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2022.05.19
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テーマ: 読書(8210)
カテゴリ: 本日読了
2022/05/15/日曜日/曇り


〈DATA〉
筑摩書房/義江明子
2021年3月10日第一刷発行
ちくま新書1555

〈私的読書メーター〉〈

かつて読んだ本の中で、万葉集と漢詩の違いに関する記述が思い出された。万葉集は大王から名もなき人まで、思い寄せる人への恋しさがメインのような詩歌集だが、漢詩にはそのような歌は殆ど無いそうだ。いわんや読み人知らずは?

民族の言葉の幸い「うた」における有り様がそこに暮らす人びとの風土風景と不可分である事を察するに、環境の差異が言語芸術宗教にもたらす影響の程が偲ばれる。

もののあはれが美学の真髄にあるこの国では、女々しさこそ文化の本質の一つかも。ところでヤマト社会では夫婦の絆より兄弟姉妹の結びつき、とりわけ同母の兄弟姉妹は生涯を通じて共に育ち、互いに助け合い支え合ったという。

吾が妹とは文字通り、父系母系を通じて濃厚な近親婚の血脈の上に築かれた情緒なのだろう。

それにつけても、その世界観の中にありながら、本書にみる皇極はかなり荒ぶる女帝の様相だ。

36年に渡り内政外交をマネジメントしてきた蘇我系王統の推古が今際の床で後継候補の田村と山背を呼ぶ。推古の言を群臣たちが解釈評議して田村=舒明が立ったがそれも間も無く薨るとキサキ宝が皇極として立つ。

山背が排除の対象となるや皇極の弟軽と、蘇我系を次期王位に据える腹づもりの入鹿を引き込み山背の上宮家は滅び果てる。しかしその2年後の乙巳の変では皇極長子の中大兄王主導で蘇我親子が暗殺される。

皇極にとって二つの目障りを取り除くのは、彼女の弟と長子というきな臭さを覚えずにいられない。論功行賞であったか、皇極は事件の2日後には弟に譲位している。

当時まで王の王たる大王は、「み印」を群臣長なりその役の王から封じられる立場であって、それらは大王となった者に預けられるのであり所有物ではない。ところが皇極はそれを我が物の如く弟軽に譲渡することで軽を大王と成した。これは群臣の評定を蔑ろにしたものであったろう。

弟と共立した皇極だが、難波京が開かれると間も無く袂を分かち、子どもら係累と古巣の飛鳥京に戻る。群臣らはこぞって元々の居館のあった当地へ集合。難波京の弟帝、孝徳は失意の内に病死。

すると皇極は斉明を重祚し、飛鳥京の儀礼空間構想を推し進めていく。全てこの女帝を中心に物事は展開され、それがやがて大宝律令によって豪族らを骨抜きにし、絶対王権が形作られていく。

大敗する白村江の戦いに一族引き連れ九州に赴き先陣に立つ。その道中ヒメら二人が出産するなどはひょっとして神功物語に比定されるのかも。

不比等と共に記紀を完成させた持統は恐らくこの祖母を崇敬していたのではないだろうか。

皇極に俄然関心の湧く一冊だ。









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最終更新日  2022.05.19 20:10:26
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