小説を書こう!

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2004.09.23
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   第1章 ある男の独白

 私の記憶は、幼稚園の頃から始まる。
 そしてその記憶とともに私はいつだってある思いを抱いていたことに気付き、驚きやら恥ずかしさやら怒りやらがないまぜになったような不思議な感情に襲われ、涙がこぼれそうになる。それは私自身に対する涙というよりも、この世界に包まれた私、という一つの状態に対する涙のような気がする。
 これから二人の人間の物語を語ろうと思う。
 私はこの二人に対してなるべく客観的に記述しようと努力したが、その努力は絶対に報いられない努力であることを知った。だって、二人のうちの一人は、この私自身なのだから。だけど私は私のことを語りたくてこの文章を書いているのではない。私は「二人」のうちのもう一人である、ある女性について語りたくて書いているのでもない。あくまで私と彼女の二人というものについて、いや、私と彼女の二人を包みこむこの世界について書きたかった。
 まず私自身のことについて語り始めようと思う。
 私は、何の変哲も無い家族に生まれた。何の変哲も無いサラリーマンの父。何の変哲も無い専業主婦の母。何の変哲も無い二歳年下の弟。だけど私は変わっていた。外面的には何の変哲も無い長男を装っていたのだけど、内面的には「こんな何の変哲も無い家族とは違う」と思い続けていて、そしてそう思うこと自体が何の変哲も有る証拠だと一人思い込んでいた。
 自分の世界には、私一人しかいない、とよく感じた。
 人はそれぞれ自分だけの世界を持っていて、その重なる部分で他人を自分の世界に組み込んで共存している。だけど私の世界は、他の誰の世界とも重なる部分を持たない。私の世界は、私にとって見れば世界そのものだったから、私はこの世界に自分ひとりがぽつりと立っているイメージしかいつも持つ事が出来なかった。
 もしかしたら、父も母も弟も、実は何の変哲も有る人だったのかもしれない。私は人の心を察知するのにとても鈍い人間だったから、その内面に気付かなかっただけなのかもしれない。そして、家族全員で「何の変哲も無い人」を装っていた外面だけ「何の変哲も無い」家族は、外面だけでは必死に装っている分、内面では際限も無く腐敗し続けていた家族だったのかもしれない。今になって考えてみると、そんな気もする。






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Last updated  2009.01.12 11:22:07


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