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2012年05月12日
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カテゴリ: 水滸伝

「黒龍の柩(下)」北方謙三 毎日新聞社

見果てぬ夢。この夢は、美し過ぎたのか。だから、薩摩も長州も、それを認めることができなかったこではないか。
京で、攘夷派の志士を倒し続けた自分に、美し過ぎる夢はふさわしかったのか。(362p)


あるいは、こんな会話があった。

「私は聞いたことがあります。この国にも、外国にも、民の血さえ見ること無く、権力の移譲がなされた歴史は無いと。いつか誰かが、それをたたえるはずです」
「江戸と京だけは、戦火で焼いてはならん。それをやれば外国の介入がある。そう信じた自分を、私は否定する気はない。いまも、正しかったと信じている。しかし、夢もまた、正しいと信じて私が抱いたものであった」
「薩長が、小さ過ぎました。自分たちが安心する国を作りたい。民ではなく、自分たちがと考えたのだろうと思います」
「土方、私は生きられるかぎり生きて、この国の行末を見つめていこうと思う。願わくは、平和な国として大きくなってほしいと思う。薩長さえも、恨むまいぞ、土方」
「はい」(320p)

一方は土方歳三、一方は徳川慶喜である。

北海道を独立国にする。「カムイ伝」でも、「男一匹ガキ大将」でも語られた「男の夢」が此処でも語られ、そして閉じられた。此処での夢の語られ方が私は一番好きだ。非戦の夢。しかし、それは決して夢物語じゃないと、私は思う。むしろ、弥生時代の国譲りから始まって、我々の伝統でもある。日本はかつて内戦でも戦争でも、一族郎党を殺し尽くす戦いをしたことは、殆んどない(例外は信長と南京、重慶だけだ)。だから、彼らの夢は正しい。あり得たかもしれない夢を描いただけなのである。

土方歳三という、歴史の中では全く傍系の人物を通して、夢を描く。その手法は、やがて「水滸伝」「楊令伝」、そしておそらく「岳飛伝」に繋がって行く。





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最終更新日  2012年05月12日 18時27分10秒
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