音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2009年09月13日
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カテゴリ: ジャズ


 この前予告した岩手ジャズ。

この演奏会は「TOKYO JAZZ JAPAN CIRCUIT」という一連のコンサートの一環として行われたものです。

TOKYO JAZZは東京フォーラムで行われますが、そのほかに街中でのコンサートや各地でのコンサートも含まれています。

その中の最後のコンサートが「いわてジャズ」ということのようです。


出演アーティストはTOKYO JAZZの出演者のうちの二組「上原ひろみ」と「マンハッタン・ジャズ・クインテット」でした。

 今日は珍しくはやめに行きましたが、県民会館の入り口のところから受付のところまでずらっと行列が並んでしました。

大ホールに入ると少なくとも1階はほぼ満席。

下から見る限りでは2,3階もほどほどはいているようですので、おそらくは1500人は下らない入場者だったのではないでしょうか。

 幕に「いわてジャズ」と墨痕鮮やかに描かれた文字が大きく投影されていて、力が入っていることを窺わせました。

 最初は地元の岩手県ビッグバンド連盟加入団体の盛岡ジャズオールスターズ、岩手大学くらむぼん、そして花巻リズムヤンガーのピックアップメンバーによるビッグバンド。

 臨時編成ということからか、あまり難しい曲はやらず、ソロもトランペット、テナーサックス、ドラムスと限られた方々だけで、水準的にはほどほどのできと感じました。

ただ、サックスが7人はちょっと多すぎですし、PAの具合が今一で、サックスの音が奥に引っ込んでいて、前に飛んできませんでした。

ソロではドラムソロが精彩を放っていました。

テナーとトランペット・ソロはまずまずの出来。

ボーカルが2曲入りましたが、泥臭さが感じられ、いまいちでした。

 次は、上原ひろみの登場。

最新作のジャケットと同じ縦じまのストライプのワンピースに黒いスパッツ、白いスポーツシューズといういで立ち。

登場すると、長い間深々とお辞儀をしていました。

 第1曲目は、ソロ・アルバムには未収録のガーシュインの「I Got Rhythm」

通常のピアノソロというよりは「I Got Rhythm」の主題による変奏曲みたいな演奏で、壮絶なテンポで弾きまくるテクニックもさることながら、そのバリエーションの多彩さには驚嘆します。

事前にどこまで準備しているのか分かりませんが、そのイマジネーションの豊かさは常人の及ぶところではありません。

ピアノを弾いているときのアクションも激しく、首を前後に振ることだけではなく、立って演奏することもしばしばですし、終いには踊ってしまうこともあります。

うなったり、旋律を口ずさむことも多いのですが、さすがにキース・ジャレットや山中千尋みたいにのけぞって弾くことはありませんでした。

それに、ときどき客席を見て、「どう」みたいな感じで歯を見せてほほ笑む姿が印象的です。

それは、「どううまいでしょう」みたいな『嫌味な感じではなく、こどもが無邪気に遊んでいるときの仕草のように自然な感じで、本当に音楽が好きなんだと感じてしまいます。

 この光景を見ていたら、グレン・グールドの演奏風景が思い出されました。

 なお、同曲の演奏は こちら で見ることができます。


 ここで、MCが入りますが、少女のようなたどたどしいしゃべりで、ピアノとのギャップが大きく、彼女の年齢を感じてしまいました。

 MCはあまりうまくないのでということで、ソロアルバムから3曲を続けて演奏しました。

「Sicilian Blue」、「BEQ」、「Choux A La Creme」の順です。

どの曲も、アルバムより演奏時間が長く、十分に堪能できました。

長くなっても、弛緩したりつまらない部分が皆無で、実にすばらしいパフォーマンスを展開してくれました。

 「Sicilian Blue」はイントロがアルバムでの演奏よりかなりアグレッシブな表現でびっくり。

テーマ部分もより深い表情付けがされていたと思います。

弱音の美しさも、比類のないもので、音色も多彩です。

時折聴衆を挑発するようなルバートを見せることがありますが、これはアート・テイタムなど、スイング時代の巨匠が良くやることで、それを思い出してしまいました。

 「BEQ」は猛スピードのミニマル・ミュージック風のリズムに乗ってくりひろげられる演奏が実に心地よく、途中に出てくる美しい旋律もアルバムの演奏よりも感動的でした。

おそらく、この演奏に比較しうる演奏ができる方は、彼女以外には現存しないと思います。

楽譜におこしたとしたら、アムランなら弾けるでしょうが、ここまでのニュアンスを出すことは不可能でしょう。

 再びMCが入って、続いては「パッヘルベルのカノン」。

アルバム・レビューで唯一不満だったトラックですが、今回は仕方がないなという感じであまり不満は持ちませんでした。

チェンバロみたいな音を出していたのは、どうやら弦に細工をしていたためなことがわかりましたが、その下品な音はやはりなじめませんでした。

これを聞きながら、「The Gambler」をやってくれと思っていたら、最後にやってくれました。

それも3部作全部です。

さすがに、疲れたのか、こちらの期待がおおきかったのか分かりませんが、期待を上回るところまではいかなかったように思います。

 最後に、拍手に答えて「Green Tea Farm」が演奏されました。

アルバムではボーカル入りでしたが、ピアノ・ソロの場合には、曲の本質がよくわかる、しみじみとした演奏だったと思います。

演奏中、歌詞を口ずさんでいたのが印象的でした。

 演奏が終わった後で、何人もの方々がスタンディング・オーベーションを送っていました。

ジャズの演奏会でここまで熱狂的な聴衆を見たのはいままでなかったことです。

私にとっても、こんなにすごいピアノを聞いたことはありません。

 ピアノの素晴らしい演奏に対して「指先から旋律が紡ぎだされる」という表現が使われることがあります。

彼女の場合には、人間とピアノという二つの存在があるのではなく、彼女そのものがピアノみたいなもので、自分の思った通りの音楽がピアノを通じて出てくる、そういう感じを受けました。

おそらく、生きていればモーツァルトがこういう感じなのではないかと想像してしまいます。

 彼女がデビューしてから、ずっと聴き続けてきましたが、生でなければ分からないこと、それもとても大事なことが音楽にはあるなと、改めて思った次第です。

 ということで、私にとっては、いままでのコンサートの中で、最も衝撃的な出来事だったと思います。


 続いては、マンハッタン・ジャズ・クインテット(MJQ)のステージ。

上原ひろみの衝撃が大きかったのか、最初はあまり調子が出ていないように思いました。

ドラムスのヴィクター・ルイスとベースのチャーネット・モヘットは最初からがんがんいっていましたが、ルー・ソロフとアンディ・スニッツァーはいまいち調子が上がらない感じでした。

 今回は、25周年記念アルバムからアート・ブレイキー特集でした。

このグループが25年間も続いているのは、メンバーの技量もさることながら、リーダーのデビット・マシューズの編曲によるところが大きいと思います。

時代に合わせて、少しずつチューニングを変えてきたところに、マンネリ化を防いで、聴衆の嗜好にあった演奏を提供し続けられた理由だと思います。

とにかく、散々演奏されつくしたナンバーを新鮮に聞こえるように編曲することがいかに難しいかを考える上で、デビッド・マシューズの力量がどれほどすごいかをまざまざと実感させられた演奏でした。

4曲目の「ブルース・マーチ」で、再三にわたるドラムスのプッシュにはっと我に返ったのか、突然トランペットとテナーが精彩あるソロを取り出し、がぜん熱のある演奏に変わっていきました。

 最後の曲の前に、マシューズによる全編日本語のメンバー紹介が行われました。

自分のことを「まーちゃん」と言っていたのは御愛嬌です。

それから、日本語の難しさをいろいろ並べ立てていましたが、「助詞」と「女子」をかけて、両者の扱いにくさをユーモアたっぷりに話されいたのには笑わされました。

 「チュニジアの夜」ではテーマのブレイク部分をテナーとトランペットがユニゾンで吹くという、珍しい編曲が楽しかったです。

また、チャーネット・モヘットの早引きベースとアルコによるアラビア風のメロディーがとても新鮮でした。

 アンコールに「キャラバン」が演奏されました。

途中で、ドラムスとベースの掛け合いという珍しい光景があり、これも楽しかったです。

 ルー・ソロフは以前聞いた時よりも調子がよく、ハイ・トーンも良く出ていました。

アンディ・スニッツァーは最終的には帳尻を合わせましたが、もう少しアグレッシブな演奏を望みたいです。

マシューズのピアノは上原の衝撃の後でしたので、いかにもしょぼく、だいぶ損をしたと思います。

 ということで、このグループの演奏は長く続いている団体の形容で良くつかわれる「偉大なるマンネリ」ではなく、時代に適応し続けている団体として、高く評価できる存在だと思います。


最後に、ビッグバンドとMJQの合同演奏で、「Cジャムブルース」が演奏されました。

演奏自体にはコメントしませんが、アマチュアの彼らにしてみれば、最高峰のグループのメンバーと共演したことは、これからの人生に大きな影響を与えると思いますし、これを糧にさらなる精進を期待したいです。

終演後、メンバー全員がステージの前に並んで、肩を組みながら挨拶していたのはなかなか感動的でした。

 ということで、公演としては大成功だったと思います。

来年も続けることを希望しますが、できれば野外でのコンサートが実現できればとてもうれしいです。

なにしろ、スペースだけはいくらでもあるわけですので、「マウント富士」ならぬ「いわて山ジャズフ・ェスティバル」みたいな感じにしてくれると嬉しいですね。。。。

いわてジャズ200

第1部いわてジャズ スペシャルバンド
1.Magic V
2.エリントン(オリバー・ネルソン編):In a Mellow Tone
3.曲目不明
4.Gershwin:Someone Watch Over Me
5.When You are Smiling
6.Buddy Rich:Grooving Hard?


第2部 上原ひろみ ピアノ・ソロ
1.I Got Rhythm
2.Sicilian Blue
3.BEQ
4.Choux A La Creme
5.Canon
6.Viva! Vegas
  Show Cuty, Show Girl
  Daytime In Las Vegas
  The Gambler
アンコール
1.Green Tea Farm
 マンハッタン・ジャズ・クインテット
1.危険な関係のブルース
2.モーニン
3.モザイク
4.ブルース・マーチ
5.チュニジアの夜
アンコール
キャラバン

合同演奏
エリントン:Cジャムブルース

2009年9月12日 岩手県民会館大ホール1階9列28番で視聴






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Last updated  2009年09月13日 16時30分00秒
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