DHHU 外伝その 8
「どけ!」
「それはできませんねぇ……私は白魔女ですので」
「なんだと!」
慌ててジェイソンはカバンから銃を取り出す。
「ははは……グレイ・イーターから聞いているようですねぇ。詰みですよ貴方」
「なんだと! 奴は、グレイ・イーターはどうした!」
口を拭いながら震える手で銃口を向けるジェイソン。
「破れましたよ、私が手を下す前にね。だから私はグレイマンの契約者であるあなたを処分しに来たのです」
「だから俺の食欲が……」
「いやー苦労しましたよ。グレイ・イーターってば何の変哲もない人間を選んだんですもの。探すのが大変で! 普通契約者は自分に合う実力者を選ぶ者なんですがグレイ・イーターの場合食欲の強さだけで適当に選んだんでしょうねぇ」
「なんだと!」
「だってグレイストームは最強の異能者(杉田幻赫)と契約、グレイビーストは最狂の術師(神名 L 咲夜)と契約、グレイキャリバーは最高のサイバネ適合者(兜金蒐魅)と契約なんですよ?グレイ・イーターだけお粗末すぎでしょう」
「バカにしやがって! 撃たれてぇようだな!」
「やめといた方がいいですよ? 大人しく私にやられた方が楽に死ねます」
「黙れぇ!」
銃を撃つジェイソン、 3 発の弾丸がグラスを襲う。しかし弾丸はグラスの前で消失した。
「は?」
「弾丸、食べさせましたよ私のカワイイ白飛蝗に」
グラスの右手には 3 匹の白飛蝗が跳ねていた。
「ジェイソン・プライスさん、貴方を始末した後はグレイ・イーターの残骸を回収しないといけないんですよ。後は私の契約者に奉仕もしなきゃだし忙しいのです」
弾丸めいて白飛蝗が飛び出してジェイソン・プライスの喉に突き刺さる。
「ぐげええええええ……」
突き刺さった白飛蝗は肉を食い千切って飛び出す。
「なんとも呆気ない。わたしとしては実力伯仲のバトルの末に斃したかったのですが……まぁ役割を果たせたのでいいとしますか」
喉の肉を食い千切られたジェイソン・プライスはあっという間に出血多量で意識を失い絶命する。
「さてさて連絡……と。ああセレスティア……終わりましたよ。ええ、残骸の回収に向かいますヘリポートで待ち合わせしましょう」
***
グレイ・イーターが爆発四散した現場には TMI のエージェント、地元警察、軍がエリア封鎖をしていた。
「グラス、来ましたね」
戦闘スーツを身に着けたセレスティアが言った。
「グレイ・イーターの契約者のジェイソンを跡形もなく白飛蝗で食い尽くしました。これでグレイ・イーターはこの世界から消えました」
「それでこれからグレイ・イーターの残骸を残らず白飛蝗で回収するのですね?」
「ええ、これが私がアンチアタッカーとして白魔女から派遣された理由です。食い散らかして成長を続けるグレイ・イーターに対し私の白飛蝗は食べて回収する。データとして白魔団に保管されます」
「 TMI のハリー・ハーマンはどうなるのかしら? 彼はグレイ・イーターに異能を喰われましたよね」
「白魔女の一員になるでしょうね。つまり魂は回収され過去現在未来どこかでグレイマンのアンチアタッカーとして召喚されることになります。みなさん勘違いされてるようですけどただの道具になり果てる訳じゃないんですよ? ある意味不老不死で行けないはずの過去未来の世界を体験できるのですから。まぁ経験したことは次の召喚時に持ち越せないので本体の魂から必要最低限しか得られないので……夢で見たとかそのくらいのぼんやりしたものになるんですがね」
「あなたはどの位召喚されたのです?」
「それもボンヤリしてるけど今回が初めてじゃないのは解る。えっと白飛蝗の収集したデータから……西暦 220 年頃と…… 949 年と……今回かな? だからまぁ過去にしか召喚されてないね」
「前から疑問に思ってたのだけど、 220 年頃に白魔女の組織はなかった訳でしょう? どうやってグレイの出現を察知したの?」
「それねぇ……奴らが過去に干渉するからこっちも追えるようになるんですよね。この星が奴らを排除しようとしてるのかも?」
「へぇ……」
「おっと神名一族の君にこんな話したらどうなることやら。まあでも白飛蝗の研究は頑張ってよ。ワタシは弟子がいなかったからこの魔法は 1 代きりでね、君は科学者だけどワタシの魔法を再現してくれるなら嬉しい事だよ」
「白飛蝗は私ではなくアデルがやるでしょうね。得意分野ですから」
「あぁ君のパートナーのアデル・ホワイトね。なるほどなるほど……彼女が神名一族でない理由は……ふむふむ、そうか君の都合か。人類最高峰の頭脳を持つ彼女さえも神名の実験対象ね」
「あなたがこの世界の人間なら神名が居場所だったでしょうねグラス」
「そうかもねぇ……いやでも君のような同族に監視されたり粛清の対象になったりするのは怖いなぁ……杉田(神名)幻赫(げんかく)が排除されたのも TMI を利用して一族の誰かがその流れを誘導したんでしょ?貴女もアデルの事があったとはいえ一枚噛んでる」
「……少し違いますよ。私のオリジナルは既に死亡していますし今の私は神名であってもかなり特殊な存在です。むしろ私が実験対象ですよ」
「いやぁ~怖い怖い……君たちがいる世界じゃあワタシは楽しく生きれないよ。さっさと使命果たしてこの世界からおさらばしますよっと」
「この時代のグレイらはあとどのくらい居るんですか?」
「そうだねぇ……グレイストーム、グレイキャリバー、グレイビースト、グレイ・イーターと 4 人撃退したから……あと 3 人かな? 大体いつも 7 人組だから。ほらあの 7 つの大罪に当てはめればいいんじゃないかな?」
「傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲ですね」
「そうそれ。傲慢がグレイストーム。憤怒がグレイキャリバー。強欲がグレイビーストで、暴食は解りやすいグレイ・イーターだね」
「では嫉妬、怠惰、色欲に当てはまるグレイがまだ残っていると。もしくはこれから襲来すると」
「だねぇ、これ以上はワタシも知らないよ。誰が白魔女に選ばれるか何処にグレイが出現するか何てのは見当もつかないね」
「グラス、貴女の話は大変参考になりました」
「まぁ頑張ってよ。 7 人撃退したら 100 年くらいはもう来ないじゃないかな」
手を上げてグレイ・イーターが爆散した地点に向かうグラス。
セレスティアは顎に手を当て思考をめぐらせる。外殻脳の Clala にグラスとの会話を保存させる。アジトの不動 G 了痲に指示をしてアデル・ホワイトに会話のデータを送信する。
『プランBを実行……オーグル兵計画を保留させGR計画を発案。バイオプリンターのデータを切り替え……インプラントドライバーの試作を実行……』
アデル・ホワイトから連絡が来た。
「了解アデル」
セレスティアの目が緑光のプラズマめいた光を放つ。その顔は笑みを浮かべていた。
***
数日後。
――― TMI 合衆国支部。
「 HAHAHAHA ! おはよう諸君 !! 」
左手を上げて大声で入ってきたのは再起不能になったはずのハリー・ハーマンであった。
「ハリー君 !? 何故ここに !? 」
ジェームズは声が裏返りそうになって言った。他のエージェントらもハリーを見て固まっている。
「アイスクラーピウスで治療を受け見事復活した! この装置を外すことは出来なくなったがね!」
コスチュームを捲り上げると腹部にベルト型の装置が取り付けられていた。
「ミスグラスの回収したグレイ・イーターの破片から私のデータを抽出出来たそうだ。それをこのドライバーに組み込んで脳の代わりとしているんだと」
「そ、そうか……君が戻ってきて何よりだよ。それで体調はどうなのかね?」
「体は絶好調だ!ただ以前に比べると欲というものが薄くなった気がする。その代わりストレスもほぼ感じなくなった。異能は使えるしドライバーが補助してるから無意識下でも発動可能になった。問題は定期的にメンテナンスを受けなきゃならなくなったことかな」
「本部には入れるかね?」
「それが……どうも駄目でね。本部の大いなる意思は復活した私をハリー・ハーマンとは認めてくれないのだ。まぁ一度死んだともいえる身分だからな HAHAHAHA !という訳で合衆国の支部長は他の者に任せたい」
「解った、そうしよう」
ジェームズは目の前にいるハリー・ハーマンを見て不安にかられた。本当に目の前の人物はハリー・ハーマンなのか。ドライバーが仮死状態のハリー・ハーマンを生きているように動かしているだけではないかと考える。
ジェームズは試しにハリー・ハーマンにテレパシーを送ってみた。返ってきたのは――
「 jieout@qouitbqeo[@o,wjinoqyarumciytqcynunmc@ty9vuok[hjioshgn9ej4- 」
意味不明の羅列であった。
「(ハリー・ハーマンの監視を怠らないように)」
ジェームズは本部の TMI エージェントらにテレパシーを送った。
***
日本に戻った U チームのアリナ、フローレンス、哿。
現場と U チームに拘る哿は日本支部所長ではなく所長代理となり、新たに本部から派遣されたカテゴリー 4 のテレパスの苗木凛呼(なえぎりんこ)が就任した。カテゴリー 5 のテレパス苗木來美(なえぎくみ)の従妹である。
「哿さん、フローレンスさん、アリナさん。今日は納斗幼稚園での仕事です」
凛呼は手元の端末の画面を宙に表示する。
「皆さんもご存じの通りこの幼稚園は異能者の為の者です。クソ生意気なガキがいっぱいいますが宜しくお願いします。まぁ話を聞かせるだけなのですぐ帰れますよ、どうしても躾が必要ならその時は……現場のあなた達に任せますね!」
かなり毒のある言い方をする凛呼。
「凛呼さん、躾とは?」アリナが手を上げて言った。
「解らせてやればいいんですよ。アリナさんなら安心して任せられます、ガキどもが何をしようとアリナさんに何も通じない事を見せつけてやってください。死なないように指導すればほらフローレンスさんも居ますし邪魔なガキは哿さんが上空にテレポートさせればいいでしょう」
「なんか子供に怨みでも?」「凛呼さん !? 」フローレンスと哿が声を上げた。
「まぁまぁ色々とあの幼稚園ではありまして……私は二度と行きたくないです」
「わかりました、子供たちを黙らせればいいのですね? TMI エージェントや大人を舐めるとどうなるか思い知らせて欲しいと」
「そうです! アリナさん! ガツンと見せつけてやってください!」
「では……特上寿司 30 人前とウルトラデラックスピザ 30 人前とステーキ 10 ㎏をお願いします」
アリナは平然と言い放った。
「え?」
苗木凛呼は固まった。その様子を見てフローレンスと哿は微笑んだ。
***
―――オータムホースシティ。
第二地区にあるビルの 1 階部分にミラージュ探偵事務所がある。そこにリティーシャ・ヴァン・ヴァスベルゲ、宗像刀耶、立花冥珂の姿があった。
「やっぱりここが一番落ち着きますね」
リティーシャは完全紫外線カットの透明バブルヘッドヘルメットのストロー挿入口からミルクを吸い上げて言った。
「そうだなぁ……しかし溜まってた仕事多くて疲れたぜ」
ソファに寝転がる刀耶。
「探偵も面白いもんやねぇ」
煙の出ないタバコをキセルで吸いながら冥珂は言った。
「ネコ探し 5 件、浮気調査 3 件、盗聴盗撮の調査 10 件、人探し 2 件……師匠の魔法のおかげで随分と捗りましたよ」
リティーシャはキーボードを叩いて書類をまとめている。
「噂の調査はしねえのか?」刀耶はリティーシャを見て言う。
「怪人とか院瀬見の陰謀とか闇組織 LOKI とか伝説のドラゴンとかそういうのですよね? これらは依頼はなくても情報収集はしてますよ。師匠の気にしている魔女の事も。溜まっていた依頼が終わりましたしそろそろ魔女探し始めましょうか。まずは……第 6 地区の G/T の兜金大河に話を聞きに行きましょうか」
「 G/T ってヤベェ半グレチームか。フル装備で行かねえとな」
「急にひりつくお仕事やね。ええよバチボコにかましたろうやないの」
「いや、トーヤも師匠も殴りこみに行くんじゃないですよ?」
「でもぜってぇバトルになるぜこういうのは」
「せやな、お約束っちゅうやつや」
「……まぁその時はその時ですね。第 6 地区ですし安全装備で行きましょう」
***
――オータムホースシティ郊外。北部の山中。
「イア、ムナル、ウガナグル、トナロロ、ヨラナラーク、シラーリー!」
DMC の生き残りの信者である傅いている男は声を絞り出した。
山羊の角を生やした漆黒の泥のような衣纏った女が地中から現れた。
「あれだけいたサテュロスもお前ひとりとなってしまったな」
「おお主よ、黒山羊の魔女ニグラスよ。しかし貴女さえ存在していればいくらでも再起は果たせるでしょう」
「もはやあの街は秋馬光鴨の一強ではなくなった。身の振り方を考えなければならない。そして我が子を産むに値する者を探さなければならない」
「お任せを我が主。サテュロスではありませんが DMC の信者はまだ残っております。手を尽くして必ず探し出します。あの街はオータムホースシティ、必ずや適合する者が存在する事でしょう」
「慎重に事を運べ」
「は!」
魔女は苦々しい記憶を思い返す。龍人(諸田和音)と白魔女エイリアン(柄留)によって DMC を壊滅させられた。残党は居るものの以前のようには動けない。台頭してきた闇組織 LOKI への対抗手段も考えなければならないからである。
魔女はサテュロスと呼ばれる自らの力で変身させた怪人を再び増やそうとしたが質のいい者は作れず、結局は暴走し警察や LOKI に始末される事となった。組んでいる秋馬光鴨は強気の態度でいるが和音と柄留、 LOKI によって屋台骨は揺らぎつつある。ヒーローとヴィランのダブルスタンダード計画も頓挫した。秋馬光鴨を当てにせず魔女の考える次なる一手は自らの子を産む事。超人的な力を持つ子を産み絶対的なヒーローとして街のシンボルとして君臨させる計画。
残った優秀なサテュロス最後の一人は戦闘力はそれほど高くないが慎重で臆病でずる賢く生き残る術に長けている。信仰心も強く暗躍させるには丁度良かった。
***
―――オータムホースシティ第 1 区。市庁舎市長室。
市長・大武秀義は市長室に集まった屈強な男女に向かって視線を送る。
「近い将来、勢力図が入れ替わる予感がするな……第 1 区から第 6 区まで動きを見逃すなよ?最後に笑うのは我々鬼衆だ。この秋馬原島は鬼が島とするに為にな」
「市長、例の龍の対処は……」
「考えてある。奴がこの街に再び来た時の為にな……恐怖と暴力だけじゃあこの街は支配できん。籠絡させるのも手よな」
「神名はどうしますか」
「これまで通りの関係で良い。『吉備真備と友好関係を築いた温羅』みたいなものと考えろ」
「はは!」
DHHU 外伝グレイ・イーター編 完
DHHU外伝グレイ・イーター編その7 Jun 2, 2025
DHHU外伝グレイ・イーター編その6 Apr 14, 2025
DHHU外伝グレイ・イーター編その5 Mar 30, 2025
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search