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【刑事コロンボ 〜殺人処方箋〜】「うちのカミさんに言われるんです。一度(精神科医に)診てもらえって。先生の所に通ったら治りますかね? 私の悪いクセは、、、疑い深くて人を信じないことです」平成生まれの我が息子が『刑事コロンボ』を知らないのだから、きっと今のお若い皆さんは知らなくて当然です。でも、私と同じ世代ともう少し上の世代の方々は知っているはずです。1970年代に初めてNHKで放送されるやいなや大ヒット!『刑事コロンボ』が放送される時間になると、街の居酒屋からお父さんたちの姿が消えるとまで言わしめた刑事ドラマなのですから!パッと見は冴えない刑事であるコロンボ警部が、何気ない犯人の振る舞いやわずかな手がかりから、徐々に犯人を追い詰めていくドラマなのです。派手なドンパチもカーチェイスもまったくありません!ドキドキハラハラなんて皆無なのです。ドラマの冒頭で、殺人に至るまでの経緯をすべて見せ、ロサンゼルス市警であるコロンボがその犯罪のトリックを一つ一つ解き明かしていく、というスタイル。この定番スタイルこそが、落ち着いてドラマを楽しめる所以なのです。私はこの『刑事コロンボ』を毎週楽しみにしていて、両親と食い入るように見ていたのを、昨日のことのように覚えています。さて今回ご紹介するのは、米国で1967年に放送された〝殺人処方箋〟です。あらすじは次のとおり。精神分析医のフレミングは、自宅で結婚記念パーティーを開いていた。だがこれも不仲の妻のご機嫌を取るために過ぎない。財産目当てで結婚した妻から、浮気を理由に離婚を迫られているのだ。パーティーの最中、愛人のジョーンから電話があった。ジョーンは神経症を患っていて、もともと患者として通院しているのだが、フレミングは、この女はコマとして使えると思ったのだ。気が弱いところが難であるが、ジョーンを共犯者として利用し、妻を亡き者にしようと計画を立てた。ジョーンには結婚をチラつかせ、妻の殺害の片棒を担がせることにした。フレミングは妻をメキシコ旅行に誘った。何も知らない彼女は素直に喜び、いそいそと支度を始める。だが、彼女がメキシコに行くことは叶わない。彼女は夫であるフレミングに、自宅で背後から絞殺されるのだ。一方、愛人のジョーンは、フレミングの計画通りに変装し、フレミングの妻を装い、メキシコ行きの飛行機に搭乗する。そしてわざと周囲に印象付けるような口論をし、ジョーンだけが飛行機からおりた。こうしてメキシコに旅立ったフレミングには、完全なアリバイを作り、妻は夫婦喧嘩から一人帰宅したあと強盗に殺害されたという筋書きを完成させるのであった。コロンボを演じるのは言わずと知れたピーター・フォーク。もう30年ぐらい前のことになりますが、サントリーウィスキーのCMに出演していたのを、皆さんはご存知だろうか?あれはシビれましたね、はい。今は簡単に当時のCM動画を閲覧できるのですから、便利な世の中となりました。(ピーター・フォーク CM というキーワードで、すぐに出て来ます)ピーター・フォーク的な役者を日本で探してみたら、いましたよ、日本にも。、、、とは言え、今は亡き役者ですが、藤田まことあたりが、ピーター・フォークのポジションではないでしょうか?今回、私がおすすめする〝殺人処方箋〟は、ラストの大どんでん返しが見どころとなっています。犯人は完全犯罪を目論む精神科医。頭脳明晰なインテリです。たとえ長年のキャリアを積んだ刑事と言えどもお手上げかーー⁈ と半ば諦めかけたところで、コロンボの抜かりない作戦勝ちとなります。『刑事コロンボ』は、この〝殺人処方箋〟によって好評を博し、シリーズ化が決定しました。私は洋画を見る際、たいてい字幕スーパーを選んで視聴するのですが、この『刑事コロンボ』だけは吹き替えで楽しむようにしています。今は亡き小池朝雄の、のらりくらりとした物言いや、絶妙な間(ま)の取り具合をぜひとも味わっていただきたい。見事に声の出演だけで、コロンボ役を演じ切っているのですから。1968年放送【監督】リチャード・アーヴィング【キャスト】ピーター・フォーク、ジーン・バリー
2023.01.28
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【モクモクれん/光が死んだ夏】松の内をとうに過ぎていますが、令和5年になって初めての更新です。本年も吟遊映人ブログをよろしくお願い申し上げます。新年最初の記事は何にしようかと考えていたところ、こちらの筆頭管理人がそのヒントとなるものをいくつか提示してくれました。中でも私の目を釘付けにしたのは、雑誌『ダ・ヴィンチ』の〝今月の絶対はずさない!プラチナ本〟というコーナーで扱っている読書案内です。(残念ながら、この記事を扱ったものが何月号かは不明です。参照として取り上げるのに詳細不足で大変恐縮です)そこで取り上げられた『光が死んだ夏』。今回はこの作品について少しだけ語らせていただこうと思います。作者であるモクモクれんは、この『光が死んだ夏』で商業誌デビューを果たしたとのこと。しかも最初はTwitterに投稿したマンガがバズったことから漫画家への道に進んだらしい。こういう経緯を耳にすると、つくづく思うのは、何がきっかけになるかわからない、ということです。昔は少し絵の上手な子がせっせと『りぼん』とか『なかよし』にマンガを投稿して少女マンガ家を夢見ていたものなのに。(たいていは撃沈だったけれど・・・)余談はこれぐらいにして、『光が死んだ夏』のストーリーは次のとおり。高校生のよしきは、親友のヒカルと一緒にいると、いつも違和感を抱いた。正確に言うなら、ヒカルが山で行方不明になり、半年経ってひょっこり帰って来てからのようすが、ヒカルであってヒカルではないように思えるのだ。よしきは思い切ってヒカルに言ってしまう。「お前やっぱ光ちゃうやろ」と。ヒカルは核心を突かれて驚くが、否定はしなかった。みるみるうちにヒカルの表情はこの世のものとは思えないグロテスクなものに変化し、大好きなよしきに抱きついて、「お願い・・・誰にも言わんといて」とお願いする。よしきはもともと内気でネクラだが、ヒカルとはなぜか一緒にいて心地良かった。見た目は光と同じでも、光ではないナニカと一緒にいることに少しだけ抵抗はあるものの、受け入れてしまう。このままではいけないとは思いつつも、よしきは己の気持ちに抗うことはできなかった。ホラーマンガ家と言えば、私の世代では、楳図かずおや水木しげるだろうか。特徴としては、とにかく読者を怖がらせることに重きを置いているせいか、グロテスクだしおどろおどろしい。容赦ないと言っても過言ではない。それでも水木しげるは、〝環境破壊〟とか〝恐れるべきは人間であり、妖怪ではない〟という社会的なテーマが感じられ、怖がらせるだけの読みモノには完結していない。一方、『光が死んだ夏』でデビューを果たしたモクモクれんはどうだろう?ホラーマンガというカテゴリに括るのは、とても難しく感じる。青春ストーリーでもあるし、ある種のBL的雰囲気も漂っているし・・・ただ一つだけ言えるのは、人間の苦悩を描くことがマンガという世界観で見事に成功しているということ。友情と言うにはあまりにも執着心が強く、重くヒリヒリするような感情。2人の少年の間に流れる底なしの川は、一体どこに向かって流れているのだろうか?読者はドキドキハラハラしながら続巻を待ち望むしかない。年の初めにホラーマンガの紹介だなんて、と思っているあなた、騙されたと思って読んで欲しい。昭和生まれの私たちが経験したことのない、鮮やかでエキセントリックな、それでいて令和のニュースタイルに仕上げられた完成度に度肝を抜く作品なのです。 (了)『光が死んだ夏』モクモクれん・著 ★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.01.22
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