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2010年10月17日
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カテゴリ: 邦画(09~)
晴れた日には与那国島から台湾が見える。ここは小さな島である。この島の漁師たちの生活を追ったドキュメンタリーです。「老人と海」という題名に釣られて老漁師とカジキの孤独な闘いを写したのだと思って見に来たらちがった。しかし、これはこれでなかなか優秀な作品だった。「映画 日本国憲法」のジャン・ユンカーマン監督。

img_interview02老人と海.jpg
小船を操って82歳の老人は、毎朝のように午前五時には漁に出る。島の共同体の中で釣り一本で生計を立てる男たちの記録である。

1990年の作品のディレクターズカット版だという。どこを編集したのだろうか。おそらくカジキをめぐる話の部分ではなく、勇壮な「ハーリー祭」「こんぴら祭」を準備段階から見せる与那国の民俗を写す部分が増えたのかもしれない。老人は海に出るとき小船の隅々十箇所ぐらいに塩をまく。その素朴な信仰心がかえって、海と老人の関係を表している。毎日の不漁が続くが、それでも老人は海への敬意を止めない。海の豊穣と怖さを知っているからである。事実、最終的にかれは大人の二倍以上もあるカジキを釣り上げる。ささやかな自宅で行われる宴会。その誇らしい顔。しかし、チラシにはこのようにある。 「映画完成後、最初の上映会が与那国島で開かれた。そこでじいちゃんはヒーローになった。しかし、東京公開を一ヶ月に控えた1990年7月末、いつものようにサバニで漁に出ていたじいちやんはカジキと思われる大魚に引きずり込まれ、海で還らぬ人になってしまう。」 ヘミングェイの「老人と海」そのものであり、白土三平の「鬼泪」そのものである。実際、カジキを引き込んでいたとき、何度も安定の悪い小船の上で老人は仁王立ちをしていたし、一度は本当に危なかった。

ヘミングウェイのそれとちがうのは、彼には愛妻がいて、いつも老人を支えていたし、弟子のような青年がいて、不漁の時には大きな魚を惜しげもなく呉れる漁師もいた。彼はやはり、笑顔で海に散っていったに違いないと私には思われた。

ひとつ疑問に思ったのは、若い女性が二度ほどしか出てこなかった。おばあちおやんはたくさんいたし、少女もたくさんいたので、いるはずなのであるが、女性は映画には出さないという村の掟でもあったのだろうか。今は与那国島はどうなっているのだろうか。祭りが成立するくらいの若者はまだいるのだろうか。





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最終更新日  2010年10月17日 01時44分37秒
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