本来は単館上映になるような内容だと思う。映画の出来が、そうなのではない。クスリとするような場面はあるけれど、万人がなかなか自分の身近に考えることが出来るような現実ではないからだ。出来は良い。こんなテーマをよくもここまでエンタメ近くまで作り上げた。周防監督でないと、出来なかった。ほかの監督なら、絶対深刻な映画を作るか、途中で妥協して匂わすだけの映画を作るかだっだろう。忘れもしない、96年2月3日岡山東宝で、公開直後の「Shall we ダンス?」を見始めたとき、冒頭に「物語せよといへ。われ汝の耳を魅せる話をせむ」というシェイクスピアの言葉が出る。なんて生意気な、と自分を省みずにそのときは思ったのだが、映画が終わったときにはもうすっかりその言葉に納得している自分がいた。長かった。次回作を待って、11年。新しい周防監督を見た。祝着。