DHHU 外伝グレイ・イーター編その 7
「リティーシャ、ハイパーレールガンの調整はどうだ?」
施設に到着してから 24 時間。刀耶は作業中のリティーシャに声をかけた。
「試射が出来ないので確実とは言い切れませんが……理論上完成です!」
「おお! これでハイパーレールガンにストライクスマッシュを乗せれるのか!」
「はい、でもこれは第 2 射は考えない方が良いです。チャージに時間がかかり過ぎます」
「そうなのか? ハイパーレールガンてそんなに使い勝手悪いのか」
「いえ、ハイパーレールガンは 16 発まで連射出来ますよ。問題はストライクスマッシュのエネルギーを弾丸と本体にチャージしないといけないのでそこに時間がかかります 」
「どの位?」
「約 5 分ですね。トーヤのエネルギーをナイトケースが変換、それからハイパーレールガンに充填ですのでどうしても…… 」
「つまりハイパーレールガンの図体に対し俺が小さいから時間かかるって事か。電池みたいに俺のエネルギーをどこかに溜めて置けねーか?」
「う~ん……ナイトケースの予備部品とわたしのナイトケースハートを使ってもう一回分くらいはマガジンとして溜めておけるかも? でも電気とは違って長い時間置いておけないですよ。ストライクスマッシュを放つ前の状態で維持し続けると考えればよいかと」
「マジかよ……じゃあ作戦の少し前にチャージしておくのが限界か?」
「そうですね……しかしそうなるとナイトケースハートも予備も使えなくなるので何かあった時に困ります」
リティーシャは奥の手がある事は言い出せなかった。自分が血液を摂取して本来の姿に戻れば刀耶が撃った後にすぐに代わって撃てるという事を。
本来の姿に戻るということはヴァンパイアとしての覚醒状態になること。血の衝動を押さえるためにこれまでミルクで済ませていたリティーシャは覚醒状態から戻れなくなるのを恐れている。戻れなくなれば討伐対象リストに入るかもしれないそうすれば元の生活に戻る事は不可能となる。
以前オーグルの研究者を止めるために最後の手段で血を数滴接種した。高揚感万能感に加え血への強烈な渇望。自分が自分でなくなってしまうかのような感覚に恐怖した。
「トーヤ……あの」
「ん?」
「もしもの時は……」
「あん? ……あーまぁ、やっちまえよ! 俺はそれもお前だって解ってるぜ」
刀耶はオーグル事件の後リティーシャと話しあったことを思い出した。
「あの時はそうするしか無かった、だからお前はそうした、その選択に俺は文句言わねえよ。それに……今回は冥珂さんもいるし」
「そうですよね……師匠がいれば……でもトーヤに迷惑が……」
「なーに言ってんだ! 今更だぜこうなったらとことん付き合ってやんよって前にも言ったろ? 俺がそう決めたんだお前が責任感じる事はないぞ。 グレイ・イーターをぶっ斃さなきゃ合衆国は終わりなんだやれる事全部やろうぜ!」
「トーヤに出会えて本当に良かったです。本当ナイトケースが導いてくれたのかもしれませんね」
「照れくさい事急にいってんじゃねえよ……」
***
グレイ・イーターは東に進み続け合衆国中部に到達。体長は 60m この頃になると無差別に食い散らかすのではなくより効率の良いものを摂るようになっていた。
TMI は作戦開始地点に待機。ハイパーレールガンの準備は既に完了。
「グレイ・イーター作戦開始地点に到達! 作戦開始!」
TMI 長官ジェームズの号令で全員が動き出す。 TMI のエージェントはグレイ・イーターに対し V 字に配置、冥珂に渡されたアイテムを手に持っている。
スケートボードのように箒に乗る冥珂が飛び出す。グレイ・イーターに迫る。
「小賢しい魔女め……お前が何をしようとも止められんぞ」呻くグレイ・イーター。
「それはどうやろな?」
カードが冥珂の胸から飛び出し青白い閃光6本がグレイ・イーターに向かって放たれる。分厚い金属製の装甲を削るがすぐに再生を始め元に戻る。
「無駄だ!」「無駄やないで、今のはチェックしただけや!」
グレイ・イーターから放たれる瓦礫弾を回避する冥珂。
「これでもくらえ! サイコビーーーーーーーーーーーーーーーームゥ !! 」
「待ってたで!」
サイコビームは冥珂に命中したかと思われたが取り出したマジックコンパクトの鏡によって散らされる。散ったサイコビームは周囲に配置された TMI のエージェントの持つマジックコンパクトのコピーに吸い込まれるように引き寄せられ反射する。事前に TMI エージェントに配ったこのマジックコンパクトはリティーシャがナイトケースのパーツを使って作成したものであった。
「倍返しや !! 」
サイコビームのエネルギーは収束して冥珂のマジックコンパクトから放たれる。
「ナニィ !? 」
グレイ・イーターの右腕に命中し肩まで砕け散る。
「どや! サイコビームはもう効かへんで! なんぼでも跳ね返したる !! 」
「ガアアアアッ! 鬱陶しい! 他にもいくらでも! 攻撃方法などあるわ!」
崩壊した腕を尾で拾い貪り喰う。みるみるうちに再生する右腕。
「今度は……広範囲の物理攻撃ならどうだぁ!」
大量の土砂を吐き出すグレイ・イーター。しかしそれらは TMI エージェントの前で映像停止のように止まった。
「ハァ !? 」
「この場にどんだけサイコキネシスが集まってると思ってんねん! ジェームズのテレパシーの指示とエージェントらの連携や!」
土砂はグレイ・イーターの足元目掛けて放たれる。
「ぬ、なんだ足元が……」
集まった土砂は高速回転して地面を削っていく。その操作の指揮をとっているのはエアロキネシスの早乙女ルキナ、ジェームズはテレパシーと他のエージェントとの接続で脳を焼かれるような感覚に耐えながら鼻血を出しながらルキナと共同作業でグレイ・イーターの足元の地面を削る。
「いいぞ、このまま奴を足止めするんだ!」「ええ!」
ジェームズが叫ぶ、合わせるルキナ。その後方には U チームのアリナ、フローレンス、哿。
「ええい! ごちゃごちゃと! こうなったら!」
口を開くグレイ・イーター、 3m 大のこれまで飲み込んだ物で出来た翼竜を放つ。
「やっぱり出してきた! 動けんようになったら遠隔操作できる体を使って来るってのは想定済みやで!」
TMI エージェントに向かって飛んできた翼竜を追う冥珂。
「行かせへんで!」「邪魔だぁ!」
火の玉を吐く翼竜、カードで打ち消す冥珂。
「くっ、中々やるようだがこんなものは所詮時間稼ぎ、消耗するのはお前たちの方が速い」
「そうやろうな、だけどまだまだ手札はあるで」
「だったらまずは魔女! お前から始末してやる!」
更にもう一体翼竜を出すグレイ・イーター。
「この高速空中戦闘での数の有利はどうする?」
「おっと、俺がいるぞ!」
ナイトケースを装着した刀耶が参戦、ボウガンを翼竜に撃ち込んだ。
「刀耶君!」「任せてくださいよ! コイツの動きの癖はもう大体わかったんで!」
球の動きで旋回する翼竜 2 匹、刀耶は動きを先読みしてボウガンを放ち命中させる。
「なにぃ !? 」
「ヒット、ヒット! さぁ来やがれ!」
「クソがぁ!」
刀耶に挑発され翼竜の操作に集中するグレイ・イーター。巨大な本体は完全に動きを止めている。
「そろそろか…… U チーム、準備を!」「はい……」「はい!」「はい」
ジェームズはアリナ達に声をかける。
グレイ・イーター翼竜の攻撃を全て回避する刀耶。ナイトケースとのシンクロ率は過去最高数値を叩き出し刀耶は 360 度全ての景色が見えているかのような感覚を得ている。
「トーヤ……空中制御だけでも難しいのにあんな動きを! それにこの数値は……!」
青白い光を放ちながら加速するナイトケースを見つめるリティーシャ。
「当たれよおおおっ!」
火の弾を連射するグレイ・イーター翼竜 2 匹。むきになればなるほど動きは単純になり回避しながら反撃する刀耶のボウガンを受ける。
「クソがああっ!」
「(コイツの相手は問題ない、けどそろそろハイパーレールガンに戻らなきゃな! だけどどうするこの 2 匹を足止めしとかねえと……)」
「刀耶君、ここはアタシに任せとき!」
カードを使って使い魔の魔獣スフィンクスを自分の分身体に変身させた冥珂が叫ぶ。
「冥珂さん!」「 3 分くらいが限度やそれまでに頼むで!」
ハイパーレールガンに向かって加速する刀耶、追いかける翼竜 2 匹。その間に割って入る冥珂と分身体。
「邪魔だ魔女! お前から始末してやる!」
「簡単にはいかへんで!」
カードの自動防御とあらゆる衝撃から身を守る鎧を装着した冥珂。グレイ・イーター翼竜の連携と弾丸の速度で放たれる超高温の火の弾に冥珂が反撃する隙は無い。
「(これはキッツイわぁ!)」
刀耶はステルス迷彩で隠されたハイパーレールガンに到着。
「リティーシャ! やるぞ!」「トーヤ! すぐに発射準備を!」
発射装置に着く刀耶。
「後は…… TMI の U チームが奴をダウンさせれば!」「そうです!」
哿の連続テレポートでグレイ・イーターの足元に移動する U チーム。目の前にはルキナら TMI エージェントが起こした土砂の竜巻、上では翼竜 2 匹と冥珂が空中バトルを繰り広げている。グレイ・イーターの本体は動く気配はない。
「ここから奴の顎を狙って粉砕します」
「ええ、そうですアリナ」「大丈夫ですよアリナさんならできます」
ゆっくりとしゃがむアリナ。
「二人とも離れて……」
アリナの周囲の空気が揺らめき虹色のオーラを放ち始める。
「 90 %……」
冥珂のかけた魔法によりガントレットとブーツは砕けない。アリナと共鳴するようにフローレンス、哿も虹色のオーラを放ち始める。
「安心してアリナ、貴女の体は壊させないから」
「安心してアリナさん、宇宙まで飛んで行かないように僕が絶対テレポートで戻しますから」
周囲の TMI エージェントが意識を失い次々と倒れ始める。 U チームのエネルギーに当てられしまったのだ。
「ぐぅ……このプレッシャー……アリナ君……私とルキナ君とて長くはもたないぞ……」
歯を食いしばって耐えるジェームズ。
「アリナ……頼んだわよ……」
大量の汗をかいているルキナ。
「 95 、 96 、 97 、 98 、 99 …… 100 %」
虹色の光体となったアリナ。足元の岩盤に気を使いながらグレイ・イーターの顎を狙える角度を考えて足に力を込める。足に力を込めると岩盤が砕ける感覚があった、だが体を浮かせるに十分な加速が出せると思った。冥珂の魔法により崩壊しなかったブーツが功を奏した。
「時間が止まったかのよう……」
ゆっくりと足を踏みしめて地面から離れるアリナ。腰の横で右拳を握る。ガントレットは砕けない生身の手と同じ感覚がある。実際には亜光速の動作。
「……この一撃で敵の頭部は完全に砕く、後はハイパーレールガンにまかせる」
アリナの拳がグレイ・イーターの怪獣の顎を捕らえる。インパクトの瞬間衝撃がグレイ・イーターの頭部に伝わり崩壊する。
アリナの加速は止まらないそのまま上空に飛んでいくと思われたが次の瞬間水平方向に飛ぶ角度を変え緩やかに落下、地面に滑るように徐々に速度を落としグレイ・イーターから 30 キロ離れた地点で着地した。Uチームは異能者共有状態となった為、哿のテレポートがアリナの飛ぶ角度を変え移動させたのであった。
「これで後は……」
力尽きて倒れるアリナ。異能者共有状態のフローレンスと哿も離れた位置で倒れた。
「グオオオオオオ……」
首から上を粉砕されうつ伏せに倒れこむグレイ・イーター。アリナ達の一撃のパワーはグレイ・イーターの全身を駆け巡り大きなダメージを与えた。
「なんだ……何が起きた? 何で本体が倒れている?」焦るグレイ・イーター。
冥珂を攻撃していた翼竜の動きが止まる。「そこや!」冥珂はすかさず青白い閃光を放ち翼竜 2 匹を粉砕した。
その様子を確認した刀耶とリティーシャ。
「今だ!」「トーヤ撃って !! 」
ストライクスマッシュのエネルギーが充填されたハイパーレールガンのトリガーを引く。轟音と共に超高速の弾丸が発射され横たわるグレイ・イーターの頭部を失った首に命中。
「――――――― !? 」
撃ち込まれた弾丸はグレイイーターの体の内部を進みストライクスマッシュのエネルギーを拡散、全身に広がっていく。
「崩壊しますよ!」
リティーシャが叫んだ。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ !!!! そんなバカナぁああああああああっ !!!! 」
グレイ・イーターの断末魔。巨体は爆発四散。
「やったぜ…… !! 」
虹色の光を放ちながらグレイ・イーターの巨体は散らばる。その様子を作戦に関わった全員が眺めていた。
***
NY のスペアリブ店で創業以来の大食いを披露している男が居た。名はジェイソン・プライス。ハイペースで食べ進めていたが突如体調に変化が訪れた。
「うぐ……」
「どうしたジェイソン! そろそろ限界か?」
店主は手が止まったジェイソンに向かって言った。それまで恐ろしいスピード食べ進めていたジェイソンが突如顔を青ざめたからだ。
「く、苦しい……ギブアップだ……」
ジェイソンはあと 1 個で 30 キロに到達するところであったがここで力尽きた。
「惜しい! いや、でも世界記録を 10 キロも更新したんだスゲーぞ!」
店主は手を叩いて祝福する。当のジェイソンは今にも意識を失いそうな顔だった。
ジェイソンは慌てて勘定を済ませ店を出る。
「(チクショウ……どうしてだ……あの野郎なにかあったか?)」
路地裏で吐くジェイソン。持っていた水で口をゆすぐと路地裏の奥に進む。
「やぁやぁやぁ……やっと探しましたよジェイソン・プライスさん」
現れたのは全身白の衣服に身を包み、虫の複眼めいた眼鏡をかけた女性、グラス。
続く。
DHHU外伝その8 Jun 13, 2025
DHHU外伝グレイ・イーター編その6 Apr 14, 2025
DHHU外伝グレイ・イーター編その5 Mar 30, 2025
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search