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2009年09月26日
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カテゴリ: 山大新聞会
初めての取材、そして記事を書いたときのことを書こうと思う。

私は新聞会では最初文化部に所属した。
文化部の企画会議でのこと。大学から五分ほど離れたところにあるアパートの部室での会議である。先輩は二人。新入生は私とあともう一人ほどいたか。

先輩Оさん(♂)はは国文学二回生で、文学青年で、文章を書きたいということだけで、新聞会に入ってきていた。中原中也の生まれた湯田温泉に下宿していて、可愛い彼女がいた。ちゃらんぽらん青年のように見えて真面目に文学研究にいそしんでいる部分があった。「透徹」という言葉があることをこの先輩から初めて教わった(後に大学講師に)。先輩Sさん(♀)は国史三回生。非常にかわいらしい人で、入学式のときに新聞会の説明会があることを宣伝していたのが彼女である。この女性の存在がなかったら、私がこの妖しげな部屋に入っていったかどうか心許無い。「○○くぅん」と泣きそうな感じで人の名前をよぶのが特徴的であった。もっとも最初の新歓コンパの中で、すでに彼氏がいることが判明するのではあったが。(後にその人と結婚)

「くまくぅん、何かやりたい企画ある?」
「別にないです。」
「じゃあ、この前から始まった新企画「歴史発掘」をすればいい。」
「……」
「それがいいわ。くまくぅん、歴史好きだといっていたし」
「次はわが大学の60年安保をするのでよろしく
「はあ。60年安保で何を取材するんですか」
「60年安保で、うちの大学ではどういう動きがあったか、当時の関係者から話を聞くんだよ」
「……」
「大丈夫。足で書けば何とかなるって。」

まあ、だいたい企画会議というのはこんな風に強権的に決まっていくものなのであった。
しかし、大学入りたての私にいくら文化的な記事とはいえ、「60年安保」とは。

「足で書く」とはジャーナリズム用語である。今でもそうであるが、記者クラブで発表された情報をそのまま記事にする記者が多い。それに対して、真のジャーナリストは、自ら足を運び、たくさん事実を掴んで、その中からどれだけ本質に関係することを選び取って記事にするのかが「よい記事」の基準なのだと、私は一応「学習会」で学んでいたのではあった。記事は机の上で生まれるのではない。現場をどれだけ歩くか、にかかっている。

しかし、はたして60年安保とは何か、その本質も知らないような男に、「よい記事」は書けるのであろうか。

最初の取材だけはOさんがついて来てくれた。

60年安保のころのことを知っている人でまだ大学に残っている人は限られている。私たちは経済学部の名物教授、A氏のところに赴いた。



A教授はマルクス経済学の雄であった。
A教授は、珍しくも60年安保を取材しに来た大学新聞の記者に対して、今から思うとアポなしの突撃取材だったのにもかかわらず、非常に丁寧に応じてくれた。おそらく、当時どれだけ学習会がどのくらいの頻度で開かれたか、デモ行進がどれくらい行われたか、特に強行採決のあとでは、学生と労働者が共同でデモを行って画期的であった、というようなことを話されたのだと思う。安保自体の危険性の説明もあったかもしれないが、私の頭を素通りしていっただろう。

私は安保反対のデモ行進は国会周辺だけで行われていたと思っていた。こんな田舎(失礼)でも、そんな動きがあり、学生と大人が共同してそういうことをしていたということにまず驚いた。当時はまだ、浅間山荘事件や、内ゲバの記憶が生々しいときであった。学生運動というのは「怖く、世間から孤立している」というイメージが一般的であった。

「当時の安保闘争は、本当に国民的な大闘争だった。」 とA教授は言った。

Oさんは 「当時学生だった人で今もこの町に住んでいる人はいないか」
今から思うと最も適切な人にその質問をしたのだろうと思う。A氏は明らかに当時の反対闘争にかかわっていた人なので、反対闘争の学生の中心人物の動向をちゃんと把握していた。
「今県庁に勤めているB君は当時の学生自治会の委員長だった人で、当時のことを話せると思うよ。」

私たちは教授に感謝して、研究室を離れた。O先輩は次は私だけで取材を命じた。
以下次号。





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最終更新日  2009年09月26日 21時36分16秒
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