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第2話「在りし日の文」

都の情勢を知ろうと人気の酒楼・金玲苑(キンレイエン)にやって来た花琉璃(カリィウリ)。
こっそり楽堂を抜け出したところで運良く仮面の楽師に出くわし、話が聞きたいと頼んだ。
「あなた名前は?」
「…済懐(セイカイ)です」
琉璃は銀子をちらつかせながら横柄な令嬢の正体を聞き出し、謎の皇太子・姫元溯(キゲンソ)についても探った。
「太子殿下は残酷だそうね?朝廷では多くの敵を作っているのでしょう?」
「良い質問です、太子殿下の敵は掃いて捨てるほどいます、敵の数なら花県主と互角でしょう

「…あなた、本当にただの楽師?」
「あなたこそ、ただの客人ですか?」
怪しまれた琉璃は咄嗟に話を切り上げた。
帰り際にふと銀子が惜しくなって回収したが、楽師に小さな銀を1つ取られてしまう。
実はその楽師の正体は皇太子だった。

琉璃は楽堂に戻り、鳶尾(エンビ)を連れて慌てて退散した。
田嘉敏(デンカビン)は給仕に今の娘が何者か聞いたが、初めて都を訪れた客としか分からないという。
「上京したてなのにふてぶてしい…上京したて?花琉璃?!」
嘉敏は生意気な娘の正体に気づき、玉京の顔利きが誰か思い知らせてやると息巻いた。

翌日、花府の庭に密書が投げ込まれた。
…都は危険、注意せよ…

何でも戸部を連れた嘉敏郡主に付きまとわれ、買い物を邪魔されて何も買えなかったという。
その情報は皇太子にも届いていた。
「郡主が県主の食糧を断った?…ふっ、あの娘が花琉璃だと匂わせたかいがあったな」
姫元溯は小さな銀子をながめながら、琉璃を試す絶好の機会だとほくそ笑んだ。
するとしばらくして花琉璃が挨拶回りと称して尚書府を訪ねたと知る。


田尚書は花家と懇意にしていると誤解されないよう居留守を使った。
しかし門前でずっと待っている県主を心配そうに見守っていた民たちが騒ぎ出してしまう。
弱い者いじめするな!>ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
追い詰められた田尚書はやむを得ず県主を出迎えたが、嘉敏はやはり例の娘だと分かった。
「少しばかり元気が戻ったのでご挨拶に…」
「騙されないで、昨日、姿を見かけたわ」
「郡主、一体どこで私を?」
「金…あっ…人間違いね」
嘉敏は自分も金玲苑にいたことがばれてしまうと気づき、慌てて否定した。

田尚書は花家を牽制していたが、嘉敏の母である順安(ジュンアン)公主は違った。
楽師から聞いた話では順安は琉璃の母で長安(チョウアン)侯である衛(エイ)将軍に憧れているという。
順安は琉璃を歓待、恐妻家の田尚書は口を挟めなかった。

琉璃は山のような贈り物を持って尚書府を後にした。
嘉敏は琉璃が置いて行った土産がただの焼餅(シャオビン)だと気づき、お気に入り夜明珠まで譲った母を責める。
しかし順安は衛将軍の心のこもった贈り物だと思い込み、なぜ感謝できないのかと娘を叱った。
「まるで県主を凶悪な面相の門神に例えてたけれど、似てないじゃないの!小遣い半減よ!」

尚書府での一件はすぐ広まった。
花県主を門前払いすれば民の罵声を浴び、かと言って屋敷に招けば親しいと疑われてしまう。
恐れをなした官吏たちは花府へ贈り物を届け始めたが、県主の希望の品と言えばがらくたばかりだった。

琉璃は挨拶回りの帰り道、皇太子の私邸・安康苑(アンコウエン)に差し掛かった。
焦った琉璃は迂回するよう頼んだが、鳶尾は手遅れだという。
「太子殿下が門の前でお待ちです…」
琉璃は仕方なく馬車を降りたが、実は姫元溯が眉目秀麗だと知った。
「たった1日で回復するとは…驚くほど順応しているな?
 で、尚書府から略奪したものはいかほどだ?」
「誤解です、贈り物を交換しただけです」
「ならば余にも贈り物が?」
琉璃は仕方なく鳶尾に適当に見繕うよう命じた。
しかし戦利品を渡すのを惜しんだ鳶尾が焼餅を渡してしまう。
慌てた琉璃は仕方なく銀子を出して誤魔そうとしたが、その時、皇太子が指で銀子を挟む仕草を見て驚いた。
…あの楽師?!…

姫元溯は琉璃を屋敷に案内した。
すると琉璃がちょうど中庭にいた白い猫に気づく。
「飼って5年になる、花花(フゥァフゥァ)だ…あ、花(hua)ではない発(fa)、″発発(ファーファー)″だ」
「良い名前ですね、よろしくね、発発、私は花花よ」
そこで元溯はかつて琉璃から猫も飼っていないと馬鹿にされたと切り出した。
「確か母のお腹にいた頃から戦場にいたのだろう?
 将来、玉京に行ったら文句を言うだけの文官を叩きのめすと書いて来た」
元溯は証拠となる琉璃の手紙を読んで聞かせ、本当の姿を暴こうとした。
しかも琉璃が送ってきた毒まで見せたいという。
驚いた琉璃は咄嗟に目眩を起こしたふりをすると、鳶尾と一緒に逃げるように帰った。





琉璃は幼い頃、見境なく文を送っていたことを後悔した。
「太子にとって私は暗殺者なのね…まさか文を保管していたなんて
 他にも色々な物を送りつけたかも」
すると帰り道、琉璃は見覚えのある酔っ払いの男を見かけた。
しかし宋光(ソウコウ)は琉璃に気づくと逃げるように帰ってしまう。
宋光は花家軍の兵士だったが戦で足を負傷、戦えなくなって軍営を去っていた。

姫元溯は腹心の大理寺少卿・裴済懐(ハイセイカイ)を呼んだ。
実は花琉璃との仲を怪しまれないよう愛猫の名前を″花花″から″発発″に改名したという。
さらに今後は裴済懐の籍を金玲苑に置くと伝えた。
( ゚д゚)<はあ?

宋光は琉璃が都へ到着して以来、密かに見守っていた。
その夜、花府の近くで金珀(キンハク)国の刺客を発見した宋光は酔っ払いのふりをして衛兵を誘き出し、刺客を追い払う。
翌朝、琉璃は宋光を屋敷へ呼んだ。
「昨夜はありがとう、この暗号文で危険を知らせてくれたのもあなたでしょう?」
琉璃は宋光の力が必要だと訴え、中庭に掲げた花家軍の軍旗を見せた。
すると宋光は思わず拝礼してしまう。

つづく


( ̄▽ ̄;)リーフェイがいない…





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最終更新日  2024.03.13 11:10:53
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