒュ~!!大河と同等かそれ以上の殺気だぜ、だが俺っちには通じないぜ?頭がぶっ壊れてるもんだから恐怖ってものを感じねえのサ。それよりも情報知りたいだろ?その代わりほんの少しでもいいから頼み聞いてくねえかな?」
「勘違いするなよ?オマエに理など与えるものか、交渉など無意味だと知れ。ここで塵にしてもかまわないのだぞ?」
「ヘッ!言うねぇ~諸田クン!!」
アホだ……和音君が優しいからって調子に乗りやがって!ボクなら全身ぶっ壊してるよ。それにしてもアイツ恐怖感じない本当っぽい。普通ならあんな和音君の殺気浴びたら失神するよ……
「……」
「フゥ~俺っちの負けかな?これ以上粘っても本当に塵にされかねないネェ。まぁいいやその家で守山が誰と会って話してたかなんて聞かないよ。今回はサービスで教えてやるよ~院瀬見の鈴村影彦が派閥お抱えの部隊を率いて第六区皆殺し計画を立ててる。もう動き出してるゼ?その証拠にさっき襲ってきた連中は計画に関わってる院瀬見に雇われたクズ共だ」
「それで?オマエはそれを教えに来ただけじゃないだろう?」
「第六区を鈴村影彦に潰されちゃあ困るんだよ別の派閥のお方が。俺っちとしても第六区は守りたいし大河と G/T だけじゃあちと無理な予感がして諸田クンと柄留チャンに参加してもらえないかと思ってネ」
「……鈴村影彦の作戦は何時始まる?」
「明日の早朝だという所までは掴んだ。部隊の規模や襲撃する場所などはまだ不明サ。で、二人は第六区の防衛に参加してくれるのかい?」
「……」
「ボクは参加するよ!蒐魅が守りたかったもの、ボクも守りたい!!」
七曲キョウヤの思惑通りに動くのは癪だけど蒐魅の生まれ育った地区を守りたい。治安最悪でクズばっかりだけど何も皆死ぬことはない。
「……ならオレも参加しよう。柄留だけに任せるわけにはいかない」
「そいつは良かった、これで大河にいい報告が出来るってもんよ。そしたら夜明け前までに G/T のアジトに来てくれ準備して待ってるゼ」
ステルス迷彩のシートをめくってバイクを出現させる七曲キョウヤ。そのまま乗って去っていった。
「これから忙しくなるな」
***
和音君はこのまま功太朗の家で護衛待機。ボクはこれから DMC の集会に潜入、罅助はガレージの確認に行く。それが終わったら午前2時にこの家に集合。一息ついたらボクと和音君はそこから G/T のアジトに向かう予定だ。
「陶子さんにも一応報告しておきました。街で何か動きがあったら教えてくれるそうです」
罅助が言った。功太朗には比留山陶子は警察の人だとは言ってないからボクも言葉には気を付けよう。
後ろで功太朗はタブレットを触りながら大きくため息をついたりしている。
「功太朗……」
「何だい蒐魅……ではなかった、すまない柄留さん」
「いいよ別に。多分だけど和音君の言ってた話本当だと思うしボクは半分蒐魅なんだよ」
「私は本当に蒐魅を尊敬してたんだ……危なっかしい子だったけど今まで出会った誰よりも純粋で素直で優しく高潔で……この時代、場所にいなければもっといい人生が送れたはずだと思っていたよ。自分は恵まれた環境にいたのに下らない事でもがいて恥ずかしかった」
「功太朗、蒐魅に良くしてくれてありがとう」
「……………」
顔を覆って泣き崩れる功太朗。確定したわけじゃないけど蒐魅はもう多分いないから。
亜瑠ちゃんも蒐魅が大好きだった……だから意識不明になるほどの引き寄せの力を使って奇跡を起こそうとした。蒐魅は救えなかったかもしれないけどその結果ボクはここにいる。蒐魅にも亜瑠ちゃんにも感謝している和音君に出会えたんだから。
続く
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