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2009年10月22日
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カテゴリ: 邦画(09~)
「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ」
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松たか子が素晴らしい。冒頭の泣き笑いでどきっとさせた後は、居酒屋での解放された顔と、警察に連行されたときのこわばった顔と、大谷を慈しむ顔と、おびえる顔、困った顔、母の顔、強く立ち向かう顔、さまざまな「女」を見せて飽きさせない。女性の可能性を色々と見せるが唯一見せないのが、大谷の愛人が見せる勝ち誇った顔である。

大谷が結局何に絶望して死にたがっていたのかは、この映画では分らない。太宰が好きな人ならば、それは自明のことだし、わからなくても、大谷演じる浅野忠信を見ていれば、「結局男の甘えであり弱さ」なのだということは分る。けれども、「ヴィヨンの妻」を描ききったのも結局大谷(太宰)なのだ。実は実際の太宰の妻は佐知とは全然違うタイプの女性だったらしい。佐知の純粋さはそのまま大谷の純粋さでもある。大谷の妻佐知は、基本的に大谷(太宰治)の分身なのである。

監督 : 根岸吉太郎
原作 : 太宰治
出演 : 松たか子 、 浅野忠信 、 室井滋 、 伊武雅刀 、 光石研 、 山本未來 、 鈴木卓爾 、 小林麻子 、 信太昌之 、 新井浩文 、 広末涼子 、 妻夫木聡 、 堤真一

二人で食べる桜桃は美味しかったに違いない。

けれども、日本人の我々はあの後やっぱり太宰は他の女と心中してしまうということを知ってはいるのだけれども。

美術はやっぱり種田陽平。昭和20年代の崩れそうななあんにもない一軒家と、穴倉のような居酒屋を描いて秀逸だった。

登場人物が皆力演で、緊張感強いられる映像の連続だったので、広末のなあんも考えていない演技がちょうど見る側を弛緩させる役割があっていい効果(?)を生んでいた。



つまり佐知が元恋人の堤真一のもとを訪れたときに、払うべき弁護料がないので堤に言い寄られた後どうなったか、という問題である。友人は 「具体的に何処までいったかわからないが、身を任せることで弁護料はチャラにしてもらった」 という意見である。根拠はその後大谷に「いけない事をした」とはっきり言っているということと、堤の事務所を出るとき淋しそうだったということ。

私は 、「二人の間には何もなく、弁護料はチャラになった」 という見解である。根拠は二人の映像が途切れる直前まで、精神的には佐知の方が圧倒していたということ、事務所をでるとき佐知がなんとなくさばさばしていたように思えたこと、映像的に衣服の乱れどころか、口紅の乱れさえなかったこと、「いけない事をした」という意味は大谷に対する単なる(不倫をされたことに対する)仕返しの言葉であったということ。

ここが明らかにならないと、「いけない事をした」ということの意味が大きく変わってしまう。そして最後に「 人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ 」と佐知が言ったときに自分は「人非人」でないという自信があったからこそ、前向きに「人非人」という言葉を使えたのである。と、私は思う。 さて、皆はどう思うのだろう。





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最終更新日  2009年10月23日 18時10分14秒
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