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つい先日、イランの新しい「ウラン濃縮施設」に関する報道があったが、雲行きが怪しくなってきた。この施設の存在は9月21日にイランがIAEA(国際原子力機関)へ通告しているので確かだろうが、アメリカの情報機関が何年も前にウラン濃縮施設に関する情報をつかんでいたとする話の信憑性が疑われ始めたのである。公表された写真は地対空ミサイル施設を写したものだが、核施設と関係があるかどうかは不明のようだ。 イラン政府からの通告は、アメリカの情報機関に証拠を握られたためだとする主張も流れているようだが、アメリカの情報機関は具体的な証拠を握っているわけでなく、単に推測しているだけである上、IAEAを含む外部の人間に対し、9月24日まで「ウラン濃縮施設」について知らせていない。 これでは、アメリカ政府とメディアがイランの通告を利用してイラン批判を展開しただけだということになる。ちなみに、イスラエル軍のガザ地区への軍事侵攻が戦争犯罪だとする国連の報告書の場合、アメリカ政府は激しく批判し、メディアは軽視している。 前にも書いたことだが、イランは核関連施設を広い地域に分散させて建設している。イスラエルやアメリカの親イスラエル派が繰り返し、イランを攻撃すると脅していることへの対抗策であり、少し空爆しただけでイランの核開発を止められるという状況ではない。それで核攻撃の話も出ていたのだが、これではイランを攻撃する「口実」を自らが否定することになってしまう。 このイランに関する茶番劇にも引きずり出されていたロシアの関係する報告書をEUが公表した。南オセチアをめぐり、グルジアとロシアが軍事衝突した事件に関する調査報告だ。ユーゴスラビアへの攻撃を主導したのがドイツであることを考えると、EUが公正な立場から報告書を作成できるはずはないが、それでもグルジアが先制攻撃したことは否定できなかった。 この軍事衝突では、アメリカ以上にイスラエルが深く関与していることが明確になっているが、この辺の話をEUは避けているようだ。グルジアの奇襲攻撃を同国のミハエル・サーカシビリ大統領個人に押しつけるのも正しくないだろう。同大統領は勝てると思ったはずだが、その背景にはアメリカとイスラエル、特にイスラエルの存在がある。 考えてみれば、公式の報告書、要するに権力者が作成した報告書は基本的に信用はできない。事実を軽視する伝統のある日本の場合、まるっきり嘘ということもある。 例えば2005年に起こったJR西日本の宝塚線(福知山線)の事故では、調査をしていた国土交通省の「航空・鉄道事故調査委員会」の委員がJR側の人間と頻繁に接触していることが明らかになっている。24年前の8月12日に群馬県南西部の山岳地帯に墜落した日本航空123便のケースでも、運輸省事故調査委員会の結論が間違っていることは確認されている。実験結果が報告書の結論と矛盾しているのだ。 そう言えば、古代日本では記録を残す習慣がなく、江戸時代までは歴史と文学が一体化していた。この伝統は現在でも生きていて、面白おかしく書くことを当然だと考えているマスコミは勿論、平気で重要文書を廃棄する官僚、さらに体制に都合の良い仮想現実を事実だと言い張る学者などで日本列島は満ちあふれている。くわばら、くわばら。
2009.09.30
週明けの株式相場が値下がりし、為替相場が円高(ドル安)の方向へ動いたということで、マスコミは騒いでいるようだ。日経平均株価で256円46円安(-2.5%)、円/ドルで90円を割り込んだということだが、驚くほどのことではない。株価の場合、短期では下げ局面に入ったと言えるが、中期で見れば9000円前後から1万1000円の間を動くのは仕方のないことであり、長期で見るならば、本格的な上昇局面に入るとしても1年後という状況に変化はない。6000円程度まで下がる可能性があることも前から指摘していた通り。要するに、今回の相場は想定内の出来事であり、大騒ぎするのは「政治的な目的」があるからだと言わざるをえない。 ピッツバーグでG20の会議が開かれているようだが、街頭では大学生が抗議活動を展開し、「暴動警察(機動隊)」が催涙弾などを使って鎮圧に乗り出す騒ぎになっている。何カ国の代表が集まろうと、所詮は大多数の庶民からいかにして富を巻き上げるかを話し合うために集まっているだけのことで、学生に抗議されても仕方のないことだ。 それでも、国際的に見ると、資本主義システムを維持するためには自分たちの欲望を抑える必要があると考える権力層が増えていることは確かだろう。損をしたら庶民に尻ぬぐいさせ、儲かったら全て自分たちの懐へ入れるという資本家/投資家、そして経営者の姿勢を正す必要があるということで、規制強化のほか、所得制限や富裕層への課税強化が議論されている。 日本では今でも財界は「強者総取り」の経済システムを改めるつもりはないようで、所得制限や累進課税の強化は議論されていない。欲望の固まりになった大企業の経営者や官僚たちに「友愛」を解いても無駄だろう。 民主党は無駄な公共事業をやめると言っているが、困難が伴うことは確かだ。利権が絡んでいる。一般的に言って、公共事業で潤うのは巨大なゼネコンである。彼らは利益を確保した上で下請けに回し、下請けは利益を出すために「手抜き」しなければならない。孫請けへ仕事が回されれば、同じことが繰り返される。 それでも、仕事を受注できれば利益が出る。受注するには入札に参加しなければならないが、ある建設業者は、受注に参加するために百万円単位の商品券を官僚に渡す必要があるのだと嘆いていた。現場を見たわけでないので、真偽はわからないが。 受注しても、それで終わりではない。国会議員、地方議員、地元のボスなどに挨拶する必要があり、出費は多い。万一、それで仕事が御破算になれば一大事だ。ダムでも建物でも、とにかく完成するまでが勝負である。 民主党は官僚任せの政治から脱却すると主張しているようだ。政治家が官僚に仕事を丸投げしているというのだが、銀行行政などは、さらに官僚が銀行協会へ丸投げしていたと聞いている。政策の策定を財界に任せていたという側面がある。しかも、かつては銀行局に一瞬でも在籍すれば、銀行が一生涯、面倒を見るとも言われていた。政治家にしろ官僚にしろ、銀行の利益に反するようなことをできるはずがないのだ。 マスコミも銀行を怖がっている。マスコミに限らず、企業なら銀行から融資を止められれば、どんな優良企業でも倒産してしまう。まして、経営状態が悪い新聞社が銀行に楯突けるはずがないないのだ。 ところで、庶民は自民党/公明党の大企業を優遇する政策からの脱却を民主党に託したわけであり、銀行を始めとする大企業も社会的な責任を負うべきだと考えている。大企業だけが大儲けするような仕組みはもう御免だということであり、中小企業や労働者へ適切な対価を払えということだ。そうなると、企業の利益は少なくなうわけで、株価が下がるのは当然のこと。株式相場が下がるような政策を庶民は望んでいるのである。株価が下がることを恐れていては、何もできない。だいたい、円高が進んでいると言うことは、日本経済は潰れないと市場は判断していることを示している。
2009.09.28
イランが「ウラン濃縮施設」を建設していたことで、「国際社会が同国に抱く疑念をさらに膨らませた」と日本では報道されている。イランが多くの核施設を建設していることは広く知られていることで、「国際社会」は大して驚いていないはずだ。イスラエルがイランを攻撃すると叫んでいたとき、全ての核施設を破壊することは不可能だと言われていたこと、それだけ核施設が多いことを日本の「優秀な記者」が知らないはずはないだろう。 おそらく、「国際社会」が懸念しているのは、むしろイスラエルの核兵器である。70発とも400発とも言われる核弾頭を保有し、1973年の第四次中東戦争では劣勢を挽回するため、イスラエル政府は核ミサイルの発射準備を決めている。ターゲットはエジプトとシリアだったが、この計画をソ連が察知、アメリカに伝えた。 ソ連に知らされるまでもなく、アメリカはイスラエルの計画を知っていただろうが、この通告までソ連が状況を把握しているとは思っていなかったかもしれない。ソ連の動きを懸念したのか、アメリカは核兵器の使用を断念させるため、イスラエルの反撃を支援した。 つまり、イスラエルは世界有数の核兵器保有国というだけでなく、核攻撃も辞さない国だということだ。イスラエルがイランを攻撃し、全土を廃墟にしたいと考えているのは確かだろうが、現時点で「イランの脅威」は「国際社会」への恫喝として利用されている。 イランを本当に攻撃した場合、世界経済は崩壊する。特に、EUや日本は破滅的なダメージを受けることになる。「国際社会」から、ガザ地区への軍事侵攻は戦争犯罪だと非難され、核兵器の問題でも情報を公開するように求められているイスラエルとしては、勝負所だ。 1973年のケースではソ連の動きがイスラエルの核攻撃を止めたわけだが、もしイランが核兵器を保有した場合、イスラエルの攻撃に対し、イランから核兵器で報復される可能性がある。これでは自分たちの軍事力を使った圧力の効果が小さくなってしまう。イスラム諸国が報復兵器を持つことはイスラエルにとって恐怖なのかもしれない。 最近、イスラエルの名前がラテン・アメリカで聞かれた。ホンジュラスのマニュエル・セラヤ大統領は、イスラエルの傭兵から命を狙われていると主張しているというのだ。確かに、ベネズエラでウーゴ・チャベス政権を倒すクーデターが2002年に計画された際、アメリカのネオコン(新保守)、つまり新イスラエル派が暗躍していた。ホンジュラスと同様、大統領を拉致して国外へ連れ出す計画だったと言われている。 このクーデター計画は失敗したが、これで工作が終わったわけではないようだ。26日にアル・ジャジーラがチャベス暗殺計画について報じたのだ。1999年に実業家のマニュエル・ロサレスから2500万ドルでチャベスを殺してほしいと持ちかけられたと「ヒットマン」のベラスケス・サムブラノが話しているのだ。ちなみに、ロサレスは今年4月にペルーへ逃げている。 また、サムブラノによると、コロンビアの準軍事グループがチャベス暗殺を目指して活動している。チャベスを合法的に倒すことが不可能なため、暗殺するしかないということのようだ。このチャベスは、中東やアフリカ諸国との連帯を目指している。
2009.09.27
これまでイスラエルは完璧な防御システムで守られてきたのだが、ここにきてシステムが機能しなくなっている。ガザ地区への軍事侵攻では戦争犯罪だと非難され、核兵器の問題でも情報を公開するように求める声が高まっているのだ。 当然と言えば当然だが、これまで多くの人たちが口をつぐんできたテーマだということも確かである。アメリカ政府は東ヨーロッパへ配備を計画していたミサイルの問題でロシアに譲歩する一方、イランの「核開発」を危険視するプロパガンダを展開、イラン大統領の発言を「誤報」して世界の目をイランに集中させようとしているのだが、イスラエルへの逆風が収まるとは思えない。 イスラエルの残虐行為としては、1982年のレバノン侵攻と難民キャンプでの虐殺への荷担が有名で、この軍事侵攻をテーマにしたイスラエル/フランス/ドイツ合作の映画も制作されている。この映画は今年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得したというが、映画関係者はガザ地区への軍事侵攻について口を閉ざしていたようだ。 イスラエル軍のガザ地区への軍事侵攻で、人道法や人権法に違反する多くの行為があったことを国連の調査委員会が認めた。ジャーナリストや人権擁護団体の調査で判明していることだが、国連が認めた意味は大きい。 この委員会を指揮していたのはリチャード・ゴールドストーンで、ユーゴスラビアやルワンダでの出来事を扱った国際法廷では主任検事を務めた南アフリカの判事。ゴールドストーンの家族に言わせると、イスラエルに親近感を持つ人物である。 ゴールドストーンの調査報告をスーザン・ライス米国連大使は一方的だと批判、受け入れられないと発言したが、この発言がイスラエルへの支援になるとは思えない。単に、アメリカ政府の評判を落としただけだ。アメリカにかつての「威光」はない。 ライス大使の発言に続き、ヒラリー・クリントン国務長官はイランに「警告」を発している。つまり、イラン政府が自分たちの核プログラムが平和的目的だとアメリカ政府を納得させられなかったなら、「重大な結果」を招くというのだが、「納得」できるかどうかは主観的な問題であり、条件として意味がない。イランを攻撃する用意があると威嚇しただけの話だ。 イスラエルに対し、IAEA(国際原子力機関)はNPT(核不拡散条約)に参加し、査察を受け入れるように呼びかける決議を可決した。アメリカ政府などは反発しているが、イスラエルやアメリカの思い通りにことが進まなくなっていることを示している。核兵器の開発を計画している疑いが持たれているイランとは違い、イスラエルはすでに70発とも400発とも言われる核弾頭を保有していることは間違いない。ジミー・カーター元米大統領はイスラエルの保有数を150発以上だと語っている。いずれにしろ、ともかく世界有数の核兵器保有国である。 こうした中、19日にニューヨーク・タイムズ紙は、イランのマフムード・アフマディネジャド大統領が「ホロコースト」を否定したと報道し、アメリカ政府もそれに反応、ロシアの外務大臣もイランを批判しているのだが、イランのプレスTVによると、実際にはホロコーストを否定したわけでなく、厳密な調査を要求したのだという。アフマディネジャドが嘘だと言ったのは、シオニスト団体が主張している聖書の記述だ。また、ホロコーストの責任を無関係なパレスチナ人に押しつけることに疑問を呈したのだが、これは正論。 要するに、ニューヨーク・タイムズ紙はアフマディネジャド大統領の発言を正しく伝えなかったわけだが、こうした「誤報」は前にもあった。エルサレムを占領しているこの体制は歴史のページから消えるだろう」という歴史的な予言を「イスラムは地図から消し去られるべきだ」という攻撃的な内容に変えて報道されたのだ。この「誤訳」はミシガン大学のジュアン・コール教授たちが気づいて公表したのだが、今でも「誤訳」を宣伝しているメディアもある。
2009.09.19
政権が自民党/公明党から民主党/社民党/国民新党へ交代する。巨大企業のためのロビー活動を行っている日本経団連は新政権の誕生を前にして、混乱しているようだ。 アメリカの場合、巨大企業は民主党と共和党、両方に資金を提供し、どちらに転んでも良いようにしておく。アメリカの「二大政党」はいずれも財界の利益を代弁している。その二大政党による「疑似政権交代」で庶民を満足させてきたわけだ。 日本の民主党も十分に財界寄りの政党であり、日本経団連も両党を支援しておくべきだったが、実際は違った。幹部がギャンブル好きなのか見通しが甘いのか、いずれにしろピンチである。新政権でのロビー活動は難しくなった。カネで縛りをかけているマスコミを使って新政権を攻撃するにしても、直ぐに倒せるとは思えない。マスコミとしても、新政権といきなり喧嘩はしにくいだろう。 基本的に自民党は大企業やアメリカの権力層の利益を代弁する政党である。何しろ、母体になった自由党の結党にはアメリカが深く関与している。が、庶民の声を聞いてきたことも事実だ。 そうした重層的な構造を可能にした一因は中選挙区制にあったのだが、小選挙区制の採用によって自民党に深みはなくなり、巨大企業や一部の富裕層を儲けさせるだけになったわけだ。小泉純一郎政権は特にそうした政策を推進、富の集中が進んで庶民の多くが貧困化し、その波はまだ静まっていない。 財界の方でも、強欲さをむき出しにした人物がトップに立った。つまり、2006年に御手洗冨士夫が日本経団連の第2代会長に就任したのだ。御手洗は自民党との関係を重視、民主党とは距離を置いたため、必然的に政権の交代で新政府への影響力が弱まる。 とりあえず、日本経団連が懸念しているのは雇用と環境の問題だろう。マスコミの内部からも、そうした声が聞こえてくる。 大企業の場合、経営者は億円単位の年収を得ているようだが、その一方で非正規労働者や下請け企業に対して適切な対価を支払わずに働かせ、景気が悪くなると無慈悲に切り捨てた。これが現在の大企業。雇用に対する社会的な責任を全く感じていない。資産のある「美味しい会社」に食い込んで甘い汁を吸い、吸いきったら次の会社へ寄生するタチの悪いファンドのようなことを、会社の経営者がやっているとも言える。 大企業経営者の強欲さは企業の存続すら危うくしている。現場の労働者だけでなく、エンジニアの労働環境も悪化、病気でリタイアする人が増えているのだが、それでも人員を補充しないため、さらに労働環境が悪化するという悪循環に陥っている。カネ勘定しかできない経営者は気づいていないのかもしれないが。 現在、環境問題の象徴的なテーマは温室効果ガスの排出量削減。地球の温暖化を回避するためには二酸化炭素などの物質を削減する必要があるという主張に対し、財界は「経済活動」にマイナスになると抵抗してきた。要するに、自分たちの収入にとって悪い影響があると恐れているのだろう。 同じ「好景気」でも、財界が使う好景気と庶民が考える好景気は本質的に違う。財界だけでなく、政府やマスコミが「好景気」だと宣伝した時期に庶民の収入は減ってきた。庶民の不景気と権力層の好景気はコインの裏と表の関係にあると言える。庶民の立場から見ると、経済活動にとって最大のマイナス要因は大企業の強欲さにある。 二酸化炭素と温暖化との因果関係に疑問があるという一種の「不可知論」を主張する人もいるが、自然現象を人間が完全に予測することは不可能である。そんなことは、最初から明らかな話だ。所詮、「ヒトの知恵」とはそんな程度であり、人間にできることは、できるだけ自然界に負荷を与えないようにするということだけだ。ヒトは自然に対して謙虚でなければならない。ヒトも自然の一部なのだ。 そういえば、水俣病やイタイイタイ病が問題になったときも、因果関係に疑問を投げかけ、企業のカネ儲けを支援する学者がいた。薬害のときにも似たようなことが行われている。マスコミも似たようなものだ。環境破壊の元凶の肩を持った方がカネになることは明らかである。そもそも、「科学的証明」ができた段階では手遅れである。 温室効果ガスを1990年比で2020年までに25%減らすという民主党の案に日本経団連は反発しているようだが、過去を振り返ると、京都議定書の削減目標を達成するどころか、日本は排出量を増やしてきた。国際的な約束を守ろうとしてきたとは思えない。 1990年に比べて何%かでも減少しているなら「必死に削減しようとしたが、無理でした」と言えなくもないだろうが、実際は違う。ジョージ・W・ブッシュ政権が京都議定書の取り決めに否定的な態度だったので、努力しなくても大丈夫だと高をくくっていたに違いない。 日本経団連の御手洗会長は1961年にキヤノンカメラに入社、66年にキヤノンUSAに出向し、79年に同社の社長に就任している。日本へ戻ってきたのは1989年なので、30年近くをアメリカで仕事していたことになる。アメリカで一体、何を学んで来たのだろうか?
2009.09.15
日本航空をアメリカの航空会社が支援する動きを見せている。デルタ航空とアメリカン航空が提携を持ちかけているのだが、その原因は日本航空の経営不振にある。業績悪化の原因はいくつかあるが、ひとことで言うならば、経営陣の無能だ。政治家や官僚に寄生され、衰弱したとも言える。こうした体質を示す出来事が1980年代の後半に起こった。 長い間2000円台の前半で推移していた日本航空の株価が1984年から急騰、85年の夏には8000円を突破した。相変わらずの「政治銘柄」だということで、一儲けしようと「提灯をつける」人々が群がった。そうした浮かれた雰囲気を一気に冷やす事件が起こったのは1985年8月12日のこと。日本航空の123便が群馬県南西部の山岳地帯に墜落したのである。 後部の圧力隔壁が損壊して尾翼が内部圧力で吹き飛ばされた結果、操縦系統も失われて墜落したということになっているが、この公式見解に疑問があることは本コラムでも指摘した通り。事件直後に総会屋たちは安全を無視した経営方針が事故を引き起こしたと噂していた。利益を出すために整備部門のコストをカットしていたというのだが、確かにそうしたことはあった。 実は、1987年度中に日本航空を「完全民営化」することになっていたのだが、無配に転落してしまう。そこで、1987年3月期には配当を復活したいと経営陣は発言していた。政府も復配を実現したいと思っていたはずである。 言うまでもなく、復配すれば株価を引き上げる「材料」になる。株価が上がれば、大蔵大臣名目で保有されていた4089万9000株を高い価格で売却することができる。しかも、その先の1988年には700万株の時価発行増資を行うことがスケジュールに載っていた。 123便が墜落した後、多くの証券関係者は仕手相場が終わったと考えたのだが、内情に詳しい人たちは「必ず上がる」と言って買い増ししていた。実際、墜落後に5000円を切るところまで値下がりした株価は、10月あたりから再び急騰、1987年には2万円を突破している。 株価が急騰している時期、日本航空の社長は中曽根康弘首相と親しいと言われた高木養根が務めていた。実際に相場を実際に引き上げていたのは、仕手筋として有名だった三洋石油グループだったが、その背景に大蔵省や首相の影を感じる人は少なくなかった。 日本航空の株価暴騰には「プラザ合意」も影響していた可能性が高い。つまり、1985年9月にニューヨークのプラザ・ホテルで開かれたG5でドル安/円高が決まった。この時期にアメリカの財務省証券を買いたがる日本人は少ないだろうが、アメリカの権力者に従うことで権力を維持してきた日本のエリートとしては、買わないわけにはいかない。大変な矛盾だ。 そうした時期に日本航空は11年という超長期の先物予約をしている。通常、先物予約は長くとも5年であり、為替取引のプロに言わせると「クレージー」な予約だった。この後、決められたとおりにドル安/円高が進み、日本航空の経営を圧迫することになる。 そのクレージーな超長期予約を計画したのは1984年9月で、実際に予約を決めたのは85年8月だとされている。ドル安/円高へ進むことは避けられない中での決定なのだが、その裏では日本の金融機関が置かれた立場があった。つまり、ドル安になることがわかっても金融機関はアメリカの財務省証券などを購入(ドル買い)しなければならない。損を少なくするためには、ドルを「転売」しなければならない。日本航空が行った超長期の先物予約はありがたかったであろう。 当然、日本航空は先物予約で大損することが見通されていたはず。だからこそ、株価を暴騰させ、時価発行増資を実行したのだろう。そうとしか思えない。そして今、日本航空はアメリカの航空会社との結びつきを強めようとしている。権力者の「おもちゃ」という同社の「伝統」は生きているようだ。
2009.09.14
ホワイトハウス環境評議会の特別顧問を務めていたバン・ジョーンズが9月5日に辞任した。「緑の雇用」を提唱した人物として知られるジョーンズを共和党は嫌い、強烈な圧力をバラク・オバマ大統領にかけていたと言われている。共和党が彼を危険視した最大の理由は「9/11」にあるようだ。 言うまでもなく、「9/11」とは、2001年9月11日に複数の航空機がニューヨークの高層ビルに突入、さらに国防総省の本部(ペンタゴン)が攻撃された事件を意味する。本コラムでも指摘しているように、この事件には少なからぬ疑問点があり、アメリカでも前政権の公式見解に疑問を持つ人は多い。そうした中には大学教授や軍事問題の専門家、そしてチャーリー・シーンのような俳優も含まれている。EUではアメリカ以上に疑問を持つ人が多い。 そうした疑問を持つアメリカ人のグループが2004年に調査を求める「要求書」を公表しているが、その文書にジョーンズも署名していたことが問題にされたわけだ。要求書には12の疑問点が列挙され、4項目の要求が示されているが、いずれも正当なものであり、問題視する方がおかしい。 日本でも、この問題と正面から向き合おうとしている人は多くない。「右」の人々はイスラム教徒の「テロ行為」だと叫んでアフガニスタンやイラクでの大量虐殺を正当化、その一方で「左」は攻撃をアメリカに対する「第三世界の反撃」だと主張して自己満足している。ともかく、当時のアメリカ政府が宣伝した「公式見解」、つまりイスラム武装勢力による犯行という主張を肯定しているわけであり、体制が定めた枠組みの中での発言だと言える。 2001年9月11日の前に国外から「テロ」に関する警告があったことは間違いない。FBIの翻訳官だったシベル・エドモンズも、2001年4月にイラン情報機関の協力者から警告があったと証言している。オサマ・ビン・ラディンが航空機で4~5都市を攻撃する計画を持っているという内容だった。 ただ、エドモンズの証言も含め、伝えられている計画は乱暴なもので、確かにアル・カイダらしい代物だった。ところが、実際の破壊工作は緻密で洗練され、協力者のネットワークがアメリカ政府内に存在しなければ困難であり、アフガニスタンの山奥に潜んでいる武装グループにできる作戦だとは思えない。ただ、その割に犯行をアル・カイダに押しつけるための工作はいい加減だが。 この事件をセンシティブにしているひとつの理由は、イスラエルの存在にある。事件の前後にイスラエルの「美術学校生」が逮捕されているのだ。捜査の切っ掛けになった報告書によると、美術学校生がDEA(麻薬捜査局)のオフィスに潜入しようと試みていたという。その前にはイスラエル系の通信会社もFBIから捜索を受けている。 ともかく、テレグラフ紙によると事件前に140名のイスラエル人が逮捕され、ワシントン・ポスト紙によると事件後に60名以上が逮捕されている。これとは別に炎上/崩壊していく世界貿易センターの二棟を撮影していたイスラエル人のグループも拘束されている。DEAのケースと撮影のケース、いずれも逮捕者の中にイスラエルの情報機関モサドのメンバーがいたと報道されている。 さらに、ハイジャック犯の主犯にされたモハメド・アッタのグループをイスラエルの情報機関が監視していたとも伝えられている。「9/11」へ関与したかどうかは別にして、事件の調査を進めるとイスラエルの名前が浮上することは避けられないだろう。 世間から「右」と見られていようと、「左」と見られていようと、こうした問題に関わると社会的な地位を失う可能性は小さくない。「現状維持」を望む人は公式見解に疑問を持たないものだ。実際、ジョーンズも特別顧問を辞めざるをえなくなった。
2009.09.13
バラク・オバマ米大統領は内憂外患で大変なようだ。まず内憂は、医療保険制度の改革。アメリカは国民皆保険でないため、少なからぬ人々が無保険で、適切な治療を受けることが困難な状態にある。オバマ大統領は、無保険者の救済と医療費の抑制を目指しているのだが、メディアの内部にも偽情報を広めて反対を扇動している人たちがいる。それだけ抵抗が激しいということだ。 アメリカは「地獄の沙汰もカネ次第」を国是としているのかもしれないが、多くの無保険者が存在する状況を変えるべきだと考える人もいる。実際、過去にも医療保険制度を変えようとした人もいるが、成功しなかった。それだけ皆保険を恐れている人たちがいるわけである。 9日に大統領は議会でこの問題について演説したのだが、その途中、アディソン・グレイブ・ウィルソン下院議員は「おまえは嘘をついている」とヤジを飛ばし、演説が中断するということもあった。この議員は健康産業、つまり製薬会社、保険会社、あるいは病院などから多額の寄付を受け取っていることで有名。つまり、こうした法人は、オバマ大統領の改革が自分たちの利益に反すると考えているのだろう。 オバマ大統領を悩ます外患は、混乱が続く中東情勢だ。パレスチナ問題だけでなく、泥沼化したイラクやアフガニスタンから抜け出せないでいる。イラクからアメリカ軍を撤退させる方針を大統領は打ち出しているが、抵抗運動は激しく、傭兵を増やしているのが現状だ。 今年の7月にはCIAの暗殺プログラムが明るみに出ているが、これはイラクでも実行されたようだ。このプログラムはディック・チェイニー副大統領の命令で実施され、ブラックウォーター(現社名はXe)も雇われていた。費用はジョージ・W・ブッシュ政権の8年間に数百万ドルに達したと推測されている。 先月、ウィリアム・カリーという人物が「ソンミ事件(ミライ事件)」について謝罪した。この虐殺事件はベトナム戦争の最中、1968年にソンミ村で起こった。当時、カリー中尉が率いる部隊が村民数百名を殺害したという事件なのだが、これはCIAの秘密工作部門が中心になって実行していた皆殺し作戦「フェニックス・プログラム」の一環だった。正規軍の作戦ではない。ともかく、現地の人間を虐殺するのはアメリカの「伝統」だと言えるだろう。 さて、現在、イラクでは、400名のアメリカ兵が出て行った後に、900名の傭兵が入ってくるという状況のようで、ウガンダやケニヤからやって来た傭兵が多いという。要するに、アメリカ政府はイラクでの戦費を削減できない。当然、アメリカ政府はそうした「つけ」を日本に回すつもりだ。大統領がブッシュ・ジュニアであろうと、オバマであろうと、同じことである。 日本は政権交代を機に政策を変更し、早く自衛隊を引き上げないと、ブッシュ・ジュニア政権がはじめた戦争から逃れられなくなる。「日米同盟」はアメリカの都合で運用されているのだということを忘れてはならない。
2009.09.10
2001年9月11日、現代史の大きな節目となる出来事が起きた。ニューヨークの金融街に聳え立つふたつのタワーに二機の航空機が突入し、その両タワーが崩壊する様子は世界で何度も放送された。このショッキングな事件を切っ掛けにしてアメリカは戦時国家になり、国内ではファシズム化が進行したのである。 事件の直前、アメリカの権力システムは危機に瀕していた。不正が噂された大統領選挙でジョージ・W・ブッシュが「勝利」した当時、マネー・ゲーム経済(カジノ経済)は破綻し、基幹産業化していた戦争ビジネスは先細りに危機感を抱いていた。 例えば、マネー・ゲームで急成長し、「ブッシュの財布」とも言われていたエンロンの倒産は時間の問題であり、需要の減少で戦争ビジネスは苦しんでいた。ミサイル防衛などはアメリカ軍の内部でも信頼性に疑問が持たれ、国際情勢の変化から「無用の長物」と言われるようになっていた。 さらに、アメリカ流の経済システムを批判する声はEUでも大きくなり、環境問題でもアメリカは孤立、ネオコン(新保守)と緊密な関係にあったイスラエルの暴走に対する批判も世界的に強まり、ブッシュ・ジュニア政権は四面楚歌だった。こうした苦境を脱するためには「クーデター」でも実行するしかない状況だったのだ。 実際、「9/11」の前からアメリカでクーデター的な出来事が起こると予想していた人は少なくない。私自身、そうした見通しを月刊「軍事研究」で明らかにしていた。アメリカの捜査機関や情報機関の場合、「テロ活動」が計画されているという情報を事前に入手していたことも明らかになっている。 9月11日の事件には多くの謎があることも確かだ。ニューヨークの航空機突入では、ふたつのタワーへ正確に突入したことに疑問を持つ人もいるが、さらに火災が鎮火に向かっているとき、「制御破壊」(爆薬を使った解体)のように二棟が崩壊したことに不自然さを感じる人は学者も含め、少なくない。両タワーから少し離れたところに建っていた7号館も「制御破壊」のように崩壊しているのだが、こうした崩壊を「公式見解」では説明できていない。現場にいた人々は、異口同音に連続した爆発音を聞いたと話している。 ペンタゴンへの攻撃はニューヨーク以上に不可解だ。現場の周辺には多くのカメラが設置されていたのだが、突入したとされる航空機の映像が出てこない。事件直後に撮影された映像では5メートルに満たない穴が壁に開いているのだが、旅客機が突入した痕跡だとは思えない。地面すれすれを飛行して突入したことになっているのだが、そうした痕跡も見あたらない。 これも多くの人が指摘しているが、突入した場所が不自然。ペンタゴンの周囲を回るように右へ急旋回し、反対側に出てから突入しのだが、旅客機には難しい飛行だ。そもそも、ペンタゴンの周辺には迎撃ミサイルが配備されていて、近くを不審機が飛行すれば撃墜されてしまう。迎撃機(要撃機)も現れていない。防空システムが機能していないのである。1983年の大韓航空007便の撃墜事件と同じように、NORAD(北米航空宇宙防衛軍)は動かなかった。 防空の担当者は大失態を演じたわけだが、責任は問われていない。事件当日の午前8時30分、NMCC(国家軍事指揮センター)の司令官だったモンターギュ・フィンフィールド陸軍准将は指揮をチャールズ・レイディグ海軍大佐に任せている。その結果、准将は責任を免れた・・・だけでなく少将に昇進している。レイディグ大佐は准将になった。 ペンタゴンから最も近くにあるアンドリュース空軍基地も事件の際に反応しなかったのだが、同基地の司令官だったデイビッド・ウェーリー准将は事件後に准将へ昇進、統合参謀本部の副議長だったリチャード・マイヤーは議長に昇格してイラクへの先制攻撃を指揮することになる。統合参謀本部ではイラクへの先制攻撃に反対する声が強かったのだが、政府は反対派をパージし、マイヤーを議長に据えたわけだ。 ペンタゴンを攻撃したのが旅客機でなかったとするならば、旅客機はどこへ消えたのだろうか? 1960年代の初め、CIAや軍の強硬派が練り上げていた「ノースウッズ作戦」の中にヒントはある。1963年までなら核戦争でソ連を圧倒できると考え、開戦の口実を作るために計画された「偽装テロ」がこの作戦。「爆弾テロ」のほか、最終的には「旅客機撃墜」を演出して戦争に突入するというシナリオになっていた。つまり、本物の旅客機にそっくりなクローン機を作り、クローン機に乗客を乗せて空港から飛び立ち、軍の基地から自動操縦の本物を離陸させ、途中で入れ替え、クローン機をキューバの近くで自爆させるというものだ。このシナリオは大韓航空007便の事件にも酷似している。
2009.09.09
このところ、第2次世界大戦が勃発する経緯をめぐり、ちょっとした騒動が起こっている。騒動の中心にいるのはポーランドだ。 1939年8月23日にドイツとソ連は不可侵条約を結び、9月1日にドイツ軍がポーランドに侵攻、3日にイギリスとフランスがドイツに対して宣戦布告して大戦は始まり、9月17日にソ連がポーランドに攻め込んだ。ポーランドはヒトラーとスターリンに蹂躙されたかわいそうな国だ、ということになっている。 この「定説」に「保守系」と言われるコラムニストのパット・ブキャナンが一石を投じた。ドイツがポーランドに攻め込んだのは、住民の95%をドイツ人が占めるダンチヒ(グダニスク)を占領しようとしただけであり、世界大戦を始める意志はなかったとコラムで主張したのだ。その結果、ブキャナンは多くの人から攻撃されている。 多くの学者やジャーナリストは、第2次世界大戦を「ファシズム」と「民主主義」の戦いだとする構図から出ようとはしない。全てヒトラーが悪いのだということにしておけば安全であり、事実を掘り起こすという危険な行為は避けてきた。これでは、別の立場から事実を無視してナチスを擁護してきた人々と大差がない。 独ソ不可侵条約を結んでドイツが戦争を始めた理由を、「挟み撃ちが怖かった」と説明する人もいる。後ろを安全にしておいて戦争を始めるというのだろうが、それならば、まず西側の国に攻め込んだのではないか。ダンチヒを占領すれば、戦闘行為は終了するつもりだったと考える方が自然だ。 ポーランドがフランスから割譲された「ポーランド回廊」の突端にダンチヒはある。この回廊がドイツ領を分断する形になっていたため、ドイツは返還を要求したのだが、ポーランドとしてはバルト海へ出るための重要な「回廊」であり、手放すわけにはいかなかった。 この領土問題に関する話し合いをポーランドは拒否していたのだが、その背後ではイギリスの影が見え隠れする。ポーランドは、ドイツが攻め込めばイギリスが助けると信じていたため、強気でいられたのだ。 ともかく、ドイツのポーランド侵攻、ドイツに対するイギリスとフランスの宣戦布告で大戦は始まったのだが、しばらくの間、実際の戦闘はほとんど起こらなかった。ドイツが北ヨーロッパや西ヨーロッパを攻撃するのは1940年の春であり、独ソ戦が始まるのは1941年6月のことだ。 ここで、ドイツを取り巻いていた環境を考えてみると、アメリカの巨大資本家はドイツとのビジネスに積極的で、多額の資金を流していた。そうしたルートの一つがジョージ・W・ブッシュ前大統領の祖母の父、ジョージ・ハーバート・ウォーカーだ。1933年にフランクリン・ルーズベルトがアメリカの大統領に就任した直後、ファシズム体制の樹立を目指すクーデターを計画したのも同じ巨大資本家たちだ。 大戦が始まると、ポーランドの亡命政権がロンドンに誕生するが、この勢力は反ソ連/反共産主義の色彩が濃かった。イギリスの首相チャーチルはドイツの降伏が視界に入るとソ連に対する侵攻作戦「アンシンカブル」を計画している。チャーチル首相にとって、第2次世界大戦はソ連との戦いという側面もあった。その道具としてドイツが操られたという見方もできる。 ポーランドの現政権はソ連をナチスと同列に置こうとしているが、これに対してロシア政府は機密文書を持ち出し、ポーランドはドイツがソ連に攻め込むときは妨害しないと確約していたと非難している。 ともかく、20世紀には封印された多くの事実が残されているのだが、そうした事実が少しずつ表面化してきている。そうした流れを押しとどめることは不可能だろう。
2009.09.03
日本の総選挙で民主党が圧勝、政権交代が確実になったのを受け、アメリカでは新政権を警戒する声が出てきたようだが、悪いことではない。こうした声が出てくるということは、自立した存在になりえると評価されたことを意味しているからだ。 戦後、日本のエリートはアメリカ政府に従うことで権力を維持、拡大してきた。1980年代以降、そうした傾向は強まり、自民党と公明党の連立政権になってから、政府の視界に自国の社会は入っていなかった。 ひたすらアメリカの権力者の顔色をうかがい、日本では大企業の利益だけを考えていた自公政権に庶民が見切りをつけるのは当然のことで、むしろ遅かった。それだけ日本の庶民は忍耐強い・・・というより、個人的な損得勘定から声を上げず、空気を読んでいた。そして、限界を突破してしまった。 自公政権の背後にいる権力者グループは、そうした庶民を軽蔑して傲慢になりすぎ、庶民の怒りを感じることができなかった。巨大企業の利益を代弁する日本経団連も民主党と対話する方針だというが、これも先見のなさを示している。自公政権が永遠に続くと思っていたのかもしれないが、「経営者」を名乗るなら、遙か前から民主党と対話しておくべきだった。 しかし、日本経団連が考えている「対話」は、社会的/経済的強者が富を総取りするシステムを維持するための「ロビー活動」でしかないようだ。「企業と消費者/生活者との共生」など財界が考えてこなかったことは事実が示している。 マスコミは「企業」という用語を簡単に使っているが、これに騙されてはいけない。自公政権は「巨大企業」を儲けさせるための政策、それも目前のことしか考えない政策をを次々と打ち出してきたのであり、中小企業は「派遣」など非正規雇用の労働者と同じように、簡単に切り捨てられる「都合の良い人々」にすぎない。巨大企業と中小企業を一緒くたにする議論はまやかしだ。 こうした「まやかしの議論」を撒き散らす上で重要な役割を果たしてきたのがマスコミだが、これは当然。テレビ局の社員は大変な高給取りだが、実際に現場で働いている制作会社の経営が苦しいことは有名な話であり、週刊誌も高給取りの社員と不安定な条件で働くフリーランスの記者という構造はある。「強者総取り」のシステムはマスコミの正社員にとって、これからも存続してもらいたいに違いない。 強者総取りの経済システムの基礎となる「経済理論」を考え出したのは、シカゴ大学の教授だったミルトン・フリードマン。まず軍事クーデターで誕生したチリの独裁政権が採用、フォークランド戦争で興奮状態のイギリスで導入され、アメリカや日本、そして中国でも採り入れられた。ソ連消滅後のロシアでも猛威をふるった。 この「新自由主義」、あるいは「市場原理主義」を日本に持ってきたのは中曽根康弘首相である。思想的に、中曽根は岸派の流れを汲む人物で、ふたりとも「道徳再武装運動」に関わっている。この団体はCIAとの関係が指摘されている。中曽根政権が誕生した際、「田中曽根」とマスコミは呼んだが、実際は「岸影」だった。 1970年代当時、アメリカの権力者が田中角栄を嫌っていたと言われている。フォード政権下のアメリカではデタント派がパージされ、日本では田中が排除されたわけだが、完全に排除することには失敗し、田中の腹心だった後藤田正晴が中曽根政権を監視することになる。こうした邪魔な存在も掃除して誕生したのが小泉純一郎内閣。勿論、小泉も岸派の流れを汲んでいる。 さて、排除された田中派の一部が民主党で重要なポストに就いている。田中角栄の娘も民主党に入った。これだけでもアメリカは神経質になって当然だろう。ただ、現在のアメリカを取り巻く状況はフォード政権の当時と違う。民主党政権の対応次第では、アメリカの民主化を支援することもできる。そうなれば、日本でも民主化が実現するかもしれない。
2009.09.03
総選挙で民主党が圧勝した。獲得した議席数は、民主党308、自民党119、公明党21、共産党9、社民党7、みんなの党5、国民新党3、新党日本1、新党大地1、無所属6で、全議席の約64%を民主党が占めた。3分の2に少し足りないところが面白い。 自民党が敗れた理由は、ハッキリしている。アメリカ(新保守)の暴力、財界のカネ、マスコミのプロパガンダ力を背景にして、社会的な強者が富を独占するシステムを強引に推進してきたことに対する怒りが数字になって表れたということだ。雇用関係でも商取引でも、適正な対価が支払われていれば、大儲けすることは困難であり、富を独占するシステムの基本には「不公正」がある。 社会は不公正なものであり、公正さを期待するべきでないと言い放つ人もいる。確かに現実はそうかもしれないが、不公正を肯定するシステムはすぐに行き詰まり、不満が膨らんで社会は不安定化する。犯罪が増え、暴動が起こっても不思議ではない。 かつて、中国の思想家、墨子はこんなことを言った:「乱の何によりて起こるかを察するに、相愛せざるに起こる」 したがって:「天下はかねて相愛すれば、すなわち治まり、こもごも相にくめば、すなわち乱る」 要するに、自分の利益しか考えないような考え方が支配する社会では、強者は弱者を支配し、多数派は少数派を迫害し、富裕層は貧困層を軽蔑し、地位の高い人間は庶民に対して傲慢になり、嘘が横行すると警鐘を鳴らしている。新自由主義が社会を不安化することは、紀元前に指摘されていたということだ。人間は全く進歩していない。 日本の過去を考えると、不公正の度が過ぎたときには一揆に発展している。明治維新の直後までは、そうした反骨精神が日本でも生きていた。例えば、一八八四年には秩父や北信濃の農民が蜂起して「皇居」を目指し、大宮まで攻め込んでいる。 当初の計画では群馬の農民も参加する予定だったが、途中で計画が当局へ漏れていることに気づき、秩父と北信濃だけで立ち上がったようだ。ヨーロッパの歴史を振り返ると、不公正な社会の行き着く先には革命があり、絞首台や断頭台があった。 今回、自民党が第一党の位置から転落した意味は重い。民主党に「元自民党議員」が多いことは事実だが、国民の多くが自民党という呪縛から解放され、「一線」を超えたことは間違いない。民主党に失望すれば自民党に帰るという意見もあるようだが、元のようにはならないだろう。 民主党が与党として、まず取り組むべきことは「情報公開」である。アメリカでは情報公開の歪みが問題になっているが、その原因は日本にある。日本関係の情報の公開が遅れているのだ。外交と財政の情報が明らかにされれば、日本は変わる。逆に、情報の開示が進まなければ、どのような「改革」が行われても意味はない。 1990年頃、新保守に心酔していたマスコミの記者は、官僚支配からの脱却で変わると力説していたが、情報の公開には消極的だった。情報が国民に公開されてしまえば、自分たちの「特権」、つまり権力者に情報源があるという立場が揺らいでしまうと考えていたようだ。 マスコミは政界、財界、官界を情報源にし、財界をスポンサーにして甘い汁を吸ってきた。したがって、政財官界を守ろうとする。もし、民主党が日本を少しでも民主化しようとしたならば、マスコミが攻撃を始めることになるだろう。そうなると、マスコミは奈落の底へ転げ落ちる。
2009.09.01
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