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2023.03.17
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カテゴリ: 夢華録 全40話



第15話「危機一髪」

趙盼児(チョウパンアール)が帳簿をつけていると突然、店に皇城司の于中全(ウチュウゼン)が乗り込んできた。
「異国の密偵を捕らえる!」
すると于中全は店の帳簿から証拠となる密書を取り出し、パンRを連行してしまう。
一方、孫三娘(ソンサンニャン)は買い物を済ませて店に向かっていた。
その時、前から宋引章(ソウインショウ)が慌てて走って来る。
「パンR姐!」
「パンRがどうしたの?!」

驚いた三娘は引章を店に帰し、陳廉(チンレン)に頼んで顧千帆(コチェンファン)に事情を聞いてもらうことにした。
しかし皇城司の門衛はけんもほろろで取り付く島もない。
その頃、引章は居ても立ってもいられず、沈如琢(シンジョタク)を訪ねていた。

于中全はパンRが顧千帆と西夏(セイカ)が通じていると証言した偽の調書を用意していた。
そこで拘束したパンRから無理やり拇印を取ってしまう。
しかしパンRはすでに手を打っていた。
「私が戌の刻までに戻らねば訴え出ろと言ってあるわ
 …私と顧千帆を陥れるつもりなら、その紙に何と書いてあるのかちゃんと調べたら?」
于中全は驚いて証拠を確認すると、いつのまにか密書は西夏ではなく遼(リョウ)の文字に書き換えられていた。
「ふふ、皇上の長寿を祈念しているだけで法に触れるのかしら?」
用心深いパンRは念のため誰かが帳簿に触れればすぐ分かるように髪の毛を挟んでおいた。

パンRは客の文人にそれとなく文字の意味を聞きだし、別の密書と差し替えていた。

于中全が顧副使を陥れようとしたことが皇城司にばれた。
追い詰められた于中全は証拠隠滅のためパンRを殺そうとしたが、その時、陳廉が放った短剣が于中全の腹に命中する。
「本物の内通文書はこれだ」
パンRがあらかじめ知らせていた相手は陳廉だった。

水責めでびしょ濡れになったパンR、顧千帆は今にも胸が張り裂けんばかりだったが、赤の他人の振りをした。
「そいつは誰だ?」
「あ…半遮面(ハンシャメン)の趙娘子です
 私が数回、訪ねたせいで于中全が目をつけ、お2人を巻き添えにしてしまいました」
「早く連れて帰れ」



引章は沈如琢の馬車で皇城司へ向かっていた。
すると偶然にも解放されたパンRを見つけ、三娘が待つ茶坊へ連れ帰ることにする。
パンRは引章が自分を救うため沈如琢を頼ったと知った。
その時、ふと顧千帆の冷たい態度を思い出し、咄嗟に池蟠(チハン)が助けてくれたと嘘をついてしまう。
一方、顧千帆は于中全の件で雷敬(ライケイ)を訪ねていた。
裁断を迫られた雷敬は一時の気の迷いだと腹心を助けようとしたが、顧千帆は于中全の屋敷から見つかった土地の契約書と飛銭を突きつける。
焦った雷敬は裏金の証拠と引き換えに于中全を切り捨てざるを得なくなった。
「…異国の密偵の追跡中、于中全は深手を負った、熱い風呂にでも入れてやれ」
「ご英断です」
こうして于中全は皇城司で湯の中に監禁され、見せしめとなった。
顧副使は雷司使による負傷した于中全への手厚い配慮だという。
しかし陳廉は止血の難しい湯に浸かることでいずれ失血死するというむごい刑罰だと知った。

三娘が憔悴して待っていると引章がパンRを連れて帰って来た。
引章は親しくもない自分を助けてくれた沈如琢に感謝したが、沈如琢は目を丸くする。
「″親しくない″なんて…初めから旧知のようでした」
すると沈如琢は半遮面で貴賓室に入れなかったと話し、今度は融通して欲しいと頼んで帰った。

パンRたちが屋敷へ戻ると先回りしていた顧千帆と陳廉が中庭に現れた。
三娘はパンRと顧千帆だけで話をさせることにしたが、2人の険悪な雰囲気に戸惑いを隠せない。
実はパンRは顧千帆の冷たい態度に深く傷ついていた。

パンRは顧千帆が自分に怒っていると察し、帳簿のすり替えに気づいた経緯を説明した。
帳簿から密書を見つけたパンRは袁屯田(エントンデン)にそれとなく意味を聞き、″軍馬″と書かれていると分かったという。
実はパンRは念のため帳簿に鶏舌(ケイゼツ)香をつけておいた。
人には無臭だが犬には嗅ぎ取れる香りで、妓楼では借金を踏み倒そうとする客に使われるという。
「帳簿を調べると誰かが触れた跡があった
 可四(カシ)に頼み犬に匂いを追わせると蕭(ショウ)府にたどり着いたわ
 あなたに関係すると分かり、陳廉を訪ねたの」
「…怖いもの知らずにも程がある、私の到着が遅れていたら今頃は死んでいた
 皇城司の者を相手になぜ単独で立ち向かったんだ?!」
「なぜ私ばかり責めるの?!…私の生死なんてあなたには関係ない」
パンRは憤慨し、母屋に入ってしまう。
「関係なら大ありだ!君のために休みなく馬を走らせた、牢獄での君を見てどれだけ辛かったか…
 他人を装ったのは君が私の弱点だと敵に悟らせないためだ!」
「何を言い出すの?…あなたの弱点が私?」
「…違うのか?!」
「私はあなたの何?」

パンRは冷静だった。
自分たちの身分に雲泥の差があることは誰の目にも明らか、不用意に関わってはならない相手だと顧千帆も分かっているだろう。
「もうお帰りください」
顧千帆は返す言葉もなかった。
すると陳廉がパンRとの将来を考えていないなら黙って帰るべきだと諌める。
顧千帆は確かに何も約束できなかったが、このまま終わらせることもできなかった。
「…蕭府で用を済ませてくる、君の問いにはよく考えてから答える」

三娘はパンRを心配し、明日は茶坊を休むよう勧めた。
しかしパンRは自分なら大丈夫だと強がってしまう。
「そんなに信用ない?…ずっと言いたかったの、あんたは確かに強い人よ?
 何でも独りで背負い込むけど、3人で開いた茶坊でしょう?」
三娘はもっと自分や引章に甘えても良いと訴え、パンRに何かあれば耐えられないと涙した。
「私ったら…ごめんなさい、分かってるの
 引章に劣等感を持たないでと言ってきたけど、持っているのは私
 賎民だったせいで人に見下されたくなくて…
 だから何事も完璧にしようとして自分で操ろうとしたの」
「泣かないで、私たちには絆がある、何でも言えばいいの
 とにかく明日はあなたなしでも店が回せるかどうか試してみよう?」
「はお」

池蟠が朝から懇意にしている張好好(チョウコウコウ)の双喜(ソウキ)楼にやって来た。
何でも好好がパンRから菓子をもらっていると知り、自分の宿敵と仲良くするなという。
「パンRと切れないなら別れる!」
しかし好好はパンRが菓子以上のものをくれると反発、池蟠はパンRへの恨みを募らせた。

顧千帆は于中全の手先を追及、手を組んだのは父ではなく異母弟となる蕭謂(ショウイ)だと分かった。
しかし父が自分の命を狙わなくとも、パンRを処理して皇城司から離れさせ、意のままに操ろうとした可能性はある。
陳廉は驚き、これからどうするのか聞いた。
「見せしめが必要だな…」

東京の蕭府に突然、皇城司から生臭い鹿の足が届いた。
激怒した蕭謂はこの雪辱を果たすと息巻いたが、そこへ父の腹心である家職・忠(チュウ)氏が現れる。
実は于中全の件を知った父が忠氏を寄越したというのだ。
蕭欽言(ショウキンゲン)の文には再び揉め事を起こせば親子の縁を切ることも辞さないとあり、おとなしく自分の帰りを待てという。
「なぜ父上が知っているのだ?!」
「顧副使から鹿の足と于中全の供述が届いたのです」
蕭謂は父がなぜここまで顧千帆に肩入れするのか分からず、母に相談すると言い出した。
すると忠氏が引き止める。
「失礼ながら公子は職務のない蔭官(インカン)に過ぎず、夫人に泣きついても何の解決にもなりません
 私からもお願いします、顧千帆を怒らせませんよう、それにあのお方はあなたの敵ではありません」

そんなある日、半遮面に沈如琢がやって来た。
ようやく貴賓室で引章の琵琶を聞くことができたが、引章は相変わらずよそよそしい。
「沈官人、親しい間柄でもないのに名前で呼ぶのは困ります」
「何と冷たいことか…こんなことならわざわざ知らせに来ることもなかったかな」
すると沈如琢は引章に菓子折りを渡した。



屋敷に戻った引章はパンRに沈如琢からもらった菓子を見せた。
今や茶湯巷(チャユコウ)の多くの店が半遮面を真似た菓子や飲み物を安く売り、清茗(セイメイ)坊では一日中、琵琶の演奏が聴けるという。

つづく


(  ̄꒳ ̄)引章、パンRを助けに行くと気負った割に馬車が遅すぎるwww
安定の三娘、でも内容はいろいろあれだな〜と思う





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最終更新日  2023.03.17 22:33:40
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