2003.04.15
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我々の一族は、何百年も前から、戦闘集団として数多くの争いに関与してきた。

雇われながら、その戦闘技術を供給し、報酬を得ていた。
暗黒の時代が終結するとともに、争いはなくなり、世に平和がおとずれていった。
結果、我々の一族は、社会にとって必要ではなくなった。
卓越した戦闘技術だけは血族に代々受け継がれていった。
しかし収入源がなくなり、貧窮に耐え切れない仲間は、次々に離反していった。
オレを含むわずかな残党は、暗殺技術や戦術のノウハウとともに、
かつて行われていた戦闘の背景にある権力に関する情報も、引き継いでいた。


マンションのエントランスホールの窓ガラスが、爆音とともに割れ落ちた。
同時に、黒い戦闘服姿が何人もなだれ込み、自動小銃を乱射した。
黒い戦闘服の集団はよく訓練されており、無駄のない動作で組織的な
破壊活動をこなした。ところが彼らは、個人の技能は熟練していなかった。
我々一族は少数ながらもナイフやハンドガンを駆使して善戦し、ついには
この黒い襲撃者を壊滅せしめたのだった。
しかしこの戦闘で、一族にも多くの犠牲者が出てしまった。

襲撃者の死体が残した遺留品により、彼らの身元が判明した。
かつて我々を雇用し抗争に荷担させやがて勝利し、今では権力の中枢に
地位を置くある支配者の私兵集団だった。
もはや必要のなくなった我々の戦闘能力を、過去の汚点とともに消し去

しかしもはや我々には、権力に立ち向かう組織的な行動力はなくなっていた。
つまり地下に隠れて襲撃を回避するしか、生き延びる方法はなかった。

ババアがアタマから血を流しながら、アジトへ駆け込んできた。
オレとオレの弟を、小さい頃から面倒をみてくれていた老婆は、オレらが
大人になっても老婆のままだった。オレは部族に伝わる戦闘技術の

わかっていた。ただ直系の祖母ではないことだけは確かだった。オレは
この老婆のことをいつも「ババア」と呼ぶが、名前を知らないわけでは
なかった。ババアの名前は「マリコ」といった。どう見てもマリコという名の
女には見えないから、一族のほとんどは、ババアとしか呼ばない。

「おまえら、速く裏から逃げな。」
そんなような意味の言葉を叫びながら、オレと弟を外へ逃がしババアは、
扉の影に隠れた。追っ手の襲撃に対抗するためババアはオートマチックの
ハンドガン構え、アゴで裏口を指し示し、早く逃げろと促した。
それが、ババアとの最期の別れになった。
裏口には、根津甚八がいた。
根津は、我々の戦闘を現場で取り仕切る司令官だ。
「長老の家に行く」
根津はそれだけ言って、我々を走らせた。
背後で、爆音と爆風が起こった。ババアが自爆したのかもしれない。
しかしオレは、振り向ずに走った。

長老の屋敷は、巨大な日本家屋といった造りだったが今では、襲撃により
半壊している。
庭先で無防備にディレクターズチェアに腰掛けている仲代達也が、長老だ。
長い白髭を垂らし、白装束の着物を着て青白い顔をしている。
我々は家の一番奥の座敷に集まった。仲代達也はまだ庭で芋を焼いている。
「ここの敵をおびき寄せた後、壊滅作戦をおこなう」
根津甚八が言った。止まない襲撃を打開するための、大掛かりが戦闘が
必要だったが、打って出る時期は、余りにも遅すぎた。
オレと弟と根津甚八以外には、椎名桔平しかいない。
すると、原田枝美子が入ってきた。原田枝美子は、長老の妻だ。
無造作に運んできた黒いボストンバッグから、自分はショットガンを取り出して
弾丸を装填した。スライドの金属音が座敷に鳴り響いた。
それぞれがボストンバッグの中から好きな武器を取り出して手にした。

オレが手にした武器はハンドガン。
ルガーだかワルサーだかの、銃身の短いオートマチック。
ステンレスで口径が大きく衝撃が強いため、長距離の射撃には向かないが、
連射しやすいため、接近戦に威力を発揮するタイプだ。
予備のマガジンは分散してポケットに入れた。
根津甚八が自動小銃、椎名桔平が日本刀を手にしたところで、
ふすまの向こうにおびただしい人の気配を感じた。
根津も同じ気配を感じたらしく、手にしたばかりのM16をふすまに向けて
乱射した。椎名桔平の日本刀で割られたふすまの向こうには、例の黒い
戦闘服が20数人倒れていた。乱射をまぬがれたわずかな戦闘員に向けて、
原田枝美子がショットガンを放った。これでふすまの向こうは、全滅した。

ふすまに対して右側が障子になっていて、その向こうに縁側がある。
そこにも気配を感じていた我々は、一瞬の合図とともに、障子戸を蹴倒した。
そこには50人単位の黒い戦闘員が配置されていた。
しかし縁側と庭の間には、防弾ガラスが仕組まれているから、直接的な標的は
縁側の中に入り込んだ15,6名だけだった。
倒れた障子戸に頭をぶつけた戦闘員の1人にオレは銃口を向けた。
敵と我々はごく近い距離で銃口を向け合い対峙している。
オレは人質を盾にして、その他の敵に向かって「下がれ」と命じた。
縁側まで入り込んでいる兵士15,6名は当初躊躇したが、やがて銃を下ろし
後退しはじめた。

ところが1人だけ、その場に固まって動かない兵士がいた。
オレは人質にしていた兵士の頭を打ち抜き、すぐにその動かない兵士に銃口
を向けた。黒いニットの目出し帽を剥ぎ取ると、無精ひげの生えた顔に、脂汗
をたっぷり滲ませていて、怯えた表情でしきりに、後ろ側に視線を送っていた。
アタマの後ろに、一本のワイヤーが見えた。
とっさに、敵の仕掛けたトラップだと思った。
そしてこのマヌケな無精ひげは、自軍が仕掛けた罠のためのワイヤーに
ひっかかってしまい、動けずにいるのだった。

そのとき、アタマを打ち抜いた一人目の人質が、今になってようやくバランスを
崩し、後ろに倒れこんだ。二人目が必死になって押さえていたワイヤーが、
倒れこんだ拍子に引っ張られ、何かのピンが抜けた。
白い閃光が、オレの視界を覆った。
そして爆風を感じたところで、目が覚めた。

そんな、夢を見た。





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最終更新日  2003.04.15 17:41:26
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