未完成のブログ

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Sep 21, 2025
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ラビット・アンダーグラウンド 7 話

『動悸……なゆか動揺してる』

 ポポリンが報告する。

「そりゃあだって……ねえ?」

 狐理子に視線を向けるなゆか。

「申し訳ない気持ちはあるけど……なゆかはそのサキュバスハーフの力を使いこなせないままじゃあ平和な一般人生活は送れないと思うんだ」

「そう……かもね? おばあちゃんは上手く制御してたっぽいけど」

「今後どうしていくか一緒に考えようよ。まずは LavaGerden に行こ」

「うん」

***

LavaGerden に到着する二人。なゆかはそのままカフェフロアのアルバイトに。狐理子は上階の事務所に向かう。

「すーはー……気持ち切り替えてお仕事しなきゃ」

『なゆかえらい!』

 制服に着替え他の従業員に挨拶をしてカウンターに入るなゆか。客は 2 組のカップルと妙齢の女性のグループ、端末を持った若いビジネスマン。

「よし、頑張るぞ」

 カウンターの横に立っていた丹羽省羅が端末を持ったビジネスマンに近づいていく。なゆかは何となくその様子を見ていた。

「あれ? なんかあのビジネスマン立ち上がって省羅さんにペコペコしてる」

 慌てた様子でその場で電子マネー決済をして LavaGerden を出て行くビジネスマン。戻ってきた省羅に声をかけるなゆか。

「何かあったのですか?」

「いえ、大した事はありませんよ。少し教えて差し上げただけです何も心配する事は無いですよ」

 いつも通りの上品で瀟洒な省羅であったがほんの僅かに怒りがこもっていたとなゆかは感じた。

「(……トラブル対応かなぁ)」

***

 ――― LavaGerden 上階。

「ご苦労様フォックス。後始末も問題ありませんわ」

「恐縮です」

 大学での任務の報告を聞きながらワイングラスを傾ける昊菜、向かいには狐理子が座っている。いつも昊菜といるはずのハートの姿が見えない事に気付く。

「あの……ハートさんは?」

「ああ、あの子は仕事中です」

「そうですか」

 ハートの仕事は殆どが血生臭いものである。彼女が仕事に出ているという事はどこかで哀れな犠牲者が生まれている事が想像できる。

「まだ未だに懲りずにちょっかいをかけてくる不届き物が来ますのよ」

「それは……自分のせいですか?」

「いいえ。ブラックヴァリーではありませんわ。来てたのは近所のホストクラブの連中ですわ」

「あの……彼らは何をされたんでしょう?」

「下のフロアーの省羅の報告では盗撮ですね。会員証をどこかから得たホストクラブの人間が来たのです。ウチの客にホストクラブに会員証を渡すなんてそんな者は居ませんもの」

「……その件でハートさんが仕事をしに行ったと」

「ええ」

***

 省羅に警告されたビジネスマンの男は慌てて店を出た。携帯を取り出したところで足がもつれて転んだ。まるで地面が泥のように柔らかく足が沈みこんだ。

「なんだ! なんだよぉっ!」

 地面に沈んでいく男。必死に手足を動かして藻掻くも沈んでいく。やがて空洞に落下した。

「イテェ……」

 照明が点いた。そこには黒フードの小柄な女性、ハートの姿。その奥には夥しい量の骨が散らばっていた。

「ななななななんだテメェ!」

「私の質問にだけ答えろ。盗撮したデータは送信済みか?」

「近づくんじゃねぇ!」

「質問に答えろといったよな?」

 瞬間移動めいて肉迫する端末を持った左手の指 3 本が飛ぶ、落下する前にハートは端末をキャッチ。

「うぎゃああああああああっ!」

 ハートに手には鋭い刃のイプシロンアックス。持ち手を包み込みεの形をした斧。

「データの送信は?」

「し、した……しなきゃ報酬貰えねえから!」

「したのか……じゃあ駄目だな。あそこの骨の仲間になってもらう」

「チクショウ……舐めやがって」

 懐に仕込んでた櫛型の隠しナイフに手を伸ばす男。その瞬間閃光のようにハートのイプシロンアックスが走り残った右手を手首から切り落とす。

「いぎゃああああああああっ!」

「舐めてるのはどっちだ?  LavaGerden を……ご主人様を舐めやがって……今決めた、お前の関係者すべて始末する」

「やめろ……やめてくれ……」

「誰に依頼された? お前はどこから闇バイトに登録した?」

「お、同じ店のキャストのシンヤって奴に紹介されて…… 1 回 10 万ってウメェ仕事だって……アンタ何者なんで?」

「カスが! 誰が質問していいと言った? まぁ何者か知ってたらこんな舐めた真似できる訳がないよな? じゃあ教えてやる。 LOKI だ」

「ロ…… LOKI ってあのクソヤベェ闇組織の……いくつもこの街のマフィア半グレを潰してる……まさかまさか……知らなかったんです……許してください!」

「許せだと? 何故私がお前の希望を聞いてやらなきゃならない?」

「一生のお願いです!」

「お前を逃がして私に何の得がある? ここで始末しておいた方がスッキリするだろう」

「ウチの店の事何でも教えます! キャストの個人情報でも客のリストでもなんでも……」

「へぇ……だがその前に盗撮動画を送信してしまった落とし前はどうつけるんだ? 前に炎上系のサイトを作ってた奴も盗撮してあの骨の中に混ざってるな。世間的に永遠に行方不明だ」

「なんでもします助けてください!」

「時間の無駄だ。私はすぐに戻りたいお前に時間を割きたくない、後 10 秒でお前を生かして私が得をする方法を言え」

「え、そそそそんな……えっと……」

「……」

「金……そうだ金庫! ホストクラブの金庫の場所教えます!」

「それを私に盗めと? ホストクラブで窃盗が起きれば警察が動くだろうが。盗撮データ送信の件をチャラにできると思うなよ? やるなら全員始末するしかなくなる、そんな大仕事は自分だけの判断でできないな」

「ひいいいい……」

 男は失禁しながらハートが脅しではなく実行する気でいると感じた。大きな声を出して恫喝するでもなく淡々と話す様子に恐怖した。

「どいつにデータを送信した?」

「それを言えば殺さないですか?」

「面倒な奴だな、話したくなるようにしてやろうか?」

 男の左耳が飛んだ。

「ぐぎいぃいいいいいっ」

「ほら、ドンドン失っていくぞ?」

「シンヤの兄貴です!」

「そいつはどこにいる?」

「知らないっす……シンヤに聞かないと」

「じゃあお前にこれ以上用はない」

 金属製の床に沈んでいくハート。

「あの……俺は……」

「殺さないでおいてやる。自分で脱出しろここは地上から 50m の深さにある厚さ 4m のコンクリート製の壁に包まれたコンテナの中だがな」

「ちょっと待って! 置いていかないでくれー!」

***

「戻りましたご主人様」

「ご苦労様ハート」

 ハートは両手で男の端末を昊菜に差し出す。

「盗撮男はホストクラブのシンヤというホストの紹介で闇バイトでやったと言ってました。送信先はシンヤの兄だと」

「あのホストクラブのオーナーはわたくしとは良い関係を築きたいと言ってましたのに」

「従業員の教育が甘いのでしょう。いかがされますかご主人様」

「シンヤの兄について調べます。場合によっては LOKI を動かします。展開次第ではあのホストクラブは消滅しますわね」

「盗撮男はここが誰のどのような店か知らない様子でしたがシンヤ兄は違うかもしれませんね。ひょっとしたら警察にパイプを持っている人物の可能性も」

「そうですわね……ここは慎重に」

 昊菜は来夢を使ってネットワークに繋がる。ホストクラブの人間のデータを集め始める。

「閉店までにどう動くか決めますわ」

***

 カフェの閉店時間、そして本日は舞台の講演は無くアーカイブの映像を流している。歌劇団のメンバーたちはレッスン場で稽古に励んでいた。

 メンバーの一人【ラクーン】が時計を見ている。元々カフェの従業員で歌と声を気にいった昊菜が歌劇団にスカウトをし【ラクーン】の名前を得た。

 普段の大人しい性格からは想像できないほどパワフルで情熱的な歌声に魅了された昊菜はギャップからそう名付けた。

「気付いたらもうこんな時間……ラクーン、気を使わないで上がって」

 スワンが声をかけた。

「あ、はいそれでは皆さまお先に失礼します」

「お疲れさまでーす!」

 メンバー全員の声がハモる。

 ラクーンは自分の SliME を持ち歩かずにロッカーに置いているメンバー。完全な一般人で SliME にも依存していない。

 隠しエレベーターからバックヤードに降りる。そこでなゆかと出くわした。

「あ、お疲れ様です」

「お疲れ様です……歌劇団の方ですよね?」

「え? あ、はい……」

「すみませんこの前の舞台見たのでつい声をかけてしまって……」

「え、解るんですか?」

SliME で髪型もメイクも変えているのどうして? とラクーンは思った。

「ごめんなさい私もオーナーから SliME をお借りしていましてそれで……」

「ああ、そうでしたか。でも……歌劇団のスタッフでも無いのに SliME を?」

「ちょっと事情がありまして……すみません時間取らせちゃいましたね、それでは失礼します」

 なゆかは頭を下げてバックヤードを進む。

「私も帰る所です。バスに乗って」

「私もですよ、第三区方面のに乗ります」

「じゃあ一緒ですね……あの」

「ああ、失礼しました。私は藺藤なゆかといいます」

「えっとわたしは倉木ひかる……って SliME から教えてもらってますよね?」

「すみません、そうなんです……では倉木さん途中まで一緒に帰りましょう」

「ええ」

『普段の黒髪ボブカットの倉木ひかるの時と違ってラクーンになってる時はピンク髪のケモミミヘヤースタイルになってるから普通は気付かないよね』

「(完全にオンオフ分けてるんだね)」

 なゆかはもし自分が MGM 歌劇団ならラクーンのように普段の自分と分けてもいいかもしれないと考える。狐理子のフォックス忍法なりきりの術ではないがもう一つの自分を作る事によってサキュバスハーフの自分を受け入れて制御しやすくなるかもと思った。

「(えぇーもし MGM 歌劇団に入るのならオーナーになんて名前つけられるんだろう? チワワとかだったりして?)」

『なゆかは自分のことチワワだと思ってるの?』

「(どうかなー咄嗟に思い付いたのがチワワってだけワンだよ!)」

『なにその独特な口調』

「(良くない?)」

『なんともいえない、それになゆかはチワワのイメージないよ』

「(そうなんだ)」

 なゆかと倉木は LavaGerden を出てバス停に向かう。二人の後を離れて追跡しているのは狐理子。昊菜の指示である。

 バス停で待っていると一人の男が声をかけてきた。

「や、どーも。お二人さん LavaGerden から出てきたのを見たんすけどあそこのキャストか何かっすかねぇ?」

 色のついた顔前面を覆うサイバーシールドを身に着けている男。

「あの……誰ですか?」

 なゆかが言った。

「お、俺っちに興味出た? じゃあこの名刺どうぞ」

 男は名刺をなゆかに差し出す。そこには【 OH 探偵事務所:七曲キョウヤ】と書かれていた。

『この名刺本物だよ。この男の情報は SliME ネットワークに登録されているよ』

 ポポリンが骨伝導でなゆかにだけ聞こえるように言った。

「探偵さんがなにか?」

「いやぁ~ LavaGerden の話をちょっと聞きたくてねぇ~帰りが遅くなるのは気にしないでいいよタクシー呼んであげるからすぐそこの居酒屋でお話どうかな?」

「明日も早いので失礼します」と、倉木は言った。

「私もちょっと……」

「探偵に貸し作っておいて損はないよ~? 何かあった時初回タダで仕事引き受けちゃうかもよ? あとは俺っちブランド物のデザインもやっててさぁそれの割引クーポンとかでもいいぜ?」

「ちょっと待った!」

 七曲キョウヤの背後から声がした。狐理子だった。

「ええっと、貴女は?」

「私も LavaGerden の従業員だ! 話なら私が聞こう!」

「ひゅ~かっこいいね! 殺気バリバリだし……そんな警戒しなくても大丈夫だって俺っち警察に協力した事もあるホワイトな探偵だぜ?」

「伝説のドラゴンとグレイキャリバー事件に関わっていたというアレの事だろう? だがお前が半グレの G/T と繋がっている事も把握しているぞ」

「あれまぁ俺っちて有名人じゃーん! あんたの言う通り半グレとも繋がりあるけどあくまでビジネスって訳よ。裏の情報も得ないといけないからねぇ……フォックスさん?」

「お前知って……気安くその名前を呼ぶなよ。特に外ではな」

「は! じゃあ居酒屋にでも行きましょうよ、そっちのメガネのお嬢さんも是非」

 なゆかに視線を向ける七曲キョウヤ。

「やめといた方がいいんじゃないか? 守護神がいるぞその子は」

 狐理子は大澤垓の事を頭に浮かべながら言った。

「なにもしないって~話聞くだけで一々配慮してたらこの街で探偵なんて出来ないぜ」

『キリコ、来夢から連絡。できるだけ七曲キョウヤと話をしろとの指示。弟のシンヤの事と闇バイトについても聞いておくようにと』とコンキチ。

「(了解)」

 目配せをしてなゆかに合図を送る狐理子。ポポリンにメッセージが届く。

『狐理子のコンキチからメッセージ届いたよ。怪しい探偵からできるだけ話を聞き出すからなゆかはラクーンと家に帰ってだって』

 頷くなゆか、倉木と一緒に到着したバスに乗り込む。

続く






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Last updated  Sep 21, 2025 11:50:41 PM コメントを書く
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長月(ながつき) @ Re[1]:Fallout:NewVegas 第1話2話「目覚め」(11/19) Keyさんへ ありがとうございますがんばり…
久 遠@ Re:FalloutNewvegas121話「ストレンジトランスミッション!」(07/20) やほーい(=゚ω゚)ノ 何周遅れか分からないけ…
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