貴方の仮面を身に着けて

貴方の仮面を身に着けて

2009/09/03
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「僕には償うべき罪がある」
「今がその時なのです」

少年は荒野を見渡した。かつて穏やかな暮らしが営まれていた場所。だが、赤味がかった剥き出しの大地と僅かに生えた草の他、そこには何もなかった。
「これも、僕のせい?」
少年の両肩に大きな手が置かれた。
「残念ながら、すべてが」
少年は振り返り、男を見上げた。
「僕は、どうすればいいの?春日根」
男は少年を見下ろした。男は微かに笑った様だったが、逆光で翳ったその顔を、少年は確かめる事は出来なかった。



「真彦様を連れて逃走したと言うのか?」
「おそらくは」
「何の為に」
「今はまだ不明です」
「奴は動ける状態だったのかね?」
「医師も術師も不可能だと」
「何かが”動かした”のか」
「”操っている”と考えた方が適切かと」
朱雀は黙った。磐境も黙して朱雀の言葉を待っていた。

「竹生様がご不在とはいえ、屋敷には桐原も伴野もいた。二人に重傷を負わせ、真彦様を連れ去ったとなると、奴一人の仕業とは思えないな」
「はい」

磐境は床に目を落とした。
「生存者はいません」
朱雀は口の端を堅く結んだ。片手を伸ばすと、卓上のコンソールを操作した。小さなランプが点滅した。
「和樹」
「はい」

「すべてお前の所に回しておいた。しばらく留守にする」
「了解。お気をつけて、社長」
「後はまかせたぞ、専務」
ランプが消えた。朱雀は立ち上がった。磐境と目が合った。朱雀が頷くと、磐境は小さく頭を下げ出て行った。

歩き出す前に、朱雀は机の上の写真立てに目をやった。朱雀の大切な家族達の写真であった。中央に百合枝の笑顔があった。
(行って来るよ。いや、キミの側に行く事になるかも知れない)







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Last updated  2009/09/03 09:21:31 PM


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龍5777 @ Re:白衣の盾・叫ぶ瞳(3)(03/24) おはようございます。 「この歳で 色香に…
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