2004.06.13
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「晴海ふ頭にインドネシアの練習艦が入港中」という情報が入ったのは前日の夜遅く。ツーキニストによってである。一般公開されていて船内の見学も可能だという。新幹線といい船といい、ツーキン一家は乗り物には敏感だ。

もんじゃ焼きが4,5枚消費されたところで食への欲求はすでに止まっていたが、果たして空腹が完全に満たされたかというとわからない。

店の外には自転車が山積になっていた。とりわけツーキニストが乗る自転車は巨大で、幼い子どもを安全に乗せるためのものものしい装置がついた、いかついママチャリの存在感は他を圧倒していた。
りんくんは赤い小さなヘルメットをかぶり、いち早く後部座席に上げられ待機した。「はやく、はやく」というようなことも言わずに、前を向いて口を結び、ただ待っているのだった。
ぐるぐるに縛っておいた自転車のかたまりをほどき、それぞれが荷物やグローブを装着し終えると、いよいよツーキニストのママチャリがスタートした。続いてユウコさんの小径車。小径車だが折り畳み式ではない。確かに折り畳み自転車を折り畳んで使うことなんかめったにないから、そんな機能は必要ないのかもしれない。

4台のロードが、歩道をママチャリに誘導されているという、なんとも情けない編隊で晴海ふ頭へと進行してゆく。
景色が開けてきて、風や潮の匂いが強くなっていくと、マーチングバンドの演奏が遠くから聞こえてきて、その音の方向を見ると、3本マストを高くそびえた白い帆船が現われた。マストの先から船首と船尾に向かって世界の万国旗が飾られていて賑やかだ。
その隣に停泊しているのが「エスメラルダ号」。万国旗よりひと回り大きく雄大でそして上品だ。

我々は自転車をこぎながら口をあけたまま、突如目の前に現われた戦艦に釘付けになった。誰もが口をそろえてこういった。
「やまとだ」

我々が大和と思っていた船影は大和ではなく、「護衛艦ひえい」だった。
自転車を置いて近づいてゆくと、白い海軍の制服を着た上等士官がパンフレットを渡してくれて、そこに船の名前と仕様がこまごまと書かれていた。
船首側には、砲が2門と、ミサイルや魚雷のランチャーが1門。中央にはレーダーや通信機を搭載した指令塔や、いくつかの機関砲台。船尾側には、ヘリ2機を格納するカタパルトや離着陸のためのデッキ。
マットなねずみ色の船体は、海洋での対空のカモフラージュだろうか。
攻撃用の兵器を搭載していて「駆逐艦」のようだが、肩書きは「護衛艦」。先に「白い海軍の制服」といったが、本当は「海軍」ではなく「海上自衛隊」である。
「日本海軍の駆逐艦ひえい」としたほうがかっこいいのに、どういうわけかこのねずみ色の戦艦は「海上自衛隊護衛艦ひえい」という名前だ。

「ひえい」を2周ぐらいしているうちに皆とはぐれてしまった。
エスメラルダ号には長蛇の列が出来ていて船内も混雑しているから見る気になれず、その先の万国旗船の前に向かうと、マーチングバンドの音が大きくなってきてひきつけられるようにして近づいていった。
同じ制服を着た50人クラスのバンドはインドネシア人だろうか。皆一様に顔が小さく、スタイルが抜群によい。オレも日本人でなければ、あんなかっこいい男に生まれていたかもしれない。ブラス隊はトランペットやトロンボーンを、東京スカパラダイスのように躍らせていて、太鼓隊はなぜかオットセイの着ぐるみを着て、バチを器用にくるくる回しながら正確なリズムを刻んでいる。


折り返すようにもとの自転車を置いた場所に戻ろうとすると、ツーキニスト家族がエスメラルダを見学する列に並んでいる最中だった。
ディズニーランドよりは早く乗れそうだね。
「ああ、進んでるからね。」
それがこの日の、ツーキニストとの最後の会話になった。
首尾よく船内にもぐりこんだツーキン家族だったが、順路に従って出るだけでも、並ぶのと同じぐらいの時間がかかりそうだという。

もんじゃオフは、ここで解散となった。

同じ荒川を戻るのが嫌だったのと、クールダウンを兼ねるという意味で、皇居を目指してゆっくりと走ることになった。皇居あたりでは、内堀通りの半分ぐらいが、日曜の昼間だけ「パレスサイクリング」として自転車に開放されている。
オレはなんとなく疲れてきていて眠くもあったので、パレスサイクリングの端の気象庁の前にある、変なおっさんの銅像の前でリタイヤした。
しばらくすると副主将もやってきて、彼女としばらく話したりタバコを吸ったりしていたが、いよいよ眠さに耐え切れなくなった。
副主将、ちょっと膝貸してくれない?
「え、え、何に使うですか」
寝るんだよ。
返答を待たず、副主将の膝の上にアタマを置いて横になった。
陽射しとか風とか、太ももの感触とかそういうのが心地よい。





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最終更新日  2004.06.21 23:00:09
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