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2020.04.02
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第47話「大きすぎる代償」

天枢(テンスウ)が十里桃林にやって来た。
九重天で折顔(セツガン)に助けて欲しい人がいるという。
折顔は薬王でもお手上げなほど深刻なのは夜華(ヤカ)だとすぐ分かった。
駆けつけてみると、夜華は天族皇太子でありながら腕を失っただけでなく、一生分の修為を全て丹薬にしていたと知る。
折顔は自分が駆けつけたから助かったものの、これでは天君に即位する際、天雷と荒火(コウカ)に耐えられないと叱った。
しかし夜華はさして重要なことではないという。
「フッ、そうさ、重要じゃない、重要なのは君の心の中にいるあの小狐狸なのだろう?

折顔は呆れたが、さらに夜華は自分の姿を見て阿離(アリ)が悲しまないよう法会に行かせていた。
「そなたは男でひとつで育ててきた…頭が下がるよ」

一方、西海では玉魂のおかげで疊雍(チョウヨウ)が全快していた。
疊雍は白浅があまりに親身になって看病してくれたことから自分に好意があると誤解し、感謝しているが自分の好みではないと伝える。
白浅からこの話を聞いた疊風(チョウホウ)は失笑し、これからは自分が兄の世話をすると申し出た。

疊風は白浅から言われた通り、自分の目で折顔の仙気が師匠の元神をしっかり養っているか確認することにした。
しかしそこで驚くべきことが…。
疊風は慌てて白浅を連れ戻し、兄はすでに眠らせていると教えた。
白浅は早速、追魂術で確認したが、確かに墨淵(ボクエン)の元神が膨大で勢いのある仙気に養われ、近づくことすらできない。
…数万年の修為が発する仙気だわ、この分だと師匠はじき目覚める
…でもこれは折顔の仙気じゃない

…(はっ)これは夜華よ
白浅の意識が身体に戻ると、強い仙気の反動で喀血した。
なるほど、道理で折顔が話をはぐらかしたはずだ。
瀛州(エイシュウ)に行ったのなら無傷なわけがない。
それにしても折顔はなぜ自分を騙したのだろうか。


白浅は西海を引き払い、その足で天宮へ向かった。
すると紫宸殿の夜華はまるで何事もなかったかのように装い、むしろ白浅の身体を心配する。
「神芝草(シンシソウ)を守る猛獣はどんな姿形なの?
 折顔がくれた丹薬はあなたが作った、そうでしょう?修為はまだ残っているの?」
「分かった正直に話そう…
 天君の命で東海へ行き瀛州を通りかかった時、ふと神芝草のことを思い出して何株か採ってきた
 猛獣の姿形だが美しくない、愛くるしければそなたに贈ってもよかったが…」
夜華の作り話は続いた。
「丹薬はあなたが作ったのに、なぜ折顔はそのことを隠したの?」
「折顔上神は私が作ったことを言わなかったのか?ふっ、困った人だ、私の手柄を奪うとは」
「ハァ~」
「案ずるな、私は生まれつき修為が多く、昔、天君からも頂いた、多少は減っても何ら問題ない」
「…今日はずっと左手しか使ってないわね?もう少し右手も使ったら?」
「実はうっかり檮杌(トウコツ)に噛まれてね、だが軽い傷だ、薬王はひと月ほどで治ると…」
…夜華、この年になればあなたの嘘くらい見破れる
…でも私のために嘘をついてくれているのね
白浅は夜華の話に合わせることにした。
「それを聞いて安心したわ」
「浅浅、心配しないでくれ、それより疊雍は丹薬を飲んだばかりだ、体調を崩すやも
 九重天にいる場合ではないだろう?」
…相当、無理してるわ
…耐えきれなさそうね
「そうね、じゃあ行くわ…ゆっくり休んで」
白浅は寝殿を出た。
すると起きているだけで精一杯だった夜華はこらえきれず、激しく咳き込んでしまう。
苦しそうな声を聞いた白浅は嗚咽を漏らさぬようこらえ、そのまま十里等林へ向かった。

白浅は折顔から経緯を聞いた。
夜華は白浅を西海にとどまらせ、天君へ奏上を出したという。
東海の瀛州の神芝草はいかに天に背くのか理屈を並べて一掃したいと訴え、天君は大いに賛同して許可していた。
この奏状があれば夜華が深手を負って戻っても、まさか白浅のために満身創痍になったとは誰も思わない。
折顔は自分が夜華の傷の手当てをして失った右腕も作り、数万年ほどで徐々に使えるようになるかもしれないと安心させた。
「何てバカなことを…」
「夜華はお前の許嫁として墨淵への借りを代わりに返したてくれた
 私に嘘をつかせたのは、夜華の丹薬だと知ればお前が拒むと分かっていたからだ」
「ハァ~夜華は私の性格をよく分かってるわ…」
白浅はいてもたってもいられず、何もできなくても夜華のそばにいたいと訴えた。
折顔は夜華の苦心が無駄になると警告したが、白浅はこのまま騙されたふりをするという。
「ならば行くがいい、滋養の丹薬がある、ついでに持って行け」

白浅が突然、紫宸殿に現れた。
夜華は笑顔を見せたが、白浅は何と言葉をかけて良いのか分からない。
「?なぜ私を見つめる?」
「ゥ…あなたの姿が素敵だと思って…」
ふと自分の身体を思い出した夜華は気まずくなった。
「疊雍の世話はどうした?夜更けに突然、来るとは…何かあったのか?」
「疊雍は大丈夫よ、もう私の世話は必要ないわ
 私はあなたの手が心配で…何かと不便だろうから、手伝えればと思ったの」
「(ウム…)浅浅…おいで」
寝台に座った夜華は自分の隣に来るよう促した。
「ア…よくないわ、私はやっぱり阿離(アリ)の宮殿に泊まるわ…もう休んで、明日また来る」
そう言って白浅が踵を返すと、急にロウソクの炎が消えて夜華が背後から抱きしめた。

「私には左腕しかない、嫌なら振りほどけ」
「…じゃあ今夜、寝台を半分、使ってもいい?」
「フフ…その細身の体なら半分も必要ない…」
こうして白浅は寝台に横になったが、どう接したらいいのか分からず背を向けた。
夜華はそんな白浅に身体をぴったり寄せると、ふと本音を漏らす。
「…すべて知ったのか?やはり借りを作れないのだな」
「うん…借りを作るのは好きじゃない」
「…寝たのか?」
「…ええ、もう寝た」

やがて夜華は急に苦しくなって目を覚ました。
隣を見ると白浅はよく眠っている。
夜華は白浅を起こさないよう寝台を抜け出し、中庭に出てから激しく咳き込んで喀血した。
寝台からその様子を見ていた白浅は飛んで行きたい衝動に駆られたが、夜華の面目のため知らないふりをして布団に潜り込む。
すると夜華はそっと殿内に戻り、寝台に滑り込んだ。
背を向けていた白浅は気付かれぬよう涙をぬぐい、わざと寝返りを打って夜華に腕を回す。
夜華は驚いて白浅の顔を見たが、白浅は眠ったふりをしていた。


その頃、臙脂(エンジ)は夜華から分けてもらった神芝草で丹薬を作ろうとしていた。
しかし自分の修為では駄目なのか、激しく喀血して倒れてしまう。
ちょうど臙脂の様子を見に来た離鏡(リケイ)は慌てて駆けつけると、自分たちの妖気を丹薬にできるのは崑崙虚にある墨淵の煉丹炉だけだと教えた。
無論、崑崙虚の敵である翼族が借りられるはずもない。
それでも臙脂は崑崙虚へ行かせて欲しいと懇願し、激怒した離鏡は臙脂を軟禁するよう命じて出て行ってしまう。
そこへ将軍が慌てた様子でやって来た。
「若水河畔が突然、赤くなり、紅蓮業火(グレンゴウカ)も現れました!先王が戻る兆しです!」
こうして大紫明宮はにわかに慌ただしくなる。
臙脂はその隙に病児を連れ、こっそり崑崙山へ向かった。

一方、素錦(ソキン)は仙娥から白浅が密かに紫宸殿に来ていると聞いた。
これまで何度も策を弄しては失敗し、結局、夜華と白浅の仲を引き裂けずにいたが、素錦はふと白浅の弱点に気づく。
それは自分と同じく夜華を深く愛していることだった。
「いずれ機を見てじっくり素素(ソソ)のことを話すわ…」

翌朝、白浅が目を覚ますと、夜華に見つめられていた。
「起きてたの?よく眠れた?」
「そなたがいれば、よく眠れる…そなたは?」
「…阿離に会いたいわ」
「霊山で霊宝天尊の法会があるから成玉(セイギョク)に連れて行かせた、明日には戻って来る」
「…あなたには感心する、霊山に行かせたのは負傷した姿を見せないためね」
すると白浅は夜華にしがみつき、2人は二度寝した。

その頃、阿離は霊山で大好きなさとうきびを取っていた。
すると成玉元君が偶然、竹林の中にいる東華帝君と霊宝天尊の姿を見かける。
成玉は咄嗟に阿離を連れて物陰に隠れると、二人の話に聞き耳を立てた。
「上古の神々は次々と大難に遭い混沌に戻った、生き残ったのはわずかだ
 …帝君も大難に遭ったようなものでは?」
「いかにも…心が死ぬほどの難だ」

成玉元君は阿離を連れて帰ることにしたが、何とも陰鬱な気分だった。
すると阿離は成玉が帝君の話を聞いてから落ち込んでいると心配する。
「"大難"の意味を?」
「神仙が試練を受ける話でしょ?
 僕たちは苦労しないで神仙の位を持っているから、試練ぐらい受けないと不公平なんだ
 乗り越えれば昇格して、失敗すれば消えてしまう」
「いいえ、大難はもっと恐ろしい…霊宝天尊の口ぶりだと帝君は危険だわ」
大難を乗り越えた神仙はほとんどいない。
つまり大難に遭うと言うことは混沌に戻るということだった。
成玉は早く白鳳九(ハクホウキュウ)に伝えなければと気づく。
「にゃんちんも上神だよ?いつか大難に遭ったらどうしよう?」
「どんな貴い神仙も命には限りがある…早く母上に親孝行しなければ」
「大変だ!すぐ天宮に戻ってにゃんちんに会わなきゃ!」


つづく

(꒦ິ⌑꒦ີ)ぁぁぁ〜誰か〜早く夜華の髪の毛を結ってくださいw
それにしてもやっぱり夜華の声いいわ〜(๑´ω`๑)♡





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最終更新日  2020.04.02 21:42:30
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