秋馬昊菜:IDは院瀬見社員の江藤紅子を使う
丹羽心鷺:IDは院瀬見社員の矢満田ナオを使う
LOKI
:その5「クリームブル」
「ヘイヘイヘーイ!!これからお仕事じゃなさそうだけどちょっとお話していかない?」
「――?」「ここは私にお任せを」
派手に染め上げハリネズミのように尖らせた髪、むせかえるほどの香水、白いビジネススーツに黒シャツ、胸元をはだけ派手な黄金のネックレスを付けた男が昊菜と心鷺の後ろから声をかけた。
「去れ、私たちにかまうな」
心鷺はハッキリと聞こえる声で言い放った。
「ひゅ~~~~~~!カッコイイねぇ!!痺れちゃうぜこれはもう去れないっしょ!!」
「退け」
心鷺は風のように踏み込んで掌打を男の胸に叩き込む。吹き飛ばされた男は地面に転がった。
「いってぇなぁ……こんなことしてタダですむとでも?スーツのクリーニングと慰謝料合わせて 500 万払ってもらうぜ」
スタンガンを取り出す男。
「下衆が」
次の瞬間、男の右手はスタンガンを持ったまま切り落とされた。心鷺は斧振って地面に血をまき散らす。
「へ!?あれ??俺の手!??」
「もう去らなくていい、ここで死ね」
「え?ええ??……」
「理解力が無い奴だな、左腕も落としてやるか」
「ひいいいいいいいいいいいいい!!」
心鷺の斧はε(イプシロン)アックスと呼ばれるもの。遠心力をつけて叩き切る、押し付けて引いて斬る、柄と刃の長さがほぼ同じで両手持ちもできて防御にも優れる。大型戦斧のバルディッシュを短くしたような形状をしている。
「おおおおおおおお俺を殺したら店が黙ってねぇえぞ!!どこの誰だろうと必ず追い詰めるヤベー店だかんな!」
「黙れ」
「ナオ(心鷺)、少し待って」「はい、ご主人様」
昊菜は落ちているスタンガンを拾い自分に押し当てて見せた。
「どの道スタンガンなど効きませんけどね」
昊菜はスタンガンを叩き壊してハンドバッグを黄金杖剣に変え切断された右手に刃先を落しつける。
「いてえええええええええええ!!やめろおおおおおおおおお!!」
男は抵抗して昊菜を殴り、蹴る。男の攻撃は来夢スライムボディで吸収され波紋のように体を揺らすだけであった。右手の傷は塞がりいびつな形で縫い合わされている。
「ほら血は止まりました。サイバネ手術でもすればいいでしょう、落ちた右手はわたくしたちを不快にさせた罰として処分します」
杖剣で落ちた右手を突く昊菜、一瞬にして燃え上がる。
「ああああ!俺の手ガアアアアアア!!」
「さて、店がどうとか行ってましたわね?案内してもらえませんか、とても怖くて危ない所なのでしょう?」
「へへ、へへへへへへへ!後悔するぜ!!死ぬより辛い目に会うぜ?家族も身内も全て地獄に落ちるぜ??」
「早く店に案内して下さいな。わたくしたちの見た目で舐めているのでしたら……これはどうです?」
昊菜は頭部の来夢を解除してルビー色の骸骨をさらけ出す。
「は!?えぇっ……な、なななななななーーーーーー!!」
「さぁ早く案内してくださいな。わたくしたちこの街に詳しくありませんの。危険で怖くて恐ろしい人たちが沢山いるのなら会いたいですわ、挨拶しなければなりませんね」
「ちょっとちょっとまって……バケモノとかきいてねぇ……」
走り去ろうとする男の前に回り込んで行く手を阻む心鷺。
「バケモノとは何だ男、ご主人様に向かってその口の利き方は許さない。顔半分削ぎ落してやろうか?」
「ひ、ひいいい!!」
「騒ぐな、次に大声を出したら首を跳ねてやる」
心鷺は斧を首につきつける。
「は、はい……」
昊菜と心鷺に挟まれ逃走ルートを塞がれたまま路地を進んでいく。
「いつもあんな風にやって女性に声をかけて路地に引きずり込んで餌食にしてますの?」
「い、いや……こ、今月はノルマがきつくて……それに夜はサツの見回りが厳しくてなかなかキャッチできねーんすよ……」
男は失った右腕を支えながら言った。
「へ、へへへ……あんたたちは何者?普通じゃねえっしょ?」
「黙れ馬鹿男、ご主人様の質問にだけ答えろ質問するな耳を削ぐぞ」
心鷺は男の耳に斧で切れ込みを入れる。
「ひぃ!」
路地を進むと窓の無い黒づくめの店の前に出た。表には監視カメラがついている。
「いかにもなお店ですわね。さぁ入りましょ」
「ちょちょちょちょちょ……」
両開きの扉を開けると地下に続く階段。抵抗する男を蹴り飛ばし転げさせる心鷺。下の扉に激突した。
『何やってんだ洒卯斗?』
インターホンから声がした。
「お、お客様二名案内で~す……」
重い扉が開かれた。昊菜と心鷺が入ると扉は閉められロックされる音が聞こえた。
「随分と汚れた恰好でお客様を案内するじゃあないか洒卯斗」
出迎えたのは 5 色の髪に染めた異常なまでに肌の白い男。
「すすすすすすんません輝晄丸さん……」
「まあいい……で、そちらのお二人は本当にお客様?」
杖剣を持つ昊菜と斧を持つ心鷺の姿を見て眉を顰める輝晄丸。
「お話があってきましたの、この店のオーナーもしくは店長とお話したいのですけど?」
「そうですか、失礼ですがお名前を伺っても?僕は輝晄丸と言います」
「わたくしは……クリムゾン。こちらはハート」
昊菜は咄嗟に江藤紅子からクリムゾン、丹羽心鷺からハートの名前を思いつき言い放った。
「クリムゾン様にハート様……ご来店は初めてですね」
手元の端末を操作しながら言う輝晄丸。
「それで、オーナーもしくは店長は居ますの?」
「あいにく出かけておりまして……お時間よろしければ店内でお待ちいただけたらと」
「すぐに来るように伝えてくださいな。 15 分以内でお願いします」
絨毯の敷かれた店内を進んで店全体を見渡せる席につく昊菜、心鷺は横で立っている。
輝晄丸は慌てた様子でボロボロの酒卯斗を連れ店の奥へと消えていった。
「何だアイツらはよー!酒卯斗ー!!」
「し、知らねっす!!声かけたらいきなり腕斬り落とされて……」
「テメェまたスタンガンとかチラつかせたんじゃあ無いだろうな?」
「い、いや……その……そそ、それよりも輝晄丸さん!アイツらヤベーんですって!!黒パーカーの女は斧振り回すし赤いスーツの女は骸骨なんすよ!!バケモノっすよ」
「フン!そういうのはどうせサイバネなんだ、一々びびってんじゃあねえぞ!テメェがこの店に厄介ごとを持ち込んだって店長やオーナーに知れたらぶち殺されるぞ」
「どどどどうすんですか?あの二人マジで話通じないっすよ?」
「ケツモチに連絡する。サイバネだろうが畏れる必要ねえぞ」
輝晄丸は携帯をかける。
「緊急案件です直ぐお願いします」
『……わかった』
― 14 分 55 秒後。呼び出しを受けて店に寝ぐせの着いた髪、ヨレヨレのアーミーシャツにジーンズ、指ぬきグローブを付けた細長い中年男性が到着した。
「やれやれ、折角撮りためたアニメ見ながらハイボールとポテチキメて休日を満喫しようとしてたのに朝から緊急呼び出しとはね」
「~~~~~~で?どいつ?」
細長い中年男は酒卯斗と輝晄丸に質問した。
「あの VIP 席に居る二人っす」
昊菜と心鷺を指さす酒卯斗。
「あぎゃああああああああああああ!?」
心鷺の投げた斧が酒卯斗の残った左手を切断した。
「ご主人様を指さしたなゴミが!」
心鷺が睨みつける。
「ほ、ほらね?ヤヤヤヤヤベー奴らなんすよ!早く何とかしてくださいいいいいいいいいいいい!!」
細長い男は切り取られた酒卯斗の左手を拾って本人に渡す。血が付いた手を輝晄丸の肩で拭って前に出る。
「何だあの二人??」
「いえ、俺もよくわかりません……」
「 輝晄丸チャン……休日出勤手当宜しく頼むよ 」
細長い中年男は猫背でガニマタ歩きで昊菜たちに近づく。
「そこで止まれ」
心鷺の手には何処からか取り出したサブマシンガンが握られていた。
「まぁまぁ待てって、アンタら何の目的でこの店に来たの?見た感じギャングの使いでもマフィアの女でも半グレチームでもカルトでもなさそうだけど」
「わたくしたちはこの街の事が知りたいのです。裏の事情を出来るだけ詳しく」
「はは~ん、街に流れてきた新しい人って事か……この店にはたまたま来ただけ?」
「ええ、歩いていたらそこの白スーツの男が付きまとってスタンガンをチラつかせてきたのでつい正当防衛が出てしまいましたの。そしたら何やら裏社会に通じてるとか恐ろしい人たちが背後にいるだとか話すので、それなら会ってみようかと思いまして」
「はいはいはい、 OKOK ……だからあのバカは両腕を失う事になったと。自業自得だね……それで話を聞くだけが目的? 」
「ええ、わたくしはこの店にもここの従業員にも何の興味もありませんもの」
「知れば知るほどドツボに嵌り後悔する事になるよ?余計な事に首を突っ込まない方が懸命だと思うんだけど」
「話す気はあまりなさそうですね。どうしましょう、これ以上の押し問答はしたくありません、わたくし気が短いので」
「ぶっちゃげ俺からは話せないし話す気も無い。俺はアンタらを痛めつけて屈服させて二度と舐めた真似出来ねえようにするように頼まれて来たんだ」
「そうでしたの、用心棒ってわけですね……では貴方に用はありませんわ」
昊菜がそう言うと同時に男は腰からサイレンサーピストルを取り出して昊菜と心鷺に二発づつ撃ち込む。
「速ェ……さすが マックさん…… 」
輝晄丸が細長い中年男に向かって言った。
「サイバネにも通用する電ショック弾さ……安心しなこの弾だけで死にはしない」
動かない昊菜と心鷺に近づくマックと呼ばれた男。
「見事な早撃ちですわね」「残念だったな」
昊菜は来夢のボディで受けた弾丸を口から出して目の前のグラスに入れ、心鷺はコートに留まった弾丸を払って呟いた。
「!?」
立ち上がった心鷺の殺気に気づきブリッジでサブマシンガンの射線をはずしてそのままサマーソルトで銃を握った手を蹴り上げるマック。
「あぶねぇあぶねぇ……コイツは確かに只者じゃあねえなぁ」
連続バク転で下がってバーカウンターに隠れるマック。
心鷺は笑みを浮かべながらサブマシンガンを乱射。店の内装に弾丸が食い込んでいく。
「うああああああああああ!店がああ!!店長にオーナーに殺される!!」
輝晄丸が叫ぶ。
「殺る気満々だが……ご主人様はお前の話を聞きたいとおっしゃってる。店をこれ以上壊されたくなければ話せ。出来ないのなら全員殺す」
「よく抑えましたね心鷺、偉いですわ」
「はい、この場では情報を得ることが最優先だと判断いたしましたので」
カウンターの裏でマックは弾丸を炸裂弾に装填しなおしている。
「 輝晄丸チャン、あの人ら仕留めるにはお店めちゃくちゃになるの覚悟してよ? 」
「だだだ駄目ですって!!」
「いつかこうなる運命だったんだよこの店は。今までやりたい放題してたからあんなヤバいのを呼び寄せることになっちまったんだって」
「そんな!じゃあマックさんがアイツらをヤッたとしても奴らの仲間がこの店に報復に!?」
「かもね。知らない所でめちゃくちゃヤバイのに恨み買ってそうだもんこの店」
「うああああああああああああお終いだぁ……!!元はと言えば 酒卯斗テメェが余計な事しなければ……!! 」
出血多量で既に意識がもうろうとして倒れている 酒卯斗を蹴る輝晄丸。
「出て来て話をしろ」
突如背後に現れる心鷺、斧を振り下ろす。かろうじて反応するマックの髪を掠め、反応できなかった輝晄丸は鼻を失った。
「あぎゃああああああっ!!」
輝晄丸が叫ぶ中マックは炸裂弾を発射、心鷺は造作もなく斧で弾丸を弾く。反動の大きい炸裂弾の再発射までに心鷺の斧が銃を捉える。斧の刃が銃口を縦に切り裂きマックの右手指を切断した。
「うぐっ……クソ速ぇな……」
「お前が遅いんじゃないか?」
サブマシンガンと斧をつきつける。
「やれやれ……噂のグレイキャリバーに対抗するために神経筋肉関節すべて改造したのにそれはねえぜ」
「なんだそれは?グレイキャリバー?それもご主人様に話せ」
「はは……俺よりこの店の店長とかオーナーに聞いた方がいいぜ。俺はしょせん雇われの用心棒だ」
両手を上げて膝をつくマック。
「なるほどそうか……おい、派手男!用心棒はこう言ってるがどうする?」
「ハヒィ……ハヒィ……すぐに店長オーナー呼びますうううう」
「次また用の無い者が来たら全員始末します。それでよろしいですかご主人様?」
「ええ、その時はハートあなたの好きなようにしなさい」
それを聞いて牙を剥いて笑みを浮かべる心鷺。
「聞いたか?さぁ呼べ、援軍でもどっちでもいいぞ?何なら従業員全員でも呼べ、ご主人様に了承を得たからなお前たちを皆殺しにさせろ……」
輝晄丸に顔を近づけて小声で言う心鷺の姿が半人半鯱に変わっていく。
「ウヒィバケモノ……!!」
「何でわざわざそんな事をするんだい」
恐怖のあまり奥歯をカチカチと鳴らす輝晄丸、冷や汗を流すマック。
「私がやりたいからに決まってるだろう?捕食者が獲物で遊ぶのは当然の事、さぁ早くしろ。どっちを呼ぶにしても私たちは構わない」
「直ぐ呼びます!呼ばせてください!!」「他に選択肢はなさそうだ」
続く
LOKI24「オータムホースの未来」 Dec 16, 2023
LOKI23 「サイバーアルケミスト4」 Dec 10, 2023
LOKI22「サイバーアルケミスト3」 Dec 2, 2023
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search