再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

お気に入りブログ

『週刊東洋経済1/20… New! Mドングリさん

東慶寺花だより:井… New! 天地 はるなさん

秋夕(旧盆)の連休 … New! はんらさん

源氏物語〔7帖紅葉賀… New! Photo USMさん

ホキ美術館(千葉県… New! 七詩さん

カレンダー

2016年12月24日
XML
テーマ: 本日の1冊(3693)
カテゴリ: 水滸伝

「岳飛伝 1」北方謙三 集英社文庫

王貴の持っている腕に、手を突っ込みながら張朔は言った。
「俺はこのところ、戦というものに、そんなに強い関心を持てないんだよ、王貴。父が童貫戦で討たれた。それを思うと、軍に入らなければならない、という気もするのだが」
「俺の親父は、俺や王清に会うこともなく、死んだ」
「御母堂は、やはり童貫戦で死なれた」
「そうだな」
「なあ、王貴。俺たちは、なにを受け継いでいるんだろうか?」
「俺は、そんなことは考えない。その場所で、1番になる。俺は、ずっとそうだったよ」
意地が悪いのか、性格が悪いのか、よくわからない時があった。いつも1番というのなら、なんとなくわかる。
西域の旅でも、なにをやっても王貴は1番で、張朔はいつも駄目だった。顧大嫂に、しばしば張り倒されたものだ。強烈な平手だが、しかしどこか気持がすっきりした。
「沙門島で、顧大嫂殿から手紙を受け取った。自分のことは、自分で考え、自分で決めろ、というようなことが、書いてあった」(349p)

4年以上待った。長かった。しかし、秋(とき)は過ぎ去ってみれば一瞬である。前回「楊令伝」で、主人公楊令が突然の暗殺死でなくなってから半年後の物語。単行本完結で「大水滸伝シリーズ」が51巻で終わった。そして文庫本が、遂に刊行され始めたのである。文庫本でのみ、私はこのシリーズを「買って」読むことに決めているので、仕方ない。その代わり、4年間を17ヶ月という1/3に短縮して、このシリーズを一気に駆け上がりラストまでもってゆくことが出来る。

一巻目は、登場人物の紹介でもあり過去の物語を各人物から解説するようなものだった。それは、それで新たな発見もあり、面白くないわけではなかった。岳飛伝、と言いながら、岳飛の比重は恐ろしいぐらいに低い。文章量だけでなくて、存在感もまだ低いのである。その代わり、南宋の宰相として確固とした地位を確保した秦檜と、以前は金国の太祖阿骨打の不肖の息子、ウジュが、何時の間にか物語を引っ張るような大きな漢(おとこ)として登場してきた。

楊令がいなくなり、梁山泊を侵した洪水は楊令の国造りに壊滅的な打撃を与え、新頭領の呉用さえも、新たな展望は見出せずにいる。それらが全編を覆い、大きな物語はまだ動いていない。しかし、物語は王清の鉄笛から始まった。「水滸伝」の英雄たちの息子たちが、今、正真正銘その全面にでてきた。王清の異母兄の王貴や張平の息子張朔の会話は、だから、今後の岳飛伝の未来をも語っている気がしてならない。彼らたちは「なにを受け継いでいるんだろうか?」「自分のことは、自分で考え、自分で決めろ」戦争はあるだろう。しかし、歴史とは、戦争だけの物語ではない。のである。

2016年12月18日読了





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016年12月24日 10時08分43秒
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな@ 自然数の本性1・2・3・4次元で計算できる) ≪…三角野郎…≫は、自然数を創る・・・  …
永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…

バックナンバー

・2024年09月
・2024年08月
・2024年07月
・2024年06月
・2024年05月
・2024年04月
・2024年03月
・2024年02月

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: