
ReviveTheGunSword 灰蘇の剣銃
32
「続・デモンズエッジ・スキャバード」
加州清光は言っている。欠けてしまって彼の元を離れる事になってしまった。
もし欠けなければ――
もっともっと彼の役に立てただろうか……と。
「加州清光を再現したというのか?ならば意味は無いと言っておこう。鋼鉄も切り裂くこのフォトンブレードを前に鋼の刀身など無力」
現田は八相構えをとりながら言った。
「デモンズエッジ・スキャバードは魂の形つくるもの。ツクモ神と言えばわかりやすいかなー?」
柄留は目を青く輝かせながら言った。
「……科学では証明できないオカルト的な力であったか。ならばその幻想打ち砕いてくれるわ!!」
「行くよ加州清光、君の大好きだった主の事ボクにもっと教えてよ」
柄留の目が青く輝く。充血していた左目は回復し光が宿る。
「デエエエエエエイ!!」
現田は小手を狙ってからの連撃を放つ。柄留は最小の動きで軌道を反らせて突きを隙間に差し込んで行く。現田の指と手に傷を負わせた。
「ちいぃ……」
「ほうほう……大体こういう動きなのね加州清光」
「速いな、だが浅かった」
「今のは試運転だよ……次が本番、覚悟するんだね」
空気が張り詰める。異常な殺気を感じた現田は大きく下がって構えなおしジリジリと間合いを詰める。
「すぅうううううう……」
柄留の呼吸と共に殺気は更に上昇。全身から立ち上る力によってデモンズスキャバードの羽織がはためく。
「デェエ「そこだ!」
現田の動き始めに合わせる柄留。後の先を完全に取り、刹那速く動く。
輝きを増した加州清光の切っ先が現田の喉、胸、左脇三カ所に突き刺さる。
超合金性のアーマー、虫外骨格をものともせず豆腐のように貫いた。
「が……は……」
現田はたたらを踏んで後ろに下がる。
――刀剣での刺突は深く突き刺されば食い込んで次の動作までに時間がかかる。斬撃と違い攻撃の終わりから返しの次の動作へと移れない。威力は高いが外しやすくリスクが高い。
だが柄留は加州清光から刺突を得意とした主の剣士の情報を元に、自身の力を上乗せしてその戦法を使う。
「(三段の突きを一つに。ただ速さを追及するだけではなく二段目の突きは一段目の突きを消すように、三段目の突きは二段目の突きを消すように)」
一つ目の突きで得た反動で加速して二段目を放ち更に反動で加速して三段目を放つ。
「(突いて押すんじゃない、突きの斬撃をそこに置いて引く――地面を蹴るように、切っ先で反動を)」
柄留の持つ加州清光の切っ先は周囲を明るく照らすほど光を増す。
「大丈夫、解るよ加州清光。君の主の剣技、そして目指していた所……君はもう欠けない、欠けさせない。剣の白魔女の名にかけて」
剣の白魔女ミレーヌの思考パターンが柄留に流れる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
「お、おのれ……!」
現田は突きの構えを取る。リーチで勝る為このような行動に出た。
「来い、来ないならこちらから行く」
「返り討ちで串刺しにしてやる!!」
現田が言い終わったと同時に柄留が飛び出す。それは予備動作も無い突然の突進。ふいに放たれた弾丸を思わせるその動きに現田は反応できない。
現田の頭部、胴体、下半身が三つに分かれてその場で千切れ飛ぶ。まるで体の内部から斬撃が爆発したかのように。
「ぎゃばああああああああああっ!!」
「……絶技・三段突き」
柄留は刀身を左の肘を曲げて挟んで羽織で血を拭う。加州清光と羽織はデモンズエッジ・スキャバードの光となって柄留の体の中へ消えていった。
「大勝利~……蟻アイよりも強かったかなこのゲジ怪人」
目の青白い光は消えていつもの柄留に戻る。
「ん?ボクの携帯にメッセージ?」
いつもの読めないメッセージか来たかと柄留は小さくため息をつきながら表示。
「あれ?」
【警告:白魔女ミレーヌ・ジンデル所持のデモンズエッジ・スキャバード不正使用】
【エラー:強制遮断失敗 再接続失敗】
【通知:通常モードに移行を確認】
「読める!!読めるけどなにこれ……どういう事??」
携帯を眺めて眉をひそめていた柄留、和音が進んでた方向から聞こえてきた大きな音に反応する。
「和音君の行った方からだ…… DMC が出てきてるのかな」
腰を落として力を溜めてジャンプする。横に連なっているパイプに飛び乗り見渡す。
「向こうかな?」
パイプからパイプに飛び移りパルクールで高速移動。大きな倉庫の前に着地するとそこには和音ではなくまたもや甲冑姿の大男。
「カッカッカー!!飛んで火いる虫とはこのことよ」
「は?虫はお前でしょ!?和音君はどこ?」
大男の頭部からは二本の長い触角。
「一応聞くけどお前は何の虫?」
「蜚蠊(ゴキブリ)……の五木…… DMC 制圧隊隊長」
「おえー……ゲジの次はゴキかぁ……マジでキショいんだけど」
「ククク……その嫌悪感は俺にとって武器……」
背中から脂で濡れる切っ先の太い青龍刀めいた刀剣を両手に持った。
「嫌悪剣蜚蠊!解くと味わうが良い!!」
床に伏せる五木、脇からゴキブリの足が飛び出す。そして急ダッシュ急停止を繰り返す。
「うわ……キモ……」
「この嫌悪剣蜚蠊でこれまで 18 人を葬っておる……ククク……超低空から緩急をつけた遠心力を乗せた二刀の攻撃。宙に飛べる者でなければ全て回避は不可能!!」
「デモンズエッジ・スキャバード!今度は肥後同田貫宗広、君だ!!」
反りが浅く豪快な波紋無骨な日本刀が姿を現す。鞘のデモンズスキャバードは分裂して頭巾と笠に変わる。
「ムムムム!?なんじゃいその恰好時代劇の用心棒かいな?」
「違う……人斬りだよ……」
残りのデモンズスキャバードに肥後同田貫宗広を納刀する 腰を落として柄に手を掛けて抜刀の構えの柄留。
「フウム?居合切りかいな??」
「莫迦言うんじゃないよ。これは抜き打ち斬り」
「カッカッカ!なんでもいいだろうそんなもん!わざわざ納刀して強くなるとでも?加速なんかせんわ只のオカルト迷信ロマンだ!!」
「なら挑め、肥後同田貫宗広とその主とボクに!」
「お前こそ嫌悪剣蜚蠊を舐めるなよ」
カサカサと動き回り柄留の集中力を削ぎに来る五木。
「斬るのみ……」
肥後同田貫宗広とその主の思考が柄留に流れていく。
「ただ斬るのみ……」
肥後同田貫宗広は主の様々な思いを受けていたが、いざ人斬りの時には「斬るのみ」の一念だったことを覚えている。そこに怒りも悲しみも喜びも憎しみも存在しない。
――無の境地。
「カカカカカ!『居合切り』などタイミングを外せば怖くない!片手の斬りつけなど威力は知れている。受けきって蹂躙してくれるわ!!」
「……」
柄留は間合いに入れば斬るという気ではいない。
間合いに入ったから斬るのではなく。
そこに駆け引きはなく斬れる時に斬る。ただそれのみ。
刀身の間合いに入り込む五木。だが柄留は抜かずに五木の斬撃をステップで回避する。
「カカカカ!抜けぬか?抜けんだろうなぁこの変幻時代の必勝の剣の前にはナァ!!」
「……」
――まだだ。
独楽めいて回転する五木。ジャンプ回避した柄留の着地を狙って斬撃が襲う。
「足貰った!!」
「……」
柄留は独楽の回転斬撃に巻き込まれる事は無く、大道芸の笠の上で回る笠回しの毬のように上を転がる。
「なんだとぅ!?刃を全て見切って転がっている!?」
「……」
回転を止めて離れる五木。着地した柄留は再び柄に手をかけて構える。
「なんのー!!……嫌悪剣蜚蠊はまだやれる!!」
背部の装甲を開く五木。そこから展開される翅、不快な音を立てて羽ばたき始めた。
「嫌悪剣蜚蠊超奥義・飛翔吃驚突!」
「――!」
五木の目の前にいたはずの柄留が左に移動していた。
右足は大きく前に、左膝は地面着くほど低く、伸びた右手に握られた肥後同田貫宗広は鞘から抜かれており刃は上を向いている。下からの斬撃を終えた事が解る。
「な……」
左を向くと五木の体は斜めに傾いていく。バランスを崩したのかと力を込めるが傾きは止まらない。やがて地面に落ちそこでようやく自分の体に何が起きたのか理解した。
体は右脇腹から首にかけて切断されていた。地面から残った体を見上げる五木。
「何が起きた……」
「ただ斬ったそれだけの事」
絶命する五木。
柄留はゆっくりとそれでいて無駄のない動きで立ち上がって納刀する。鯉口は切ったままで完全に納刀はしない。その状態で周囲の気配を探る。
「そのタンクの影にいるな……」
「クヘヘヘヘ……ばれたか」
電磁二刀鎌を持って現れたのは蜘蛛に酷似した体を持つ男。
「今度は蜘蛛か」
「違うねぇ……ヒヨケムシの吉行!五木とは仲が悪くてなぁくたばってくれて良かった」
「――」
閃光めいて放たれる抜き打ちの斬撃。吉行の右腕を切断した。
「ギイイエエエエエ……」
「……外したか」
「いてぇじゃねえかよ……だが致命傷は避けさせてもらった」
柄留の被っている笠の端が破壊されていた。斬撃に合わせて吉行も鎌の一撃を放っていた。柄留の方が速く先に斬撃が右腕を捕らえたが吉行には見えていた。
「恐ろしい速さの斬撃だな……五木と違って俺の速さは瞬間のもの。だが誰にも負けねぇ自信はある……まぁつまりカウンターが得意って事」
「……」
「本当はカマキリになりたかったんだけどよぉ……何故かこんなヒヨケムシ……」
切断された腕はいつの間にか出血は止まり背から生えた腕が鎌を持ち直していた。
「次はとらえるぜ。お前の速さに驚いたがもう把握した」
「速さ勝負が望みか……デモンズエッジ・スキャバード……和泉守兼定」
「あああああん?」
「数々の和泉守兼定の中でもこの子は特に剣速に優れた主に使われていた子」
白柄の柄に変形するデモンズエッジ。笠と頭巾は腰に巻き付いて絹布帯を模した物へと変わる。
「それで何がかわるというのだ」
「……(雨粒が落ちるまでに 3 度斬りつけ 3 度納刀。空中の薪を 8 回切りつけ 9 等分)」
――神速の剣技を持ちすれ違いざまに相手を斬りながらも立ち止まることは無い。そんな和泉守兼定の主は情に厚く助けを求められれば敵味方の区別なく手を差し伸べた。
剣の間合いでの瞬間的な速さなら先ほどの肥後同田貫宗広の主に勝る。柄留はそう感じ取った。
「――っ!!」
柄留から仕掛ける。相手の左側を取るように移動して 3 連撃。 1 撃目は吉行の鎌を弾き、合わせてきたカウンターの鎌攻撃の持ち手指を斬り落とし、 3 撃目は左手の鎌を弾き飛ばした。下がる吉行、柄留はズイと歩進め更に連撃を放つ。
常人離れした身軽さと体幹で間合いと機を見極め斬りつけていた肥後同田貫宗広の主とは違いこの和泉守兼定の主は筋力と持って生まれた才と鍛錬によって磨かれた技で繰り出す剣技の主。
「グエエエエエエエエエエ……!」
柄留の 8 連撃を受けて両腕を失う吉行。電磁の鎌二本は弾きと飛び後方に転がっている。
「バカな……人間が到達できる速さを超えたのがこの俺だぞ……貴様のような生身の小娘が何故……」
「剣の白魔女だからだよ」
袈裟斬りを入れる柄留。吉行は首から脇までを切り裂かれ両断された。
「ふう~……」
デモンズエッジ・スキャバードを解除する柄留。またメッセージが届いたが先ほどと同じだったので一瞥して画面を閉じた。
「三連戦だったけど……不思議とあんまり疲れてない。デモンズエッジ・スキャバードを使いこなしてきてる?やっぱりあれかなぁあまりにも凄すぎる人間離れした逸話の剣は呼び出すのに負担かかるみたいな?世界一有名な聖剣とか呼んだりしたら死にそう……そう考えたら菊一文字とかソハヤノツルギはここ一番で呼ぶくらいがいいのかな」
右手を見つめる柄留。
「亜瑠ちゃんはミレーヌと融合?してたからめちゃくちゃ使いこなせたのかも」
本当にミレーヌは蒐魅と融合して自分になったのだろうか?柄留はそう考えながら周囲を警戒する。
「早く和音君に追いつかなきゃ」
タンクの壁面を駆け上りステップを跳びパイプを駆ける柄留。その様子を七曲キョウヤは眺めていた。
「蒐魅とは違うもう一つの力ねぇ……」
動画を送るキョウヤ、すぐに折り返しのメッセージチャットが来る。キョウヤはサイバーフェイスに表示させて読む。
『引き続き監視を続けろ』
「了解~っ……と。さてさてどうなる事やら……この街の行く末は」
柄留とは違うルートで中央塔に向かうキョウヤ。
動画を送った相手はキョウヤの最優先される仕事の依頼主。
続く
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