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2015年03月26日
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テーマ: 本日の1冊(3684)
カテゴリ: 加藤周一


『羊の歌』余聞 (ちくま文庫)[本/雑誌] (文庫) / 加藤周一/著 鷲巣力/編

鷲巣力は全集的な「自選集」の他に幾つかこのような短編集を編んでいる。この本は、主に加藤周一が自分周辺を書いたり語ったりした文章を集める。それは同時に学者の加藤周一が文学者に変貌する時でもある。加藤周一の散文はそれほど魅力的であるとわたしは思う。

鷲巣力は、「加藤周一が加藤周一になっていくうえで、戦争体験が大きな意味を持ったが、もう一つ大きな影響を与えたのは、抒情詩の読書体験である」(338p)と述べる。抒情詩体験については、マチネ・ポエティクを紹介した時に一部書いた。戦争体験については、展開を始めるとこの小さな文章では書き切らない。

ただ、 「私が小学生だった時」(「夕陽妄語」2006) に出てくるこの一文は、加藤の意図を離れていろんな感想が吹き出てきたので、ちょっと紹介したい。



教師や親たちに助けを求めることはできない。私は同級生の中でも腕力のいちばん強そうな子供に接近し、その暴力による保護を求めた。その代わりに教室で教師から質問され彼が窮地に陥ったときには、秘かに解答を彼に手渡した。そのことに気づかない教師もあり、気づいても黙認していた教師もある。

そういう取引は中学校ではさらに徹底した。私は今でも日本国の外交姿勢を見ると、小学校での私の「いじめ」対策を想い出す。(157p)


念のために注釈を加えると、加藤は小学校時代の「いじめ」対策を日本国外交に援用するのが良いと主張しているわけではない。しかし間違っているといっているわけでもない。

私の感想は、だから、加藤の「いじめ」対策ケース(以下「加藤ケース」と云う)は、日本国外交姿勢のミニチュアモデルとして極めて使いやすいと感心したことにある。
●小学生に加藤ケース以外により良き方法はあっただろうか。
(1)9条憲法を持つように、綴り方の時間に有効な「宣言」をしたらどうか。宣言にも依るだろうが、効果があるようには思えない。
(2)戦後大国と軍事同盟を結んだ国のように「腕力の強そうな子供」と戦争を仕掛けて、安定化を目指すのは?それでもし成功しても、加藤が得たかったものは一切手に入らないだろう。特に穏やかな時間は。


加藤の周りには、既に暴力が蔓延していた(級友や教師の権力)。この「周り」の改変がない限り、彼が「いじめ」から脱する「根本的な有効な手だて」はないのではないか。加藤周一は秘かに、その改変の力の源泉を母親から貰った「愛」に求めているようだ。さて、現実世界では何に求めればいいのか。
2015年3月21日読了





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最終更新日  2015年03月26日 13時17分29秒
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