音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2018年04月18日
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カテゴリ: 映画


原作はキャサリン・グラハムの「わが人生」
公開から一週間以上過ぎているが、ほぼ満員という人気ぶり。
映画の出来がいいというのは知っていたが、メリル・ストリープが主演なので少し引っかかっていた。
結果はとても面白く、観に行って正解だった。
ペンタゴン・ペーパーズの正式名称は "History of U.S. Decision-Making Process on Viet Nam Policy, 1945-1968" (ベトナムにおける政策決定の歴史、1945年-1968年)というもの。
( wiki )
主人公はワシントン・ポストの社主キャサリン・グラハム(1917-2001 メリル・ストリープ)で、ワシントンポストの記者たちがこのスクープにたどり着き、新聞に載せるための葛藤とその後について描かれている。

理由はわからないが、この著作で今でも覚えているのは彼女の名前ぐらいなものだ。
その中には、この映画に出てくる、ワシントン・ポストの編集主幹のベンジャミン・ブラッドリー(トム・ハンクス)や、ペンタゴン・ペーパーの執筆者で経済学者のダニエル・エルズバーグやペンタゴン・ペーパーズを最初にすっぱ抜いたニール・シーハンのことも書かれている。

「背景」
エルズバーガーは当初フルブライト上院議員のところへ文書を持ち込んだが断られ、ニューヨーク・タイムズにもちこんだ。
ベトナムでの取材経験が豊富なシーハンは、ベトナム人の立場で戦争を見ていた数少ない記者の一人で、この文書を扱うのに最も適していた。
シーハンが最初にベトナムに関する特ダネを発表した。
それは、1968年のテト攻勢直後に、ウエストモーランド将軍が20万6000人のアメリカ軍増派を要求したというものだった。
シーハンはベトナムでエルズバーグ(マシュー・リス )と知り合い、シーハンの評論をきっかけとしてペンタゴンペーパーの掲載がはじまる。
タイムズで問題になったのは、文書の真偽のみで、ベトナム戦争に対しずば抜けた知識を身につけ持っているシーハンが「文書は本物であると確信している」という一言で、掲載が決まる。
タイムズでは公表が決まった後に弁護士に文書を見せた。
そこではワシントンポストと同様な論争が起こったが、憲法修正第1条に保障された言論の自由を行使していることになるので、訴訟には必ず勝てるという判断が下され、当初の半分の長さに短縮されたものが報道された。


映画では、ニューヨーク・タイムズに抜かれたワシントンポストが文書を入手するまでが前半のハイライト。
報道するべきかどうかをグラハムが決断するまでがもう一つのハイライト。
あとは訴追されたタイムズの裁判の行方がどうなったかについて描かれている。
登場人物が沢山いすぎて、よくわからなくなるが、エピソードを手際よくまとめられて、テンポよく進行するところはスピルバーグの手腕が光っている。
細かいところにも神経が行き届いていて、緊迫感のあるシーンが大半な中にも、家族とのふれあいやユーモラスなシーンが登場するのは彼らしい気配りが感じられる。

ただ、精力的に動いているシーンでは感じないが、静的な場面では、老いが感じられる。
61歳なのでまだ老け込む年ではないのだが。。。
騒動が起きた時、グラハムは54歳で、演じたメリルストリープは60代後半と少し違和感があった。
実年齢に近い女優であれば、ちょっと違う感じになったと思う。
引退前の社長みたいな感じで、黄昏ているところが少し違和感がある。
ベンとの対話でキャサリンの背負っているものの大きさが、ベンとはまるで違って、記事を出すかどうかの苦悩が伝わって来た。
文書入手後のワシントン・ポストのドタバタぶりがよく描かれていたが、文書を受けとる段階で少し注意をしていれば、そんなドタバタは起こらなかったというツッコミをいれたくなる。
また白熱した議論は文字通り「口角泡を飛ばして」という言葉がふさわしく、観ているものも興奮してくる。
当時を思わせるのは、タイプライターや輪転機、古い車などだが、記者が足で稼がなければならないのは今でも変わらない。
映画を見ていたら、当時のワシントン・ポストの記者たちの崇高な理念に比べたら、昨今の日本のジャーナリズムがいかに堕落したかを感じざるを得なかった。
「調査報道」なんていう言葉は日本では廃れてしまったのかもしれない。
週刊誌ねたを堂々と記事にする新聞、それを臆面もなく利用するテレビなど日本のメディアの変質ぶりを見ると、真実を追求する彼らの爪の垢でも飲ませてやりたいと思ってしまう。
この映画は登場人物が多く、話が込み入っているので、出来れば背景を学習してから観たほうがストーリーがよくわかると思う。

参考文献:ハルバースタム著メディアの権力3(サイマル出版会)または朝日文庫
現在はどちらも絶版になっている。

公式サイト





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Last updated  2018年04月18日 16時44分19秒
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