2003.10.09
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ミスを犯した人間の責任を問う行為にはなんの生産性もないし、責任を問うために時間を使うなら、どうやって修復したらいいかとかミスが起こらないようにするにはどうしたらいいかというような体質改善のための協議をしたほうがずっと合理的だ。しかし「ミスをするのがあたりまえ」という考え方が蔓延し定着してしまうのは大問題だ。ミスをすると必ず誰かに迷惑がかかる。プライベートな時間を削られるとか、同じ作業を何度も繰り返さなければならないストレスを与えるとかいったことが「迷惑」にあたる。オレの周囲の人間はあまり他人のミスに対して怒ったりすることはない。怒ったところでミスがなくなるわけでもないし、以降の作業がスムーズになるというわけでもない、つまり「怒る」ということが合理的ではないことを知っているから、怒るということをしないのだ。

我々の客は銀行だ。我々システム屋が比較的個人を尊重していて上下関係があまりない体質であるのに対して、銀行は完全な封建主義だ。下位のものは上位のものに対して絶対服従なのが封建主義だ。銀行の上位者がなんという肩書きで呼ばれているかというと、「代理」や「調査役」である。代理は何の代理かわからないし、調査役といっても何かを調査し続けてるというわけではない。彼らは「シマ」と呼ばれる同じ仕事をする単位事の席の集合の上座に鎮座ましましている。そのシマの集合の上座の位置は「役席」と呼ばれている。役席に座っている肩書き付の男は、「役付」と呼ばれ形式的に敬われている。役付は常に怒号や罵声によって下位の者を支配し仕事を管理している。彼らは他人のミスには寛大ではない。ミスに対してというよりも、ミスを犯した人間に対して、呪いや罵りの言葉を吐き続けて責めたてる。人格の尊厳を完全に無視し、ときには感情のおもむくまま書類や文房具が投げつけられ、デスクは激しい音を立てる。そのとき周囲は静まり返っている。オレはその代理だか調査役だかわからない人物を不愉快に思っているが、キレるわけにはゆかず、じっとしている。じっとしていることにはもう慣れた。銀行という組織の身内ではない我々が彼らの標的になることはないが、客である銀行から金をもらって仕事をしている立場上、役付には絶対服従かもしれない。

前回我々が構築したシステムで障害が起こったときに、我々の責任者は役付に散々しぼられていた。そのことが契機になり、システム全体として今回は絶対にミスを犯すまいと誓った。そのため、徹底した検査や検証を行った。何万通りもの数値が、膨大な時間により手作業で検証された。やがて天文学的な全ての数値は0コンマ1の単位でもぴったり一致した。地球の危機を救った英雄の活躍を喜ぶ管制室のような喜びに満ちた雰囲気に我々のシマはなった。
「怒られるかもしれない」という恐怖は、仕事の精度を上げるために有効に機能しているかもしれない。銀行が、あまりミスを犯さないということも、封建主義的体質が関係しているのかもしれない。





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最終更新日  2003.10.11 17:29:12
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