白山菊理姫さん、こんばんは。

>日本の古代では、ヤマトタケル伝説にあるように、白い鳥は死者の魂を運ぶ神の使いですね。だから私は、白い鳥が住む世界とは黄泉の国なのではないかと思ってしまいます。

お返事いただいたものを読むと、イェイツの恋人とされる方が、どんな立場だったのか(たとえばお家柄など)を知りたくなってしまいます。なぜ黄泉の国まで逃避したかったのかなと考えてしまいます。もしくは黄泉の国に迎えにいきたい方がいるとか。

こういうときに神様や黄泉の国に対する考え方が、きっと少し日本人とは違っているのかなと思いますが、スウェデンボルグを研究していたのでしたら、差はそれほど大きくはないのでしょうか。 (2007.12.27 22:24:56)

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2007.12.27
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カテゴリ: 文学・芸術
▼白い鳥と薔薇

薔薇

以前紹介したウィリアム・ブレークもそうでしたが、イェイツもまたエマニュエル・スウェデンボルグら神秘主義思想の影響を受けています。特に初期、中期の作品の中では、ケルトの神話や伝説を積極的に採り入れ、幻想的な詩をたくさん残しています。薔薇も多く登場します。多くは心の状態を表すシンボルとして登場する点で、シェイクスピアとはだいぶ異なります。シェイクスピアはもっと直接的な「美」「頬の色」などの比喩として薔薇を多用していましたね。

まずは初期の作品、そのタイトルも『薔薇』(1893年)から「白い鳥」です。

The White Birds

I would that we were, my beloved, white birds on the foam of the sea!
恋人よ、私たち二人が海の泡に上に降り立った白い鳥であったならば!

We tire of the flame of the meteor, before it can fade and flee;
私たちは、掻き消え行く前の流れ星の輝きにも飽きている。

And the flame of the blue star of twilight, hung low on the rim of the sky,
そして、空の縁に低くかかる黄昏の蒼き星のきらめきは


恋人よ、消えることのない悲しみを私たちの心に芽生えさせる。

A weariness comes from those dreamers, dew-dabbled, the lily and rose;
倦怠は、あの夢見るものたち、露のしずく滴る百合と薔薇から生まれる。

Ah, dream not of them, my beloved, the flame of the meteor that goes,
ああ、恋人よ、夢を見るのをやめよ。去り行く流れ星の輝きの夢も、

Or the flame of the blue star that lingers hung low in the fall of the dew:
露の滴の中に、低く輝き続けている蒼き星のきらめきの夢も

For I would we were changed to white birds on the wandering foam: I and you!
その代わり私とあなたが、漂う泡の海に休む白い鳥に変わることができたらいいのに!

I am haunted by numberless islands, and many a Danaan shore,
私の心に浮かぶのは、数え切れないほどの島々と、多くのダナン神の浜辺


そこでは、時間はきっと私たちのことを忘れてくれ、もはや悲しみが私たちに近づくこともない。

Soon far from the rose and the lily and fret of the flames would we be,
やがて、薔薇も百合も離れて行き、情熱の炎に対する苛立ちも消えるであろう。

Were we only white birds, my beloved, buoyed out on the foam of the sea!
恋人よ、海の泡に浮かぶ白い鳥にさえなれればいいのに!



5行目から7行目にかけても、通常とは逆の表現が使われます。薔薇と百合は倦怠をもたらし、薔薇色の夢も見てはいけないと言っているようです。どうせ消えてしまうはかない夢ならば最初から見ないほうがいい、ということでしょうか。

そうした疑問の解答となりうるのが、最後の4行です。11行目のfretは最初、soon we would be fret of~という文脈で形容詞として読むのかと思いましたが、意味を斟酌すると、どうやらsoon we would be far from fret of~と名詞として読むのが正しいようです。つまり、9行目から11行目は二人が白い鳥になった場合の世界を描いていると考えられます。

このことから、イェイツはどうやら、白い鳥の世界と、薔薇や星たちが存在する世界を明確に分けていることがわかります。白い鳥が象徴する世界は、時間や悲しみとは無縁の世界。ダナンはアイルランド神話に出てくる光明、生命、温情の諸力を持つ神族です。どうやら現実とはまったくかけ離れた世界のようです。

これに対して薔薇や星や炎(flame)が象徴している世界は、はかない夢や倦怠、悲しみの世界。現実の世界に近いですね。夢見る薔薇も百合も、流れ星のきらめきも、すべて時間の中で色失せるもののシンボルとして描かれているように思います。シェイクスピアの薔薇とは一味違いますね。

海の泡の上に浮かぶ白い鳥は、煩わしい日常に戻ることのない、まったく別の(永遠の)世界です。しかし現実世界では、やがて煩わしい日常が、時間とともに「はかない夢」を奪っていく・・・。
あくまでも私の解釈ですが、皆さんはどのように読まれたでしょうか。





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最終更新日  2007.12.27 13:54:01
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白い鳥と薔薇  
furafuran  さん
こんばんは。

イェイツの望みが(自由に空を飛び)海の泡に浮かび、のんびり漂う白い鳥であり、薔薇や百合ではなかったことはわかるのですが、花や星はある程度の時間がたつと、消え行くはかなさをいっているのか、決まった場所にしかいられない、はかなさも含むのかを考えてしまいます。

ダナン神の光明、生命、温情の力で守られている世界が理想の世界ということなのでしょうか。バラを直接比喩で表現してはいないのに難解です。 (2007.12.27 19:22:46)

Re:白い鳥と薔薇(12/27)  
白山菊理姫  さん
furafuranさん
こんばんは。

>イェイツの望みが(自由に空を飛び)海の泡に浮かび、のんびり漂う白い鳥であり、薔薇や百合ではなかったことはわかるのですが、花や星はある程度の時間がたつと、消え行くはかなさをいっているのか、決まった場所にしかいられない、はかなさも含むのかを考えてしまいます。

不死や永遠の象徴ならば、薔薇や百合でもいいように思いますが、なぜ白い鳥を選んだのか、疑問が残ります。あるいは私たちの知らないケルトの神話があるのかどうか。
日本の古代では、ヤマトタケル伝説にあるように、白い鳥は死者の魂を運ぶ神の使いですね。だから私は、白い鳥が住む世界とは黄泉の国なのではないかと思ってしまいます。イェイツはスウェデンボルグを研究していたといいますから、霊の世界(あの世)を念頭において、白い鳥をシンボルとして使ったのかもしれません。
その解釈で行くと、星や花はこの世に属するものなのでしょうか。死んで星になる場合もあるし・・・。よくわからないですね。

>ダナン神の光明、生命、温情の力で守られている世界が理想の世界ということなのでしょうか。バラを直接比喩で表現してはいないのに難解です。

シェイクスピアの薔薇のほうが理解しやすかったですね。これからもこうしたシンボリックな薔薇がたくさん出てきます。イェイツの詩は難解ですが、面白いです。 (2007.12.27 20:35:31)

Re[1]:白い鳥と薔薇(12/27)  
furafuran  さん

Re[2]:白い鳥と薔薇(12/27)  
白山菊理姫  さん
furafuranさん
こんばんは。

>お返事いただいたものを読むと、イェイツの恋人とされる方が、どんな立場だったのか(たとえばお家柄など)を知りたくなってしまいます。なぜ黄泉の国まで逃避したかったのかなと考えてしまいます。もしくは黄泉の国に迎えにいきたい方がいるとか。

そうですね。そこが一番の問題です。なぜ黄泉の国(霊界)へ恋人を連れて行きたいのか。でも、肉体を持つことの苦しさを考えると、わからなくもないなと思うときもあります。時間や物理的なものの制約を受け、他の生命(植物や動物)の犠牲の上に成り立っているこの世界での生活は、つらいものがあるのも事実です。肉欲という情熱(flames)も、はかなく消えるもの。永遠の魂だけで恋人とつながっていたい、とイェイツは思ったのかもしれませんね。

>こういうときに神様や黄泉の国に対する考え方が、きっと少し日本人とは違っているのかなと思いますが、スウェデンボルグを研究していたのでしたら、差はそれほど大きくはないのでしょうか。

スウェデンボルグの霊界の物語はイェイツにとってもかなり刺激的な内容だったと思います。ただ、東洋の霊界と異なる部分も多く、同じ霊界でもいろいろあるなと面白がっています。

鳥に関しては、ギリシャ神話やエジプトではやはり神の使者的な役割を担っていますから、普遍的なものかもしれません。タイのハニ族の鳥居も同じですね。 (2007.12.28 00:18:35)

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