
諸田和音:龍の力を持っている少年。
柄留:二種類の不思議な力を持っている少女
院瀬見:オータムホースシティを実質支配している大企業
鈴村功太朗:院瀬見の良心とも言われているカリスマ。寛大で優しく礼儀正しい。
鈴村影彦:功太朗の弟。臆病で卑屈だが行動力はある。兄にコンプレックスを持っている。
ReviveTheGunSword
灰蘇の剣銃
31
――第五地区中央塔
怪人王トキナガこと時田麻村は妻の 樹玲とソファに座りながらモニターを眺めている。その傍らには山羊の髪留めをつけた魔女。
「イレギュラーが発生したか」
「全く問題ないですよ。たかが二人始末すればいいだけです。問題はむしろ LOKI の連中です。あれは完全に想定外ですね 」
魔女はラウンジのワインを一口飲んで言った。
「だったらどうにかなさい!」樹玲が叫んだ。
「そうですねぇ……あれは放置できません。向こうはかなり準備をしてきたように思えますのでこちらも対抗手段を準備しますね」
「なにを悠長な……」
「私がパッと行って LOKI と戦って始末してくればいいとでも思ってます? 」
「できるならしなさいよ」
「何か勘違いしてませんかね?私は面白いからあなた達に協力しているだけなんですよ?命令なんて聞きませんし私は私のやりたいことだけしかしませんよ?」
「くっ……」
「まぁまぁ、仲良くしましょうよ。私は LOKI に興味が出てきたのです。でも好き放題されるのは宜しくないのでちゃんと対処しますよ。なので、あの不思議な少年と妙な少女の殴りこみはあなた達でどうにかしてください。怪人王夫婦の力見せつける時ですよ 」
「……いいわ!あんなガキども私たちの敵ではない、あんたは LOKI をどうにかしてくればいい 」
「ええ、ではまた明日会いましょう」
魔女は影に沈んで消える。樹玲は爪を噛み苛立ちを見せていたが、麻村は落ち着いて外の様子が映し出されているモニターを眺めている。
「樹玲、何も心配することはない。影彦派閥など所詮最小の派閥。勝った連中は思い上がっているに過ぎない。今この中央塔には DMC 怪人が集結している負けるわけが無かろう」
「え、ええそうね」
「 DMC 上級怪人の終結だ…… LOKI のように今度はこちらが力を見せつけてやる番だ」
***
――第六地区・廃校
「流石は影彦だな、行動の速さにはいつも驚かされる」
「……それだけが取り柄なんだ。兄には何もかも敵わない」
廃校のグランドに設置されたテントで鈴村功太朗と影彦は顔を合わせていた。
「今期中に第六地区の計画を進めなければならなかったんだ……まさか下半期に入ってすぐにこんなに話がまとまるなんて……兄の連れてきた LOKI は只者じゃないな」
「こんな血生臭い方法じゃなくて誰も傷つかないのが良かったんだが……結局先伸ばしにしても犠牲になるものが増えるだけなんだと気付かされたよ。 LOKI のやり方は好ましくないが院瀬見の開発事業と第六地区の住民の説得、それと影彦との和解ができたのが大きい」
「……」
影彦はクリムゾンに取り付けられた心臓の鎖を 1 秒たりとも忘れられないでいる。
「 LOKI と共に進むのは危険だとは思うが彼女らは命を賭けて自分たちの力を示して見せた。少なくとも派閥の連中よりは信用できる」
「兄は……いや、そういう所が人を惹きつけるのだろうな。案外 LOKI とは元院瀬見の社員なのかもしれん」
「んーむ……自分ではよくわからん」
「それはそうとこちらの怪人部下を受け入れるように第六の人間語りかけてくれて感謝する……兄でなければ争いになってたはずだ」
「殺し合うだけでは何も解決しない。第六区の開発には影彦の部下の力も絶対に必要なんだ。第六区が開発されれば人々の生活も向上するそうすれば街全体も豊かになる」
「ああ、きっと」
功太朗と影彦のテントにクリムゾンとハートが入って来る。
「すっかり兄弟同士打ち解けたようですね。これからの働きを期待してますよ。面倒ごとや荒事は LOKI が引き受けますのでどうか仕事に専念してください」
クリムゾンの姿は骸骨ではなく若い女性、ハートはフードを外しピンクと水色のツートンカラーの髪が見えている。
「君たちはこれからどうするのだ?」
「第六区の調査ですね。ここが私たちの拠点となるので把握する必要があります。第六区を仕切っている G/T の代表と回るつもりです」
クリムゾンは柔らかい表情を作って言った。
「そうか」
「心配しなくともしばらく院瀬見は第六区に戦力は送り込んでこないでしょう。調査の為に人は来るでしょうが。出来るだけ第六区にいる方が良いでしょうね」
「まぁ自分はそういう訳には行かないがね」
「ご心配なく、功太朗あなたが外出する時はわたくしか他の LOKI メンバーが付き添いますので」
クリムゾンとハートはテントを出る。
「クリムゾン様、功太朗のボディガードの火を吐く少年、銃のバカ女、長髪の探偵は監視しておかなくてよいのですか?」
ハートが言った。
「彼らは功太朗や第六区に危害が及ばない限り平気です。今は様子見しておきます、こちらから積極的に関わる必要もないので」
「はい」
「少年と少女は DMC なるカルトを攻撃するみたいですね。 DMC は院瀬見と深い関係があると影彦に聞きました」
「クリムゾン様は DMC をどうするとお考えで?」
「放って置く気はありませんが優先順位は低いですね。少年たちが潰してくれるとありがたいのですが」
「彼らが失敗した場合第六区と功太朗にターゲットが向きますよね」
「いいじゃない、向こうから来るなら貴女や他のメンバーが思う存分潰せば。わたくしは DMC に負けるなどと微塵も思っていません、わたくしが揃えた LOKI メンバーはそんなやわな者達ではありません、そうよねハート?」
「勿論です! DMC が攻めてきたら皆殺しにしてやりますとも!!」
「鈴村功太朗を見つけて取り込めたのは良かったですわ。ハートが周辺調査を頑張ったおかげですわね。最初の予定ではゲリラ活動して力を蓄えるつもりでしたから」
「お役に立てて光栄です」
廃校の校庭に駐車している SUV 車の後部座席に乗り込む二人。運転席には G/T の木津彪助手席には兜金大河が乗っていた。
「もうええのか?」
兜金大河は消したタバコをダッシュボード横の缶に吸い殻を投げ入れて言った。大河の合図で車は走り出す。
「ええ、廃校の見張りは付けていますし鈴村功太朗は信用できる人物です」
クリムゾンはフードを被り纏わせている液体金属アンドロイド『来夢』を変形させて顔から外して骸骨姿へと変わる。その動きに合わせてハートも黒いフードを被る。
「そうかい……ま、それは俺も同意見やな。あの男は不思議な魅力がある。ああいう男が院瀬見で力を発揮できればこの街もかわるんやろうな。それはそうと何回かその顔が変わるの見たけど慣れへんな……ずっと女の顔じゃあかんのか?」
「クリムゾンとしてのわたくしの姿は今の骸骨姿。顔は対面用ですよ」
「じゃあさっきの顔もプライベートの顔とは違うと?」
「そうですねプライベートの顔はメンバーと親友にしか見せませんので」
「お前ら LOKI を完全に信用することはできひんが……ビジネスパートナーとしてなら大丈夫な気がする」
「それで結構です仕事はキッチリとやりますよ。なので兜金大河、貴方もお願いしますね」
「ああ、わかっとる仕事は手を抜かん。それに LOKI の提案は悪くない。断った場合第六区の住民は行き場も無い事もわかっとる。お前らが最終的になにをしようとしてるのかは聞かん。ワシらはこの街で普通に生活で来たらそれでええんや」
「『院瀬見をぶっ潰せ~!』と酔っ払ったりトリップしたり暴れて騒ぐ、違法な手段やそのひぐらしで生きている第六区を変えられれば良いと?」
「衣食住のレベルが上がればそんな事せんようになる。まぁごく一部の連中は変わらんやろうけどそんなもん他の地区にもおるしな」
「貴方は見た目や風貌、声のイメージと中身はかなり違うようですね」
「ハ!お前のイメージする解りやすいバカな連中のお山の大将は全部消えた。 G/T が全部潰して解散させたからな。バカやって暴れるだけではこの街で生き残れへんのや。上の世代が残してくれたもんを消費して他の地区に敵を作っても何にもならん。こんな格好して武装してるんは身を守る為に戦わなあかんからや」
「自衛の為でしたか。 G/T とはただの反社会的組織ではないのですね」
「……まぁ大層な事を言ったがワシの思い描いてる G/T の姿と現状はちと違うがな。お前のいう通りただの反社メンバーもおる。妹の蒐魅は一番の理解者やったがそれゆえに色々我慢できひんことがあってしょっちゅう喧嘩しとった」
「なるほど、是非その蒐魅と話をしたいものです」
「残念やが行方不明や。死んだかもしれんし……別人になったんかもしれん」
「何か事情があるという訳ですね。一つ言っておきたいのですがビジネスパートナーであってもわたくしや LOKI に対し攻撃的な者は容赦なく排除しますのでご了承を。そうならないように兜金大河貴方はならず者達を制御してくださいね」
「ああ、 LOKI に喧嘩売っても何の得にもならんちゅうことを言っとく……話は変わるがお前ら諸田と柄留にはあまり関心ないんか?」
「そんな事はありませんよ。無視できない存在です特に少年の方は」
「あいつの関心は今 DMC に向いとる。その後どうなるかは知らんぞ」
「なんです?その言い方、まるで次は LOKI と対立するかのような」
「 LOKI のやり方がえげつない、だから気をつけろと言いたいだけや。せっかく第六区が変わろうとするときにアイツらと揉めるのは勘弁や」
「まぁまぁ…… LOKI は基本目立つ行動はしません今回は特別にアピールも兼ねての行動だっただけですよ。目的はこの街を良くする事ですのできっと少年にも理解してもらえるかと」
「アイツと初めて会った時、ワシと同類の者かと思ったんや。特別な力を持った少し周囲の人間から浮いている存在ってな。でも違った、アレは少しなんてものじゃあ無い。さっきのアイツの暴れっぷりを見てそう思った。人間がどうこうできるレベルではない災害の類やぞ」
「災害が起きた時どれだけ被害を抑えることが出来るのか、それをできるのも人間だけですよ。人間離れと言えばわたくしも相当なものだと思いますけど?」
クリムゾンは自信満々で顔を半分整形してすぐに骸骨に戻した。
「冗談はさておき、忠告はありがたく受け取っておきますね。他のメンバーにも変に刺激しないように言っておきます」
「アイツは何も無い時にはただの優男に戻るはずや。この街で異常な悪意と怪物に遭遇したせいで目覚めさせてもうただけやと考える」
「随分とあの少年の事に詳しいのですね」
「ワシも力に目覚めたのは同じような状況やったからな。妹がバカどもに喧嘩売られて両腕失った時に悔しさと怒りで目覚めた」
「なるほど……」
クリムゾンは直ぐに和音の対応を考える。 LOKI は表向きはこのまま鈴村功太朗のビジナスパートナーとしての立場を変えずに行動すると決めた。和音と柄留と対立しても負ける気はしなかったが対立しない事に越したことはない。
それと――
大河の話で和音の力に興味がでた。解明して自分たちに活かせないかと考える。
クリムゾンらを乗せた SUV 車両は第六地区の砂利道を走る。
***
和音と柄留の乗ったサイドカーは第五地区の院瀬見重工第三工場のゲートで停車した。その後ろから遅れて七曲キョウヤのバイクが停車。
「第五地区は広いっすからねぇ……闇雲に突撃しても怪人王は見つかんねえよ?」
七曲キョウヤは端末からホログラム立体地図を表示させて言った。
「あのそびえたつ中央塔にいるのだろう?だったらここから最短距離で進むまで。奴らはもうオレたちが来たことを知っているはずだ」
「え?そうなの和音君?」
柄留はサイドカーから飛び降りて言った。周囲を見渡すが人の気配はない。
「人払いをすませて監視用のドローンが飛んでいる。迎え撃つ気満々なのだろうな」
「なるほどねー……にしてもドローンめちゃくちゃ飛んでて鬱陶しい。撃ち落としていいよね?」
柄留は右手からデモンズエッジ・スキャバードを出現させる。純白の鞘は血管のようなものが脈打っている。
「ソハヤノツルギ!でえええい!!」
いつもよりもスムーズに刀剣を形作る。柄の無い剥き出しの刀剣を鞘から引き抜くと青白い光を帯びていた。柄留は遠心力をつけて円盤投げの要領でドローンに投げつける。
光輪と化したソハヤノツルギは次々とドローンを破壊して飛翔する。周囲 100m の範囲にあるドローンを全て破壊して戻ってきたソハヤノツルギを鞘で迎えて納刀した。
「どんなもんだい!」
「上達したのか」
「うん、蟻アイと戦った後から調子いいの。グレイブラスター控える分こっちで頑張るよ。いざって時に全力全開出せるようにね!」
七曲キョウヤはその様子をサイバーマスクで撮影し端末に記録していた。
「俺っちは離れて後から付いて行くよ和音君や柄留チャンみたいに強くないからねぇ」
「勝手にしろ」「なんかあってもボクは知らないからね」
「コソコソさせてもらうぜ~早速なにか来たようだしなぁ」
ゲート横の守衛室から現れたのは甲冑をモデルにした強化スーツを纏った男。
「侵入者、お前たちを排除する」
腰に差したフォトンブレードを抜く甲冑男。柄留が前に出る。
「ここはボクに任せてよ和音君」
「解った」
柄留の横を通りぬける和音。甲冑男はそれに反応して飛び出す。
「おっと、お前の相手はボクだよ!」
金属すら切り裂くフォトンブレードをデモンズエッジで受け止める柄留。
「む……怪人強化と特注スーツとフォトンブレードを持つこの俺の刺突を受け止めるとはな……」
「へぇそう……なんの怪人なのかな?」
「蚰蜒(ゲジ)」
「うへぇ……ゲジゲジかぁ」
甲冑ゲジ男の高速 9 連斬撃を全て捌ききる柄留。その様子を見た和音は先に進む。
「俺は現田重高……第三工場警備主任」
「柄留だよ。苗字は多分諸田になる」
再び 9 連斬撃を放つ現田、柄留は一歩も下がらずにフォトンブレードの鎬を弾いて捌く。
「この反応速度……貴様サイバネか」
「全然違う 100 %生身だよ。でもまぁ 100 %人間かって言われたら違うかも」
「そのような才能があるものをここで排除しなくてならないのが惜しい……」
現田は大きく後ろにとんでしゃがんだ。わき腹から無数のゲジの足が飛び出した。そし地を這うような姿勢を取り弾丸の如く突進する。
「見えてるよ」
迎え撃つ柄留。しかし現田は減速せずに直角に曲がって柄留の向かえうつデモンズエッジを躱し側面から動作の少ない斬撃で首を狙う。
反応した柄留はツイテールの髪を少し斬られながらも無傷で回避。
「ほう、今のを避けるか。一撃で楽に死ねたものを……」
「デモンズエッジ・スキャバード……加州清光」
デモンズエッジを一度納刀して再度引き抜く柄留。銀色の輝く刀が出現、切っ先は欠けたようなシルエットでまばゆい光を放っている。
「加州清光……だと」
「そう、この子がお前の相手にふさわしいと思ってね」
柄留は少し腰を落として平正眼に構える。デモンズスキャバードは鞘から羽織へと姿を変え柄留に纏わりついた。
続く
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