森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2023.05.11
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カテゴリ: 生の欲望の発揮
鈴木知準氏のお話です。

中村久子という岐阜高山出身の63、4歳位の夫人がある。
その人に「私の超えて来た道」という著書がある。
それによると、この人は4歳のとき脱疽によって肢関節の下で両上肢を、膝関節の下で両下肢を切断している。
彼女はこの不具の体で、日常の諸動作を工夫して生活せざるをえない環境にあった。
貧困であった彼女は見せ物に出され、これらの手足なしに行われる諸動作の興行などで全国を流れ歩く10数年をおくっている。
このような不幸な境遇を通して達し得た最後のものは、この自分の運命に対して、感謝することであった。

鈴木先生は10年前静岡臨済寺においてはじめてお話を承り、その喜びに輝く目ざしに接したとき、全く私の心は驚きと畏敬以外のなにものもなかった。
その不幸な運命を担いながら、運命を生かして、現在に最大をつくして前向きに生き、自分の運命を感謝している態度にうたれたのである。

この人の著書の巻頭に「ある、ある、ある」という詩が載っている。

「タオル、取ってちょうだい」
「おーい」と答える良人がある。
「はーい」という娘がある。
歯をみがく。
義歯の取り外し。
かお洗う。
みぢかいけれど
指のない
まるい、つよい
手が何でもしてくれる。
断端に骨のない

何でもしてくれる
短い手もある。
ある、ある、ある、
みんなある。
さわやかな


なんと明るい、喜びの詩ではないか。
彼女は短い腕をつかって洗顔、歯みがき、お掃除も米とぎもできる。
口と腕との共同作業で習字、裁縫、ヘラ付け、針に糸を通すこと、糸先の結び球、運針もできる。
着物の仕立てに要する時間も手のある人達とほとんど同じ時間でできるという。
とにかく万事日常の諸動作を工夫と努力によって特別のものを除いてやれるようになっている。

彼女はこの書の巻末に、
「日常生活中、衣服の出し入れ、お茶を入れる、書状の扱い、仏前にお線香を捧ぐ、などの数々、左腕と口にしたへら形の棒が一切やって私を助けてくれることは、ほんとうに有がたいことです。
一にも努力、二にも努力、努力以外の何物もありません。
いか程重い障害をうけていようと、必要に迫られれば、人間には限りなくもそれからそれへと独創の世界がくり展げられることは、「生かされる者」のみが受ける宇宙の偉大な恩寵なのであります。
(生活の発見誌 1969年(昭和44年) 1月号 36ページ)

ピアニストの辻井伸行さんは目が見えません。
でも卓越した音感を磨き上げて世界中の人を感動させることができます。
目が見えないことがハンディというよりも、むしろ音感を鋭くさせているのではないかと思われます。

車椅子テニスの国枝慎吾さんは9歳のとき脊髄腫瘍で下半身不随になりました。
でもそこで将来をあきらめることはありませんでした。
過酷な現実を受け入れて、運命を切り開いていかれました。
車椅子テニスで世界ランク1位になりました。
数々の大会で優勝し国民栄誉賞を授与されました。

大きなハンディを持っていても、好奇の目にさらされながらも、悲観や否定しないで、そこを出発点にできた人の生きざまは素晴らしい。
それだけで人を感動させることができます。
私たちも神経症になりましたが、それを受け入れて、財産や宝物に変えて、自分のできることに精魂を傾け続ければ、人を感動させる生き方ができるのではないでしょうか。





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Last updated  2023.05.11 06:42:14
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