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2006年07月17日
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テーマ: 本日の1冊(3685)
文庫版のためのあとがきで、重松清はこんなことを書いている。

「小学一年生のときに、アポロが月に行った。翌年には大阪で万博が開かれた。ぼくたちのー少なくともぼくの「未来」に対する希望は、その二つにの出来事に象徴される。21世紀には月面ステーションが出来上がっていて、ロボットが街を歩いているはずだと信じている少年だったのだ、ぼくは。一方で、ノストラダムスの予言が当たれば、1999年7月に人類は滅亡し、オイルショックのころの言説を信じるなら石油はあと数十年で枯渇してしまい、そんな先を待つまでもなく、アメリカやソ連が核戦争を始めたらボタン一つで地球は滅んでしまう。それをどこまでリアルな危機として実感していたかはともかく「未来」には確かに影もあった。」

少し年代はずれるが、私の「未来」もみごとに同じようなものだった。小学館の学習雑誌にはばら色の未来が特集されていた。働くのは週三日だけ。きれいな家。食事は全自動でできるし、買い物をしなくても専用箱から飛び出てくる。テレビ電話は標準装備だ。絶望的な「未来」もあった。当時私の家から見える水島の工業地帯の煙突の煙は、公害問題の象徴だった。やがてここには住めなくなると本気で心配した。核戦争が勃発して家族と一緒に死を待つ自分もよく想像した。

未来である現代はどうなっているのか。リストラされている人々たち。精神を病んでいる人々たち。レトルトという全自動食品を食べ、アマゾンで本を買い、携帯電話を持つ現代。煤煙公害はなくなったが、石綿被害という戦後最大の公害が始まろうとしている。そして、真綿で締め付けられるように、戦争の時代がやってこようとしている。

トワイライト
内容(「BOOK」データベースより)
小学校の卒業記念に埋めたタイムカプセルを開封するために、26年ぶりに母校で再会した同級生たち。夢と希望に満ちていたあのころ、未来が未来として輝いていたあの時代―しかし、大人になった彼らにとって、夢はしょせん夢に終わり、厳しい現実が立ちはだかる。人生の黄昏に生きる彼らの幸せへの問いかけとは。( 以上引用終わり)

このタイムカプセルを提案した白石先生はその後不倫相手に殺される。タイムカプセルには白石先生の手紙が入っており、自らの未来の悲劇を予測した後、40歳を目前にした同窓生たちに呼びかける。

「みなさんの40歳はどうですか?あなたたちはいま、幸せですか?」

リストラされた克也、仕事が上手くいかなくなりDVを繰り返す徹夫とその度に子供をほっといて家出を繰り返す真理子、もと「マドンナ」として一世を風靡したが今は売れなくなった独身塾講師の淳子、四人を中心に物語がつづられる。



なかなかズルイ問いかけである。死にゆく人間が、遺言のようにそんな問いかけをする。大人なのに大人として自信がない四人は、いやほとんどの大人はその問いの前に佇んでしまう。

いま子供の雑誌で未来論は特集されているのだろうか。

悲劇は先送りされているかのように思える。ばら色の未来機器は、実現してみると当然のことながら汚れは着くし、副作用もある。どうすればいいのだろう。自信のない大人としては「分からない」。







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最終更新日  2006年07月17日 10時07分17秒
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