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パレスチナを「オブザーバー国家」として認める決議が11月29日、国連総会で採択された。結果は賛成138カ国、反対9カ国、棄権41カ国、欠席5カ国。イスラエルとアメリカが反対したことは言うまでもないが、それ以外にカナダ、チェコ、パナマ、そしてマーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオといった太平洋の島国も同調した。 イスラエルもアメリカも和平交渉はパレスチナとイスラエルが直接交渉するべきだという姿勢を示したようだが、イスラエルは真剣にパレスチナと交渉する意志はなく、過去に採択された国連の決議も尊重していない。そうしたイスラエルの姿勢をアメリカが守っているわけだが、両国の間にすきま風が吹き込んでいることも事実。 これに対し、賛成した国は次の通り: アフガニスタン、アルジェリア、アンゴラ、アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、バーレーン、バングラデシュ、ベラルーシ、ベルギー、ベリーズ、ベニン、ブータン、ボリビア、ボツワナ、ブラジル、ブルネイ、ブルキナファソ、ブルンジ、カンボジア、カボベルデ、中央アフリカ、チャド、チリ、中国、コモロ、コンゴ、コスタリカ、コートジュボアール、キューバ、キプロス、朝鮮、デンマーク、ジブチ、ドミニカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、エリトリア、エチオピア、フィンランド、フランス、ガボン、ガンビア、グルジア、ガーナ、ギリシャ、グレナダ、ギニア、ギニア・ビサウ、ガイアナ、ホンジュラス、アイスランド、インド、インドネシア、イラン、イラク、アイルランド、イタリア、ジャマイカ、日本、ヨルダン、カザフスタン、ケニヤ、クウェート、キリギスタン、ラオス、レバノン、レソト、リビア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、マレーシア、モルジブ、マリ、マルタ、モーリタニア、モーリシャス、メキシコ、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ナミビア、ネパール、ニュージーランド、ニカラグア、ニジェール、ナイジェリア、ノルウェー、オマーン、パキスタン、ペルー、フィリピン、ポルトガル、カタール、ロシア、セントキッツネビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディン、サントメ・プリンシペ、サウジアラビア、セネガル、セルビア、セーシェル、シエラレオネ、ソロモン諸島、ソマリア、南アフリカ、南スーダン、スペイン、スリランカ、スーダン、スリナム、スワジランド、スウェーデン、スイス、シリア、タジキスタン、タイ、東ティモール、トリニダードトバゴ、チュニジア、トルコ、トルクメニスタン、ツバル、ウガンダ、アラブ首長国連邦、タンザニア、ウルグアイ、ウズベキスタン、ベネズエラ、ベトナム、イエメン、ザンビア、そしてジンバブエ。 ちなみに、棄権は: アルバニア、アンドラ、オーストラリア、バハマ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、カメルーン、コロンビア、クロアチア、コンゴ、エストニア、フィジー、ドイツ、グアテマラ、ハイチ、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マラウィ、モナコ、モンゴル、モンテネグロ、オランダ、パプアニューギニア、パラグアイ、ポーランド、韓国、モルドバ、ルーマニア、ルワンダ、サモア、サンマリノ、シンガポール、スロバキア、スロベニア、マケドニア旧ユーゴスラビア、トーゴ、イギリス、そしてバヌアツ。 どのような決議が採択されても、あるいは採択されなくても、イスラエルはパレスチナと和平に関する交渉を行う意志はないわけで、今回の採択で状況が劇的に変化する可能性は小さい。が、イスラエルが追い詰められつつあることは確かだ。 現在のイスラエルで主導権を握っている勢力の源流はゼエブ・ウラジミール・ジャボチンスキーの「修正主義シオニスト世界連合」。アメリカで1970年代に台頭したネオコン(新保守)も同じである。彼らが1996年に書いた「決別」では、冒頭、労働シオニストの排除を謳っている。 領土に関しては「大イスラエル」、つまり南はナイル川から北はユーフラテス川まで、西は地中海から東はヨルダン川までをイスラエルの領土にするべきだと考えている、つまりパレスチナ人はガザやヨルダン川西岸から追い出すつもりだ。「違法入植」も計画に含まれている。追放先として彼らが昔から想定しているのはヨルダン。 1973年の第4次中東戦争で追い詰められたイスラエル政府は、劣勢を挽回するために核兵器を使用する準備を決めている。これはソ連の警告で実行されなかったのだが、次の危機でどのような行動に出るか・・・。現在、中東/北アフリカで最も危険な存在はイスラエルである。
2012.11.30
世界の人口はすでに70億人を超え、2050年には75億人から105億人に増えると予想されているらしい。社会で貧困が広がり、犯罪が増える理由を人口の増加に求めたのはトーマス・マルサスという「経済学者」。1798年に「人口論」なる本を出してこの主張を展開している。人口は「性欲」によって幾何級数的に増えるが、食糧の生産は算術級数的にしか増えないという発想らしい。 この議論が破綻していることは言うまでもない。人口が幾何級数的に増えるということはなく、すでに日本やヨーロッパでは人口の減少が問題になっている。世界全体で見ると食糧が不足しているということもない。問題は食糧の偏在と伝統的な農業の破壊にある。東電の福島第一原発の事故で大量の放射性物質が海洋へ垂れ流したことも将来的には大きな影響を与えることになるだろう。 農業破壊の主な原因は欧米流の「近代農業」が押しつけられたことにある。伝統的な農業の仕組みが破壊され、自給自足が困難になった国は多い。最近ではモンサントのようなアグリ・ビジネスが欧米の農民をも激しく攻撃している。アグリビジネスと農民との戦いで最大のテーマはGM(遺伝子組替え)作物だ。 放射性物質と同じように、GM作物が人類の存続を危うくする可能性があることを示す研究結果もある。本ブログではすでに書いたことだが、遺伝子組み換えトウモロコシを与えたネズミに腫瘍ができ、臓器にもダメージが見られたとフランスのカーン大学の研究者が今年の9月に発表している。 フランスの「公式見解」は「データが不十分」ということだが、安全性が確認されたわけではない。実際、少し前までフランス政府はGM作物に否定的な姿勢を示していた。こうしたフランス側の姿勢をアメリカのクレイグ・ステイプルトン大使(当時)は懸念、長期にわたる「報復」が必要だと2007年12月に政府へ提案していることをウィキリークスが公表した文書が示している。 人口の増加で食糧が不足し、貧困が進んだという事実はない。世界各地で農業を破壊、その一方で地下水を汲み上げて農作物を育てるという不自然なことを行ってきたのがアメリカ政府。その政府や黒幕の巨大資本が作り上げた経済システムによって食糧を含む富が偏在、飢餓や貧困が深刻化するのである。 人口の増加と飢餓との関係を考えるとしても、全ての人間を同一に扱うことは間違っている。現実問題として、アメリカ人をはじめ、莫大な量の食糧を浪費している人がいる一方、生存限界ギリギリで生きている人もいるからだ。つまり、食糧問題を人の「数」で議論することは根本的に間違っている。「アメリカ的な生活をする人」を減らすことから始めなくてはならない。別に、人口を減らさなくても、生活様式を変えれば良い。 現在、不公正な政治経済システムが貧困を拡大させている。が、富の独占を目指す富裕層はそうしたことを認めたくない。そこで登場するのがまたもやマルサス。マルサスの理論に基づいて1834年にイギリスで制定された救貧法では、貧困を個人の責任だとし、救済は労働者の処遇以下にすることが決められている。小泉純一郎を始め、少なからぬ日本の政治家も同じようなことを主張してきた。要するに、「新自由主義」の考え方。 人口が増加してきた過去1万年から5000年前から人間のDNAに病気の原因になる変種が急増しているとアメリカのNIH(国立保健研究所)などのグループは主張しているようだが、どのDNAが病気の原因になるかを理解する能力が現在の人間にはない。所詮「ヒトの浅知恵」だ。 ただ、こうした考え方を支える思想が存在していることも事実。1922年に創設されたAES(アメリカ優生学協会)は、そうした思想を体現した存在。1930年頃になると、J・P・モルガン・ジュニアをはじめとする世界の富豪の多くはAESのメンバーだったと言われている。AESのスポンサーのひとり、ウィクリフ・ドレイパーは1935年にナチ主催の集まりに参加したような人物で、人種差別主義者だった。勿論、富裕層は自分たちが優れているという妄想を抱いているだけ。 同じ考え方をする人は日本にもいる。例えば、「いずれは就学時に遺伝子検査を行い、それぞれの子供の遺伝情報に見合った教育をしていく形になっていきますよ。」と教育改革国民会議で議長を務めた江崎玲於奈は語っている。(斎藤貴男著『機会不平等』) 優生学的な思想は第2次世界大戦後も生き続け、1965年にはウィリアム・ドレイパーが人口危機委員会(後に国際人口行動へ改名)を創設している。この人物はジョージ・H・W・ブッシュ一家と親しく、ジャパン・ロビー人脈のひとりとしても知られている。人口を減らすことを目標にしているのだろうが、エネルギーや食糧の浪費をやめるという発想は感じられない。
2012.11.29
大学の就職内定率が10月1日の時点で63%だと文部科学省が発表した。厚生労働省の発表では、就職を希望する高校生の就職内定率は41%だという。いずれも相当の厚化粧をしているのだろうが、それでもきわめて悪い数字だ。 大企業でなく中小企業に就職すれば良いと言う人もいるようだが、1980年以来、特に1990年代から日本では中小企業が潰されてきた。これは、アメリカの命令に基づく「国策」だ。そして現在、大企業も潰れようとしている。 優秀な下請け企業をこき使い、搾り取ることで無能な大企業が儲けていたのが1980年代まで。いわば「生かさぬよう殺さぬよう」だ。ここに日本の大企業が儲ける秘密があると考えたアメリカは「ケイレツ」を批判、経済の「構造」を問題にしてくる。そして1990年代の銀行による「貸しはがし」で優秀な中小企業が潰されていった。 大企業の内部で技術が軽視されるのは昔からで、営業の時代はまだしも、今は財務の時代。つまり帳簿上のカネ勘定しか能がない輩が会社を経営しているのが実態。熟練労働者が減少しているだけでなく、エンジニアや研究者も十分なスタッフがいないために心身が疲弊してリタイアする人が多いという。 通常、人が減れば補充するのだが、補充しないのが今の日本企業。生産現場は崩壊寸前、あるいは崩壊しはじめていると様々な企業のエンジニアや研究者が随分前から語っている。 しかも、日本は教育を飼育と区別せず、予算を削って知的水準を「国策」として下げている。当然、学生の質は低下する。そこで経営者はインドや中国での採用を増やそうとしているのだという。ほかの国の教育にただ乗りしようということなのだろう。 が、そうした国の学生を甘く見てはいけない。必要な技術、ノウハウを獲得したなら、条件の良い会社へ移っていくだろう。日本企業が切り捨てた職人、エンジニア、研究者を好条件で雇う企業もあるようだ。 日本の経営者が崇拝してきたアメリカでも公教育が崩壊、企業の技術力は低下しているが、ソフト面は今のところ、高い水準を維持しているようだ。その典型的な企業がコンピュータ会社のアップルだろう。が、日本にはソフトの技術もない。研究開発を軽視してきたからだ。 研究開発にも投資していると肩書きのある人から聞かされ、信じている人もいるようだが、実態は違う。日本人は「応用」や「改良」が得意だという話もあるが、これは商品化の確立が高くなければカネを出してもらえないからにすぎない。 日本の政策、特に1990年代以降、大企業は労働者や下請け企業(実質的に労働者だが)を使い捨てにしてきた。政治家や官僚はそうした仕組みを作り上げ、マスコミは肯定している。彼らのやっていること見ていると、庶民の寿命は40歳でかまわないと思っているような気がする。福島第一原発の事故に対する政府や東電、そして財界の言動を見ても庶民の命を何とも思っていない。そうした意識が就職内定率にも表れているのだろう。
2012.11.27
日米欧は深刻な不況に陥っている。そうした中、各国政府は金融機関を救済する一方、庶民から搾り取れるだけ搾り取ろうとしてるのだが、こうした政策では不況から脱出できない。こうした意見を著名な経済学者たちが昨年、バラク・オバマ米大統領に対して説明したという。 その経済学者たちとは、ビル・クリントン政権の時代に連邦準備制度理事会の副議長を務め、現在はプリンストン大学教授のアラン・ブラインダー、2001年にノーベル経済学賞を受賞したニューヨーク大学教授のマイケル・スペンス、IMFや連邦準備制度理事会を経てハーバード大学教授になったケネス・ロゴフを含む7名で、その多くは庶民が抱える債務を軽減することが必要だと主張したようだ。 強者総取りの新自由主義経済の下、巨大企業の経営者や投資家は賃金を下げ、労働条件を悪化させるなどして「コスト」をカット、その一方で需要を喚起するために借金させたのである。借金で不動産を買わせ、不動産相場を引き上げて担保価値を膨らませ、新たに借金させるという一種のマルチ商法、つまり詐欺的な政策を推進したのである。サブプライム・ローン危機とは経済問題ではなく、犯罪の被害と考えるべきだろう。その被害を軽減すべきだとしたのである。 不動産購入による負債で苦しむ庶民を助けるべきだとする経済学者の提言をオバマ政権のティモシー・ガイトナー財務長官は拒否したが、巨大金融機関の救済には積極的。マルチ商法でカモになった人びとに冷淡な姿勢を見せる一方、マルチ商法の仕掛け人には「温かい心」で接しているわけだ。さすが、キッシンジャー・アソシエイツの出身。もっとも、議会にはもっと酷い連中がうじゃうじゃいるが。 サブプライム・ローン不動産投資の売買ではSEC(証券取引委員会)もゴールドマン・サックスと同行の重役だったフェイビリス・トゥーレには証券詐欺の疑いがあり、起訴するべきだと判断していた。トゥーレは巨大ヘッジファンドを動かしていたポールソン社と共謀し、高リスクのローンを組み込んだ商品を作り上げ、顧客へ正しい情報を提供せずに販売、10億ドル以上の損害を与えたというのである。 アメリカ上院の調査小委員会も司法省に対し、ゴールドマン・サックスの取り引きについて調べるように求めていた。2008年に始まった金融危機の一因になった不動産投資を主導したのはゴールドマン・サックスであり、ゴールドマン・サックスの行ったことは詐欺的で反道徳的だというわけだ。 ところが、司法省はゴールドマン・サックスや同行の社員を起訴しないと今年8月に発表している。司法省の決定を受け、法律が貧弱なのか捜査機関が貧弱だと小委員会のカール・レビン委員長が批判したのも当然だ。 不公正な仕組みで富が偏り、一握りの富豪と多くの貧困層を生み出せば経済が破綻することはカール・マルクスでなくてもわかること。一部に滞留した資金が投機市場へ流れて「バルブ」が発生することも歴史が教えてくれる。そのバブルが早晩、破裂することも必然だ。 貧困層の怒りを革命に結びつけたのはマルクスだが、これをファシズムで押さえ込もうとしたのが欧米の資本家。アドルフ・ヒトラーのグループを支援していたのはドイツの資本家だけではない。ウォール街から巨額の資金が流れていたことが今では明らかになっている。 こうした危機を大企業への規制強化と労働条件の改善で乗り切ろうとしたのがフランクリン・ルーズベルトを中心とするニュー・ディーラー。1932年の大統領選挙でこのルーズベルトが当選、慌てたのがハーバート・フーバーを支援していたJPモルガンを中心とする勢力だった。このグループが反ルーズベルトのクーデターを計画、ファシズム体制の樹立を目指した。この計画は議会証言で暴露され、失敗に終わる。 議会で証言したのはふたり。名誉勲章を二度授与された伝説的な軍人、スメドリー・バトラー少将とジャーナリストのポール・フレンチだ。バトラー少将はクーデター派に対してカウンター・クーデターを宣言していたという。当然、この証言は正式な記録として残っているのだが、学者も記者も触れる人はほとんどいない。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) このJPモルガンが関東大震災以降の日本に大きな影響力を持っていたことも歴史的な事実である。同行は日本の電力業界を中心に多額の資金を投入していた。つまり、日本が破綻してもらっては困る。カネがないなら、どこからか盗んでこい、と犯罪組織なら脅すだろう。その気になったところで別の人間が現れ、強盗は良くないと言いだしたらどういうことになるのか・・・。 それはともかく、1920年代から30年代にかけて、富の集中、投機市場の肥大化、バブルの崩壊、深刻な不況ということが起こった。似た現象が現在、世界規模で起こっているのだが、当時にはなかった仕組みが今はある。ロンドンのシティ(金融街)を中心にするオフショア市場の近代的なネットワークである。このネットワークを使い、巨大多国籍企業や富豪は資産を隠し、徴税を回避している。犯罪組織が恩恵を受けていることも本ブログでは書いたことがある。 表の経済で不況が深刻化している一方、地下経済が膨らんでいるのだが、その地下経済を支える地下銀行の仕組みも整備されてきた。監査法人の不正も露見している。巨大企業の実態を知るには「裏帳簿」を調べなければならないのだが、帳簿の裏と表の差が大きくなっているのが現在の状況。経済を健全化するためには、こうした闇経済にメスを入れる必要がある。ちなみに、闇経済の拠点がロンドンである以上、その門番はイギリスの首相だと言える。
2012.11.26
東電福島第一原発の「過酷事故」で環境中には大量の放射性物質が放出された。その影響で癌などの発生が「有意に増える可能性は低い」とWHO(世界保健機関)が結論づけたと朝日新聞が大々的に報道している。総選挙を控え、原発推進派の候補にとってはありがたい報道かもしれないが、その信憑性には重大な疑問がある。 放射線の問題に関するWHOの報告とは、IAEA(国際原子力機関)の報告にほかならない。言うまでもなく、IAEAは原子力を推進することを目的にした組織で、核ビジネスの広報担当とも言える。 実は、1959年にWHOとIAEAはある合意文書に調印している。その第1条第3項の規定により、一方の機関が重大な関心を持っている、あるいは持つであろうテーマに関するプログラムや活動の開始をもうひとつの機関が考えている場合、プログラムや活動を考えている機関は、もうひとつの機関に対し、問題を調整するために相談しなければならない。つまりIAEAの許可がなければ、WHOは放射線の健康被害に関して発表することはできない。 すでに多くの人や団体がこの合意を批判、福島第一原発の事故後にも指摘されていた。この合意によって、チェルノブイリ原発の事故、あるいは広島や長崎に投下された原爆の被害の実態が見えなくなっていることは間違いない。 今回の報告書でWHOは「原爆やチェルノブイリ原発事故などの知見を参考に」したというが、その「知見」がインチキなのだから、福島第一原発事故の影響に関する分析や予測もインチキである。放射線の健康被害を取り上げようという記者ならば、当然、こうした事実は知っているはずだ。 事故前には原発の「安全神話」を日本中に広めていたが、事故後もマスコミを含む原発推進派は嘘をつきつづけてきた。事故が起こった直後、状況を知っていた原子力の専門家なら、メルトダウンになる可能性が高いことをわかっていて、菅直人首相(当時)も東京都民を避難させなければならないかもしてないと考え、10年から20年の間は原発近くの住民が自宅に戻ることはできないとも語っていたというが、そんなことを言い始めたのは時間が経ってからのこと。 昨年12月に毎日新聞が伝えた記事によると、「東京電力福島第1原発事故から2週間後の3月25日、菅直人前首相の指示で、近藤駿介内閣府原子力委員長が『最悪シナリオ』を作成し、菅氏に提出」、「さらなる水素爆発や使用済み核燃料プールの燃料溶融が起きた場合、原発から半径170キロ圏内が旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の強制移住地域の汚染レベルにな」り、「東京都のほぼ全域や横浜市まで含めた同(半径=引用者注)250キロの範囲が、避難が必要な程度に汚染されると推定」していたという。年明け後、この報道は細野豪志原発担当相によって確認され、菅前首相も同じ話をロイターの取材で話している。 原発の危機的な状況を隠し、放射性物質の汚染の状態を知らせずに住民を必要以上に被曝させ、今でも核物質は不安定な状態が続いているにもかかわらず、事故が収束したかのように原発推進派は宣伝している。今回の報告書もそうしたプロパガンダの一環と言えるだろう。 朝日新聞の記事によると、「福島県の一部地域の乳児では、事故後15年間で甲状腺がんや白血病が増える可能性があると予測した」としている。 甲状腺癌や白血病は比較的に早い段階で症状が現れるのだが、20年、30年の期間で考えると、ほかの癌や心臓病、脳障害、死産、先天性障害などが増え、肺、眼内レンズ、皮膚などにも影響が現れ、免疫機能が低下するという調査結果が明らかにされている。 記事(WHO)は予測する時期を「15年」後としている。被害の急増が予想される時期より短くしているのだ。責任回避のための逃げ道を作っているつもりなのだろう。悪質である。 チェルノブイリ原発事故の場合も情報隠しが組織的に展開された。住民を診察した医師のカルテが回収され、闇に葬り去られたことも明らかになっているが、断片的に情報は漏れている。例えば、京都大学原子炉実験所の今中哲二助教の「チェルノブイリ原発事故:何が起きたのか」(原子力資料情報室 第57回公開研究会)によると、原発職員や消防士だけでなく、周辺住民の間で多数の急性障害が認められていたことを示す文書が見つかっている。共産党中央委員会政治局の「事故対策班」の議事録がその文書で、事故から間もない1986年5月12日には、入院中1万0198人、345人に放射線障害の症状、うち子ども38人」という事実も記録されている。 ロシア科学アカデミー評議員のアレクセイ・V・ヤブロコフたちのグループがまとめた報告書『チェルノブイリ:大災害の人や環境に対する重大な影響』が2009年にニューヨーク科学アカデミーから出版されているが、それによると、事故が原因で死んだ人や生まれられなかった胎児は98万5000人に達するとしている。ただ、この数値は1986年から2004年までのデータに基づくものにすぎない。 チェルノブイリ原発事故の生態系への深刻な影響を報告しているのはヤブロコフたちだけではない。事故から26年。被曝の影響が出てくると予測されていた時期に入っている。
2012.11.25
中東/北アフリカでアメリカ政府は危ない橋を渡っている。少なくとも庶民のレベルでは反米感情の強い地域だが、ジョージ・W・ブッシュ政権の軍事侵攻は人びとの怒りを極限まで高めた。いつ怒りが爆発しても不思議ではない。 そうした中、ガザに対する攻撃をイスラエル軍は開始、地上軍をガザに侵攻させたなら中東の広い地域で庶民が立ち上がり、親米体制が倒され、戦火が中東/北アフリカの広い地域に広がる可能性もあった。 そこでイスラエル地上軍のガザ侵攻を止めさせる必要がアメリカ政府にはあったのだが、その代償としてバラク・オバマ大統領はアメリカ軍を来週、シナイ半島に派遣し、ガザへの物資搬入を阻止すると約束したとする話が流れている。さらに、スエズ運河沿いに電子的なフェンスを設置するという情報もある。 軍隊の派遣やフェンスの設置はイスラエルによるガザに対する兵糧攻めの支援。兵糧攻めは軍事作戦の中でも残虐な戦術のひとつと言われているわけで、本当にアメリカ政府がこうしたことをするならば、反米感情はさらに高まり、エジプト政府の立場も悪くなる。モハメド・モルシ大統領が「独裁宣言」をしたくなる気持ちがわからないでもない。 それに対し、イランはハマスに長距離ミサイル「ファジル5」に関する技術情報を提供したという話も伝えられている。ミサイルそのものを提供することは難しいが、ミサイルを製造する技術なら提供できるということのようだ。このミサイルはテルアビブを攻撃することもできる。 ハマスはムスリム同胞団を母体にしている組織で、イランと友好的な関係にあるとは言えないだろうが、イスラエルがイランを攻撃した場合の反撃拠点としてガザを見ているのかもしれない。 十字軍以来、ヨーロッパのキリスト教世界は中東/北アフリカを侵略、略奪と殺戮を繰り返してきた。そうした歴史の中でアメリカが特に憎悪されている理由は、言うまでもなく、イスラエルにある。パレスチナ人に対する兵糧攻め、軍事侵攻による破壊と殺戮、そして国連を無視した占領、こうした行為をアメリカが擁護してきたことに対する怒りだ。 アメリカ政府が形振り構わずイスラエルを守るようになったのは、1967年の第3次中東戦争以降のこと。この戦争でアメリカの情報収集船「リバティ号」がイスラエル軍に攻撃され、乗組員34名が死亡、171名が負傷するという出来事があった。本来ならアメリカ政府はイスラエルを強く批判すべきだのだが、いまだに抗議していない。第3次中東戦争はイスラエル軍による奇襲攻撃で始まったが、この戦争にアメリカ政府の一部が協力している疑いは消えていない。 とりあえず、ハマスとイスラエルとの間で休戦が合意されたというが、残念ながら、平和が訪れることは期待できない。前にも書いたが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は父親のベンシオンから思想を受け継いでいる。このベンシオンはゼエブ・ウラジミール・ジャボチンスキーの秘書を務めたほどの側近。南はナイル川から北はユーフラテス川まで、西は地中海から東はヨルダン川までをイスラエルの領土にするべきだと考えていた。ベンヤミンも同じ考え方をしている可能性は高い。
2012.11.23
野田佳彦首相はTPP(環太平洋パートナーシップ)協定を死に物狂いで推進しようとしている。アメリカの巨大多国籍企業を儲けさせる仕組みにすぎないということで、日本でも多くの人が反対しているのだが、支配層は「賛成」の大合唱。その意向を受けてマスコミも熱心に宣伝してきた。 民主党にしろ、自民党にしろ、内部に反対意見を抱えているが、民主党は野田首相が議員に強要、自民党も「国益が守られれば交渉」すると矛盾したことを言っている。維新の会も「原則的に賛成」だとしている。要するに、マスコミが大きく取り上げる政党は賛成に軸が移動している。 TPPはアメリカの多国籍企業を儲けさせることが目的だが、そのアメリカでも反対の声が挙がっている。まず批判されているのは交渉の秘密性。交渉内容を知っているのは多国籍企業の幹部だけで、庶民は漏れ出てくる情報から知るだけ。どうやら、通常の経済活動、自然環境、人間の健康、労働者、消費者などを守るための規制が無力化する可能性が高い。 ところで、最近、アメリカの支配層の中に、露骨なカネ儲けの亡者が現れた。支配層の本音をあからさまに主張しているのだ。その代表的な存在が石油業界の大物、チャールズとデイビッドのコーク兄弟。環境規制に反対して気象学者を敵視、経済面では富裕層への税率を徹底的に下げ、社会保障は最低限のとどめるべきだとしている。TPPは、こうした富裕層の願望を実現する道具として使われるだろう。 TPPには、行政が環境破壊や健康被害を守ることを許さない条項も入れられそうだ。それがISDS(国家投資家紛争処理)条項。オーストラリア政府が交渉の中でこの条項を協定に入れることを拒否しているようだが、当然だろう。 本ブログでも何度か書いたことだが、現在、オフショア市場/タックス・ヘイブンの無法ぶりが問題になっている。特に、1970年代に整備されたロンドンを中心とするネットワークが批判の対象だ。TPPはこうした金融取引の規制を拒否するだろう。 この仕組みを使って多国籍企業や富裕層は資産を隠し、課税を免れている。アメリカやイギリスはターゲット国の富を搾り取るため、王制をでっち上げたり、軍事独裁者を作り上げてきた。そうした人びとが支配する国に融資した資金はオフショア市場にある独裁者の個人口座へ流れていく。つまり、「西側」の金融機関に資金は還流する。あとは独裁者に支配されている人びとが借金を返済していくわけだ。勿論、麻薬業者をはじめとする犯罪組織も、こうしたネットワークの上得意である。 ベトナム戦争にしろ、ニカラグアの反革命ゲリラ支援にしろ、アフガニスタンにおけるソ連との戦闘にしろ、あるいはコソボ独立にしろ、CIAは麻薬業者と手を組んできた。メキシコも長い間、麻薬業者に支配されていたのだが、この支配グループがNAFTA(北米貿易協定)を支持していたことから、アメリカ政府は黙認してきた。 NAFTAのおかげで麻薬の密輸やマネー・ロンダリングが容易になったようだが、2006年にはメキシコで麻薬資金のロンダリングを金融機関が行っている実態の一部が明るみに出ている。 UNODC(国連薬物犯罪事務所)によると、2008年における麻薬取引の利益、3520億ドルの大半がオフショア市場を経由して金融システムの中に流れ込み、その重要な一部を占めるようになっている。2009年に犯罪組織がロンダリングした資金は1兆6000億ドルに達し、その5分の1は麻薬取引だという。 TPPは多国籍企業や富豪だけでなく、犯罪者の利益にもなりそうだ。3者とも似たようなものかもしれないが。
2012.11.21
日本を東アジアで孤立化させることはアメリカ支配層の基本的な姿勢だが、似たようなことが中東でも起こっている。違法入植や周辺国への軍事侵攻などでイスラエルが批判されるとアメリカ政府はイスラエルを必死に擁護、中東/北アフリカでは反米感情が高まって孤立するという展開だ。中東/北アフリカでアメリカがBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)などの国々に押されている大きな理由のひとつだろう。 ハリー・トルーマン大統領(1945年から53年)はイスラエルの建国とパレスチナ人の追放に賛成しているが、全てのアメリカ大統領が「親イスラエル」というわけではない。ジョン・F・ケネディ大統領(1961年から63年)はイスラエルの核兵器開発に厳しい姿勢で臨み、ジミー・カーター大統領(1977年から81年)はイスラム諸国に寛容だということでイスラエル政府やアメリカの親イスラエル派から激しく攻撃されて再選されなかった。 1967年までイスラエルを支えていたのはフランス。イスラエルの核兵器開発もこの時期までフランスが協力している。両国の関係が揺らぐことになったのは、第3次中東戦争だ。1967年6月にイスラエル軍はエジプトとシリアを空爆、これを切っ掛けにして戦争が始まり、エルサレム、ガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸、ゴラン高原などを占領している。 開戦から3日後、アメリカの情報収集船「リバティ号」がイスラエル軍から攻撃されている。かろうじて沈没は免れたものの、乗組員34名が死亡、171名が負傷したという。リバティ号の通信兵は寄せ集めの装置で第6艦隊に遭難信号を発信、アメリカ軍派緊急体制に入っている。 イスラエル側は例によって「誤爆」だと主張、何とリンドン・ジョンソン政権はこの弁明を受け入れてしまった。攻撃の前、イスラエル軍はリバティ号の上空に何度も偵察機を飛ばし、アメリカ軍の艦船だということは確認済みだったはず。アメリカの船だと知った上での攻撃だったことは間違いない。 ただ、アメリカ政府は状況を把握できていなかった可能性がある。ソ連軍がリバティ号を攻撃したと思ったと後にロバート・マクナマラ国防長官(当時)は語っている。どこかで情報が止まったのかもしれない。 しかも第6艦隊のウイリアム・マーティン司令官は開戦前、6月にソ連海軍が脅威だと発言していた。リバティ号からの報告がなければ、アメリカとソ連との間で軍事的な緊張が高まっていた可能性がある。 この当時、アメリカの軍や情報機関の内部にはソ連に対する先制核攻撃を望む人たちが少なくなかった。第2次世界大戦が終わって3年後にはソ連への核攻撃計画を統合参謀本部は承認、1949年に出された報告書ではソ連の標的に70個の原爆を落とすことになっていた。 ジェームズ・ガルブレイスによると、ドワイト・アイゼンハワー大統領(1953年から61年)の時代、1957年にアメリカ軍はソ連に対する先制核攻撃計画を準備、63年の後半には実行に移す計画になっていたという。その背景では、大陸間弾道ミサイルでアメリカはソ連を圧倒しているという判断があったようだ。つまり、先制攻撃で圧勝できると信じていた。 こうした動きをソ連も察知していた可能性が高い。大陸間弾道ミサイルの撃ち合いでは勝てないソ連としては、中距離ミサイルで対抗するしかない。中距離ミサイルでアメリカ本土を攻撃できる場所は限られるが、そのひとつがキューバ。アメリカがキューバ侵攻を試み、ソ連がキューバにミサイルを持ち込んだのは、こうしたアメリカの先制核攻撃計画があったからだと理解するのが自然だ。勿論、1960年の日米安保の改定にもこうした核戦争を睨んだ動きが影響しているはず。 この時期、アメリカの好戦派はキューバを装って破壊活動を行うというノースウッズ作戦を作成している。アメリカ国内で爆破工作を繰り返し、最後は無人の旅客機をキューバ領の近くで自爆させ、撃墜されたと非難、報復攻撃するというシナリオだった。 ところが、ケネディ大統領はソ連との戦争を拒否、1963年6月にケネディ大統領はアメリカン大学の卒業式で「平和の戦略」と呼ばれる演説を行い、ソ連との平和共存を訴えている。ケネディ大統領が殺されるのは、その年の11月だ。 ケネディ大統領が暗殺された直後、CIAはソ連やキューバが暗殺の黒幕だという話を流したが、FBIに嘘を暴露され、開戦には至らなかった。それでも好戦派が消えたわけではなく、1967年にアメリカとソ連との間で軍事的な緊張が高まったなら、戦争になっても不思議ではなかった。ベトナムでは通常兵器で苦戦していたが、核兵器なら勝てるという妄想を抱いていたかもしれない。 第3次中東戦争でイスラエルとフランスとの関係にヒビが入るが、その一方でアメリカとの関係は緊密になる。リバティ号の一件でアメリカ軍の内部には反イスラエル感情が高まったようだが、上層部は違ったようだ。 ベトナム戦争が泥沼化する中、アメリカのキリスト教系カルト(原理主義者、聖書根本主義者、シアコン)は新たな「神の軍隊」を第三次中東戦争で圧勝したイスラエル軍に見いだし、ネオコン(新保守、親イスラエル派)と結びついていった。この2勢力によって作り上げられたのがジョージ・W・ブッシュ政権(2001年から09年)だ。 少なくとも1990年代から日本はネオコンとシアコンの強い影響下にある。ビル・クリントン大統領(1993年から2001年)に対し、ネオコンやシアコンを含む好戦派は偽情報に基づいて中傷攻撃を繰り広げたが、この時も日本の支配層は好戦派の尻馬に乗っていた。小泉純一郎は勿論、前原誠司、石原慎太郎、安倍晋三などもネオコン/シアコンの影響を強く受けている。
2012.11.20
ハマスの軍事部門を統括していたアハマド・アル・ジャバリ参謀長を14日に暗殺したのに続いてイスラエル軍はガザを激しく攻撃、多くの市民が犠牲になっている。そうした中、各国のメディアが拠点として利用している地域が攻撃された。アメリカ軍にしろ、イスラエル軍にしろ、反シリア政府軍にしろ、メディアは目障りなのだろう。 ところで、イスラエル軍のガザ攻撃をヨルダンの反体制デモと結びつける見方がある。14日にヨルダンの首都アンマンではガソリン価格などの値上げに反発する人びとがデモを行い、その際に国王の退位や王制の打倒を訴えるスローガンが聞かれたという。デモに参加した人の数は数百とも数千とも言われている。 本来なら、ヨルダンが経済的に苦しくなったならサウジアラビアが支援するのだが、今回はそうしたことがないようだ。しかも、抗議活動にはサウジアラビアや現在のエジプト政府などと関係の深いムスリム同胞団も参加しているという。ムスリム同胞団は「運動」であって組織ではないというが、それにしても体制の打倒を口にするデモ隊にムスリム同胞団が加わったことは興味深い。 昔から、イスラエルにはヨルダンをパレスチナ国家にすれば良いという考え方がある。ガザやヨルダン川西岸に住むパレスチナ人をヨルダンへ移住させようということだ。ウラジミール・ジャボチンスキーの秘書の息子、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「大イスラエル」を夢見ている可能性が高く、パレスチナ人はヨルダンへ追放するつもりなのかもしれない。 こう考えると、サウジアラビアがヨルダンに冷淡な姿勢を見せ、ムスリム同胞団が反ヨルダン国王のデモに参加している理由も説明できる。 もっとも、この推測が正しいとしてもヨルダン国王はこの計画に抵抗するであろうし、その前に行われるパレスチナ人虐殺に対する中東や北アフリカにおける怒りは無視できない。 すでに、エジプトから約400名の活動家がガザへ「連帯」のために入ったとも伝えられている。ガザ入りをエジプトの当局も認めたということだ。状況が流動的になっている現在、計算通りに動く可能性はむしろ小さいだろう。
2012.11.19
ベンヤミン・ネタニヤフ首相を中心とするイスラエルの好戦派が暴走、サウジアラビアやカタールをスポンサーとするイスラム武装勢力と共鳴し合い、中東からアフリカにかけての地域で軍事的な緊張が高まっている。イスラエルでは予備役の兵士7万5000人を招集する準備を始めたともいう。 ガザを攻撃している理由として、シリアやイランに対する軍事行動に消極的な姿勢を見せているバラク・オバマ米大統領に対するネタニヤフ首相からの「メッセージ」だという見方もある。 ところで、シリアやイランに対する攻撃的な姿勢を見せている勢力には、イスラエル/ネオコンのほか、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタールなどが含まれる。ハマスの母体はムスリム同胞団であり、サウジアラビアとは緊密な関係にある。この構図の矛盾がガザで噴出しているのか、あるいは別の背景があるのか、現段階では何とも言えない。 すでにゴラン高原では、シリアとイスラエルとの間で軍事的な緊張は高まっていた。この地域で軍事的な緊張を高めるべきだと提案していたのがアメリカのブルッキングス研究所だ。 この研究所が今年3月に発表した報告書には、イスラエルがシリア南部のゴラン高原近くに軍隊を移動させ、トルコがシリア北部の国境近くへ軍隊を動かして攻撃を臭わせてシリア政府を揺さぶるべきだと提案している。そして9月、イスラエルはゴラン高原で軍事演習を行った。 本ブログでは何度も書いていることだが、ネオコン(アメリカの親イスラエル派)がシリアを含む国々への攻撃を考え始めたのは、遅くとも1991年。2001年9月11日に世界貿易センターや国防総省の本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されて間もない段階でイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンに対する先制攻撃を決めていた。 このネオコンと密接な関係にあるネヤニヤフの思想は父親のベンシオン・ネタニヤフから受け継いだと言われている。この人物はポーランド生まれで、1920年、10歳の時にパレスチナへ移住、44年に結婚してヨナタン、ベンヤミン、そしてイッドという3人の子どもが生まれた。 1979年7月、エルサレムで「国際テロリズム」に関する会議が開かれ、アメリカとイスラエルの情報関係者が集まった。この会議を主催するために「ジョナサン研究所」が設立されているが、この名前は、イスラエル軍がウガンダのエンテベを攻撃した際に戦死したヨナタン(ジョナサン)の名前から採られている。 この会議へアメリカ側から参加したのはジョージ・H・W・ブッシュのほか、ネオコンの大物として知られているリチャード・パイプスも含まれていた。パイプスはブッシュ長官時代、ソ連の脅威を煽る目的でCIAの内部で活動していた「Bチーム」を率いていた。エルサレムでの会議では「国際テロリズム」の黒幕はソ連だと主張している。つまり、彼らにとってソ連攻撃は「テロとの戦争」という位置づけだった。勿論、ソ連が消滅しても「テロ」はなくなっていない。 ところで、ベンシオンは若い頃からウラジミール・ジャボチンスキーの「修正主義シオニスト世界連合」に参加、アメリカへ渡ってジャボチンスキーの秘書になっている。ジャボチンスキーが死んでからはアメリカにおいて修正主義の指導者として活動した。 こうした経歴を考えれば当然だが、ベンシオンは「大イスラエル」、つまり南はナイル川から北はユーフラテス川まで、西は地中海から東はヨルダン川までをイスラエルの領土にするべきだと考えていた。その息子であるベンヤミンも同じ考えを持っているはずだ。 ジミー・カーター元米大統領は、イスラエルとパレスチナ、2国家を共存させるというプランを現在のイスラエル政府は拒否、状況証拠は大イスラエルを目指していることを示していると語っているが、ネタニヤフ首相の思想的な背景を考えれば必然だろう。
2012.11.18
イスラエル軍は今月の14日、ハマスの軍事部門を統括していたアハマド・アル・ジャバリ参謀長を暗殺、それに続いてガザに対する激しい空爆を展開している。来年1月に予定されている選挙を意識しての攻撃だとする見方もあるが、イスラエル側はハマスによるロケット弾攻撃をやめさせるためだとしている。暗殺の直前、イスラエルとハマスとの間では、恒久的な休戦に関する協議が進んでいたとも言われ、平和への道を閉ざす目的があったかもしれない。 イスラエルとハマスの交渉で仲介役を務めていたのはイスラエル人のゲルション・バスキンという平和活動家。過去の交渉でジャバリとも面識があり、休戦協定の成立を目指してバスキンがハマスやエジプトの情報機関と接触していることをイスラエル政府の高官も承知していた。しかも、数カ月前には合意文書の草案をイスラエルのエフード・バラク国防大臣に見せ、この草案に基づき、休戦問題を協議する閣内委員会が設立されたと伝えられている。 報道されている情報から判断すると、イスラエル政府の内部でイランとの戦争に積極的なグループは少数派。その好戦的な少数派には、ベンヤミン・ネタニヤフ首相やバラク国防相が含まれている。ネタニヤフ首相らは、2010年にイランと戦争を始める準備をするように軍のトップだったガビ・アシュケナジ参謀総長(当時)、そして情報機関のモサドを統括していたメイル・ダガン長官(同)に命令したという。 しかし、閣内で開戦に賛成していたのは首相に近い7名だけで、全閣僚が参加した会議で戦争準備が決められたわけではなかった。そこで、軍も情報機関も命令を拒否したようだ。 新たな戦争への道を切り開くためか、ネタニヤフ政権はアメリカの大統領選挙で共和党のミット・ロムニーに肩入れした。ロムニーのスポンサー、シェルドン・アデルソンは好戦的なシオニストへ多額の寄付をしている富豪。そうした背景もあり、ロムニーはイスラエルの「経済的な成功」を「文化」と「神意」に求める発言もしている。 しかし、ロムニーへの偏った支援は裏目に出てしまう。再選されたバラク・オバマ大統領は親友のバレリー・ジャレットをイランに派遣して話し合いを進めているようで、イランとの戦争を避けようとしている。必然的にシリアへの軍事介入にも腰が引けている。しかもネオコン(親イスラエル派)に近いデービッド・ペトレアスCIA長官はスキャンダルで辞任、ネタニヤフ首相にとって好ましい状況ではない。 こうした中、シリアへの軍事介入を強化しようとしているのがフランスやイギリスの政府。11月13日にフランスのフランソワ・オランド大統領は「シリア国民連合」をシリア国民を代表する唯一の組織として承認、14日にはイギリスのデイビッド・キャメロン政府はシリアの反政府軍へ公然と武器を供与するための話し合いを行ったという。リビアへの軍事侵攻をリードしたイギリスとフランスがシリアでも前向きな姿勢を見せている。 リビアと同じように、シリアでもムスリム同胞団は体制転覆を目指す勢力に参加している。パレスチナで大きな影響力を持つハマスの母体はムスリム同胞団。そこでシリア政府はハマスを警戒している。パレスチナ問題でハマスを支持する声が高まれば、シリアでの戦況を好転させて体制を転覆させられる、と考えている人がいるかもしれない。
2012.11.16
今月の9日にデービッド・ペトレアスCIA長官が辞任した。メディアは「三角関係」を面白おかしく伝えたり、ベンガジのアメリカ領事館襲撃との関係を議論しているが、それだけでなく、通信の秘密も話題になっている。 ペトレイアスは情報機関を統轄していた人物であり、その愛人とされているポーラ・ブロードウェルは「元」情報将校。こうした人びとの通信が、本人の知らない状態で監視されていたということは、一般庶民にプライバシーは存在しないことを示しているからだ。 かつて、CIAの監視プログラムが発覚、問題になったことがある。1967年にスタートさせた「MHケイアス」だ。ベトナム戦争が泥沼化、反戦運動の高まりに危機感を持って始めたのだが、CIAはアメリカ国内での情報活動を禁止されていた。つまり、このMHケイアスは違法活動。 CIAの内部でも秘密にされていたこの違法活動を指揮していたのはジェームズ・ジーザス・アングルトン。防諜部門を統括していた人物で、ファシストやシオニストと緊密な関係にあった人物だ。アレン・ダレスの側近としても知られている。 この国民監視プロジェクトは1974年に終わりを告げる。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが報道、この事実を知ったウィリアム・コルビーCIA長官がアングルトンをCIAから追放してしまったのである。 ちなみに、ハーシュは1969年にミ・ライ事件(ソンミ村事件)を暴露したことで有名な記者。この事件が引き起こされたのは1968年3月16日だ。ソンミ村のミ・ライ地区とミ・ケ地区で村民が虐殺されたのだが、その数は米軍によるとミ・ライだけで347人、ベトナム側の主張ではミ・ライとミ・ケを合わせて504人だという。 ベトナム戦争の実態を知らせるショッキングな事件だったのだが、この虐殺はCIAと特殊部隊が実行していた農民虐殺計画、フェニックス・プログラムの一環だった。このプログラムは、リンドン・ジョンソン大統領の特別副補佐官を務めていたロバート・コマーの発案で、MACVとCIAの共同プロジェクトだ。 当時、MACVの司令官だったのはウィリアム・ウェストモーランド。イタリアの「緊張戦略」でも名前が出てくる軍人だ。コマーは1967年、プロジェクトを指揮するためにベトナムのサイゴン(現在のホーチミン)へ入っている。 コマーの後任に選ばれたのがウイリアム・コルビー。1968年8月あら1971年5月までの期間に、フェニックス・プログラムで殺されたベトナム市民は2万0587人に達すると、コルビーは後に議会で証言した。4万1000名近くという推計もある。ジェラルド・フォード政権でコルビーはCIA長官を解任され、ジョージ・H・W・ブッシュに交代しているが、その理由のひとつは、コルビーの議会での証言にあった。 ペトレアスCIA長官を監視したFBIも反戦運動を監視している。1950年代に始めたプロジェクト「COINTELPRO」の場合、当初はコミュニストがターゲットだったが、ベトナム戦争が泥沼化すると、平和運動を支援していた著名人の尾行、電話盗聴、郵便開封、さらに銀行口座の調査も実施している。 国防総省のDARPAも国民監視システムの開発に熱心で、個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆるデータの収集と分析が可能なシステムを実現させている。
2012.11.15
フランスのフランソワ・オランド大統領は、「シリア国民連合」をシリア国民を代表する唯一の組織として承認したという。シリア国民を差し置いてシリア国民の代表を決めるとは、オランド政権も大した神経をしている。こういう人びとを鉄面皮と言うのだろう。 言うまでもなく、シリア国民連合とは反シリア政府派の集まり。NATO諸国の一部や湾岸の独裁産油国が主導、11月11日にカタールのドーハで創設された。12日にはサウジアラビア、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦、オマーンといった湾岸諸国から承認されている。 リビアやシリアの体制を転覆させる目的で、NATOの一部や湾岸産油国は昨年から軍事介入を本格化させた。 リビアの場合、目に見える形の軍事介入は一昨年10月、リビア政府の高官ノウリ・メスマリがフランスへ亡命したところから始まる。11月にフランスはイギリスと相互防衛条約を締結し、その一方で「通商代表団」をベンガジへ派遣、メスマリから紹介されたリビア軍の将校と会ったという。 その後はイギリスが軍事介入の中心に座り、サウジアラビアやカタールが資金や武器を反政府軍に提供している。アメリカも同調した。 このとき、地上軍の主力になったのがアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)。イギリス、フランス、アメリカはリビアを空爆しただけでなく、事実上、アル・カイダ系の武装集団に武器を提供していたのだ。 リビアでムアンマル・アル・カダフィ体制が倒れると、反政府軍の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられた。この事実はYouTubeにアップロードされ、「西側」のメディアも報じている。その後、現在に至るまで、リビアではアル・カイダ系の武装集団は大きな影響力を維持している。 リビアで戦ったアル・カイダ系武装集団がシリアへ移動、今ではバシャール・アル・アサド政権を倒すために戦っている。シリアへの軍事介入ではトルコが目立った動きを見せているが、勿論、イギリス、フランス、アメリカ、サウジアラビア、カタールも参加している。 リビアに続き、シリアでもアル・カイダ系の武装集団が体制の転覆を目指し、建造物の破壊と住民の虐殺を続けている。今年の2月にはアメリカのヒラリー・クリントン国務長官も、この事実を「西側」も認めざるをえなくなっていた。 つまり、この状態で反シリア政府派が「シリア国民を代表する唯一の組織」だと承認すれば、アル・カイダを承認することになる。そこで、反政府軍のラベルを貼り替える必要が出てきたわけだ。つまり、「シリア国民連合」の創設は目眩まし。 アメリカのネオコン(親イスラエル派)がシリアを含む国々への攻撃を考え始めたのは遅くとも1991年であり、2001年9月11日の後、イラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンに対する先制攻撃を決め、遅くとも2007年にアメリカ政府はサウジアラビアと手を組み、レバノン、シリア、そしてイランに対する秘密工作を始めたと言われている。 シリア国民連合の承認を見て、ユーゴスラビアに対するNATOの先制攻撃を思い出した人も少なくないだろう。1990年代の初め、「西側」諸国はユーゴスラビアを解体、支配下におくため、手先の勢力に「独立宣言」をさせて承認、形式上、「内乱」を「国際紛争」にした上でユーゴスラビアを先制攻撃している。 このとき、「西側」はコソボもユーゴスラビアから奪っているが、このコソボを支配している勢力は麻薬や人間の臓器を売買していると指摘されている。こうした勢力と「西側」は手を組んでいるわけだ。アル・カイダだけではない。
2012.11.14
今月の8日、アルゼンチンでは数十万が参加したという大規模な反政府デモがあった。腐敗に抗議する、ということになっているが、クリスティーナ・デ・キルチネル政権と巨大メディアとの戦いという側面がある。 アルゼンチンには圧倒的な力を持つメディアが存在する。「グルーポ・クラリン(クラリオン・グループ)」だ。このメディアが抗議活動を後押し、「アラブの春」を再現しようとしている。例によって、労働組合も協力している。 現在のクラリンは出版、新聞、テレビ、ラジオ、電気通信など幅広い分野に進出、情報の発信源として大きな影響力を持っている。筆頭株主は創設者の一族だが、巨大金融機関のゴールドマン・サックスも大株主として名を連ねている。カール・レビン米上院議員から詐欺的で反道徳的だと批判された、あのゴールドマン・サックスだ。 グアテマラにしろ、チリにしろ、アメリカ政府はラテン・アメリカに民主政権が出現すると、軍事クーデターて潰してきた。20世紀の初頭は「棍棒外交」で露骨に海兵隊を侵攻させていたが、戦後は現地の軍人を利用している。 そのため、1946年にパナマで創設されたのがSOA。対ゲリラ戦の技術、狙撃訓練、特殊工作、心理戦、情報活動、尋問/拷問などを教えることが目的だ。クーデターを実行したり、国内で「死の部隊」を編成してアメリカの巨大企業にとって都合の悪い人びとを虐殺してきた軍人の多くは、この訓練所を卒業している。なお、SOAは1984年にパナマを追い出され、2001年にはWHISECへ名称が変更されている。 アルゼンチンが経済的に苦しいことも確かだが、その原因を作ったのは軍事政権。つまりアメリカをはじめとする「西側」の巨大資本の操り人形。かつては豊かな国だった国を、巨大金融機関と手を組んだ軍事独裁者が破壊したのだ。 つまり、銀行から莫大な融資を受け、その資金をオフショア市場を使って自分たちの私的な口座に隠し、つまり金融機関に資金を還流させ、国民に債務の返済を押しつけたのである。アルゼンチンの軍事独裁者と最も親しかった銀行家はデイビッド・ロックフェラー・シニアだと言われている。 皮肉なことだが、こうして作られた債務が軍事政権をフォークランド/マルビナス諸島への軍隊派遣へと向かわせる。この戦争を利用してイギリスのマーガレット・サッチャーは支配基盤を固めるが、アルゼンチンでは軍事体制を崩壊させることになった。 前にも書いたことがあるが、世界の巨大多国籍企業や富豪たちの資産隠し、課税逃れを助けているのがオフショア市場のネットワーク。1970年代以降、その中心はロンドンである。 現在、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアをはじめ、多くの国々で財政問題を理由にして「緊縮財政」が強要されている。労働者の解雇、賃金の引き下げ、健康保険や年金システムの破壊などで巨大企業や富豪に貢げ、ということだ。ただ、EUでは日本とは違い、庶民が怒りの声をあげ、激しく抵抗している。 そうした中、HSBCの元社員が数千に及ぶ銀行の記録を盗み出した。この元社員は7月にバルセロナで逮捕されているが、記録はフランス政府の手を介して各国政府に渡され、脱税の捜査に使われ、各国で大きな成果が出ている。が、この情報をギリシャ政府は無視、国民に対するさらなる負担を強いる法案を議会は成立させた。 オフショア市場の本拠地、ロンドンでも巨大企業の課税回避が問題になっている。決算委員会でグーグル、スターバックス、そしてアマゾンが槍玉に挙がり、マーガレット・ホッジ委員長から、違法ではないが不道徳だと批判された。本来なら払うべき税金を「合法的」に回避しているというわけだ。その仕組みを作り上げたのはイギリスの金融界なのだが。 ちなみに、スターバックスの場合、コーヒー豆を仕入れる際にも適切な対価を支払っていないと批判されている。調査ジャーナリストのジェームズ・ヘンリーによると、3.50ドルのカフェラテで、農民の手に渡るのは3.5セントにすぎないのだという。 本来なら、日本でも庶民に負担を強いる前に、金融システムにメスを入れなければならない。言うまでもなく、日本では政府をはじめ、多くの議員や大企業の経営者、学者、マスコミ社員は強者総取りの仕組みを信仰、庶民からむしり取ることしか考えていないわけで、金融システムにメスを入れることはないだろうが。
2012.11.13
デービッド・ペトレアスCIA長官の辞任は浮気が原因だということになっている。そのストーリーの続きで、フロリダ州タンパに住むジル・ケリーなる女性の名前が出てきた。このケリーにポーラ・ブロードウェルが匿名で電子メールを出し、FBIが捜査を始める発端になったというのだが、それより注目されている話がある。先月26日、デンバー大学でブロードウェルは講演しているのだが、その際、機密情報を漏らしてしまった可能性があるというのだ。 CIAの「別館」には数名のリビア人戦闘員が拘束されていて、そのリビア人を奪還することが領事館襲撃の目的だった可能性があるとブロードウェルは講演で語った。その領事館は事実上、CIAのリビアにおける本部として機能していた。 実は、講演のあった10月26日にアメリカのフォックス・ニュースは、領事館襲撃の際にCIAは襲撃グループのうち3名を拘束したのだが、強い要求があり、リビア側へ引き渡したと伝えている。この話とブロードウェルは混同したのかもしれない。 大使館や領事館に拉致した人間を拘束するという話は珍しくない。例えば、1979年にイランでイスラム革命が成功、1月にムハマド・レサ・パーレビ国王が王妃とともに国外へ脱出した。その直後、イラン人がイスラエル大使館に乱入、拘束されていた14名を救出しているのだ。 その際、死体を処分する井戸も見つかった。3情報機関、つまりイスラエルのモサド、アメリカのCIA、そしてイランのSAVAKが「外交特権」を利用してイランの反体制派を拘束、拷問していたと言われている。 勿論、今回の事件に別の事情が隠されている可能性はある。議会では「ウォーターゲート事件方式」の調査を求める声もあるようだ。大統領の責任を追及し、辞任に追い込みたいという願望が感じられる。 ウォーターゲート事件によって、デタント(緊張緩和)へ舵を切ったリチャード・ニクソンが失脚、副大統領から昇格したジェラルド・フォード大統領はデタント派を粛清、軍事強硬路線へ軌道修正することになる。このときにCIA長官となったのがジョージ・H・W・ブッシュであり、ドナルド・ラムズフェルド、リチャード・チェイニー、ポール・ウォルフォウィッツなどが台頭してくるのもこの政権。ロナルド・レーガン政権で「クーデター」の準備を始め、ジョージ・W・ブッシュ政権で計画を始動させたグループだ。
2012.11.12
アル・カイダとは何なのだろうか? リビアやシリアの体制を転覆させる工作でアル・カイダは重要な役割を果たしてきた。アメリカやイギリスをはじめとするNATO、そしてサウジアラビアやカタールを背景に、地上戦を戦っているのだ。シリアではアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタールなどがアル・カイダを使い、軍事侵攻しているにすぎない。 その一方でアメリカをはじめとする「西側」の支配層はアル・カイダを「テロ」の象徴として使い、「テロとの戦争」という旗を掲げながら軍事侵略を続けてきた。一体、アメリカ政府にとってアル・カイダは敵なのか、味方なのか、とデニス・クシニッチ米下院議員も疑問を投げかけている。 ジョージ・W・ブッシュ米大統領(当時)は2001年9月20日に「テロとの戦争」なる用語を初めて公の場で使ったと言われている。議会での演説で「アル・カイダがテロとの戦争を始めた」と口にしたのだが、1980年代、アル・カイダを含むイスラム武装勢力にテロを教えたのはアメリカの情報機関と軍だということを忘れてもらっては困る。CIAがパキスタンの情報機関ISIと手を組み、ソ連軍と戦う「自由の戦士」を産み、育てたのである。 ソ連軍は1979年の終わりにアフガニスタンへ軍事侵攻したのだが、それには伏線がある。1978年、CIAはアフガニスタンのモハメド・ダウド政権に接近した。その当時は王制だったイランの治安/情報機関、SAVAKの協力を得ている。ちなみに、このSAVAKを作り上げたのはCIAとモサド(イスラエルの情報機関)。 アメリカと手を組んだダウドは左翼のリーダーを次々に暗殺するのだが、クーデターで倒されてしまう。このクーデターで実権を握ったのがモハメド・タラキ。1979年3月にタラキはソ連を訪問、ソ連軍の派遣を要請するが、断られてしまった。その頃、イランではイスラム革命で新体制に移行していたが、その革命政府の支援を受けたイスラム武装勢力がアフガニスタンの政府高官やソ連人顧問を殺害している。 そして4月、ズビグネフ・ブレジンスキーの下でCIAはイスラム武装集団への支援プログラムを開始。5月にはCIAイスタンブール支局長がISIのアドバイスに基づき、「自由の戦士」の指導者として麻薬業者のグルブディン・ヘクマチアルを選んだ。 7月にジミー・カーター大統領はアフガニスタンでの秘密工作を承認、9月にはタラキが暗殺されてハフィズラ・アミンが実権を握った。アミンはCIAに繋がっていたという話もあるが、真偽は不明。そうした中、12月にソ連軍の機甲部隊が軍事侵攻したわけだ。 このアフガニスタンで軍事訓練を受け、実戦を経験したイスラム武装集団の中からアル・カイダも生まれる。今ではイスラム武装集団をアル・カイダと呼んでいる、と言うべきかもしれない。 リビアでムアンマル・アル・カダフィ政権と対立していた勢力の拠点はベンガジだったが、そこはアル・カイダの拠点でもあった。陸軍士官学校のCTC(対テロ戦センター)が2007年に発表した「イラクにおけるアル・カイダの外国人戦闘員」でも、武装集団の拠点として、ダーナーとベンガジを上げている。 カダフィが惨殺された直後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられた。その映像がすぐにYouTubeにアップロードされ、「西側」のメディアもその事実を伝えている。(日本のマスコミは知らないが)そして、アル・カイダの兵士は武器と一緒にシリアへと移動したわけである。 サウジアラビアやカタールはともかく、アメリカやイギリスがアル・カイダと協力関係にある意味は重い。アフガニスタン、イラク、リビア、シリアなどへの軍事侵攻の問題だけでなく、2001年9月11日の世界貿易センターや国防総省本部庁舎への攻撃は何だったのか、という疑問が強まるからだ。 福島第一原発の事故を見てもわかるように、専門家と称する人びとやジャーナリストと呼ばれている人びとの大多数は権力者の操り人形にすぎないが、操られていない人も存在する。アメリカ政府は現在、内部告発を極度に警戒、告発者を厳罰に処す方針のようだが、それで情報を管理しきれるかどうかは不明。権力体制を揺るがす情報が飛び出す日は遠くないかもしれない。
2012.11.11
デービッド・ペトレアスCIA長官が9日に辞任した。今年1月、『オール・イン』というタイトルでペトレアスの伝記が出版されているのだが、その本をバーノン・ローブと書いたポーラ・ブロードウェルと浮気していたことが発覚したためだとされている。長官の辞任を受け、マイケル・モレル副長官が長官代理を務めるようだ。 ブロードウェルは1995年にウェスト・ポイントの陸軍士官学校を卒業、ハーバード大学で修士号を与えられた予備役の少佐。ニューヨーク・タイムズ紙やボストン・グローブ紙に記事を書くジャーナリストでもある。メディアに入り込んだ軍人とも言えるが。 ペトレアスは2011年9月からCIA長官を務めているが、1974年に陸軍士官学校を卒業した軍人。ブロードウェルの先輩でもある。その後、米陸軍指揮幕僚大学(1983年クラス)を出て、1987年にはプリンストン大学から博士号を与えられた。 軍人の世界ではエリートだろうが、ネオコン(親イスラエル派)に近いこともあり、バラク・オバマ大統領からは信頼されていなかった。「信任が厚い」ということはなく、政権にとって「痛手」でもない。イラクやアフガニスタンでの「功績」も怪しい。 過去を振り返ると、ペトレアスは怪しげな情報でオバマ政権を振り回している。アメリカの大統領選でイスラエル政府やネオコンは共和党のミット・ロムニーを集中的に支援していたことも大統領のネオコンに対する心証を悪くしているはずだ。 オバマ政権を振り回した事件とは、昨年10月の「サウジアラビア大使暗殺未遂」。この事件でアメリカ司法省はふたりの男性を起訴している。サウジアラビアの駐米大使を暗殺しようとした容疑で、ひとりはイランのコドス部隊(イスラム革命防衛隊の特殊部隊)に所属する男性、もうひとりはイラン系アメリカ人男性だったという。 この暗殺計画をホワイトハウスや司法省の高官たちは信じていなかったのだが、ペトレイアスCIA長官が強引に事件にしたと報道されている。つまり、イランとアメリカとの緊張を高めようとしたわけだ。 当局が描く筋書きでは、イラン系アメリカ人で中古車のセールスマンをしているマンソール・アルバブシア、そしてコドスの隊員だというゴラム・シャクリが主人公。メキシコの麻薬業者でDEA(麻薬取締局)に情報を提供している「CS-1」なる人物と接触、暗殺を依頼したことになっている。しかも、アルバブシアはDEAの協力者で、痕跡が残る形で銀行口座に送金、しかも麻薬業者に暗殺の依頼主についても説明しているという。 今回のCIA長官辞任には疑問が多いのだが、そのひとつは、なぜFBIがCIA長官を調べ始めたのかということ。「潜在的な犯罪行為」を疑ったというのだが、はっきりしない。イスラエルへ情報が漏れていた可能性もあるだろう。ペトレイアスがブロードウェルに情報を漏らしていたとするならば、ブロードウェルがモサドと何らかのつながりが疑われていたのかもしれない。 今年9月11日にリビアのベンガジにあるアメリカ領事館が襲われ、クリストファー・スティーブンス大使を含むアメリカ人4名が殺されているが、この事件と辞任の関係も囁かれている。この領事館は事実上、CIAの活動拠点になっていて、同じ時にCIAの隠れ家も襲撃されている。CIAが狙われたということだ。 事件の直前、領事館の周辺で抗議活動は行われていなかったようで、「デモ隊が暴徒化した」ということはなかった。ペトレイアスは長官を辞任し、この事件に関する議会での証言を回避したという見方もある。ともかく、浮気が原因で辞任したと信じている人は圧倒的に少ないだろう。
2012.11.10
アメリカでは遺伝子組み換え食品が蔓延している。勿論、こうした状況を懸念する人は多く、カリフォルニア州では遺伝子組み換え食品の表示を義務づけるべきかどうかを問う住民投票が実施されたのだが、賛成44.8%、反対55.2%で否決されてしまった。 実は、10月の初めまで、表示義務に賛成する人は全体の7割近かった。ところが、10月に入ってモンサントをはじめとするバイオ企業は猛烈なキャンペーンを展開、逆転したようである。バイオ企業がキャンペーンに投入した資金は4600万ドルだという。ちなみに、表示賛成派が集めた資金は920万ドル。 遺伝子組み換え食品の危険性を示す研究もある。例えば、フランスのカーン大学で行われた実験で、遺伝子組み換えトウモロコシを与えたネズミに腫瘍ができ、臓器にもダメージが見られたとする発表が今年の9月にあった。 モンサントが作り出した「NK603」系統のトウモロコシをネズミに与え、寿命に近い24カ月目の時点で調べると、腫瘍の発生率が対照群では30%だったのに対し、実験群のメスでは50から80%に大きな腫瘍が現れ、早死にの傾向も見られたという。またオスでは肝臓や皮膚に腫瘍が発生し、また消化管での異常もみられたとされている。 こうした腫瘍の多くは18カ月をすぎてから発見されているのだが、EFSA(欧州食品安全機関)の委員会は90日間(3カ月)の実験しか行わず、「安全」だとしてヨーロッパは輸入を認めたようだ。カーン大学の研究発表があってからロシアでは遺伝子組み替え食品の輸入を停止したと伝えられている。 これに対し、フランス政府はHCB(バイオテクノロジー高等評議会)とANSES(フランス食品環境労働衛生安全庁)にカーン大学の研究に関する調査を要請、その結果、従来の安全性評価が疑われるような点は何も確認できなかったという。後に自分たちの責任が問われることを避けるためなのか、「このデータでは不十分だ」という言い方をしているが。 農業国ということもあり、少し前まで、フランス政府は遺伝子組み換え作物に否定的な姿勢を示していた。こうしたフランス側の姿勢をアメリカ大使だったクレイグ・ステイプルトンは懸念し、2007年12月には、長期にわたる「報復」が必要だと政府に進言している。この問題でフランスはカギを握る国で、フランスで遺伝子組み換え作物に好意的な意見を広めることは重要な意味があった。 こうしたアメリカ政府の働きかけがあることは、ウィキリークスが公表した外交文書で明るみに出た。2007年当時の大統領はジョージ・W・ブッシュだが、バラク・オバマ政権になっても政府とモンサントとの関係を示す文書の公表は拒否されたままだ。 遺伝子組み換えにしろ、原子力にしろ、巨大多国籍企業の利益に反する発表をする学者は社会的に制裁を受け、場合によっては抹殺される。勿論、ジャーナリストも同じ。伝統的な農業を続けている農民に対する攻撃も激しく、多くの自殺者が出ている。 こうした中、モンサントをはじめとするバイオ企業の侵略を日本は何とか防いできたが、TPPはその防波堤を一気に破壊することになる。この取り決めが成立したなら、アメリカの巨大企業にとって都合良く金融や経済のルールが変更されるだけでなく、環境汚染や食の安全に関する規制は緩和、あるいは消滅、つまり庶民の生きる権利が奪われてしまうだろう。
2012.11.09
今回の米大統領選挙では、ネオコン(アメリカの親イスラエル派)から支援されていたミット・ロムニー候補でなく、イスラエルとギクシャクしていたバラク・オバマ大統領が勝利した。 何が根拠だったのかは不明だが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はロムニーに肩入れしていたため、今後のイスラエルとアメリカとの関係を危惧する声もイスラエル国内で出ているようだ。 ネタニヤフがオバマから離れてロムニーへ近づくリスクを指摘する声は9月頃から聞かれたが、そうした懸念が現実になった。オバマ政権がイスラエルとの関係を露骨に悪化させることはないだろうが、影響は小さくないだろう。 これまでオバマ政権の内部でもリビアやシリアに対して軍事強硬路線を主張するヒラリー・クリントン国務長官のような人物をいたが、大統領やマーティン・デンプシー統合参謀本部議長は慎重だった。 アメリカ政府との関係だけでなく、イスラエル国内でもネタニヤフは孤立しつつある。イラン攻撃をめぐって軍や情報機関と対立したほか、閣僚の中でも首相の方針に反対する人が少なくないようなのだ。 そうした中、トルコ政府はシリアとの軍事的な緊張を煽るような行為を続けている。最近ではNATOにパトリオット(愛国者)・ミサイルをシリアとの国境近くへ配備するように求める計画だという。「防衛」が目的だとされているが、攻撃計画の一環だと考える方が自然だ。 本ブログでは何度も書いているように、シリアへの秘密工作は2000年代の半ばには始まり、昨年の春にはトルコにある米空軍のインシルリク基地でFSA(反シリア政府軍)に対する訓練が始まり、FSAの軍事拠点をトルコ政府は提供した。シリアへの攻撃拠点はヨルダンやレバノンにもある。 軍事訓練の教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、あるいはイギリスやフランスの特殊部隊員が教官を務めていると伝えられている。この3カ国だけでなく、カタール、ヨルダン、トルコの特殊部隊がシリア領内で活動している疑いも持たれている。イギリスとカタールを上げたのはイスラエルのメディア、アメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、トルコを上げたのは、民間情報会社のストラトフォーだ。 武器もサウジアラビアやカタールなど湾岸産油国を経由して反シリア政府軍に流れ、その中には携帯型の地対空ミサイル、スティンガーが含まれていると言われている。ここにきてイギリスのデイビッド・キャメロン首相はさらに武器を売り込んでいるともいう。 こうして支えてきた反シリア政府軍だが、残虐な行為もあり、シリア国民に支持されていない。そこでクリントン国務長官はSNC(シリア国民評議会)に見切りつけ、反政府軍を再編成する意向を示している。 こうした混乱の中、シリアとパレスチナ難民との関係が微妙になっている。現在、ガザ地区を支配しているのはハマスだが、そのハマスのオフィスをシリア政府軍が家宅捜索、ハマスの指導部はガザのほか、カタールやエジプトに散ったようだ。 ハマスはムスリム同胞団の流れ。パレスチナでハマスが勢力を伸ばした背景にはイスラエル政府の思惑がある。1960年代の後半、イスラエル政府はPLOのヤシル・アラファト議長を対抗させるため、ムスリム同胞団で活動していたアーマド・ヤシンに目をつけたのだ。1970年にPLOを追い出したヨルダン国王も同胞団を支援している。 ヤシンはシン・ベト(イスラエルの治安機関)の監視下、1976年にイスラム協会を設立、イスラエル政府から人道的団体として承認されている。サウジアラビアからは資金援助もあった。そして1987年、ハマス(イスラム抵抗運動)が創設される。2004年にアラファトが死亡(暗殺説が出ている)、その2年後にハマスはパレスチナ議会の選挙で勝利した。 シリアでの体制転覆プロジェクトにはイスラム同胞団も関与していると言われているわけで、シリア政府がハマスを警戒するのは当然なのだろう。勿論、パレスチナ人が「反シリア」というわけではなく、例えばPFLP-GCなどは親シリア政府。そのPFLP-GCを反シリア政府軍が攻撃、10名が殺されたという。シリア情勢によっては、15万人とも言われるパレスチナ難民が移動するという事態もありえるわけで、そうなると中東/北アフリカの混乱に拍車がかかるだろう。
2012.11.08
アメリカでは大統領選の投票が6日にあり、バラク・オバマ大統領が再選された。今回は電子投票に対する疑惑が事前に噂され、逆に投票数の操作をしにくい状況だったが、それでも各地で機械の「不具合」が報告されている。 オバマは前回、「チェンジ」を掲げて勝利した。具体的な内容は不明だったが、とにかくジョージ・W・ブッシュ政権が推進した政策を止めて欲しいと願う人びとの心に響いたのだろう。ブッシュが進めたのは国外での戦争、国内でのファシズム化。その背景には強者総取りの新自由主義経済があった。 新自由主義経済の掲げる看板は「私有化」と「規制緩和」。巨大企業のカネ儲けを容易にする政策を推進するわけである。溜め込んだ資金を隠し、投機市場へ導く仕組みとして機能しているのは、ロンドンを中心とするオフショア市場のネットワーク。 この仕組みを使い、大企業や富豪たちは資産を隠し、課税から逃れている。大企業や富豪たちへ資産が集まるということは、言うまでもなく、庶民を貧困化させ、社会を破壊することに繋がる。 ミット・ロムニーは新自由主義の申し子であり、庶民の敵。とは言うものの、オバマも庶民の味方とは言えない。大統領選の候補者に選ばれるということは、何らかの形で支配層と結びついているからだ。 しかし、誰が選ばれても同じ、というわけでもない。選挙で「よりマシ」な候補者に投票することも重要な意味を持っている。投票だけで社会を変ええられるという考え方はあまりにも安直だ。誰が当選しても同じだという意見は、現状維持を肯定しているにすぎない。 昨年3月に福島第一原発が「過酷事故」を起こし、日本どころか世界中に放射性物質を放出しはじめた。それ以来、日本でも大規模なデモが続いている。抗議しても政府は「聞く耳持たぬ」という姿勢を見せているが、効果がないわけではない。公園の使用を禁止しはじめたのは、支配層が抗議活動を嫌がっているからだ。内心ではデモを恐れている。 アメリカでは強者総取りシステムの総本山、ウォール街で「占拠運動」が始まった。警察は暴力的に運動を鎮圧していくが、その背景では各地の警察当局が話し合うだけではなく、国土安全保障省やFBIなどが戦術や計画立案で警察にアドバイス、ニューヨーク市警へはCIAのベテラン秘密工作員が「副コミッショナー」として派遣されたと伝えられている。末端の警察だけでなく、治安機関や情報機関も乗り出している。それだけ庶民の「覚醒」を恐怖しているのだ。 軍事侵略を大々的に開始、国内では憲法の規定を機能不全にしたジョージ・W・ブッシュ政権を作り出したのは2000年の大統領選挙。このとき、有権者に関する怪しげなブラックリストが作られ、正体不明の「選挙監視員」が徘徊、投票妨害が報告されている。 さらに、旧式の機械やバタフライ型投票用紙などが原因で混乱、出口調査と公式発表との差も疑惑を呼んだ。結局、12月になって連邦最高裁がジョージ・W・ブッシュ候補の当選を確定させる判決を出して決着をつけている。2004年には電子投票のカウントが操作されたと疑われ、今回はミット・ロムニー家と電子投票のシステムを作っている会社との関係も指摘された。 本当に政策を「チェンジ」しないとアメリカの衰退は止まらない。軍事力で世界を支配できる時代でなくなっているのだが、カネ儲けのために戦争を続けたがっている人たちは少なくない。外交力とは核兵器なのであり、核兵器を日本が持っていれば中国は尖閣諸島に手を出さないだろうなどと主張する政治家が大手を振って歩けるのも、そうした背景があるからだ。が、そうした道は破滅へと続いている。
2012.11.08
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とエウド・バラク国防相は2010年にイランを攻撃しようと考え、戦争の準備を軍のトップであるガビ・アシュケナジ参謀総長(当時)とモサドを統括していたメイル・ダガン長官(同)に命令したという。 ただ、このときは軍と情報機関のトップが反対して実現されなかったようだ。首相に近い7名だけで話し合っただけで、全閣僚が参加した会議で決まったことでなかったことが理由だという。全閣僚を集めればイラン攻撃に反対する意見が多数を占めると予想したのだろう。 アメリカのバラク・オバマ政権もイラン攻撃に反対、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長はイスラエルに対し、イラン攻撃にアメリカ軍は協力しないと伝えたと言われている。実際、アフガニスタンとイラクでの戦争で四苦八苦している。 アメリカの大統領選でミット・ロムニーが勝てばどうなるか不明だが、アメリカの事情を考えればイラン攻撃は無謀。オバマ大統領は現在、親友のバレリー・ジャレットをイランに派遣して話し合いを進めているようだ。 アシュケナジの後任であるベニー・ガンツ参謀総長は、イランの指導部が核兵器の製造に踏み切ることはないと語っているが、ネタニヤフ首相たちはイランを攻撃する姿勢を崩さず、「イランの核開発」を阻止するために攻撃するとしている。 アメリカの影響を受けるなとネタニヤフに提言したグループがアメリカに存在する。言うまでもなくネオコン(親イスラエル派)だ。1996年にリチャード・パールやダグラス・フェイスを含むネオコンのグループが書いた「決別」では、イラクのサダム・フセインやPLOのヤシル・アラファトを排除するだけでなく、アメリカとの関係を見直すべきだとしている。自立し、成熟した相互関係を築こうというわけだ。 今回の大統領選挙でネオコンの影響力がどの程度になるかで中東/北アフリカ情勢の状況は大きく左右され、アメリカの運命も決まる可能性がある。アメリカはイスラエル・ロビーの影響を受けていると言われているが、イスラエルはアメリカの衰退など意に介していない。 イスラエルなる国を作り上げたのは「シオニズム運動」。この「シオニズム」という用語をナータン・ビルンバウムなる人物が使い始めたのは1893年のことだが、その前、82年にはそうした運動をエドムンド・ド・ロスチャイルド(フランス)は支持すると表明、資金援助を始めている。 1917年、アーサー・バルフォア英外相の名前でアルフレッド・ミルナーが手紙を出した相手はウォルター・ロスチャイルド(イギリス)。この手紙には、「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と書かれている。 もっとも、ロスチャイルドを含むヨーロッパの貴族は政略結婚を繰り返してきた歴史があり、親戚関係にあるわけで、安易に「ロスチャイルド」を振り回すべきではない。ロスチャイルドがネオコンのスポンサーだとする証拠もないようだ。 しかし、ボリス・エリツィン時代のロシアで不公正な取り引きで国の富を奪い、巨万の富を築いたボリス・ベレゾフスキー(亡命してからプラトン・エレーニンに改名)は一時期イスラエルの市民権を保有、イギリスに亡命してからジェイコブ・ロスチャイルドや息子のナサニエル・ロスチャイルドとも親密な関係にある。
2012.11.06
アメリカの支配層は日本を戦争の世界へと導いているようだ。今月の下旬、日本政府はシリアに対する「制裁」の「効果」を高めるため、東京で会議を開くのだという。 アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタールなどは、自分たちが動かしている反シリア政府軍が苦戦していることに危機感を持っている。そうした苦境から脱するための会議なのだろう。 反シリア政府軍の主力は傭兵だと言われている。湾岸産油国に雇われた傭兵がシリアに入って政府軍を攻撃しているのだが、ロシアや中国がNATO軍の空爆を阻止しているため、バシャール・アル・アサド体制を転覆できないでいる。 「西側」メディアの宣伝とは違い、反政府軍は当初から住民を狙撃、政府に敵対していないと判断された住民は虐殺され、シリア政府に批判的だった人びとからも反政府軍は支持されていないようだ。こうしたことが苦戦している大きな要因だろう。(この辺の事情は本ブログで何度も書いたことなので、今回は割愛する。) アメリカのネオコン(親イスラエル派)がシリアを含む国々への攻撃を考え始めたのは遅くとも1991年であり、2001年9月11日から間もない段階でイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンに対する先制攻撃を決めていたとウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は語っている。これは本ブログで繰り返し、書いてきたことである。 国連などの調停で停戦が合意されても反政府軍は攻撃をやめる気配はなく、ダマスカスでの爆弾攻撃も続いている。こうした事情を知っている国々がシリアに対する制裁に消極的なのは当然であり、日本の対米従属は異様だ。 そうした中、自衛隊は5日からアメリカ軍と共同統合演習「キーン・スウォード(鋭い剣)」を始めた。自衛隊は3万4100名、アメリカ軍は1万名以上が参加する大規模な演習だが、中国への刺激を軽減するため、島の奪還作戦をプログラムから除外したようだ。 日本と中国との軍事的な緊張が高また最大の責任者は石原慎太郎都知事(当時)。東北の太平洋側で巨大地震が起こる3日前、つまり2011年3月8日にはイギリスのインディペンデント紙が石原知事の核兵器発言を掲載している。外交力とは核兵器なのであり、核兵器を日本が持っていれば中国は尖閣諸島に手を出さないだろうと語ったそうだ。 この発言は4月に再度、注目される。日本の電力産業が兵器級のプルトニウム70トンを隠し持っているとアメリカのジャーナリスト、ジョセフ・トレントが書いたのである。 この人物はCIAの上層部に情報源を持っている。情報操作に使われることもあるのだが、少なくともCIAは日本が相当量の兵器級プルトニウムを保有しているという情報を流したかったのだろう、とは言える。こうした情報が流れる中、日本政府は外国の専門家が福島第一原発の内部に入ることを拒否しているわけで、疑惑を呼ぶのは当然だ。 トレントの記事が出た1週間後、石原知事は「ヘリテージ財団」主催のシンポジウムで尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示した。この発言が日中関係を極度に悪化させた直接的な原因である。 その後、野田佳彦政権は尖閣諸島(釣魚台群島)の領土問題を世界に持ち出したが、これは決定的な間違いだった。世界に出たなら日本で封印されている歴史が問題になり、日本政府の主張は分が悪くなる。その理由は孫崎享氏が書いた『日本の国境問題』を読めば理解できるだろう。実際、外国メディアの反応は良くない。 例えば、9月19日付けのニューヨーク・タイムズ紙に掲載された意見は中国側の見方に近く、11月1日付けのフィナンシャル・タイムズ紙も駐英中国大使の意見を掲載した。核兵器を持っても世界は思うように動かないだろう。
2012.11.05
アメリカ海軍のフリゲート艦「ワンダーグリフト」のジェセフ・ダーラク艦長が任務を解かれたと伝えられている。9月21日にロシアのウラジオストクに寄港した際、部下が泥酔し、不適切な行為に及んだことが判明、その監督責任が問われたようだ。艦長のほかに3名の士官も任務を解かれている。沖縄での事件と考え合わせると、アメリカ軍の内部で規律が緩んでいるのかもしれない。 ジョージ・W・ブッシュ政権はアフガニスタンに続き、イラクを先制攻撃して社会システムを破壊、多くの住民を虐殺した。医学雑誌のランセットに発表されたジョンズ・ホプキンズ大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究によると、2006年7月までに約65万人が殺され、またイギリスのORB(オピニオン・リサーチ・ビジネス)が行った調査では、2007年夏までに100万人以上が戦争で殺されたとされている。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、1991年、つまりジョージ・H・W・ブッシュ政権の時代にポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はシリア、イラン、イラクを含む地域を「掃除」すると語り、2001年9月11日の世界貿易センターや国防総省本庁舎への攻撃から間もない時期に、イラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃することが決まっていたという。 暴力を使って相手を屈服させようとしているのだろうが、こうした攻撃は侵略にほかならず、かつてスメドリー・バトラー海兵隊少将が言ったように犯罪行為。現在、アメリカ軍が行っていることは押し込み強盗団と大差がない。メディアで事実に反するストーリーを宣伝しても、実際に戦っている将兵は実態を知っている。こんな侵略行為の片棒を担がされている彼らの心が荒むのは当然だろう。 ところが、日本には暴力が全て、という政治家もいて、しかも人気があるらしいから驚く。そうした政治家の代表格は石原慎太郎だろう。 東京都知事として新銀行東京を設立、オリンピックの東京招致を打ち上げ、築地移転で無駄遣いしているが、何と言っても大きいのは臨海副都心開発。巨額の負債(兆円単位だという)を都民に背負わせることになった。教育のファシズム化も推進しているが、自分の行った悪事に気づかない愚かな都民を作ろうとしたのだろうか? ところで、石原は「戦争ごっこ」が大好きな大人で、外交力とは核兵器だと信じているらしい。核兵器を日本が持っていれば中国は尖閣諸島に手を出さないだろうと主張、佐藤栄作内閣の時に計画された核兵器開発を続けるべきだったとインディペンデンス紙に語っている。その内容は昨年3月8日、巨大地震で東電の福島第一原発が「過酷事故」を起こす3日前の紙面に掲載されている。 実は、1980年以来、アメリカ支配層の一部は日本を核武装させようと準備してきた。ジャーナリストのジョセフ・トレントによると、日本は兵器級のプルトニウムをすでに70トン程度保有しているのだという。核実験を実施済みだとしても驚きではない。日本側の核兵器願望をネオコン(親イスラエル派)は利用、日本と中国に核戦争を始めさせようとしている可能性もある。 昨年12月、石原慎太郎の息子、伸晃はネオコン系の「ハドソン研究所」で講演、尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言、今年4月には慎太郎がネオコンと緊密な関係にある「ヘリテージ財団」主催のシンポジウムで尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示した。 言うまでもなく、石原慎太郎の発言が中国で広がった反日運動の直接的な原因であり、日中関係を一気に悪化させて日本経済を苦境に追い込むことになった。発言の責任をとろうとする姿勢は微塵も感じられない。
2012.11.04
アメリカの大統領選挙が迫る中、イギリス、フランス、そしてイスラエルがシリアやイランに対する軍事的な動きを活発化させている。 10月31日から11月1日にかけてイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はフランスのフランソワ・オランド大統領と会談、その直後にイスラエルのエウド・バラク国防相はイギリスを訪問した。そのイギリスから、同国政府が戦闘機「タイフーン」のアラブ首長国連邦への配備を検討しているという話も伝わっている。 バラクがイギリスを訪問する前、アメリカのマーチン・デンプシー統合参謀本部議長がイスラエルを訪問にしているのだが、1月にデンプシー議長はイスラエルのイラン攻撃に協力しないと伝えたという人物。しかも、大統領選の結果次第で議長を辞める可能性があり、攻撃容認に転じたとも思えない。アメリカ政府はロシア政府と和平案を話し合っているという情報も伝えられている。 アメリカのネオコン(親イスラエル派)は1990年代の初め、ジョージ・H・W・ブッシュ政権の時代にシリア、イラン、イラクを含む地域の支配構造を自分たちに都合良く作り替える案を作成しているが、昨年来の動きを見ているとリビアにしろ、シリアにしろ、イギリスの動きが目立つ。 中東問題はイスラエル問題でもあるのだが、そのイスラエルを生み出したのがシオニズム。エルサレム神殿があったとされる「シオンの丘」へ戻ろうという運動だが、このシオニズムという用語が初めて使われたのはナータン・ビルンバウムなる人物で、1893年のことだとされている。が、1840年にタイムズ紙はイギリス政府が「ユダヤ人の復興」を考えていると報じている。 1917年、アルフレッド・ミルナーはアーサー・バルフォア英外相の名前でロスチャイルド卿に手紙を書き、その中で「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と表明している。この「バルフォア宣言」がパレスチナ問題の発端だとされているが、そのはるか前からイギリス政府の内部には「ユダヤ人国家」を中東に作ろうとする動きがあったわけだ。 そうは言っても、アメリカも戦争の準備はできている。トルコ領内では、すでに米空軍インシルリク基地で反シリア政府軍の訓練を実施、アメリカの情報機関員や特殊部隊員、あるいはイギリスとフランスの特殊部隊員が教官役を務めてきた。そうした部隊の拠点としてもこの基地は使われているようだ。本格的な軍事介入が始まった場合、中心になるのはピリンクリク基地やディヤルバキル基地だという説も流れている。 アラビア海からアデン湾/紅海へ入るあたりにあるスクトラ島やオマーンの沖にあるマシーラ島にアメリカ軍は集まっているほかトルコ、ヨルダン、イスラエルで特殊部隊が活発に動き、イギリスやフランスはアラブ首長国連邦に集結、フランスはサウジアラビアにも戦闘爆撃機を配備したともいう。 アメリカの大統領選挙でバラク・オバマが再選されるのか、ミット・ロムニーが勝つのかで状況は変化するだろうが、その大統領選挙では電子投票に対する疑惑が強まっている。投票をコンピュータ化した結果、票数の操作が容易になったと考えられているのだ。そうした疑惑も含め、アメリカの大統領選挙は中東/北アフリカ情勢にも大きな影響を及ぼすことになる。
2012.11.03
シリアの反政府軍が捕虜になった政府軍兵士を処刑した、と国連人権高等弁務官事務所も認め、「戦争犯罪」だと判断したようである。10月31日にアメリカのヒラリー・クリントン国務長官はSNC(シリア国民評議会)に見切りつけ、反政府軍を再編成する意向を示していたが、これも国連の動きを睨んでのことだったのだろう。 勿論、反政府軍の残虐行為は早い段階から指摘され、住民を狙撃していたのも反政府軍だったと言われている。政権の打倒を目指す武装蜂起の切っ掛けが昨年3月に起こったデモでの政府軍による流血の弾圧だとする話を否定する人物もいる。 そうしたひとりがシリア駐在のフランス大使だったエリック・シュバリエ。運動は外国から入ってきたグループに扇動されたもので、報道とは違い、緊張が高まるにつれて運動は小さくなって激しい弾圧という事態にはならなかったというのだ。こうした報告をアラン・ジュペ外務大臣兼国防大臣(当時)は封印してしまった。 本ブログでは何度も書いているように、アメリカのネオコン(親イスラエル派)がシリアを含む地域へ介入する計画を立てたのは1990年代の初め、ジョージ・H・W・ブッシュ政権の時代である。 2001年9月、アメリカで世界貿易センターや国防総省本庁舎が攻撃されて間もない頃にジョージ・W・ブッシュ(H・Wの息子)政権は攻撃予定国のリストを作成、そこにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが載っていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官の証言だ。2007年には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュがシリアやイランへの秘密工作が行われているとニューヨーカー誌に書いている。 そして昨年春、トルコにある米空軍のインシルリク基地では反シリア政府軍に対する訓練が始まった。アメリカの情報機関員や特殊部隊員、あるいはイギリスやフランスの特殊部隊員が教官を務めていると伝えられている。トルコは反政府軍の攻撃拠点にもなっている。トルコもシリアに対する軍事介入に加わっていると言うことだ。ちなみに、シリアへの攻撃拠点はヨルダンやレバノンにもある。 今年5月にはホウラでの虐殺が発覚しているが、当初、「西側」のメディアは政府軍が行ったと宣伝していた。ところが東方カトリックの修道院長やドイツの有力紙が虐殺の実行者を反政府軍だと報告、風向きが変わる。 反政府軍に参加しているサラフィ主義者や外国人傭兵が住民を虐殺したのだと修道院長は主張し、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は、地上の真実と全く違っている。」と語っている。キリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムは外国からの干渉が事態を悪化させていると批判している。 第2次世界大戦後、アメリカはメディアを使って情報を操作するプロジェクトを実行した。いわゆる「モッキンバード」である。それまでもメディアで宣伝するという手法は使われていたのだが、システム化したのである。日本を含め、多くの国々でこの仕組みはこれまで機能してきたのだが、インターネットの普及によって難しくなっている。反シリア軍の実態が露見した一因はこの辺にある。
2012.11.02
シリアの体制転覆作戦は行き詰まっている。こうした状況から脱するため、アメリカ政府はSNC(シリア国民評議会)に見切りをつけ、反政府派の再編成に乗り出したようだ。 シリアの「前線で戦い、死に瀕している人々の代表」を中心に据えるとヒラリー・クリントン国務長官はクロアチアで語ったという。当初から反政府活動にアル・カイダ系武装集団は参加しているのだが、戦闘が長引くにつれ、「民主化運動」という「西側」や湾岸産油国の嘘が明らかになり、今ではその存在を否定できなくなった。 クリントン長官などは自分たちとアル・カイダとは対立関係にあるかのように宣伝しているが、現在、反政府軍の主力は湾岸産油国の資金で雇われた外国人傭兵(アル・カイダ系の兵士)。シリアの民主化を願い、バシャール・アル・アサド体制に批判的だった人びとも多くは外国の軍事介入に同調していないらしく、反アサド派だったはずのシリア人を引き入れられない。そこで傭兵/アル・カイダ系の兵士を頼らざるをえない、ということになっている。 傭兵の出身国はサウジアラビアやリビアが多いと言われているが、そのリビアからは昨年10月、つまりムアンマル・アル・カダフィが殺され、その体制が崩壊してから多くのアル・カイダ系戦闘員がシリアへ入ったと言われている。リビアの体制転覆作戦で地上軍の主力だったLIFG(リビア・イスラム戦闘団)はアル・カイダ系。すでにリビアではアメリカ政府もアル・カイダと手を組んでいるということだ。 そのLIFGをアメリカ政府は「テロリスト」に分類していたが、イギリスは1990年代から違った見方をしていた。1996年にLIFGはカダフィの暗殺を試みているのだが、その際に資金を出したのはMI6(イギリスの対外情報機関)だという。MI5(イギリスの治安機関)に所属していたデイビッド・シャイラーの証言。 アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタールと行った国々とアル・カイダ系武装集団が手を組んでリビアの体制を転覆させた直後から、リビアではシリアへ武器や兵士を送り込む計画が持ち上がり、実行された。マークを消したNATOの輸送機が武器をリビアからトルコの基地まで運んだとも伝えられている。 これまで何度も書いたことだが、リビアやシリアの体制を転覆させる工作は1990年代に始まっている。その中心にはネオコン(親イスラエル派)がいた。 まず、1991年にポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はシリア、イラン、イラクを含む地域を「掃除」すると語り、その翌年には国防総省の内部でDPG(国防計画指針)の草稿が作成されている。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターや国防総省の本部庁舎が攻撃された直後にジョージ・W・ブッシュ政権はイラク攻撃を決定、さらにイラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃予定国のリストに載せたとウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は語っている。 中東やアフリカを支配するシステムを再構築する一環としてシリアを攻撃している国もあるようだが、それだけでなく再びシリアを支配したい、地中海東部で発見された天然ガスを押さえたいなどといった思惑もあると指摘されている。そうした思惑通りになっていないのがシリアの状況であり、アメリカ政府は泥沼から抜け出そうと必死なようだ。
2012.11.01
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