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2012年04月18日
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北方謙三「草莽枯れ行く」(上) を読んだ。

相楽総三と清水次郎長の話。これは明確に日本版「水滸伝」だ。革命小説だ。


自分が武士なのか町民なのか、総三は昔から考えていた。国はすべての民からなり、武士はその中の一部である。その一部の者が、学問を修め、国がどうあるべきかを考えていた。だから今、時代の流れを導くのは武士であるべきなのだ。しかし、それは、武士以外の民に受け入れられるものでなければならない。
民の意志が作られるのは、そこからだろう。そのために、武士は命を賭ければいい。米一粒も作ってはいない武士に、出来ることは命を賭けてすべての民を縛る古い価値を打ち壊すことである。(38p)


北方謙三なので、単純な幕末小説などになるはずがない。一方の主人公に清水次郎長を選んでいることでもそれはうかが える。清水次郎長の周りは今で云う「不良の溜まり場」だ。しかし、百鬼夜行の幕末では、其処のほうが珍しい程「真っ直ぐな男たち」が居る。そして、総三も、珍しい程真っ直ぐな理想家肌の革命家という設定なのである。

「もう一ついいですか、坂本さん」
「なんだね?」
「私の友人に、決起を試みている尊攘派の志士が居ます。その男は、どこの 藩の人間でもない。しかし、決起すべきだと考えているのです。たった一人であろうともね。それを見て他の武士が集まる。やがてそれは大きな流れになって、時代を作っていく。そう考えている男が居るのです。」
「草莽の志士か」
「そうです」
「草莽は枯れ行く。そしてまた新しい草莽が芽吹く。それを繰り返し、無数の草莽が、大地を豊かにしていく。その大地から大木の芽が出ることもある」
「いつ?」
「五十年先か、百年先か」
「そんな」(173p)


益満休之助の云う「友人」の相楽総三と坂本龍馬はやがて合間見える。

「藩は大木。大木には大木の役割があり、草莽には草莽の役割がある。大木があって草莽があって、はじめてまことの大地でしょう」
「気持ちは分かる。気持ちは分かるぜよ、相楽さん」
「私も、坂本さんと話してみて、坂本さんの気持ちは分かるような気がします。確かに、倒幕の戦いは、薩摩と長州が組めば闘えるかもしれない。しかし私はそこに、草莽が加わったという歴史を刻んでおきたいのです。ほんの小さなものでもいい。間違いなく草莽の力があったということをね」
「相楽さん」
坂本は、弄んでいた靴を寝台に放り出した。
「あんたの言うことは、正しいぜよ。しかし、正しいにもいろいろあるきに、それを考えてくれんかのう。このわしとて草莽よ。どこの藩の後ろ盾も無い。薩摩と長州を駆け回って、商売をしようとしちょる。草莽は、草莽の生きる場所ちゅうもんがある、とわしは思うぜよ。大木と一緒に雨や風に叩かれたら、草莽は枯れる。わしはそう思う。雨や風に叩かれるのは大木に任せ、わしらはわしらの生きる場所で生き延びればいいきに」(230p)


前の章で「草莽は、枯れ行く」と達観していた坂本は、相楽と共に草莽として生き延びようと、語っている。矛盾なのではない。これが革命の日々なのだ。

おそらく、坂本龍馬の暗殺が相楽総三を変えるだろう。それは、下巻の話になるだろう。






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最終更新日  2012年04月18日 22時46分43秒
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