再出発日記

フリーページ

カテゴリ

社会時評

(232)

お気に入りブログ

週刊　読書案内　司… New! シマクマ君さん

『週刊東洋経済1/20… New! Mドングリさん

東慶寺花だより：井… New! 天地　はるなさん

秋夕（旧盆）の連休 …

New! はんらさん

源氏物語〔7帖紅葉賀…

New! Photo USMさん

カレンダー

< 新しい記事

新着記事一覧(全4972件)

過去の記事 >

2010年05月11日

加藤周一自選集（4（1967ー1971）） 岩波書店
やっと自選集4を紐解きだした。とても今年中に全巻(10巻)までたどり着きそうには無い。2-3年越しで加藤周一の再読を試みることになりそうだ。

この巻は1967年（「朝日ジャーナル」に「続羊の歌」の連載を始めた年）から、1968年のプラハの春を挟み、1971年（初めての中国訪問）までの21編を収める。

冒頭二編目の「日本の美学」はコロンビア大学の講義の成果であり、二年前の「源氏物語絵巻について」の全面的な展開である。すなわち「日本文化における時間と空間」ににたどり着く、基本概念がここで提示されている。

解説の鷲津力氏は 、「加藤の執筆展開法はヴァーグナーの楽劇作曲法を連想させる」 と書いている。最初は小さく単純な曲想として示される。その後その動機は複雑に変奏され、他の動機と組み合わされる。やがて「指輪」の末尾を飾る「神々の黄昏」のさらに最後は「ヴァルハラの動機」「ジークフリートの動機」などなど多数の指導動機が組み合わされて壮大な響きで全曲を閉じる。すなわち、「源氏物語絵巻について」から「日本の美学」を経て、「日本における芸術思想の展開」「日本文学史序説」「日本その心とかたち」「日本文化における時間と空間」に活かされて行くのである。加藤が初めからそれを意図していたら、凄いだろうが、たぶん偶然そうなったのだろう。

私に私だけの「単純な曲想」はあるのだろうか。

この巻は同時に今までもっとも世界情勢について書かれた巻になった。後に加藤が何度も言及する「68年」が含まれているからである。やはり鷲津氏が加藤の問題意識にあわせて、68年の出来事を網羅してくれている。後にこれを使うと思うので、抜書きしたい。

全体の動き
1月　南ヴェトナム解放戦線と北ヴェトナムによる「テト攻勢」
3月　米軍の「北緯20度以北の北爆停止」発表
5月　パリで和平会談
8月　ソ連は「プラハの春」を戦車で踏みにじる。
10月　中国では文化大革命の嵐。劉小奇失脚。
12月　毛沢東による近衛兵の農村下放始まる。

アメリカ
4月　キング牧師暗殺。反対運動ますます激しく。
6月　ヴェトナム即時撤退を主張したケネディの暗殺。
　　　ヴェトナム反戦運動ひるまず。
　　　ヒッピーズ、スチューデントパワー、ブラックパワー
ヨーロッパ
3月　パリ大学ナンテール校の学制改革反対運動
5月革命　学生と労働者によるゼネスト
3月　ワルシャワ、検閲制度に対する学生運動
5月　西ドイツ、67年からの非常事態法に反対する運動でゼネスト。

「世直し事はじめ」（68年「世界」8月号）の再読が必要であるとつくづく感じた。もちろんプラハの自由化とソ連の介入を詳論した「言葉と戦車」（「展望」11月号）も。鷲津氏は「プラハの春は加藤の見果てぬ夢だったのである」と言っている。その「夢」とはなんだったのか。

民主と自由、言葉と戦車、世界と日本、若者と老人、最後の遺言のようなテレビ出演も含めて、加藤の「68年」の意味をもう一度捉えなおす必要はあるだろう。
と、この本を読む意気込みを書いてみるが、なかなかまとめる時間を持てないで要る。

お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう

最終更新日 2010年05月11日 23時46分13秒
コメント(7) | コメントを書く

[加藤周一] カテゴリの最新記事

■コメント

平凡社世界大百科事典

モンテヤマサキさん

ついに買ってしまいました。。。

紙の平凡社世界大百科事典を。。。勇気が必要でした。ははは。。中古ですけどね (2010年06月23日 08時33分55秒)

返事を書く

Re:平凡社世界大百科事典(05/11)

KUMA0504 さん

モンテヤマサキさん
＞ついに買ってしまいました。。。
＞
＞紙の平凡社世界大百科事典を。。。勇気が必要でした。ははは。。中古ですけどね
-----
今私は小学館の百科事典と学研の学習百科事典（ここまでははだいぶ痛んでいる）とブルタニカ国際百科事典（これは新品同様）をいかに処分するか腐心しています。本棚の空間を作るために、どうしても必要なのです。普通の古本屋に行くと買ってくれないのだそうです。引き取ってもくれないかもしれない。この前、くらしきの老舗の古本屋に聞くと、「10年前まではこうでもなかった。まだ売れていた。インターネットで一度に値が下がった」ということです。たぶん平凡社百科事典も古本屋が買い取るとき、値がついたかどうか。加藤の「日本」の項目はいつか抜書きしてみんなに紹介したいと思っているのですが‥‥‥。
(2010年06月23日 22時31分41秒)

返事を書く

加藤周一編集版は値の付き方が、少し違いますよ

モンテヤマサキさん

「わかりやすさのために
1――科学技術上の概念を厳密に定義するためには術語を用いなければならない。しかしそういう定義に立ち入る前に、術語を知らない読者にも、近似的な理解、あるいは大づかみな要領の会得が可能になるような説明を与えることにした。今までの百科事典の、正確ではあっても難解な記述に閉口した経験のある読者は、この事典を見て、科学技術上の用語のおよその意味をたちどころに把握できることに、驚くだろう。」

こんなことを序文で豪語してますからね、加藤周一を知る人は、皆この事典を欲しがるでしょう。

で、加藤周一編集版に限っては、オークションでも捨て値で出ることはめったにないことだと言ってよいのです。これまでずーーっと監視してました。最低価格で５万～といったところでしょうか。今回３万でしたが。。はは。それは１９９７年版だったからです。最新版が２００７だか６年に出たから値が下がった。それでも万単位の値は付きます。

ほかだと千円単位ですね。

１０年前には加藤周一編集版は１０万位はしてたかもしれません。１９９７、８年頃に一度古本屋で１０万で買おうか迷ったことがあります

(2010年06月24日 21時19分17秒)

返事を書く

２０００年ごろだと

モンテヤマサキさん

図書館の「ご自由に持ち帰ってください」のコーナーで百科事典が出てました。重いけど持ち帰りました。つまりタダです。古くて汚れてたので、１ページずつ、破って外出先とか風呂に入りながら読んだりしてました。
たしかにここらへんから、百科事典はタダ同然の扱いになってきました。

しかし加藤周一編集版は値が下がったけど、別物なんですよ。
古本屋は嘘をついて安く買い取ろうとすることもあるでしょうが。。

ちなみに著作集１～１５+附録真面目な冗談は、新品よりも更に新品という状態で２万２千で手に入れました。月報も全部揃ってました。読んだ形跡全くなし。田園調布の古本屋。１９９７，８年のこと。

「これはどういうことなんですか？保存状態が異様に良過ぎますね」

「ある家から引き取ってくれと言われてそのままここに置いただけ」

よほど立派な品のある家だったことでしょう。ただし読む知的好奇心は全くなかったようです。 (2010年06月24日 21時45分19秒)

返事を書く

ただし今ひとつの懸念あり

モンテヤマサキさん

平凡社世界大百科事典のカネ振り込んだのに、全く相手の返事が返って来ない
(2010年06月24日 21時47分44秒)

返事を書く

Re:加藤周一編集版は値の付き方が、少し違いますよ(05/11)

KUMA0504 さん

モンテヤマサキさん
＞で、加藤周一編集版に限っては、オークションでも捨て値で出ることはめったにないことだと言ってよいのです。これまでずーーっと監視してました。最低価格で５万～といったところでしょうか。今回３万でしたが。。はは。それは１９９７年版だったからです。最新版が２００７だか６年に出たから値が下がった。それでも万単位の値は付きます。

百科事典で、なんとか値がついているのは、祝着です。三万ですか‥‥‥。思い切りましたね！
さて、この本棚を空にすることが来月の課題ですが、はたしてなん円になることやら。 (2010年06月24日 23時05分16秒)

返事を書く

Re:２０００年ごろだと(05/11)

KUMA0504 さん

モンテヤマサキさん
＞ちなみに著作集１～１５+附録真面目な冗談は、新品よりも更に新品という状態で２万２千で手に入れました。月報も全部揃ってました。読んだ形跡全くなし。田園調布の古本屋。１９９７，８年のこと。
＞
それはお買い得でした!でもたぶん古本屋が買い取ったときには、2000円くらいだったのでしよう。田園調布の古本屋、一度行ってみたくなりました。 (2010年06月24日 23時08分19秒)

返事を書く