未完成のブログ

未完成のブログ

Oct 13, 2024
XML
カテゴリ: DHHU
DHHUその28

「シャッ!」

 蹴りを放つハオラン、黒い人物は天井から離れ音もなく床に着地、片手を着いた低い姿勢でハオランを見つめている。

「全身タイツっぽいふざけた見た目だが……殺気は凄いなこいつ」

「……」

 粘弾を飛ばしつつ低い姿勢で突進、ハオランの間合いに入ると体を横にひねり死角から蹴りを放つ。ハオランは冷静に動作の起こりを見極めガードする。

「!?」

 ガードした左腕には黒い粘糸、床と繋がっている。反撃のストレートを放つハオランだが黒い人物はひらりと蝶のように回避する。

「クソ、なんだこの糸は」



「伸びやがる……ゴムみたいに」

「……」

 天井を利用してスイングした黒い人物は飛び蹴りでハオランを襲う。何とか回避をしたが腕につけられた糸のせいでその場から動けない。

「やべ」

 黒い人物の先には縫い付けられたドウェインがいる。

「させない!」「あーしらを無視してんじゃないよ!」

 獅子王を着装したユウ、骨武者を召喚する桃色桜がドウェインの前に立って壁を作る。

 イクスバーンを抜いて斬りつけるユウ、黒い人物は軽く躱して粘弾をユウの顔面にぶつける。獅子王の仮面の視界が遮られる。

「この!」

 左手で顔の糸を千切りながらイクスバーンを振るユウ、妙な手ごたえを感じる。

「……」



「コイツ……強い!」

 見ていたハオランが呟いた。

「うおおおおおおお!」

 イクスバーンにエネルギーを送り粘糸を千切り飛ばすユウ。

「コイツ只の影コピーじゃない……」



「真邪王!」

『テストもかねて勇者の一人でも始末できれば万々歳ですからねー』

「テストだと?」

『適合者のですよ。邪眼コピーした影を適合者に移してジンガ君が操作する』

「……影がここ居るって事は近くにダンジョンがあるんだな」

『そういう事になるのです。ダンジョンはこのタワーホテルなのです! 気が付かなったです? 準備はしておいて待機、ルームサービスが部屋にたどり着いたのを確認して発動したのです!』

「柄留が追跡弾を付けた奴ってのは……」

『コイツなのです! どうやっても追跡弾を除去できないのでいっそのこと割り切ってテスト用に使う事にしたのです! そしてやっぱりジンガ君は才能あるのです私の用意した影のデータを読み込んですぐに使いこなしているのです。オリジナルに比べると動きは違いますけどジンガ君のセンスで十分戦えているのです!』

「蜘蛛みたいな能力の者をコピーしたのか」

『大正解! コイツの能力は頭の回転が速くないと使いこなせないのです』

「やっかいな奴をコピーしやがって」ハオランがつぶやく。

『奇襲は失敗に終わったのですがダンジョンはちゃんと残ってるのです。このタワーホテルの従業員と客は全て取り込んだのです! 助けたければ早く攻略するのですよ~?』

 投網のように糸を大きく広げて浴びせかける黒い人物。連続バック転で扉を出ていく。

 ユウはイクスバーンで網を除去してドウェインを拘束から解く。

「向こうから攻めてくるとは余程余裕がないと見える……」

 手首をさすりながらドウェインが言った。

「息つく暇もないねまったく……」

 桃色桜は廊下で気まずそうに待っているルームサービスに気が付いた。

「とりあえず腹ごしらえだね。せっかく無事に届けてくれたんだから頂こうよ」

「食べたら出発だな、幸い物資はここにある救出した人達はこのフロアーに集めよう。後で屋上からヘリで脱出してもらえばいい」

 ハオランが言った。

 ――食事後。

「救出メインのダンジョン攻略になりそうだな……私は深くまで潜らずに救出された者達の応急処置にあたった方がよいかな?」

 ドウェインは医療器具の入ったカバンをチェックしながら言った。

「……」

「ユウ?」

 暗い顔のユウをみたハオランが声をかける。

「ごめん……」

「財団の作戦本部には連絡したんだろう? 応援も来てくれるんだし何が気になる?」

「……これ以上犠牲者を出したくないんだ。【凶】の連中と戦うだけじゃなくて無関係な人も守れなきゃ勇者じゃないなって」

「それは……」

 会話を聞いていた才賀桃色桜。

「全てを救うなんて無理だよ。なるべく多くを救いたいのなら出来るだけ早くダンジョンを潰すしかない……セイも同じ事で悩んでたよ」

「父さんも……」

「真邪王を封印できるのは勇者だけなんだ、一番やるべきことはそれ。他の事を無視するなんてできないけど時間をかければかけるだけ犠牲者は増えてしまう」

「うん……」

「勇者を支えるのがあーしらの役目、財団は真邪王封印のためにある。もっともっと勇者は財団やあーしらを頼っていいんだよ。セイも勇者を引退してからは同士を集めるのに頑張ってたからね」

「そうだぜユウ! 勇者がなにもかも背負うんじゃねえ、もっと財団のギルドメンバーを頼りな!」

「医療の知識があるメンバーと機器を用意するように本部に頼む」

「わかった……」

 ユウは作戦本部のセイと通信を繋げメンバーの要望を伝える。

『東京のギルドメンバーを集結させよう。30分後にはそのビルの屋上に到着するはずだ』

***

「クソ……もう半身はほとんど動かねぇ……もうダンジョンを作るのは無理だ」

 ジンガはリクライニングシートに座ったままの姿勢で動かない。

『まぁ短期間で作り過ぎましたからねぇ……でもホラ適合者が4人もいるし気に入ったのがあれば乗り換えるのです!』

 真邪王の声がする。動かなくなったジンガの半身の眼球から声を出す。

「簡単に言いやがる……」

『何とか力を振り絞ってあと一つ作るのですよ。勇者どもを一網打尽にするために』

「いい案があるのか?他の邪体も取り返さねえといけねえのに……」

『今勇者のギルドのビルをダンジョン化してますよねぇ?ビルはホテルですから人質を大量に確保しています、解放するために奴らは全力で来るでしょう。ジンガ君は適合者の一人を使って出来るだけ全力で相手して欲しいのです』

「はぁ? それでどうなるってんだ? あわよくば勇者の一人を始末できるかもしれないってか?」

『それもあるのですが、奴らがダンジョン攻略中に財団の保管庫を残りの適合者3人を使って襲撃します。戦力がホテルビルと京都に分散してる時を狙ってね』

「……適合者の一人と京都に居るアカネを囮にするってか」

『まぁまぁ、勝てばいいだけでしょう?魔女アカネも適合者の一人も使い捨てるつもりじゃないです、場合によってはというだけで』

「アカネのダンジョンとホテルビルが突破されたらどうする?」

『自爆処理ですね。ジンガ君は次の適合者に紐づけてあげますので安心するのです。邪体の一つでも財団の保管庫から取り返せればその場でダンジョンを作るのです』

「ダンジョンで保管庫を包み込み数の暴力でゴリ押して残りの邪体も手に入れるって算段か……」

『死に物狂いで適合者を酷使すれば邪体の一つくらいはとれるはずです安心してくださいジンガ君は絶対死なせないので……ジンガ君に死なれると私も身動きできなくなるので』

「渋谷、台場、オータムホース……この三カ所に財団の保管庫があるんだな?」

『京都にも都内にもまだあるんですけど……そっちはほぼ諦めています。本命は渋谷、台場、オータムホースの3つ、この中でどれか一つでも取れれば私たちの勝利にぐっと傾きますよ』

「しかし可能なのか?ホテルビルのダンジョンからも俺自身からも離れているが……」

『大丈夫なのです!適合者4人は互いに繋がっていて一人でもダンジョンの主になってれば力を得られるのです!今設置している全てのダンジョンを破壊されなければ!』

「邪体を一つでも取れれば俺の負担は減るんだろうな?」

『勿論なのです! 邪体を得て勇者を潰し【凶】を復活させ配下を増やせばジンガ君は悠々自適なのです!』

「京都のアカネのダンジョン、東京のホテルビルのダンジョン……そして最後に作る最強のダンジョン、お前は邪体を得る。これで勇者を潰せば勝ちなんだな?」

『そうなのです!』

「想定以上に財団は手ごわい……親父の代に比べてかなりの力をつけていた。【凶】を復活させたら対抗できる組織作りをしなくてはな」

『そうですねぇ』

「……気合、入れ直したぜ。ホテルビルダンジョンの適合者とのリンク再接続頼む。東京にいる勇者をぶっ潰すつもりで全力でやるぜ。もし俺が勇者との戦いで不全になると思ったらお前の判断で適合者に俺の魂を移してくれ」

『了解なのです!1体は邪体奪取に残すとして2回コンテニュー出来るのです!』

「最悪相打ちに持ち込んでもいけるか……真邪王頼んだぞ」

『お任せなのです!』

 真邪王はホテルビルダンジョンの主である適合者(邪眼コピー済み)とジンガをリンクさせる。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 適合者の右目にジンガ、左目に真邪王の邪眼を宿した適合者。肉体は邪眼のコピー能力によって魔改造され長くは生きられない。

『さぁジンガ君、京都で得たこの能力は君でなくては扱いきれないよ。元の主はきっと恐るべき頭の回転の速さだったんだろうね』

「ハ! 映画ミスターアラクニドの蜘蛛人間の要領だろ? コツを掴めばなんとかなる」

『クレメンタインもジンガ君に任せればよかったのですそうしたらあんなしょうもないやられ方しなかったのに』

「お前は能力が強すぎる、だから戦い方が雑なんだよ」

『これからは無くて惜しいコピーはジンガ君に任せるのです』

「戦力としてストックしとくのも悪くねえな」

***

少し仮眠を取り装備のチェックを終え準備万端のユウとパーティーメンバー。屋上に財団の大型ヘリが到着したのはその時であった。

「よし……じゃあダンジョンに突入だ!ドウェインはダンジョンの入り口で待機お願い」

「うむ」

 ユウ、才賀桜桃色、ハオランはホテルビルの廊下に出現しているダンジョンの入口に飛び込む。

「はっ」

 飛び込んだ先は高速で走っている列車の上だった。

「ホテルビルの中だから縦長のダンジョンかと思ってたら!」

 ユウは思わずしゃがんで言った。

「緩やかに反時計周りに進んでいるね、ダンジョンの広さ自体はホテルビルの面積と変わらないと思うけど」

 骨の杖をついて列車の天井を突きながら才賀桜桃色が言った。

「周回する線路の上を列車が走っているダンジョンか……これは人質を救出するの大変だぞ……」 

ハオランは周囲を見渡しながら言った。後方に見えるのはトンネルの上部にあるダンジョンの出入り口。

「あのトンネルを出た所で列車を止めて人質を出さないといけねぇぞ」

「人質の安全を確保して列車をあの場所で止め邪魔をするモンスターやダンジョン主と戦わないといけない……か」

 ユウの目の下に残ったクマが気になるハオラン。

「いや、大丈夫。あーしが骨はしごをかければ列車がどこで止まろうとも人質は脱出させられるよ優先すべきは列車を止める事だね」

 桜桃色がそう言った直後、背後から黒い影が出現した。下の列車の中から飛び出したそれは飛び蹴りで襲い掛かって来る。

「シャッ!」「むっ!?」

 咄嗟に出現させた骨武者でガードする桜桃色。蹴りの反動で空中に飛び上がった黒い影は黒い粘糸を飛ばして列車に着けパチンコめいて自身を発射させる。

「シャシャー!」

 強烈な飛び蹴りを放つ、骨武者は肩の大袖でガードするが大きく仰け反った。

「このっ!」

 直剣で突きに掛かるハオラン。空中で姿勢を変え錐もみ回転で回避、着地と同時に黒粘糸をハオランに向けて発射。咄嗟の反応でなんとか直剣で受け止める。

「獅子王! イクスバーン!」

 獅子王に着装し凄剣イクスバーンを抜くユウ。ハオランの後ろから飛び出して斬りつける。黒い影はバック宙返りで飛んで避けた。

「いきなり出てきたな」

「そろそろこっちも余裕がないんでな。俺様直々に相手してやるって訳だ」

「その声……ジンガか!? でもその体は女性みたいだ……」

「ククク……まぁ俺様にも色々隠し玉ってのはあるのさ。ここでオマエを始末して残りの勇者もじきに同じところに送ってやるぜ」

「蜘蛛みたいな能力……それがお前の呪力の本領発揮か」

「いいや? これは借り物の力にすぎねぇ……だが天才の俺様はこの土蜘蛛の能力も使いこなして見せるぜ」

「土蜘蛛?」

「本来の土蜘蛛とは違うが俺様の天才的操縦力に呪力を合わせたアレンジ。真邪王のバックアップ……お前らに負ける訳がねぇ」

「俺も負けられない!」

「威勢のいいことで……言っておくがこの列車から落ちればダンジョンから強制退場、ホテルビルの最上階高さの空中に放り出されるぜ。ちなみに線路の上は強烈な電流と呪いがかかってる一般人なんて一瞬で黒焦げ、お前らでも身動きとれなくなるだろうな」

「そんな……」

「ククククク……この状況で人質は救えるかなぁ?全員落下死もしくは感電死もしくは俺の可愛いモンスターの餌食になるかもなぁ?」

「なに!?」

「先頭車両から放たれた蜘蛛怪人はゆっくりと車内の人質を襲いながら進むぜ……さぁどうする勇者ァ!!」

続く





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Oct 13, 2024 04:06:33 PM
コメントを書く
[DHHU] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Free Space

Profile

長月(ながつき)

長月(ながつき)

Calendar

Archives

Oct , 2026
Sep , 2026
Aug , 2026
Jul , 2026
Jun , 2026
May , 2026
Apr , 2026
Mar , 2026
Feb , 2026
Jan , 2026

Comments

長月(ながつき) @ Re[1]:Fallout:NewVegas 第1話2話「目覚め」(11/19) Keyさんへ ありがとうございますがんばり…
久 遠@ Re:FalloutNewvegas121話「ストレンジトランスミッション!」(07/20) やほーい(=゚ω゚)ノ 何周遅れか分からないけ…
長月(ながつき) @ Re[1]:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年も…
久 遠@ Re:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年…
長月(ながつき) @ Re[1]:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) こちらもFO4までに終わらせるつもりです!…
くおん@ Re:FalloutNewvegas103話「Vault22」(07/09) やあ( ´ ▽ ` )ノ EDーEとの意思疎通方法、…

Favorite Blog

まだ登録されていません

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: