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2010年05月12日
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カテゴリ: 加藤周一

加藤周一自選集(4(1967ー1971))
「日本の美学」(「世界」67年11月号)という小論の要点については、省略する。いつか詳論したいと思っている「日本その心とかたち」や「日本文化の時間と空間」でこの小論の「動機」はさまざまに形を変え壮大に演奏されるからである。

ここでは、それから11年後に書かれてたこの小論の追記の文章(「著作集12」78年11月)について言及したい。このように加藤は書いている。

水墨画と朱子学における「日本化」の方向のこのような一致は、美学的問題ではなく、世界観の問題である。そのいずれの場合にも、芸術家や思想家を動かしていたのは、世界への好奇心ではなく、当事者の内面の欲求であった。目標は、世界の構造理解ではなく、わが「心」の質の改善であった。外部から内部へ、社会から自己へ、客観から主観へ向かうこのような関心の集中は、おそらく二つの条件-社会の構造の長い安定と、歴史過程への参加の小さな可能性―に深く係わっていたはずである。そういう条件は、日本では、数世紀にわたる鎖国の平安時代後期と江戸時代に、備わっていた。社会的変化が急激で、その過程への参加の可能性が開かれていると知識人たちが感じた短い時期、たとえば明治維新の直前と直後、第二次世界大戦の直後には、知識人や芸術家の関心が、人生いかに生くべきかよりも、社会や歴史はいかにあるべきかへ向かった。しかしそれは例外的な時期の例外的な現象にすぎない

ここで加藤は珍しく日本変革の可能性について書いている。たとえそれか 「例外的な時期の例外的な現象」 といおうとも、である。加藤はかつて「雑種文化 その小さな希望」のなかで、純粋な国粋化も西欧化も失敗に終わった、希望は日本の雑種性そのものの中にある、と言う意味の「希望」を書いた。以降、加藤が明らかにしてきたのは、日本の「人生いかに生くべきか」に向かう日本人の特性ではあったが、最終的にはいつも「平和」な日本であり、「民主と平等」が同時に実現している社会であったと私は思っている。そうではない社会が現実に続いていて、その変化の可能性が大きく開かれたのが「68年」なのではなかったのだろうか。しかし、加藤が夢見たのはあくまでも「プラハの春」であり、「全共闘」の68年には限定的な評価しかしていなかったと私は認識している。そうだとすれば 、「明治維新の直前と直後、第二次世界大戦の直後」 の状況は、加藤が感じていた「雑種文化の小さな希望」が実現する限られた時期だったのではないか。

私はとりあえず、そのように仮定を立ててみたい。

だとすれば、現在2010年はどういう時代か。 「社会的変化が急激で、その過程への参加の可能性が開かれていると知識人たちが感じ」 る時代ではないだろうか。はっきりそうだとは言い切れないが、以前よりは随分とそういう状況になっていると私は感じている。



「社会変化の過程への参加の可能性が開かれている」 と知識人(そもそも加藤亡き後知識人っているのか?)と市民は感じているかどうか。これは、確かに懐疑的である。しかし近年の政権交代、全住民規模の基地反対運動、九条の会の広がり、等々状況は変わってきている。たとえば、韓国の03年のインターネット大統領選みたいなことが日本で起きれば、それは決定的になるかもしれない。それは確かに「小さな希望」かもしれないが、とりあえず、インターネット選挙元年の今年、社会はいったいどこまで「開く」か。

「参加」がひとつのキーワードかもしれない。





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最終更新日  2010年05月12日 23時42分38秒
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